以下、本編とは一切関係ございませんのであしからず
ルクスが起きる少し前、『妖精の尻尾』では"ある出来事"について裁判が行われていた。
「これより『ルク・セレスト夜遊び事件』について、裁判を行う。原告、前へ」
「はい…」
「被告人を訴えた経緯を教えて下され」
原告と呼ばれ出てきたのはウェンディ・マーベル。天使である(錯覚)明らかに落ち込んだ様子の彼女はぽつりぽつりと、経緯…昨日の事を話しだした。
「…昨日の昼前くらいの話です。ルクスは『ジュラと手合わせをしてくる。』と言って出かけました。それから私達の方は依頼が終わったので帰宅して、家でルクスの帰りを待っていました。何時まで経っても帰ってこなくて…晩御飯の用意やお風呂の用意までしたのに帰ってこなくて…!もしかして何かあったんじゃないかって…私心配で…!そしたら、『女の子と寝ていて帰らない』って…エルザさんから聞いて…!」
聞いているギルド内の者達はウェンディに同情の目線を向け、怒りの感情をルクスに向ける。…特に女性の皆さんは大変お怒りだ。南無
「私っ!もうどうしたらいいか分からなくてっ!」
こんな事を言っているが、二人は結婚どころか付き合ってすらいない。
「あの人の事を信じてあげたいけど…!出来なくて…!」
もう一度言う。"あの人"なんて言っているがそういう関係では無い。
しかしそんな事はお構い無しと『妖精の尻尾』の恋する乙女の味方達は憤りを露わにする。
「殺っちまいなそんなヤツ!女の敵だよ!」
「二度と陽の目見れなくしてやろう!」
「去勢♪」
過激な意見ばかりである。特に最後の方は笑顔なのも相まって怖さ倍増だ。
「静粛に!では、被告人ルクス・セレストについて、判決を決める!
「ただいま~」
「「「
「えっ」
ルクス死す…!
―――――――――――――――――――――――
以上です、裁判長。
「あ〜、クソ。頭痛ぇ〜」
あの後目醒めた俺は別れの挨拶もしずに即帰宅していた。人生二度目の二日酔いに苛まれながらも、早くウェンディに会いたい一心でギルドに到着し、逸る気持ちを抑え、ドアを開く。
「ただいまーーー…?」
少々疑問形になってしまったのよ仕方がないだろう。
奥の方でウェンディとシャルルが仁王立ちして、入口から奥までの一直線を作るようにギルドの人達が並んでいる。この光景を見て驚くなという方が無理だ。
「おかえりなさい、ルクス。」
いつものミラの「おかえりなさい」だが、心なしか楽しそうだ。いやホントになんなん…?心当たりが無いでもないが、念の為ウェンディに説明してもらおうと奥へ進む。
「ただいま、ウェンディ。昨日はごめんな?急に予定を変更して…」
「ううん。少し寂しかったけれど、それはいいの。」
あれ?てっきり飯を一緒に食べなかった事かと思ったんだが…え?じゃあホントに何?
「そんな事より、『女の人と一緒に寝た』っていう話…詳しく聞かせて?」
あッ…スゥーーーー
「違うんだよ」
「何が?」
怖いぞウェンディ
「…」
しかし合点がいった。恐らく並んでいる
「答えられない?なら、答えやすいように質問してあげる。"はい"か"いいえ"で答えてね?」
「はい…」
有無を言わせない圧力だ…立派になったなウェンディ(現実逃避)
「先ず、『女の人と一緒に寝た』って話は…本当?」
「…いや、それには深い「"はい"か"いいえ"で答えてね?」…っす。…えーと、はい。」
「…ふーん?」
怖いんですけどウェンディさん?
「…それじゃあ、次の質問。"一緒に寝た女の人"の事は好き?」
「…?はい…?」
「…ッそう…なんだ…」
あれ?なんかガチ凹みしてない?それに暇人共からも鋭い視線を感じる…え?これは俺のせい?俺のせいなのか!?
「…ウェンディ!?その…すまん!たぶん俺のせいだよな!?俺が悪かった!直す!直すから!だからとりあえず理由を教えてくれ!」
「っいいの!もう質問も終わり「まだよ。」…シャルル?」
「まだ、私から質問したい事が残ってるわ」
先程から傍観していたシャルルは、「やれやれ」とでも言いたげな様子で言葉を続ける。
「ルクス、アンタ達の痴話喧嘩を見るのもこれで何回目か分からないけれど、今回ほどアンタの鈍感を恨んだことは無いわね。」
「俺が鈍感なんて話は今この場ではどうでもいいだろ?それよりウェンディの事をどうしねぇと…。おい、シャルルは知ってんだろ?ウェンディが凹んだ原因。」
「はいはい、知ってるから先ずは質問に答えなさいな。」
「はぁ?だからウェンディの方が「いいから」…んだよ?じゃあ、答えたら教えてくれよ?ウェンディが凹んだ原因。」
「いいわよ。それじゃ質問。"一緒に寝た女の人"と"ウェンディ"どっちが好き?」
「ウェンディに決まってんだろ?」
「…え?」
「でしょうね。」
即答する俺、呆けるウェンディ、当然と言わんばかりのドヤ顔シャルル。言葉の意味を理解したのか、ウェンディが顔を真っ赤にしながら俺を問い詰める。
「なんで!?その人の事が好きになったからお付き合いしてるんじゃないの!?」
「お前何言ってんの!?」
「だってだって!女の人と一緒に寝たって…!」
「それは俺が酔っ払って抱いたまま寝ただけだって!」
「ダイタママネタ…?」
流れ変わったな
「抱いたまま寝た!?女の人を抱いたまま寝たの!?どうしてお酒を飲んだの!?なんでなんでなんでぇ!?」
「落ち着けウェンディ!キャラが!キャラが崩れ始めてぇ」
「つまり、その"シェリア"っていう女の子に強めのお酒を飲まされて、酔っ払ってその子を抱き寄せたまま私達の気も知らずぐっすり呑気に気持ちよく寝てたって事…?」
「言葉の節々から感じる棘をおおよそ無視すれば…まぁ、そういう事になる。」
あれから、俺とシャルルでウェンディを落ち着かせてから、おおよその事実を順番に説明。…不慮の事故なんですよ。
「…じゃ、じゃあ、その女の人の事が好きって言ったのは…?」
「うーん…友達?いや、妹みたいな感じだな。いい子だと思うぞ?」
「よかったぁ…」
心底安心した様子のウェンディ。…何をそこまで心配していたのか甚だ疑問なんだが…
「しかし、シェリーからの連絡が来てたんだよな?どう説明されたんだ?」
「えーと…女の人と寝るから帰れない…みたいな感じだったらしいよ?」
「よし、次ラミア行ったらアイツは折檻してやる。」
わざわざ誤解を招くような言い方しやがって…俺アイツに何かしたか…?
実際の所、シェリーは従妹であるシェリアの恋路を応援しようと(それと面白半分で)ルクスに修羅場を与え、その際喋り方でバレる事を警戒して標準的な喋り方をした…というのが真相である。
「…そういえば、花見はどうなったんだ?たしか今日だったんだよな?」
「あぁ、それなら…〈prprprpr〉」
と、ウェンディの言葉を遮るようにギルド常設通信用魔水晶が鳴る。
『突然の連絡、申し訳ない。そちらにルクス・セレストはいらっしゃるだろうか?』
「おーう、居るぞー」
魔水晶を取った(電話を取る的な)ミラと代わり、俺が受け答えする。…ちなみに、魔水晶の声はスピーカーホンのように周りの人にも聞こえるようになっている。
「ようリオン、昨日振りだな。どうしたんだ?」
『今回、ウチのギルドの者がお前に迷惑をかけたようだからな。せめて生まれたであろう誤解を解こうと連絡した『ルクスーーーー!』…次第だ。』
「…わざわざ悪いな。誤解ならもう解けたから安心していいぞ?」
『ルクス!無視!?やっぱりお酒の件で怒ってるの?ごめんね?謝るから、もうやらないから、嫌いにならないで…!』
「分かった、分かったから泣くな!お前に泣かれると俺がすごく悪い事をした気分になる!」
『…ホントに?また、来てくれる?』
「おう、行ってやるから…そん時はまた二人で遊ぼう。」
『うん!約束!破ったらデートだからね!』
「おう、なんでもいいさ。約束は破らんからな。」
「デート!?」
『むぅ…デートって言葉に反応すらないなんて…約束だからね!約束だよーー!』
「はいはい、分かったよ」
『…後で、シェリーとシェリアには後でキツく言っておこう。』
「シェリーはともかく、シェリアの方は…俺にも責任が無くはないから、ほどほどにしてやってくれ」
『随分シェリアに甘いな。しかし、今回のは流石にダメだ。命の恩人を騙して酒を飲ませるなど…』
…字面にするとスッゲー悪い事したみたいだな。
「…命の恩人って、なんですか?」
『む?ウェンディ、久しぶりだな。なんだ?ルクス、まさか話してないのか?』
「あのくだりを身内に知られるのは恥ずいんだ。」
『そうか…『妖精の尻尾』の皆さん、ルクスは心なき者に拉致されていたシェリアを華麗に助け出したのです!「ちょ!」しかも!その後シェリアの面倒を見てやってくれました!』
「恥ずいって言ったよな俺!」
大人しく出歯亀していたギルドの面々からの視線が、生暖かいモノや、微笑ましいモノになり、何故か誇らしげな表情をしだす者まで現れた。…ウェンディが満面の笑みで頭を撫でてくれているので赦そう。
その後、リオンはグレイと少し会話して通信を切った。
また、花見は1日延期になったらしい。なんでも、ルーシィが昨日の依頼で風邪を引き、俺は帰ってきてない。二人不在という事で延期の希望がいつくかマスターに届き、延期が決定したらしい。
いつの間にか出歯亀軍団も散っていて、俺とウェンディ、シャルルは家へと帰宅していた。
「あ〜シャルル?」
「何よ?」
「コレやるよ。今回のお詫びって事で。」
渡したのはブラシ。ちょっとお高いヤツで、朝帰る途中で購入した物だ。最近ブラシの毛が〜…と、嘆いていたので丁度いいと思ったのだが…
「…!ふんっ、そんなんじゃ今回の件チャラには出来ないわよ。…でも、ありがとう。」
「どういたしまして」
お気に召したようで何より
「…ウェンディ?そんなに物欲しそうな目で見なくても、ちゃんとウェンディの分もあるぞ?」
「え!?そ、そんな目してないよ〜!」
「…少なくとも、"いいな〜"っていう目ではあったわね」
「うぅ…」
「あ〜悪かったから、顔上げろって…」
「!?」
俺がウェンディの顎を少し上に持ち上げるようにし、左手で昨日買ったピアスを着けてやる。何を勘違いしたのか一瞬目を瞑って"待ち"の態勢に入っていたが、深くは聞くまい。
「よし、着いたぞ。ほれ…」
「わぁ!キレイ…」
ウェンディに手鏡を向けてやれば、お気に召した様で満面の笑みを浮かべてくれる。…買った甲斐があったってもんよ
「改めて、今回の事は本当に申し訳ない。多少他者の思惑があったとはいえ、寂しい思いをさせてしまったし、憤りも覚えただろう。ぜひ、俺の事を煮るなり焼くなり好きにしてくれ。」
「そんな事しないよ!?それに、もうそんなに気にしなくていいよ?悪気があったんじゃないし…人助けまでしたんでしょ?立派な事だと思うな!…まぁ、少しだけ優しくし過ぎた思うけど…」
「しかしな…あ!だったら、何か願い事無いか?俺に出来る事ならなんでも叶えてみせるぞ!」
「う〜ん…願い事…あ!え、えっと…あるにはある…よ?」
「よしやろうすぐやろう!で!その願い事は?」
「私の願い事は…」
――――――――――――――――――――――
夜、ルクスの部屋
「…(コンコン」ノック音
「どーぞー」
「お、お邪魔しま〜す」
枕を両手に抱えたウェンディが寝巻きで入ってきた。シャルルは一足先に寝ている。
願い事は"私も一緒に寝たい"という事で、特に断る理由も無いためあっさりと快諾。ウェンディの顔は複雑そうであったが、原因は不明。…そして、俺の心臓がバックバク。こちらも原因不明。
「えっと…入るね?」
「…おう。」
ウェンディが布団に入った瞬間、ふわっといい匂いがする。隣がすげぇ暖かくて安心する。横見たら天使居る。最高。…不味い、頭が回らん…!
「急に一緒に寝たいなんて言ってごめんね!邪魔だったらすぐ出てくから…」
「いや、ちょうど話したい事もあったし気にすんな。」
「話したい事?」
「…おう」
切り替えろ…もしウェンディに嫌われても、これだけは言わなきゃだめだ。少なくとも、ウェンディには誠実でありたい。
「…昼間、ウェンディとシェリア、どちらが好きかって聞かれた時、俺はウェンディって答えたよな?その気持ちに間違いは無い。俺はウェンディが好きだし、愛してる。」
「…うん。」
「でも、それはたぶんウェンディが思ってるようなキレイなモノじゃないんだ。執着や依存みたいな、歪なモノだと思ってる。」
「…うん?」
「俺はウェンディが居なきゃ生きていけないし、ウェンディが他の男と二人で楽しそうに喋ってたら嫉妬する。そんな醜いモノなんだ。だから…」
「…ちょっと待ってね?」
「お、おう?」
見ると、顔を真っ赤にして瞳を潤したウェンディが居た。やはりに怒られるか…と思っていると、ウェンディは見当違いの言葉を漏らす。
「…えっと…私は今…告白されてるの…?」
「違うが?」
「違うの!?」
何を言っているんだこの子は?今俺は、ウェンディの純粋な親愛に対して、醜い愛しか返せていない事を謝罪しようとしているのに…あれ?告白ってそういう意味なら告白じゃね?
「いや、確かに重大な告白ではあるが…」
「…恋愛的な告白じゃないの?」
「違うが?」
「違うの!?」
何を言い出すんだこの子は。今の文脈でどう恋愛的な告白へと至るのか…そもそも、そういう感情を向けられても困るだろうに…
「…えっとね?私は…その、ルクスの事が恋愛的に好きだよ?いつか結婚したいし子供だって…っ!?とにかく!好きなの!」
「…ぁえ?」
「…私はルクスが他の女の子と楽しそうにお喋りしてたり…それこそ、一緒に寝たなんて…すごく嫌だったし…嫉妬…したんだよ?」
…
……
…………
「え?それって好きって事なの?」
「大好きだよ!?」
「正気か?」
「怒るよ?」
「男見る目無いんだなウェンディ。俺は心配だよ」
「ルクスを馬鹿にするならたとえルクスでも許さないよ?」
「日本語おかしいし、俺のどこがいいのか甚だ疑問だし。」
「私も、私なんかのどこがいいのか分からないよ。」
「…」
「…」
「私の気持ちとかを汲み取って行動しようとしてくれるし、家事手伝ってくれるし、困った時は必ず助けてくれるし、私だけじゃなくて他の人の事もしょうがないなぁ〜って言いながら助けてくれるし、カッコいいし優しいし…」
「俺の気持ちをすぐに汲み取って行動してくれるし、主な家事をやってくれるし、困ってる時は力になろうとしてくれるし、誰にでも別け隔てなく対応するし、可愛いし優しいし…」
「「…って、真似すんなよ!(しないでよ!)」」
いや、しかし…マジかぁ…え?俺はウェンディを恋愛的に好きだったのか?マジで?確かに、こう、スッと入ってくるような、妙な納得感はあるが…うぅむ…
「…それで、どうしよっか?その…一応私、告白どころかプロポーズまでしちゃったんだけど…」
「…聞かなかった事にする。俺じゃウェンディを幸せには出来ないからな。」
「関係無いよ。私を幸せに出来るかなんてどうでもいい。私は、ルクスがどうしたいのかが聞きたい。」
「…」
「私が、他の人と結婚するって言って耐えられ「…ッ」…そうに無いね。…んふふ、嬉しい。」
「ちょっと意地悪なんじゃないか?」
「今の状況なら少しくらい意地悪しても大半の人は許してくれるよ」
そんなにか
「…もう一回聞くよ?ルクスは、どうしたいの?」
「…ずっと、一緒に居たいとは思う。けどそれ以上に、ウェンディには幸せになって欲しい。」
「だったら簡単だよ。ルクスが、私を幸せにしてくれればいいの。そうすれば、二人一緒に…シャルルも合わせて三人でずっと一緒に幸せだよ?」
「…俺じゃ無理だって言ったろ?」
「ううん、ルクスじゃないと無理だよ。私を幸せに出来るのは、ルクスだけ。」
「そんな事無い「あるよ」…?」
「私が幸せかどうか決めるのはルクスじゃない。違う?」
「…ッ!」
そうだ。俺は勝手に、ウェンディの幸せに俺が必要無いと決めつけていた。でも、ウェンディが幸せかどうか決めるのは俺じゃ無くてウェンディだ。…俺のはただのエゴだったって事になる…
「分かった?私の幸せにはルクスが必要。私を幸せに出来るのはルクスだけ。」
「…おう。」
「だから、私を幸せにしたくば!私と…ずっとずっと、一緒に…居て?」
女の子にここまで言わせるなんてな…親父にバレたら殺されそうだ。…大丈夫、覚悟は決めた。俺は…
「あぁ、俺はウェンディが好きだ。俺の一生をかけて、お前を幸せにしてみせる。」
「うんっ!よろしくね!」
――――――――――――――――――――――
因みに、部屋の前の廊下にて聞き耳を立ていたシャルルは号泣。この時流した涙は、後にも先にもコレが最大だと言う
はい、ウェンディ覚醒回でした。
とても難産だったので遅れました。決して原神の瑠璃復路集めダルかったとかじゃないです。