ちょうどルクスとウェンディがイチャコラしていた頃、樹海の奥深くにある光の柱、ニルヴァーナの根本。そこには一人の男が佇んでいた。青い髪に黒いコート、顔には赤い模様、ジェラール・フェルナンデス其の人である。
彼はウェンディの治療により目醒めた後、全員が戦いに集中している内に移動。ニルヴァーナの封印を解き、『自立崩壊魔法陣』によりニルヴァーナを破壊しまた、自らも解除コードと共に死のうとしていた。
『エルザ』という単語しか憶えていないジェラールは、ここで一人誰にも看取られず記憶も無く死ぬのだろうと朧気に考えていた。
「よォ゙〜ジェラール、久しぶりだなァ?いや、こっちのオレとは初めましてか?」
しかし、そんな考えは甘かったと否定される事になる。見た目は肩にかかるくらいの白髪に鍛えられた体躯。一目見て分かる程の異質な魔力。まるで暴力を体現させたような見るからに危ない気配。『自立崩壊魔法陣』が起動するまでの時間稼ぎすら出来ないかもしれない…と、内心冷や汗をかく。
「…貴方は、俺の事を知っているのか?」
「なんだ?オイオイオイ、お前まさか記憶がねェのか?ハッハッハ!こりゃ傑作だぜ!
「…」
薄々そんな気はしていた。俺が目覚めて逃げる時、目が合った赤髪の女が悲しそうに、嬉しそうに、辛そうに俺を見ていた事から、俺は彼女に何か悪い事をしたのだろうと、そう考えると妙に納得してしまっていた。
「親切なオレが教えてやるよォ!お前はなァ!世界で一番有名な大罪人だ!今更そんな事したってお前の罪は消えねェ!お前が今まで狂わせてきた人間は数知れねェ!」
「…」
「へっ、ある程度覚悟してたッて顔だなァオイ!それとも、顔も憶えてねぇヤツがどうなったって関係ねェってか?薄情なヤツだなァ!」
「…!」
「お?もしかしてキレてんのか?どうだ?殺る気になったか?ほら、だったらオレをどうにかしてみろよ。じゃねぇとお前も後ろの魔法陣も壊しちまうぞ?」
男が言葉を言い終える直前に魔法の球を撃つ
「…オイ、まさかこれが本気だなんて言わねぇよな?」
が、一切効いていなかった。
「はぁ〜まさかとは思ったがよぉ…魔法の使い方まで忘れてるとはな…こいつぁ興冷めだぜ。オイお前、もう死んで良いぞ。」
その言葉と共に放たれた魔法の光線はいとも容易く俺の意識を刈り取った…
――――――――――――――――――――――
「さてクロドア、コイツがニルヴァーナで間違い無いのか?」
「えぇ、その通りでございます。」
そう答えたのは先程までブレインの持っていた杖である。厳つめの顔に危ない雰囲気の男とそれに従う喋る杖。字面にすると中々に愉快な事になるが、男達のしようとしている事は悪者のソレである。
「さて、それじゃブレイン。代わってやるからコレ解け」
男がそう言うとゆっくりと雰囲気が変わる。暴力的な雰囲気は理性を持ち、赤かった目は白く一般的な目に戻る。…まぁ、その目からは酷く怯えが見られるが。
「わ、分かりました"マスター・ゼロ"。」
男…ブレインは、マスター・ゼロのに従い『自立崩壊魔法陣』を解き、ニルヴァーナを復活させる。長年の目的が達成された…だというのに、ブレインの顔は優れない。既にマスター・ゼロの封印は解かれ、自分の人格が表に出る事は難しいからか、それともマスター・ゼロが余程恐ろしいのか。
「…手初めに、どこのギルドを潰しますかねぇ?」
マスター・ゼロの事を恐れながらも、復活したニルヴァーナでこれからする事を思いワクワクが止まらない…そんな様子で杖…クロドアが問う。
「あのガキだ、『天空の守り人』だったか?アイツの居るギルドを壊す!『
「あのガキ…『化猫の宿』ですねぇ、承知致しましたぁ!」
目の前の光の柱がその輝きを増し、大地は震え、地下から迫り上がってくるものはその場にいた男二人と杖を悠々と持ち上げ、遥か上空で停止した。
「クロドア」
「承知でございますぅ!」
杖はニルヴァーナを操作し、ゼロは一人これから壊す物を想像して嗤うのだった。
――――――――――――――――――――――
時は少し遡り、ルクス達は光の柱ニルヴァーナに向けて歩いていた。
「しかしルクス殿、先程は流してしまったが…その、腹が無いのにどうして動けているのだ?」
「あ〜…どう言ったもんかな…」
口籠る俺と、心配そうな目を向ける仲間達。因みに、ウェンディは寝たままなので俺が背負っている。ジュラ等他の人が代わると言ってくれたが断固として拒否した。これは俺の役目だ(迫真)
「俺にもよく分からんが、多少動かしづらい程度で済んでるから問題無い。」
嘘である。この男、現在脳から下半身へ信号を送る神経がスパッといっているため、下半身はほぼ動かないのだ。その信号を雷の魔法で代用することで誤魔化してはいるが、およそ戦闘は無理でだろう。というのが現状なのだが、それを馬鹿正直に伝えればクリスティーナまで帰らされるのは間違い無いし、万一ウェンディに伝わるのだけは避けたい。まだまだ、仲間を頼れるようにはならなそうである。
「ふむ…ルクス殿には恩があるし、何より頑固故こちらからはあまり言わんが、自分が未来ある若者であり、その身に何かあれば心配する者が居るという事だけは、ゆめ忘れぬように。」
あぁ、分かってる。俺がどうにかなれば、たぶんウェンディは保たない。きっと立ち直れない、そうなってしまったのは俺の責任だ。でも、それでも…
「分かっちゃいるけどさ?それでも、好きな子にカッコつけたいのが漢ってもんだろ?」
その言葉を聞いた皆は…
「ハッハッハッ!そうか!確かにそれは道理だな!ハッハッハッ!」
「どぅえきてるぅ〜!」
「ひゃー!最近の子ってこんなに大胆なのー!?」
「ルーシィお前年寄りくせぇぞ…」
「エルフマンが居たら"漢だ!"って言ってそうだな」
「す、凄いな…ここまで堂々と…」
皆さん13歳の恋バナではしゃぎ過ぎでは?不味い、このままではイジられる…!早急に話題転換を…
「ま、そんな訳で…是非とも俺の顔も立てて欲しいね。」
「ふふ、仕方あるまいて。そういう事情なら、こちらも多少配慮しよう。命の危険等はその限りでは無いが…のう?ウェンディ殿?」
「…ッ!?」
バッと振り向けばさっきと変わらず寝息をたてる天使の姿。つまり…?
「てめっ…!」
「ハッハッハッ!年寄りの戯れゆえ、許せ」
そう頭をガシガシと撫でられる。
か、完全に子供扱いされてやがる…いや子供なんだけどさ。それはともかく一言文句垂れてやろうと口を開いた所で突然地面が揺れだす。
「な、なんだ!?」
「地面が!?揺れて!?」
「あたし、なんか嫌な予感がするんだけど…」
「奇遇だな、俺もだ!」
「「「うぉぁぁぁぁぁ!?」」」
地面の揺れが収まり、周りを見れば都市のような物が広がっていた。
「皆無事か!?」
「居ないヤツは手を挙げろー!」
「居ないのに手を挙げろとはこれ如何に」
順番に確認していけば、とうやら全員無事らしいので一先ず安心といった所だろう。
『みんな無事かい!?』
「お?この声はヒビキか?」
『あぁ、こちらはクリスティーナに着いたからね。なんとか動かすことも出来そうだし、魔力にも余裕があるからね。情報を共有しておきたかったんだ。』
「それは助かうお!?」
ヒビキから更に話を聞こうとした所でまた地面が揺れだす。
「これは、動いているのか!?」
『クソッ!もう目的地が決まったのか…!』
「目的地?」
『うん、ニルヴァーナはその六本の脚のような物で設定した目的地へ向かう。向かった先で破壊行為をしたり、ニルヴァーナ本来の魔法を発動したりする。それを止めるには脚の中にある魔水晶六つを同時に破壊しなければならない。』
「六つ同時…また面倒な」
『すまない、ここからそこまでは中々距離があって着くまでに時間がかかってしまう…ニルヴァーナが目的地に着くまでにそちらに行ければいいんだが…。ともかく、今から君達の頭の中に六つの脚に番号を振ったマップを送る。全員着いたら教えてくれ、こちらでタイミン…を合……よ…。』
『よォ、光の魔導士。オレは『六魔将軍』のマスター、ゼロだ。先ずは褒めてやる、まさかほぼ一人で『六魔将軍』を潰しちまうとはな。そのお礼と言っちゃなんだがな、ニルヴァーナの目的地を『天空の守り人』、お前のギルド『化猫の宿』にしてやったよォ!』
「…あ?」
突然、ヒビキの声にノイズがかかったと思えばブレインと同じ声のマスター・ゼロとかいうヤツがふざけた事抜かしてきやがった。
『オレは今から適当な魔水晶まで行ってお前等の邪魔をする。魔水晶壊したきゃ、オレを足止めしとく事をオススメするぜ?因みに、オレはここに居る。』
その言葉と共に吹き荒れる魔力の奔流。その発生源は都市のど真ん中にある一番高い建物らしい。
『ま、オレとマトモに殺り合えるのはそっちだと三人くらいか?誰が来てもいい、なんなら全員来ても良いぜ?それでニルヴァーナを止められるかは知らねぇけどな!ハハハハッ!』
そこで念話が途切れたと思えば、またヒビキからの声が聞こえだす。
『どうやら状況が変わった様だね…ニルヴァーナを止める六人と、それを邪魔するゼロを止める人が要ることになる。パターンは二つ。全員でゼロを叩き、その後でニルヴァーナを破壊。もしくは、ゼロを足止めしている内にニルヴァーナを破壊し、その後で全員で叩く。…すまない、魔力が無くなりそうでね…後の話し合いは丸投げする事になりそうだ。最後に、全員が持ち場に着いた事を確認したらこちらからもう一度全員に念話してタイミングを合わせるからね。それじゃ、健闘を祈るよ。』
「…さて、今この場に居るのは私とジュラ、ルクス、ウェンディ、ナツ、グレイ、ルーシィ、ハッピーとシャルル。」
「…不味いな、攻撃魔法を使える者が六人しか居ない。」
「クリスティーナの人達からの増援は当分期待出来ない以上、このメンバーでどうにかせねばならん。やはり全員でゼロを叩き、その後でニルヴァーナを止めるのが正解だろうか。」
「うむ、その方が皆も安全だろう。」
「そうと決まれば…!」
「うん!皆でゼロを倒そう!」
と、意見が固まりかけた所ではあるが…
「すまん、悪いけどゼロは俺一人で相手する。その内に魔水晶破壊してくれ。」
「駄目だよ!また一人で行くなんて絶対駄目!」
と、俺の意見を真っ先に否定したのは未だに俺に背負われているウェンディである。…起きてたかぁ…
「話聞いてたろ?
「関係ないでしょ!?そんなにボロボロの体でまだ戦うなんて駄目だよ!」
「俺の方は問題無ぇよ、少なくとも皆が魔水晶壊すまでは保つ。」
「ルクス、仮に本当に問題無かったとしてもその作戦は破綻しているぞ。こちらに攻撃魔法を使える者は六人しか居ない。」
「いや居るだろ七人目。」
「…?私、ルクス、ジュラ、ナツ、グレイ、ルーシィ以上「ウェンディだよ」…しかしウェンディは攻撃魔法は…」
「そうだよ!私、攻撃魔法なんて使えた事ないよ!」
「だったら今日初めて使うって事だな。」
「む、無理「俺の為に強くなってくれるんだろ?」そうだけど〜」
「…頼むよ、ウェンディ。どの道『化猫の宿』を守るには早急にニルヴァーナを破壊する必要がある。それには誰かがゼロを足止めしきゃ駄目なんだ。そうなると結局、お前も魔水晶を破壊しなきゃならん。」
「そんな…!」
「『化猫の宿』の皆を守るために…な?大丈夫。お前は偉大なドラゴンに育てられた"滅竜魔導士"で、俺の"相棒"だからな。信じてるぜ?相棒。」
「…うん!私、頑張る!だから"約束"絶対に守ってね?」
「怪我一つもしない…は無理かもだけど。帰って来るよ、必ず。」
「うん!」
終わりそうだぜぇ!