いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~ 作:八切武士
一方、ミスティ・ウッズでは、いい歳こいたおっさんが“糞遊び”に興じていた……
~ チック・ピー一家の洞窟 八誌緒の部屋 ~
『いだーい、いだーい、おでのあじー、あじー!』
『はいはい、男の子が片足無くなった位で泣くんじゃありません、まだ片っぽ残ってるでしょ、ジ○ングなんて首だけで元気に戦ってますからね~』
『くびだけなんてばけもんだよ!』
何故か目の前に運び込まれてきた、なんかパーツが足りなくなっている“倅”の泣き言を聞き流しながら、洗ったペットボトルに貯めておいた“特製トマトジュース(野菜0%)”を注射器にとり、もげた方の足にぶっさして注入する。
『ん~…ここかな?』
『うぐっ!!ぐああ!!あ゛あ゛あ゛あ゛』
『ん!?間違ったかな…』
白目を剥いた“倅”を運び込んできた連中が押さえつける。
どうも、無くなったモノが生える時、結構気持ち悪かったり、痛いらしい。
(幻肢痛かな?私の求める“治癒魔法”はまだ遠い……って魔法じゃないか)
『ら、らめぇ!い゛っぢゃう、い゛っぢゃうぅ!でりゅうう!ぢがびゅゅーーーっでっ、ん゛ん゛ぎもぢい゛ぃーーっ!!!』
いや……まぁ、たまに、痛いのが嬉しいのもいるらしい。
雄々しくズボンを押し上げ、親子共々涙を流しながらびくんびくんしている“倅”と“倅のせがれ”を死んだ目で眺めつつ、八誌緒は、手を振って次の“木偶”を持ってこさせる。
『今度はどうしたの?あ~、ハラワタボンバーしちゃったのねぇ』
もう、半分死体に変わってる“倅”の腹からはピンクグレイの太い紐が、でろでろりん☆と、こんにちはしていた。
『モツ(ぐちゅっ)モツ(ぐちょ)ポン(むりゅっ)ポン(みりゅっりゅ!) ぷわぷわぷ~♪』
『おごわぁ!ぎ、げぇ!』
一応、土とか汚れがついていない事を確認してから、適当に押し込む
紅い“野菜ゼロ生活”をペットボトルからちみっと注ぎながら傷口を押さえると、逆再生じみた勢いで腹の傷が塞がってゆく。
『はらへったー!』
『治ったら出てけ!』
血塗れの腹を拭った指をべろべろしている“倅”を蹴り出すと、すぐにおかわりが運び込まれてくる。
『あ゛~、もう!ここは野戦病院か何か?』
幾ら何でもけが人多過ぎだろう。
『ていうか、なんでここに持ってくる!』
『いや、おまえ治せるから』
何故か子供をあやしながら居座っている“娘”が肩を竦める。
『ああ、もう、助けるんじゃなかった!』
嘆きながら、追加で新鮮な“トマトジュース”を用意する。
湯水の様に使っても無くならないし、すぐに治るからいいのかと言えば、そんな事はない。
考えてもみて欲しい、指がモゲても見てる間に、にょきにょきにょ~と生えてくるのだ。
ちょっと刃物でかっさばいた位の怪我じゃ、“トマトジュース”なんてほんのちょっぴりしか採れない。
腕を貫通する位の“深手”を自傷してようやく、少しは採れるといった所だ。
ついでに言えば、ふつうに、痛い。
そう、普通に痛いのだ!
君は指先を間違えてホチキス止めした事があるだろうか。
或いは、包丁で指先を落としたとかでもいい。
日常で受ける負傷など、転んで捻挫したり、擦り傷を作る程度のものだが、かすり傷だって、痛いもんは痛い。
アドレナリンやエンドルフィン、ドーパミンどばどばの戦闘中なら兎も角、平時にそれだけ自傷し続けるのは非常にストレスフル。
ていうか、それは“凌遅刑”というやつではないのか……ヤヴァい。
胃に穴が開いて、即治癒しつづける胃潰瘍スパイラルである。
結局、妥協として、注射でちまちま血を集めるという作業をしているのだった。
ちゃんとした採血用の針とチューブホルダー付のセットがあれば簡単に分量を採取できるが、残念ながらそんな便利なものはない。
『いやいや、でも、怪我人多過ぎでしょ、野盗活動はお休み中じゃなかったっけ?』
“雑談”情報で、チック・ピー一家が“流され者”拉致その他の悪行が祟って、官憲に目をつけられて、そのほとぼりを冷ますために潜伏モードになっている事は聞いている。
“お仕事”での負傷では無い筈だ。
『なんか、もりにケモノいっぱいふえた、エモノたくさんはいい、でもオオカミとかあぶないケモノもいっぱいでる、ふだんこんなにいない、もっともりのおくにいる……たぶん、いっぱいふえたか、くまかなにかにおわれてでてきる』
『ふーん……』
(急に増えた、森の奥……いや、いや、まさか……)
曖昧な相づちを打ちながら、八誌緒は内心ちょっと冷や汗をかいていた。
(ここに来たとき、移動しながら、何回森で“お花摘み”したっけ?……いやいや、私は今までに食べたご飯の粒数なんて忘れる派なんで……)
“黄金PET”、“黄金.zip”を創り出される前時代、大地に垂れ流された豊穣なる恩寵は時を経て森の生態系にどの様な影響を与えたのか。
想像したくないが、その結果は今、チック・ピー一家で発生している“ベビーラッシュ”が強く示唆している。
(もしかして、異世界モノで使い古され過ぎてゲロがでそうな、“すたんぴーど”とかいう腐敗臭たっぷりのイベント作っちゃったりしてない?)
『あ、でる』
“ぷっしゃあぁぁぁぁ~”とでも擬音が付きそうな勢いで、赤ん坊をあやしている“娘”とは別の“娘”の股間から羊水が吹き出し、床に流れをつくる。
『出る、じゃなくて!なんで、みんな“ここ”でしちゃう訳ぇ!』
ちょっとぼーっとしていた八誌緒は、足下に流れてきたそれから飛び退き、絶叫する。
すると、すぐに部屋のドア……なんか、最近は施錠すらまともにされてない、が、開いて“倅”が顔を出し、うんうんと頷くとすぐに足音が遠ざかってゆく。
当然、“お産”の準備である。
『産婦人科っていうか、救急外来の人って……すごいな』
八誌緒はため息をついて、即席の“産屋”へ産気づいた妊婦を放り込む。
『あ゛~、疲れないけど、づかれるぅ~』
~ ミスティウッズ・八誌緒失踪現場付近 偵察兵 アイラ&ジョン ~
増援が来る迄の間、“ゲンバヒャッペン”の法則に従い、見落としがないか再確認に派遣された偵察兵のアイラとジョンは、もうすっかり綺麗な雑木林に還りつつある事件現場から、森の中へ回収し忘れた遺留品や、見逃した痕跡がないか確認しつつ、森の中へ進んでゆく。
非常に危険な行為だが、互いにカバーしながら、“足跡”を辿る。
分解が普通より早いのか、もう大した痕跡は残っていない。
「しかし、これは凄いな……事件現場からここまで、まるで線を引いたみたいに植物の“壁”ができている」
「成長促進の術式かしら」
「いや、“そういうの”なら、下の土がこんなにしっとりとした、いい土じゃない筈だ……ここまでやるなら、周囲の土が全部砂みたいになって、草も木もからっからの立ち枯れになってるんじゃないかな」
ジョン自身は“精気術”の術者では無いが、多少の身体強化系の“まじない”の心得はある。
どの“術”であれ、何かのエネルギーは消費するのは変わらない。
それは“育むもの”か“近しいもの”から移すのが一番早い。
草木を生やすなら、育む土から、或いは、周りの同類からエネルギーを注ぎ込む感じだろう。
「じゃあ、何か別の所から“持ってきた”のね」
「ああ、“流され人”の力は、普通の“術”の法則じゃはかり知れんからな」
“流され人”が発揮する異能は、彼らが、“トーカコウカン”とか、“エネルギーホゾンノゲンソク”等と呼ぶ、エネルギー収支の理論を頭から無視した過大な出力を発揮する。
大抵の場合、その結果は費やされるエネルギーに比して、余りにも強大に感じられるのだが、異能を濫用する様な者は言い伝えでも大抵何か大事なものを無くしたり、厄介ごとに常に巻き込まれている為、その辺で収支が合わせられているのかも知れないが。
「しかし、獲物が多いな……ここに来るまで、ウサギを10羽近く見た、鹿は4頭、鳥の羽ばたきもあちこちで聞こえる、リスなんかそこらじゅう走り回ってやがる……その気になりゃ持ち帰れねぇ位穫れるだろうな」
この世界にも当然ながら狩猟のルールはある。
領地にある“資源”は領主のものだし、現地を縄張りにしている猟師以外が勝手に狩猟すれば、密猟でお縄になったりもするのだ。
「これも術の影響で湧いたのかしら?」
「多分な……まぁ、ある程度は別のとこから沢山の餌につられてきたんだろうが」
「むっ……」
「何か見つけた?」
不意に足を止めたジョンの足下を見て、アイラは顔をしかめる。
そこにあったのは、太さ四、五センチはありそうな、でこぼこが隆々とした極太うんち。
それも三本位はある特盛りだ。
「うげ!」
うんこの前にしゃがみ込んだ同僚が拾った二本の棒でまるで上品なディナーを嗜む様な繊細な手つきで丹念にうんちを解体し始めるのを見て、アイラは思わず二歩下がる。
(むにゅっ)
「ぎゃあ!ああ、もうっ!」
どうやら足にウンが付いた様子の相棒を意に介さず、ジョンは、ほう、とか、成る程、等とぶつぶつ呟きながら三本の“メインディッシュ”を切り分け、突き刺し、圧し潰し、塗り広げ、細かく切り開いて内容物を確認してゆく。
「こいつは極太サイズだ……外はぱりっとして程良い硬さ、この手応え……中はねっとりして濃厚、まったりとしたこの粘り、かなり新鮮なブツだな……だが、ひねりたてって訳じゃねぇ、そしてこの色合い、ぐっ……そしてこの鼻奥にガツンと響く強烈な香り……たっぷり肉を喰ってるが細かい骨は混じってない、そして突き刺さる様に混じったこの毛、イノシシか……」
アイラとしても、一応、この元猟師の相棒がたまに始める“糞遊び”を見るのは初めてでは無いが、見る度にどん引きしてしまう。
何の糞が見分け方を教えてやる、とか、知ってると結構便利だぞ、とか言われるのだが、流石に一応、まだ、うら若き乙女である事を捨てきっても居なければ、そういう趣味もないアイラには、“糞遊び”の弟子入りはキツい。
ちなみに、アイラ以外の兵からも、あいつの“糞遊び”につき合うと、なんか飯が不味くなる、或いは、上品な食事会で思い出し笑いしそうになってヤバいと非常に不評である。
とは言え、周囲警戒をして目を逸らしつつも、詳細なウンチくに傾聴しているのは、無駄な知識はないと叩き込まれた職業意識のたまものであろう。
「森林狼だな、雄の大人で大型の獣……多分イノシシの肉をたっぷり喰ってる、出したてじゃないが、まだ新しい、はぐれだったら良かったんだが……」
周囲に新鮮な臭気を充満させた所で、“糞遊び”に満足したジョンは、ブーツをがしがし擦り付けている相棒に鑑定結果を開陳しながら顔をしかめる。
「まぁ、二匹以上は居るな……こんな時に厄介な……とりあえず引き上げよう、群に出くわしたら危険だ、いや、もう遅いか」
森の奥から遠吠えが響いた。
「“狩り出す叫び”だ、見つかっているぞ」
アイラの顔にさっ、と緊張が走る。
弓に手を伸ばそうとした相棒を制し、ジョンは軽く間接を回す。
「まだ、距離はある、“鼻潰し”を撒いてずらかろう……徒競走の時間だぞ」
「せわしないわねぇ」
ぼやく相棒の背中をどやし、ジョンはにかりと笑う。
「本部になった別館には風呂があったぜ、帰ったら使っていいって、隊長のお許しも貰ってる」
「へぇ、それいいわね」
叩かれた背中を微妙な顔をしながら払おうとしていたアイラが笑い返す。
風呂上がりの一杯とはいけないだろうが、一仕事の後の暖かい風呂は贅沢だ。
二人の偵察兵は気合いを入れて走り始めた。
To Be Countinued...
今回はガチもんのうんちでしたね……くさそう、いや、ホントに。
次回はもうちょっと綺麗だと思います、たぶん。