いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~ 作:八切武士
メスブタ、狼、鉄鹿が大暴れする中、一時でも籠城できるポイントを目指すのであった。
主にスマホのコンシェルジュ頼りで。
※今回、ド直球で、大変にくっそ汚い描写が存在します!
お食事の前後に読まれるのは、推奨致しません。
~ミスティ・フォレスト どっか 酒倉八誌緒~
鬱蒼と茂った下草に、樹木に絡みつく蔦類。
おそらく何かの漿果というか、ベリー類と思われる実をぶら下げている灌木。
朽ちた樹木を苗床に膨れ上がるキノコに、地面をカーペットの様に覆い尽くす苔類。
乱雑な自然をかき分け、踏みにじる様にハチキュウちゃんを抱えて走る、走る、跳ぶ、くぐる、滑り込む。
「50メートル直進後、右折です」
そこら中から聞こえる気がする遠吠えといななきの中、意味を成しているのは腰から聞こえるコンシェルジュのナビ音声だけだ。
藪こぎから獣道へ飛び出した八誌緒を出迎えたのはメスブタの突撃。
ぎりぎり右太股の外側を掠めただけなのに、質量の違いのせいで、体がよろめく。
そして、体勢が整わない内に、メスブタを追って現れた狼と目が合う。
「こんにちは!ちね!」
ハチキュウの銃剣で突き殺すつもりで突き出しながら連続で単射する。
首元に銃剣が刺さった状態で三発ぶち込まれた狼がどたり、と倒れ、銃剣がずるっと抜けた。
マガジンの残弾はそろそろ半分を切っている。
そろそろリロードも考えるべきだが、悠長に下乳リロードをやってる余裕が中々ない。
ついでに、どれ位目的地に近づいたか分からないが、チェストリグに挿しておいた予備マガジンももう三本目、折り返し地点である。
この調子でぶっぱなし続けていたら、遠からず尽きるだろう。
そして、もう一つ割と切実に迫り来る危機。
(おなか、いだい……)
今朝は一家の狩りに付き合う事になった為、最近の少々怠惰な生活リズムが崩れてしまい、毎朝行っている“調味料精製の儀”を出発前に行えなかったのだ。
そして、久々に狩りについて歩いて体が暖まり、更には、このいきなり全力稼働である。
“適度な運動”に刺激された下腹部の“貯蔵施設”は今が“出荷時”だと認識したらしく、大腸という“搬出路”にブツを過剰積載したトラックをゴロゴロ言わせながら肛門という“出国ゲート”へひた走らせている。
ついでに言うと、湧き出し続ける“聖なる温水”を貯蔵する“聖水袋”も満水率八割越えを記録しており、普段なら“Holy Fountain”な所が、内圧が高まりすぎて“Holy Geyser”へと進化しそうだ。
いや、それ所か“Holy water jet”と化すかも知れない。
「へい、コンシェルジュ!目的地変更、手近の籠城できる木のウロ、洞窟、高台とか」
「目的地を変更……十時方向320m、指定条件合致の樹木があります」
「よっし!」
足に力を込めてダッシュ。
ちと内股気味になってしまうが、命と、乙女の尊厳がかかっている。
負ける訳にはいかぬ戦いがここにあった。
目標方向の灌木に剥き出しの顔をガードして突撃し、バキバキと枝をへし折り、熟したブラックベリーの汁まみれになりながらその向こうへ踊り込む。
灌木を越えても、今度はススキの化け物みたいなふわふわの穂をつけた植物が生えた草むらになっている。
見上げる程のでかさは、3m近い高さがあり、長い葉っぱにはギザギザで鋭利な“刃”がついていた。
「こことおんのかぁ……つう!」
運悪く接触して引っ張ってしまって皮膚が浅く切り裂かれてちくちくとした感触を伝え、ちょっともれ……すぐ消える。
後ろからがさがさと何か、大きなものが動く気配が近い。
追いつかれるとマズそうな気配を感じて、八誌緒は覚悟を決めて葉っぱの海へ飛び込み、皮膚を切り裂かれながら突き進む。
顔もちくちくするが、剥き出しの足、太股からは何か暖かいものが垂れる感触までしていた。
失禁ではない……まだ、一応、大量の浅手から流れた血液でである。
すぐ治る傷から垂れるのを感じる程出血するとか、まるでカッターかカミソリの刃が付いてるんじゃないかってとこだ。
柔な防御力の服を着て突入したら出血死もありうるんじゃなかろうか。
「ン、イェーッ、ン、イェーッ!」
余計な事を考えていると、背後でがさがさしていた気配の主がでかい声でいななき始めた。
そう言えば、なんか、すごくいい匂いがしている。
(あー、そっか、血の匂いの方で興奮してるのかヤバ!)
兎に角、全力で草をかき分け、前方へ身を投げ捨てる様な勢いで前へ、前へ進む。
肌が露出してるとこが、めっちゃ痛い、というか痒い。
カミソリ草の群生地から転がり出ると、今度は倒木に苔と茸の群生地だ。
濃い緑と、毒々しい赤や橙、そして白。
何とも言えない色の取り合わせを気にする暇もなく、ふかふかした天然のカーペットと口に入れるのははばかられる色合いの菌類を蹴立て、倒木を飛び越え走る。
「ン、イェーッ、ン、イェーッ、エーッ!」
「あおぉぉぉぉ、あおおーっ!!」
「イヤッ!イヤッ!イヤーッ!!」
周り中で追っかけてきてる何かと狼(?)とメスブタ(?)の叫び声が渦巻く地獄絵図に、正直気配を探るどころではない。
と思ったら、脇から狼がひょっこり飛び出てきたので、こっちを見た瞬間に弾を五発ばかりくれてやる。
眉間に一発とは行かなかったが、どっか良いとこに入ったのが合ったらしく、ひっくり返って、ひんひん泣き出すのを放置して走り抜け、目的地を目指す。
「目標、14時方向、230mです」
「誤差、誤差!」
こんな深い森をまっすぐ走るなんて無茶も良いとこなので、九十度までのズレなら誤差だと思う。
まぁ、命かかってるけど。
行き先を何となくで修正しながらひた走る。
開けた場所で速度が出るかと思ったら、横合いからパニックになったメスブタがすっ飛び出てくるし、それを追いかける狼もまろび出ちゃこちらへ牙を剥く。
弾がもったいないので、銃剣で思いっきり顔面を突いてやると、鼻面で滑った切っ先が丁度よく片目を切り裂いてくれたので、狂乱している内に走り抜け、ピンを抜いた手榴弾を一つ置きみやげにしてやった。
爆音と一緒にとんできた欠片が又、太股をざっくりやったけど、どうせ治るのでむしろ更に力を込めて地面を蹴る。
ちょろっ、ちょろっ、とくるのは無視……無視。
キノコ天国の先は、下生えが少ない太い樹木が並ぶエリアとなっていた。
ここも樹木の感覚が広くて走りやすい、かと思ったら、太い幹に見合うデカさの根っこが地を這っており、うっかりしていると足を取られる。
ついでに邪魔な草むらがなくなった為、周りをうろついている奴らの視線まで通るようになってしまった。
「おまえかー!」
草むらからふごふごと、血塗れになった鼻をやかましく鳴らしながら現れたのは、先頃、同類の目ん玉を吹っ飛ばしてやった、鉄鹿だった。
(アイアンディアーって英語化したら、変形して巨大ロボになる地上戦艦っぽい名前になるなぁ……)
もう、角の先を含めれば3m位ありそうな巨体に現実逃避していると、後足が軽く引かれるのが見える。
「あ、やば!」
全力で横っ飛びすると、さっきまで上半身のあった場所を、槍衾みたいな角が風切り音を立てて通過した。
転がった体勢から、一瞬ハチキュウを構えようとして、すぐにまた転がる。
今度は頭のあった辺りに、小さめのホールケーキサイズな蹄がずどんと落ちた。
誇張抜きに地面がずん、と沈んでいる。
あんなもん、工場のプレス機とと一緒だ、一発貰ったら、ターミ○ーター2でサラ・○ナーに圧縮プレスされたT-800みたいになってしまう。
「イヤッ!イヤッ!」
「おごッ!」
そんなアホな事を考えていたら、横合いから飛び出したメスブタからわき腹にいいのを貰ってしまった。
「ろ、ろっこつがおれた……」
(じ、人体には215の骨が……数えれば勇気をくれ……そ、素数?)
何かが砕けて派手に潰れた感触と、猛烈な吐き気を感じながら、吐瀉物をまき散らしてゴロリと転がり、更に蹄をかわす。
内臓系の何とも痛気持ち悪い感覚。
勝手に腹筋が収縮する。
なんか口からやたらいい匂いがしてくるし、股が生暖かい。
いっぱい赤いのを出してしまった。
ついでに、じょろろっ、て出ちゃったよこれ。
(ああ、ちくしょー、パンツ消えろ!)
衣装チェンジの能力でパンツを消去する。
おしっこパンツ穿いてるよりマシだ。
どうせ“穿いてない”のを喜ぶような奴は見てない。
とりあえず、メスブタが足下を走り回るのが邪魔くさかったのか、鉄鹿が今度はメスブタを狙って蹄を振り下ろす。
ツイてる。
吐き気と激痛を堪えながら何度か転がってる内に、すうっと痛みと気持ち悪さが消えてゆく。
その間にメスブタはよくわからん肉塊になってたけど。
今度はその肉塊に群がる狼にちょっかいを出されて大立ち回りを始めた。
実に好機……と思ったら、さっき吐き散らかした“赤いもんじゃ焼きの素”をべろべろ舐めてた狼と目があった。
「おうシット!」
跳ね起きて、また走り出す。
「目標15時方向、225mです」
じょろっ、ちょろろっ、と漏らしながら走る。
ぷ、ぷぽっ、ぷふぃ……とか、もっとヤバいのもキてる気がするが考えない様にする、多分、ここでアイデアロールに成功したら、残り少ない“人間の尊厳値”が1D4/1D8位減少しそうだ。
(HUD“Human Dignity”チェックだよ!)
「目標12時方向、170mです」
「とおい~、“締めて(閉めて?)”行かないとなぁ」
どことは言わないが。
あと一発でも、“漏らせ!”とボディブローを一発貰えば、旧支配者顕現クラスの尊厳破壊待った無しである。
これだけの状況でも命を失う危機感は正直湧いてこないのだが、別の何かを失う焦燥感だけは強くなる一方だ。
(ギリギリまで がんばって!ギリギリまで ふんばっ……たら、でちゃうっ、れちゃうよぉおお゙って!う○ちのうん○の連続って、そんな時に欲しいのはウ○トラマンじゃなくて、ベ○キマンだよ!カムヒア、ダーティヒーロー・ベン○マン!)
多分、人にはお見せできないヤバい顔になってるとは思う。
こんな時に、仰向けでウェルカム!状態のベ○キマンが、あのニヒルな笑顔で“私の体にひり出すのだ”なんて言ってきたら、思わず股を開いてしまうかも知れぬ。
排泄的な意味で。
片手で腹を抑え、バイオ○ザードのDanger状態みたいになりつつも、出来る限りの早さで走る。
背後から狼の漏らす荒い息がぴったりとつかず離れず付いてくるが、決して追いつく事はない。
いたぶっているのか、歩けなくなるまで追い続けるつもりなのかは分からないが、どこかで何とかしないとならないだろう。
「目標11時方向、30mです」
もう内股で小走りしていると、漸く目標っぽいものが目視できた。
菌類ゾーンを抜けた先、軽く見上げる程度の多分、なんかの広葉樹っぽい木が生えているゾーンの中、そこにやたらと太い幹をした主張が強い木が一本見える。
(あそこかぁ……う~~トイレトイレ、じゃなくて、体勢を立て直さないと)
もう、意味不明な台詞を吐いて暴走する思考に朦朧としながら、背後をちら見すると、“何故か”地面をべろべろなめ回しながら狼達がとてとてと追跡してきている。
(なに、このきたねぇヘンゼルとグレーテルは!)
走ってきてたらとっくに捕まってた訳だが、股間から漏れた汁についてきてるんじゃ、いつまでたっても振り切れない。
ハーメルンの汁漏らし少女と化した八誌緒が狼をトレインしたまま、小さな広場になった場所に(小走りで)駆け込むと、根本の方が不自然にカマクラっぽく膨らんだ木が生えていた。
変な蒸留釜みたいだが、丁度人が這い込めそうな感じのウロが開いているのが見える。
足を止めないように、ハチキュウちゃんのスリングをたすき掛けから、首がけにして胸前に垂らし、担いでいた鞄を下ろして片手持ちに変える。
最後の十数メートルを駆け込み、ウロの中へ鞄を思いっきり投げ込む。
特に何か重いものに当たった音も死なけれア、がおー、とかいう咆哮も聞こえないのを感じながら、ハチキュウちゃんのレシーバーを鷲掴みに四つん這いになって中へ這い込む。
薄暗くて何もない二畳位の空間、土間のように硬い土の感触と直立できない高さの天井がもたらす閉塞感も、今は安心感になる。
と、一瞬安堵したのが悪かったのか、右足首に激痛が走った。
「いでぇ!」
花の女子高生(?)が発してはいけない汚い悲鳴を発しつつ、後ろを見ると、入り口から頭を突っ込んだ狼が右足首に咬みついている。
頑丈そうなジャングルブーツを易々と牙が貫通し、骨の砕ける鈍い音が連続する度に意識に白とびが走った。
「い、ぎっ、ぎいっ!」
這い込んだままの姿勢で激しく後ろに引かれ、膝のプロテクターが擦れて滑る。
咄嗟に持ち上げたハチキュウちゃんが横向きに壁に引っかかり、突っ張り棒の様になった所に両手でしがみつくと、伸ばした両手、突いた左膝、ぴーんと引っ張られた右足首で体が支えられ、激痛が脳を灼く。
唸りを上げながらがむしゃらに引っ張り続けられるのに逆らい、スカートの前に斜め差しにしていたベレッタを右手で引き抜いてセーフティを解除、おおよその目算でめ○ら撃ちしまくった。
「ぎゃいん!」
「あ゛あ゛!い、ひギギギぃっ!」
何発かは当たったけど、二発位、足首だか、足の甲をぶち抜いた感触がする。
激痛と腹痛に悶えながら、いつの間にか自由になった足を引っ込めて体が丸まってしまう。
無意識だ。
おしっこと、ガスの漏れる音にちょっと泣きそうになりながら体を無理矢理起こす。
外からは、狼の情けない悲鳴と狂乱した鳴き声がめちゃくちゃ響いている。
結構な数がいるのだけは確かだ。
奥の壁に背を押しつける様にして座ると、鞄が背もたれ代わりに潰れるのが分かる。
早く前に回さないとマズいが、少し頭がちかちかして、見当識がちょっと怪しい、何をしようとしているのか考えるのが難しい。
(ショック状態?体は治ってる筈)
スリングに引かれて体の前に落ちてきたハチキュウちゃんを持ち上げると、銃剣というか、それを接続している基部がひん曲がっていた。
銃身までは曲がってない感じだが、微細なゆがみまでは分からない。
ウロの入り口に頭を突っ込んできた狼にぶっ放す。
ダン、ダン、ぎゃいん!ガチ!
狼の耳に一発、命中弾をくれた所でハチキュウが異音を立てた。
排莢口が薬莢の頭と穴を挟み込む様にしてジャムっている。
装填した小銃を鉄棒代わりにしたのはマズかった、いや、ホントにマジでヤバい事になってきた。
実にまずい、横を噛んで止まるのと違って、縦に挟まるジャムは始末に負えないのだ。
八誌緒は槓桿(こうかん)……コッキングハンドルを軽くガチャガチャやってみたが、動く余裕が殆どない為、挟まった薬莢はピクリとも動かない状態だ。
戦闘中の復旧は無理だと割り切り、後ろの鞄へ手をのばした時、まだ耳の無事な狼がウロの中へ首を突っ込んできた。
咄嗟に体の横に落としていたベレッタを掴むと、今度は左足首を咬まれて思いっきり引っ張られる。
あ、と思う暇もなく、ウロの外へ引きずり出される下半身、そして、ウロの中へ取り残される上半身。
そして、首の側面をいい感じに圧迫しながら食い込むライフルのスリング。
真横に引っ張られる“首吊り”に傾げた頸椎が内部の血管を圧迫し、一瞬にして気が遠くなる。
股間から何かが盛大に漏れる、しょろしょろしょろろろ~、という暖かい感覚をBGMに遠い日のぬくもりの中で好き放題漏らしていたオムツァー時代の安らぎへと意識を誘ってゆく。
が、剥き出しの股間をべろりと舐められる、気色の悪い感覚に、ぞぞぞっ、と現実へ引き戻される。
バ○ー犬ならぬ、黄金水犬の頭がある辺りにベレッタを向け、残弾をぶっ放すと、生暖かい感覚が飛び跳ねる様に離れた。
(ああ、もう、πs'とウロ穴でし、“下”が何にもみえねぇ!)
まだ回復してない左足首を庇いながらうつ伏せになり、首からハチキュウちゃんのスリングを外すと、今度は又、両足首に激痛が走り、地面が滑る。
(ぎゃーっ!ひ、人の足首を手羽先みたいに!あ、やばばっ!)
地面にとっかかりが無いせいで、流石に二頭がかかりとなると普通に引き出されてしまった。
「いだぁ!」
思いっきり右ふくらはぎの辺りを咬みつかれた、その次は左股の外側。
流石に、最初の一声以外は声も出ない激痛だ。
牙が皮膚をあっさり食い破り、強烈な咬合力に屈した肉と腱が、狼が全身で引く度に骨から引き剥がされ、千切れた血管から鼓動に合わせて血がどぷり、どぷりとあふれ出る。
肉の千切れる感触によく気絶しなかったものだた意識の端で思うが、次に尻に走った激痛でまた、一気に意識が覚醒する。
ふくらはぎの喪失感ともうどこから来てるか分からない激痛に持って行かれそうな意識を抑えつけ、右手にしっかり握っていたベレッタを殴りつける様に尻肉に牙を埋めている狼へ押しつける。
タン!
一声吠えた銃は、スライドをオープンさせたまま停止。
弾切れだ。
だが、狼は零距離で喰らった9x19mm弾に側頭部を砕かれ、ビクンビクンと痙攣している。
ケツに噛みついたままで。
(ああ!いでぇ、はなれろぉ!)
うつ伏せのままの体を揺すっても、上下の牙ががっちりぶっささった狼が外れ無い。
兎に角、武器が無い。
ハチキュウは壊れ、ベレッタはホールドオープン、ナイフもハチキュウちゃんとご一緒だ、腰の後ろのエンピは畳んだまま。
手榴弾は一個だけあるが、自爆する位しか使えない……しかも多分死ねない。
狼の死体をケツにぶら下げたまま、八誌緒は必死にウロの方へ這い進む。
これ程必死に、上半身の力だけで匍匐前進した事はないが、その進みは亀どころか、ナメクジ並の速度に過ぎなかった。
「あ゛ッー!」
既に狼をぶら下げたのと逆のケツに激痛が走った。
ふくらはぎの肉を食い終わったヤツが“おかわり”を貰いに来たのだ。
丁度腰をちょっと持ち上げた体勢になってたとこのせいか、腰骨に牙が引っかかったせいか、うつぶせのまま八誌緒の尻が持ち上げられ、体勢がへの字になる。
幾らかの肉と皮を道連れに左ケツからくたばった狼が取れたが、肉を食いちぎろうと首を振りまくる狼のせいで、絶え間ない激痛が八誌緒を襲う。
短時間に損傷と回復の信号を絶え間なく流され続け、尻肉と腰骨だけで浮かされ、ぐらぐら、ぐりぐりと頭を地面に転がされた八誌緒の頭は最早朦朧としていた。
(あ、かばん……おなか、いかなきゃ、きもちわる……おなか)
解決しなくちゃいけないことが多すぎて、意識が千々に乱れる。
解決しなくちゃいけないのに、何からやらないといけないのか。
考えようとするたびに、尻の痛みと、圧迫された腹の痛みに意識が乱れる。
(あ、あ……もう、いいや)
次の瞬間、八誌緒の右ケツに食らい付いていた狼の左顔面に、調子近距離から生暖かい散弾が直撃した。
『ボッ!ボボッ!ボボボッ!ポ!ボ、ヴュ!ビジュジュジュッ!ヴジュビュビュッ!』
『ジャ、ジュッ、シャッ、シャ、シャシャーッ!ジャーッ!』
同時に噴き出た、“Holy water jet”が狼の胸毛に突き刺さり、びっしゃびしゃに濡らして行く。
『ギャインッ!アヒンィ!ヒィッヒイッ!』
八誌緒の最後に残されたラストワード、“*Excremental fall out*”により左目を潰された狼が、必死に水に濡れた犬みたいに頭と体をぶるんぶるんと回転させて茶色い刺激物を払いのけようと泣き叫びながら、搾りたて味噌と聖水一番搾りをそこいら中にまき散らす。
八誌緒は散々我慢していたものを全て開放した虚脱感に包まれながら立ち上がり、復旧したばかりで今一力の入らない脚を励まし、ウロへよろよろと走る。
もう、正真正銘一発たりとも“残弾”がない。
じれったい動きで走りながら、同時にベルトにつけたケースからエンピを引っ張りだし、三つ折りになっているのを広げる。
木の幹に体をぶつける様によりかかって振り返ると、ジャンプする狼が視界いっぱいまで迫っていた。
「げぐぇ!」
ほぼ無意識の動きでエンピを槍の様に構え、数十キロの突撃を受け止めた瞬間、巨体の狼と木の幹に挟まれ、肺から呼気が全て押し出される。
「さい、あく……ああ、もう」
エンピから手を離すと、のし掛かっていた狼の体がどさりと落ちた。
エンピのシャベル部分が丸々、胸に突き刺さっている。
「流石、自衛隊の備品、頑丈だぁ……」
あの突撃を手持ちで受けきるのは無理だったが、エンピと木の幹が代わりに全部受けきってくれた様だ。
「あ~、生きのこったぁ……尊厳は失ったけど」
ドーム状の幹にもたれかかったまま、息をつく。
馬鹿みたいな回復力の体はもう完全に回復しているが、精神的には流石にちょっと一息つきたい。
とは言え、取りあえず鞄から新しく武器を取り出す必要がある。
寄りかかっていた体を返して、幹に手を付き、ウロの方へ屈もうとした時、不意に視界が跳ね上がった。
樹上から覗く、切り取られた空。
とても青い空。
そこへ赤い欠片がアクセント。
肺から押し出された呼気が霧吹きみたいに血を撒いている。
胸から、剣山みたいに穂先が一杯生えている。
まるでジェットコースターの様に風景が飛び、ずるり、刺さったものが乱暴に引き抜かれ、体が跳ぶ。
「んべっ!」
顔面から地面に落ちてゴロゴロと転がる。
ビスケットの空気穴みたいにぶち抜かれた穴達から景気よく血液が拭きだして地面を染める。
(あーあ、もう、ここもぼーぼーになるなぁ)
ぼんやり考えると、下腹部で衝撃が爆発した。
これまでに経験した痛みとは桁が違う激痛に、一気に意識が回復する。
「ぎぃっ!」
下腹部へめり込んだ巨大な蹄、そしてその上から睥睨する血走った目に、血だらけの剣山みたいな角。
さっき会った鉄鹿だ。
ずいっ、と突き出された頭で、唇が裏返り、ぎらぎらと光る金属製の歯がむき出しになる。
かぱぁと開いた口から、酷く鉄臭い臭いがした。
ずるんと、口から伸びた舌が、シャツに染みこんだ血をべろりと舐め上げ、次の瞬間、がぶり、と腹肉に食らい付く。
(マジか!肉食!?)
強靱な顎の咬合力と鋼鉄の歯はあっさりと布地ごと皮膚を食い破り、腹筋を食いちぎった。
粉砕された骨盤は、蹄で圧し潰されたままで再生できず、身動きすることすらできない。
(あ……これ、腹一杯になるまで喰われるやつ)
武器は、手榴弾が一つ。
ピンを抜いて、拳毎喰わせてやるか。
それでも、鉄製の骨でできたこのバケモノを殺れるのか?
八誌緒の精神を、久方ぶりに感じる焦燥感が、まるで水時計の様にじわり、じわりと満たし、それは、破られた腹膜に鼻面をつっこまれる怖気を奮う感覚と、そこからずるり、と引きずり出された腸管が見えた所で頂点に達した。
あらん限りの力で上半身を起こし、鉄鹿の角を左手で握りしめ、ピンを抜いた手榴弾を眉間に押しつける。
「くたばれ、この鹿畜生!」
絞り出す様に呟くと同時に、全てが弾け飛んだ。
To Be Countinued...
いや、本当に申し訳ない。
えーと、読者様、人ごとのように聞こえるかもしれませんが、このノリに早く慣れれば慣れるほど、あなたは楽になれるのデス。
冗談はさておき、八誌緒さんのお話しについては、これが今年最後の投稿となります。
いや、マジか……まさか、こんな事になろうとは。
まぁ、まだまだ終わらんので、来年も八誌緒さんの事を宜しくお願い致します。
皆様、良いお年を!
※ちなみに、くっそ汚いラストワードを披露していた八誌緒さんですが、一応、ノーマルスペカも二種類あります。(Lostwardレギュ……深刻な風評被害)
・Urine jet splash(通常スペカ・ビーム)
⇒全体攻撃(日、木、水属性)
・Excremental eruption(通常スペカ・個体弾)
⇒単体攻撃(日、木、土属性)
・Excremental fall out(ラストワード・ビーム、個体弾)
⇒全体攻撃(日、木、水、土属性)