いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~   作:八切武士

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 二ヶ月ぶりに失礼します。

※前回
 八誌緒さん一回休みから回復。
  ⇒秘められた力が明らかに……(試してなかっただけ)
   ⇒八誌緒さん、もう一回休み!

 またも熊畜生に敗北してしまった八誌緒。
 主人公不在(相変わらず)でも、周囲の状況は勝手に動いているものでして……

 チック・ピー一家、熊谷少年のPT、ライアン卿と愉快な仲間達の近況報告回になります。

※取りあえず、次の話までは連投です。


【第1部 第25流 ~ “私”が居なくても世界は回る ~】

 

 

~ミスティ・フォレスト 三角岩・合流ポイント チック・ピー一家~

 

 

 二人の“倅”達が睨みつける先で、大熊が八誌緒の胸肉を食いちぎり、はふ、はふと美味そうに咀嚼し、呑み込んでいく。

 

「くまやろう!ぶっころしてやる!」

「ばか!じゅーどみたいにやられちまうぞ!」

 

 手斧を引き抜いて、八誌緒を前足で押さえたまま貪り喰い続ける大熊に突撃しようとした相棒を“倅”は羽交い締めにする。

 

「やしおはおれたちのにく!……じゃなくて、かぞくだ、あのやろうぶちころす!」

「しってらぁ!でもかてねぇだろが!いっぱつびちっとかまして、かっさらうんだよ!いつもみてぇにな」

 

 鼻先に一発ぶちかましてやると、相棒の目がいつも通り据わり、大きく頷いた。

 そう、チック・ピー一家は野盗、盗賊なのだ。

 正面から戦って奪うのが能ではない。

 

「おれが、やしおだけつちのしたにおとしてすぐうめる、おめえは、おちてきたやしおをよこあなにひっぱりこんでとんずらこけ」

「おう!」

 

 相棒が頭から地面に飛び込み、モグラさながらに土中へ消える。

 

「んん?」

 

 八誌緒の胸から顔を引き抜いた大熊の口になにか、きらきらと光り輝くものが咥えられていた。

 握り拳程の大きさのそれからは“虹色”とするにはあまりにも多彩な、形容しがたい多色の輝きが発され、遠目であるにも関わらず、数限りない面を持つ異形の多面体である事が見て取れる。

 まるで、この世そのものから“浮いて見える”様に、結晶質のそれは蠢いていた。

 

「きらきら……?」

 

 宝石であれば普通は吐き出しそうなものだが、“味”でもあるのか、大熊はそれを苦心しながら、ごりごりと呑み込もうとしていた。

 不意に、大きな爆発が起こり、大熊の体が傾ぎ、八誌緒の体が数十センチ程ずれる。

 

「GU、GRURURRRRRU!」

「いまだ!」

 

 今の爆発で“きらきら”を喉に詰めてしまったらしい大熊がじたばた暴れるのを見て、“倅”は叫び、両手で思いっきり土を掘る仕草を始める。

 すると、すごい勢いで陥没した地面が八誌緒を吸い込み、ぼこり、と先行した相棒が掘った横穴に繋がった。

 即座に横穴から飛び出した相棒が八誌緒の体を引きずり込んでずらかる。

 全力で逃げながら穴を潰していくのはもう何十回ともなく繰り返したいつもの手口だ。

 

「やったぜ!」

 

 握った拳をぐいっと上下させ、にやりと笑った“倅”は、歯を剥き出して、唸りもせずにじっと此方を睨みつける大熊と目を合わせて、口をあんぐりと開ける。

 

「や、やべぇ!」

 

 流石に腰を抜かした“倅”はコマ落としのアニメみたいな速度で大アップになってくる大熊の顔を前に、じょろろろろろ~と、しめやかに失禁。

 腰を抜かした尻は、地面ではなく、斜めに掘りあげられた落とし穴に落ち、ごろじょろごろじょろじょろっと穴を転がり落ちてゆく。

 

 ずどぉぉぉぉぉん!

 

 とんでもない衝突音と軽い地震みたいな衝撃が上の方から聞こえた。

 

「ぐぇ!」

 

 しょんべんまみれになりながら地下空洞へ落ちてきた“倅”を放置して、相棒は開けた穴へ何かを詰め込む様な仕草をして、足下の土を充填してゆく。

 上から鈍い衝撃音と振動がまだ伝わってきているが、地下へ逃げ込めばこっちのものである。

 地中でチック・ピー一家を捕まえた奴は居ないのだ。

 

「へへへっ……やった!やってやったぜ!へへ、やしお!おれーは、がんめんおうまさんごっこでいいぜ……んん?」

 

 腰をぬかしたまま手足を滅茶苦茶に振り回していた“倅”はやけに静かな事に気がつき、首を巡らすと、帽子をくしゃくしゃに握りつぶした相棒がもっとくしゃくしゃにした顔で啜り泣いているのに気がついた。

 

「おまえびびりすぎ~、おれはしょんべんもらしただけですんだぜぇ」

 

 早くパンツを代えないとなぁと思いながら立った“倅”は相棒の視線を辿り、ぶったおれたままの八誌緒を見た。

 

 まだ血色が完全に落ちていないが普段より随分と“白く”なってるな、とそう思う。

 

 目は見開かれ、口は半開きのままで、トレードマークの眼鏡は片方耳から外れ、斜めに顔を横切っていた。

 いつも洗い立てみたいに綺麗だった服は土まみれで、ずたずたに引き裂かれた胸元からは、一つだけになった乳房がどぷぷんっと零れ落ちている。

 

「……おい?」

「やしお、しんだ……しんだよぉ……」

 

 “倅”は両手で巨大な肉塊をわっしわっしと揉む、揉みしだく。

 もちもちとしながら、こりこり何か筋があるようでいて、掴み所のないふわふわ感。

 そして、まだ仄かに温もりがある。

 

「ちくしょう……だいじょうぶだって、まだあったけぇよ!」

 

 “前”の時は治ったのに、“今回”は何で治らないのか。

 

 “倅”は考える。

 自分の頭よりでかい肉塊を両手でもみもみしながら。

 

「あいつ、“きらきら”ぬすんだ……きっとそのせい!」

「おれもやる……“きらきら”ってなんだ?」

 

 まだ鼻をすすりながら、相棒も肉塊の余っている所をもみもみし始める。

 

「“そこ”んとこ喰った時、くまのくちでっかくてすっごい“きらきら”くわえてた、やしおのなかにあったんだ、“きらきら”!」

 

 八誌緒の胸に開いた大穴を指さして力説する“倅”の言葉に、もみもみを止めずに首を捻る相棒。

 

「あの“きらきら”がなかにあったから、やしお、からだなおった、きっと、もどしたら、なおる!」

 

 戻した手で、もちもちした肉餅を力強くもっもちする“倅”の言葉を聞き、相棒ももちもちくりくりこりこりする手だけは止めずに真剣な顔で考え込む。

 

「そうかもしんね……あいつぶっころしてとりかえすか?」

 

 “倅”達の頭上でひときわ大きな、ずどーん、とも、ずずーんともつかない衝撃が走り、地下道の天井からぱらぱらと土の欠片が落ちてくる。

 

「あー、おれたちだけじゃむりだ、おやじとかーちゃんにたのもう」

「ほかのせがれと、むすめもだ!」

 

 頷き合った二人の“倅”は八誌緒を仰向けにしたまま、足の間に入って両膝辺りを抱え込む係と、背後から抱きつく様に腋の下から腕を回す係りに分かれ、えっほえっほとアジトへ撤退を始めた。

 

「あ~、いいにおいする」

 

 後ろから抱きついた“倅”は、つやつやの髪から漂う芳香を吸い込み、死にたてとは言え、欠片も生臭さを感じない体臭を堪能する。

 

「あのやろう、ぜったいにぶっころしてやっからな!」

 

 

~ミスティ・フォレスト 三角岩・合流ポイント あ、くまのちから~

 

 

 それは怒り狂っていた。

 

 追って、追って、追いつめた獲物は美味かった。

 崖の上で追いつめたのに、崖の下へ“逃げた”獲物から得たのは、爪に引っかかった少量の肉の欠片と血だけ。

 一口どころか、一舐めにも足りないそれは、鼻腔を、舌を、喉を、胃を、肺腑を、そして腸の隅々までを暴力的な滋味で灼きつくし、取り返しのつかぬ飢餓感をそれに植え付けた。

 消えない飢餓感に追い立てられる様に、それは縄張りを棄て、ひたすらに気が狂いそうな程うまそうな匂いを追ってきた。

 途中で殴り殺した狼を喰らい、メスブタ(豚の品種名)を喰らい、堅い殻にほっくりとした実をたっぷりと抱えた種々様々な堅果類をばりばりと齧っても、魂にまで刻まれた様な飢餓感は満たされる事は無かった。

 だからこそ、やっとみつけた“肉”を口一杯に頬張った時の歓喜と充足感は凄まじく、全てを腹におさめるべく、弱い抵抗を押さえつけ“いちばんうまそうな匂いがする”場所へ食らいつく。

 あまりにも硬く、あまりにもうますぎるそれをしゃぶりながら、呑み込もうとしていた足下で激しい爆発が起こった。

 鋭く硬い何かが体中を切り裂き、その内の一つが目玉に突き刺さる。

 聴覚と視界を奪われ、絶叫するそれの喉奥へ、するり、と極彩色の結晶が転がり落ち、ごくり、と喉がなった。

 

 ひとしきり叫び終わった大熊は、ちょこんと座った体勢で、ふと、もう自分の目が見えていてどこも痛くない事に気がつき、きょとん、と周囲を見回す。

 そして、まだ食べかけだった自分の“肉”がなくなっている事に気がつき、大岩の所でぼけっと、見ている小さな生き物に気がついた。

 そして、そいつこそが“肉”を盗んだ張本人だと、直感する。

 殴ろうとしたが、そいつはすぐに地面に潜って消えてしまった。

 追おうとしたが、穴が見つからない。

 

 激しくぶつけた頭が痛い。

 

 狂乱し、硬い岩を殴りつける。

 大熊の体躯の二倍以上ありそうな巨岩が震え、弾けた欠片は散弾じみて飛散し、砕けた前足はまるで刷毛の様に岩の表面を鮮血で彩った。

 殴り続けて、ぐらぐらと揺れた大岩がとうとう地響きを立てて横倒しになった所で、腹の底から吠える。

 遠吠えは怒号となって、地を揺らし、葉を散らし、森の精気に轟きわたり、短い静寂を作り出す。

 

 そう、静寂は短かった。

 

 

~ミスティ・フォレスト 道を外れた場所 熊谷少年ご一行~

 

 

『Are you OK?』

『なんとか……』

 

 膝をついて上から見下ろすF.A.に、熊谷少年は首を振りつつ応える。

 森の奥から走った異様な衝撃は咄嗟にしゃがみ込んで二人を庇った鋼鉄の背中に阻まれた様だが、その余波だけでもそれなりの衝撃を彼の心身に与えていた。

 臨戦態勢で練り続けていた″気”を張りつめるのが遅れていたら、最悪昏倒していたかも知れない。

 

『そっちは間抜け面でnap timeか?』

 

 軽口を叩くF.A.のヘッドライトを押し退け、熊谷少年は左腕で抱き抱えたサーシャに目をやった。

 片腕にすっぽり収まった彼女の頭は後ろにかっくん、と仰け反ってしまい、白くて柔らかそうな喉と鎖骨辺りまでがむき出しになってしまっている。

 

 完璧に意識不明であった。

 

『……まずいね』

『やべぇな』

 

 森の奥から急速な勢いで近づいてくる地響きを、耳ではなく、振動で感じる。

 数え切れない狂乱の気配。

 

 暴走する群。

 

 熊谷少年は物入れから、簡素な二等辺三角形をした土ブロックを取り出し、地面に叩きつける。

 すると、ブロックが激しく膨張し、叩きつけた場所を頂点とした、への字型の左右幅2メートル、高さ80センチ程の土塁が形成される。

 深く屈めば全身を隠し、膝立ちすれば銃撃可能な即席陣地。

 土の精気術で造り出された小道具だが、おおよそ、ガチガチに組み上げられた土嚢程度には防御力がある。

 一時的に背中を預けるには十分だ。

 熊谷少年はサーシャを壁の中央にもたれさせると、左右で手分けして森の奥から溢れ出る獣の濁流を迎え撃つ。

 濁流が小さな陣地にぶち当たり、二つに裂ける。

 一当てした後、流れに乗れなかったメスブタが後続と壁に摺り潰されながら圧死していくうめき、陣地を飛び越して去る鹿の鳴き声、陣地の背後に生じた小さな安全地帯に潜り込もうとする狼の唸り。

 後から後から湧いて出る狼、メスブタ、鹿、その他小動物を、正面衝突だけは避けながら、小さな陣地に構ってくる個体だけを打ち、蹴り、追い払う。

 

『くそ!F.A.信号弾だ!』

『Year!』

 

 熊谷少年は、一瞬だけ生じた髪の毛一筋の凪の瞬間、素早く指示をとばす。

 次の瞬間、F.A.のバックパックから断続的に、しゅぽっ、しゅぽっ、しゅぽぽぽっと信号弾が空に打ちあがってゆく。

 

 

~ミスティ・ウッズ付近 街道 ライアン卿と愉快な仲間たち~

 

 

「なんだ……さっきのは?」

 

 一瞬、くらりときた意識を頭をふって取り戻し、ライアン卿は額を押さえる。

 隊の何人かその手の力に“敏感”な連中も何人か足をふらつかせたり、頭を押さえたりしている様だ。

 

「とんでもない、まるで爆発みたいな波動だったな」

 

 しかし、いつもの様に腕を組み、片手で顎を撫でているトーマスは少々眉根を寄せている程度で、うまく影響をやりすごしたらしい。

 

「隊長、信号弾です!……敵!大量!大量!安全をはかれ!」

 

 まるでウルト○サインの様に空にくっきりと打ちあがった大きなサインを弓兵の一人……ラント青年が読み上げる。

 

「クマガイ殿か!トーマス、ギルステイン村の代官殿へ初報を!」

 

 指示を飛ばしていると、森の方から悪魔にでも追われているような勢いで斥候のジョン&アイラが駆け戻ってくるのが見えた。

 

「ほ、ほう、こく!……狼です、す、すごいかず、の狼が、あふれて、き、きまっす……!」

「もう、すぐ……そこまできてまっ!」

 

 どれだけ全力疾走してきたのか、二人とも上体を折って、膝に手を付きながら、切れ切れに声を張り上げる。

 

「むぅ!時がないか、トーマス!」

「おう!狼の群だな!」

 

 トーマスは、手の中にそっと納めていた小鳥に、伝言を優しく囁く。

 

『疾く行け、捉えよ!矢の如く……ヨイチ!』

 

 アンダースローで放った先から、弾丸の様に加速した鳥が空へ舞い上がってゆく。

 

(これで、確実に伝言は代官のアルストラン騎士爵へ疾風よりも速く飛び、正確に“着弾”する筈だ……少々痛いかも知れないが、今は速さが命だ、仕方ないね)

 

「すぐ近くに“避難小屋”がある、そこへ橋頭堡を築くぞ!駆け足!」

 

 “避難小屋”は街道沿いの格別自然環境の厳しい場所、危険な場所、一日で次の宿場町にたどり着くのが困難な区間等に設けられた小屋だ。

 大抵は簡素な豆腐建築で、中は小さな水場とトイレ、あとは寝棚があるかないか程度で、快適ではないが、最低限の生活環境が整えられており非常に堅牢だ。

 普段は旅人が野営に使う事が許されている他、ライアン卿達の様な主要街道取締方も投宿に利用しており、有事の際は仮設の“前線基地”として活用される。

 もう耳に聞き取れる様になってきた獣達の喧噪に追われる様に避難所に駆け込んだライアン卿達は、直ちに陣地構築に取りかかった。

 隊員達が手分けして熊谷少年が使用した土ブロックを膨張させ、避難所の入り口側を覆う様にへの字を組み合わせた防壁で“陣地”を組む。

 腰から少し上位まである高さの防壁の上に盾を据え、隙間から槍衾を形成する。

 避難所の屋根には弓兵と斥候を配置。

 そして、幸いな事に手をつけられていなかった薪を持ち出した篝火台の上で盛大に燃やし、ちょっと飲用できるか怪しい水が入った水瓶も外に出しておく。

 

「炎と水が両方そなわり、俺が最強じみてるじゃあないかぁ」

「そりゃ良かったな……準備はいいか!」

 

 妙な台詞を呟きながらうんうん頷いているトーマスにちょっと呆れた様な目線を向けつつ、ライアン卿が声を上げると、各所から小気味いい返答が上がる。

 

「堪え忍べ、当たってくる奴らは討ち取れ、少しでも数を減らし、侵攻を遅らせる……来たか」

 

 ライアン卿が見据える先で、森から溢れる群が見えた。

 

「職務の時間だ、街道を守るぞ!」

 

To Be Countinued...




 書きたい話はあっても指が動かない病(不治の病)
 書き始めが難しい。

 今の話終わらせて、八誌緒さん次行かせてあげたい……
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