いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~   作:八切武士

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※前回
 周囲で何が起こってるか、現状報告回。

迫る熊谷組(Not土建)、八誌緒さんと違ってまともな方のなろう枠転生者の意地を見せるか?
チック・ピー一家は単なるお笑い集団ではないぞの巻。(ばっちいのは変わらんけど)



【第1部 第26流 ~ テンドンな上に出落ちってどういう事だよ! ~】

 

 

~ミスティ・フォレスト 深部 熊谷少年ご一行~

 

 

『……凌ぎきった?』

『多分な』

 

 膝に両手をついて喘いでいた熊谷少年は、周囲を見回していたF.A.の回答を聞いて、額の汗を拭いすてた。

 

『サーシャ、サーシャ、もう大丈夫だ、目を醒まして』

『あの騒ぎでおねんねかよ、相変わらずずぶてぇスケだぜ』

 

 マチェットを腰の鞘に戻して頬へ手を当てると、サーシャは完璧に白目を剥いて……それ所か鼻血がつう、と垂れてくる。

 

『……お、おい……大丈夫か?』

『頭は打ってないと思う、サーシャ、サーシャ、大丈夫?』

 

 ちょっと退き気味になったF.A.に生返事しつつ、熊谷少年は腕の中の少女の頸に手を当てる。

 少々早いが脈はしっかりしていた。

 神性と通じて奇跡の異能を使う彼女は、“膚で感じる”タイプの熊谷少年よりも、より深い部分で不可視のエネルギーを感じている。

 しかも、感知系の術を使って“聞き耳”を立てていたのだ。

 物によっては精神を灼かれてもおかしくない。

 もう少し具体的に例で述べれば……壁の向こうの小声を聞き取ろうと耳を当てていたら、突然、壁の向こうで爆轟が発生した様なものだろうか。

 

 サーシャが抱え込んでいるペットボトルにささったままのラッパ水仙は爆散した様に花の部分を失っていた。

 

 幸いな事に、正規に教えられている初級の探知術は基本、ヤバい時には触媒が吹き飛んで身代わりになる様な法式が組み込まれている。

 何か物を通して術を発動させているのは、視覚的に分かり易くする意味もあるが、“安全装置”でもあるのだ。

 

『俺が担ぐか?』

『いや、サーシャじゃないと目標を探せないし』

『Oh……まだやらせんのかよ?これがJapanの“キチクカレシ”ってやつか、やべぇな』

 

 珍しく殊勝な事を言ったいたF.A.は真顔で言い放った熊谷少年にどん引きし、実際に一歩距離をとった。

 

『いやいや、鬼畜でも彼氏でもないだろ?……あんまり無理に起こす訳にもいかないけど、こんな風に気絶したままなのも、症状が怖いしね』

 

 熊谷少年は小物入れを探り、小さな瓶を取り出す。

 小さなコルクに噛みついて引き抜き、強烈な刺激に顔をしかめながら、サーシャの小さな鼻の下に近づけすぎない様にしながら、瓶を振る。

 

『っん、ぐ、ふぅ、おげっ……』

 

 鼻を突き刺す強烈な痛みに、途端に乙女が出しちゃいけない音を出しながら苦しみ悶えるサーシャ。

 それを見ながら、コルクを元に戻す熊谷少年も一緒になって顔を歪める。

 

『うへ』

 

 実に、アンモニアは強烈だ。

 ちょっと鼻先を近づけただけでも、嗅覚というより痛覚に訴えてくる。

 

『サーシャ大丈夫?』

 

 瓶を戻して、ハンカチ代わりのぼろ布で涙と鼻血をぬぐってやった。

 

『だ、大丈夫……たぶん』

 

 咳込みが収まるのを待ってから、サーシャに水を飲ませてやる。

 

『何かが凄く“怒ってた”……“餓え”と“執着”、純粋な……あれは“人間”みたいな“濁り”がない……』

 

 目の焦点を遠くにとばしたままの彼女の言葉を二人は黙って聞く。

 半ばトランス状態になった神職の漏らす言葉には、行動の指針になる情報が混じっている可能性が割とあるからだ。

 

『“理をはずれた贄を喰らいし獣、そは既に獣にあらず、挑むならば心せよ”』

 

 ぼうっとした表情でぽつりぽつりと言葉を紡いでいたサーシャが不意に真顔になり、はっきりとした言葉を発する。

 

『“神託”?』

 

 神職であるサーシャには、偶に予期しないタイミングで“神託”が下る事がある。

 “~せよ”とか“~すべからず”だの、端的だが以外と具体的な指示だか、アドバイスだか分からん閃き。

 

『あ……うん、たぶんそうだと思う』

 

 すぐに、元通り顔が緩んだサーシャの額にかかる髪を、熊谷少年は優しく払う。

 

『なんかよく分からんがヤバそうだという事は分かったな』

『“神託”は、普通“指針”程度だから……』

『“理を外れた”か……確か流され人を指す時には“外なる理”だった気がするけど

 

 頸を捻る熊谷少年の肩にF.A.は金属製の掌を置き、肩を竦める。

 

『似た様なもんだろ、しかし、贄って事は喰われちまったか?』

『……あ~、うん、ま、出たとこ勝負か……行ってみないと始まらないか』

 

 熊谷少年は抱き抱えたままサーシャを立たせてやると、ぼろ布をベルトの汚れ物用ポーチに押し込む。

 血と鼻水と涙で大変な事になっているが、綺麗に洗って消毒して使い回せば問題ない。

 ローランド公国では“流され者”の影響で、上流階級向けの高級高価なハードカバー本の他、中流階級以下にもペーパーバックや文庫本がそれなりに普及する程、紙の流通はある。

 ただ、流石にティッシュペーパーにする程使えるのは上級貴族以上だ。

 ただ、トイレットペーパーだけは何故か庶民に手が届く価格帯のものが市場に流通しており、その辺に生えてる葉っぱで尻を拭くのは、地方村落の住民や、野外活動者位だったりする。

 ちなみに庶民向けのものはザラザラゴワゴワしているので、がっしがっしやると簡単に切れ痔になる。

 鼻をかむのもお勧めできない硬さだったりするが、水で簡単に解けるのは一緒なので単純に使いにくい。

 体の敏感な部分をやさしく拭いたいなら、手に入る限りのハギレをとっておいて、ハンカチにするのが手っ取り早いのだ。

 まぁ、ハギレもそこまで安くはないのだが。

 

『そうよね、私達、その為に来たんだから』

 

 “流され人”の存在を確認する。

 生死も含めて。

 

『いける?』

 

 囁かれた少女は、深くうなづき、森の奥を指し示す。

 

『あっちよ、もう、祈念なんかしなくても分かる……背筋が一番ぞくぞくする方に行けばいいんだから』

『よし、急ごう』

『Shit!排気管の辺りがむずむずしやがるぜ……』

 

 熊谷少年たちは急ぎ足で奥を目指す。

 すっかりジャングルと化した森にはもう、彼らを阻むものは無かった。

 

 

~ミスティ・フォレスト 地下アジト・集会場 チック・ピー一家~

 

 

「……死んでるな」

「完璧に死んでるね」

「だから、しんでるけど、しんでねぇんだよ!」

 

 食卓の上に載せられた死体を見聞していたマイクとニンは異口同音に、端的な評価を下した。

 

「うう……ひでぇよ」

「もう、つめてぇよ」

「でも、やわらけぇよ」

「いいにおい」

「うまそう」

「うめぇよぉ……いでぇ!」

 

 テーブルを囲んで、冷たく変わり果てた八誌緒の遺体をべろべろとしゃぶりたおしていた倅の後頭部を、娘の一人がすりこぎで殴り飛ばす。

 

「つまみぐいするな」

「しかし、体ん中からそんなデカい宝石が出てくるとか、“流され者”はやっぱりイカれてるぜ」

 

 えっほえっほと死体を運んできた倅達がまくし立てた話を思い起こし、マイクはつるつるの頭を撫でる。

 

「でも、一度くたばっちまってから、“ぴかぴか”?……を戻した所で本当に生き返るのかねぇ、で、アンタどうすんだい、殺んのかい?」

 

 少々懐疑的なニンの言葉を聞きながら、マイクは澄まし顔で、ごしごしとハンマーを布で磨き、最後にふぅ、と埃を吹き飛ばす。

 

「やるやらねぇって言えば、殺るしかねぇなぁ~、熊公はてめぇの“肉”だと思ったもんに俺らよりいじきたねぇ、どこまでも追っかけて来やがるし、しまいにゃ、穴掘ってでも取り返しにくるのは間違いねぇ……知ってんだろ?」

 

 チック・ピー一家と、ミスティフォレストに巣くう霧熊は、互いに頂点捕食者であり、競合者である。

 その暗闘の歴史は今に始まった話ではない。

 殺し、殺され、喰い、喰われ。

 馴染みの仇敵ですらある。

 

「そうかい、そうかい……じゃあ、殺るしかないねぇ、おまえ達!」

 

 どこか神妙な顔で頷いていたニンが突然張り上げた声に、“倅”と“娘”達が直立不動する。

 

「もぐりの熊畜生にチック・ピー一家のヤバさを思い知らせるよ!」

 

 家族の歓声を聞きながら、マイクは独り、背筋をちくちくと刺す様な焦燥を感じていた。

 その感覚を感じた時、マイクはいつだって両手でひっつかめる荷物だけ持ち、即座にねぐらを棄て生き延びてきた。

 逃げた後の事は知らないが、そのままのんびりしていたら確実に死んでいたという事だけは断言できる。

 たぶん、今回も今すぐ同じ様にすれば生き残れるだろう。

 

 だが、彼は多くを持ちすぎ、多くに飽いていた。

 

 大体、この後、ただただ逃げ、生き延びたとして、今程、おもしろおかしい事等あるというのか。

 それを思うと、逃げる気も失せてしまうのだ。

 馬鹿な話だが、そもそも、好きな事だけして生きようなんていうのが結構頭の悪い発想だろう。

 同じ馬鹿なら、あそばにゃ損だ。

 

(へっ、まだ“死ぬまで”は遊べるぜ……)

 

 

~ミスティ・フォレスト 地下・支道 あ・クマ~

 

 

 風を、地面をふんふんと嗅ぎ、“それ”を探す。

 

 酷く空腹だ。

 

 ようやく食べ始めた所だったのに、取り上げるなんて酷い。

 

 ようやく見つけた“肉”。

 

 全部、全部喰わなくては収まらない。

 

(アレハ、オレノダ……ニク、ゼンブクウ)

 

 突き動かされるままに探し続けていたそれは、ふいに、空気に混じる匂いを嗅いだ。

 間違いない、肉の匂い。

 他とはまるっきり違う、うまい肉。

 

 匂いの元へ向かい、全力で走り出す。

 四本の手足で力一杯地面を蹴立て、木を薙ぎ倒し、岩を吹き飛ばし、森を爆走する。

 その脳裏には、ただただ、肉に牙を埋め、はらわたを貪り、血を啜って餓えを満たす事しか残っていなかった。

 

 匂いは小さな穴蔵から立ち上っている。

 

 人が屈んで入れる位の、狭い穴蔵。

 穴蔵を隠す様に生えている下草が周囲と比べて少し密度が高く、青々としている事。

 内部の土壁が妙につるっとしている様子。

 

 “彼”が餓えに眼が霞んでいなければ気づいたかも知れない違和感。

 不意に、じゃばばばと、水がかかった。

 くさい。

 

「おらぁ!くらえ!あじわいやがれ!ありがてぇ聖水をよぉ!」

「でる!でる!いくらでも!でるぜぇ~!」

「ん゛!ん゛ん゛ん゛っ!いっぱいでたぞ!もっとでるっ!……でる、う゛っ!」

 

 通路の先に、ズボンを下げ、ち○ぽを丸出しにした“倅”達が立っていた。

 

 彼らは“放尿”していた……なんか一部違うのも混じってるが。

 

 彼らのナニから勢いよく排出された尿は一滴たりとも床を濡らす事なく、三条の流れがトルネードの様に渦を巻きながら収束し、黄色と白ストライプのビームとなって熊の顔面に噴射されていた。

 

 出会い頭にとんでもない目潰しを喰らってもがき苦しむ熊を前に、三本目の足を丸出しぶらぶらさせながら、ぴょんぴょん跳んで挑発する“倅”共。

 

「ざまぁかんかん!(ぷぅ)」

「俺のケツを舐めろ!(ぶぶぅ~う♪)」

「ついでにコイツもくらっとけ!う、んん、う゛っ!(ぶ、ぶ、ぶぶっ、ぶ、ブヴュッヴュブジュッ!)」

 

 ケツをふりふりして、ぺたぺた叩いて更に挑発、ついでに屁をこいて挑発する。

 

「ばっぢい……」

 

 “倅”達から一歩離れた距離で鼻を摘まんでいた“娘”が、心底嫌そうな顔で、しっしっ、と手を振る毎に、微風が一部ガス以外の実体弾混じりの暴力的なフローラルを追いやり、なま暖かさを纏ったソレは熊を包み込んでゆく。

 ご存じアンモニア、魚市場ばりのアミン、お馴染みのインドールにスカトール、ゲロが出そうなゲップの硫化水素、鼻を突き刺すアセトアルデヒド。

 空気に乗った超臭兵団オールスターが立体機動をもって熊に襲いかかり、鼻孔から嗅覚細胞を切り裂き、脳の嗅覚野を蹂躙。

 海馬へ生涯忘れられぬ傷痕を植え付けてゆく。

 

『GRRVEVOGOBOVORORORORORO!』

 

 咆哮と吐瀉物をまき散らしながら驀進(ばくしん)した巨体が地響きを立てる。

 筋骨が岩を打つ、重く湿った音。

 洞窟自体を震わせる重撃は、獲物を捕らえる事はなかった。

 

 その代わりに襲ったのは、臭気。

 

 鼻所か、脳を突き刺す様な毒が、一時的に光を失い、敏感になった鼻孔を再び蹂躙する。

 

「ばーか、ばーかこっちだぜ!」

「いっぱいでた」

「ばや゛ぐズボンがえ゛ろ゛」

 

 視覚と嗅覚を汚穢に侵された熊は、激怒と空腹に意識を灼かれた意識で唯一まともに機能している聴覚に従い、更に激しく突撃。

 真っ正面から“壁”にぶち当たり、咆哮を上げる。

 

「あ、またでた(びっ、びじゅっ)」

「きたねぇ!」

「ガバアナ!」

 

 即座に跳ね起き、音源に突撃する反応は先程より迅速で、早く、だが、音源を捕らえる事は無かった。

 幾度も繰り返される突撃が意識を灼く炎を更に煽り、反応を極限まで研ぎ澄まし、判断力を奪う。

 

 不快の元を殺す!

 

『GRRRRRRRROGOBOVORORORORORO!』

「おれ達のタケノコをくらえ!」

 

 純粋な殺意に支配された巨獣が最高の速度を出した瞬間、全身を貫く衝撃が彼を急停止させた。

 胸と腹を貫き、繋がれた胸腔と腹腔を満たしてゆくそれが、“痛み”だと漸く気がついた時、巨獣の口から、水っぽい吐息が漏れ、頭が落ちる。

 

 巨獣は死ぬ。

 

 巨獣は……

 

 

~ミスティ・フォレスト 地下・支道 チック・ピー一家~

 

 

「やったか……?」

「ばか!えんぎわるい」

「ばかなちくしょう、じゅんびがじゅうぶんなら、チック・ピー、まけるわけない」

 

 それぞれに好き勝手な事を言う“倅”二人と、“娘”一人。

 その目前では四足歩行状態のまま、首の下や、胸板を鋭い土槍に貫かれ、血泡を噴いた巨熊が痙攣している。

 

 チック・ピー一家がとった戦術はシンプルだが、準備は割と大がかりだった。

 アジトとは繋がっていない、誘い込み専用の罠だらけの地下道を堀り、入り口から短い直線と横道で繋がった九十九折り(つづらおり)としていたのだ。

 挑発と同時に視覚(とついでに嗅覚も)奪い、誘導と空振りを繰り返させ、激高を煽る。

 

 最後に一撃。

 

 致命的なダメージを与え、止めを刺す。

 幾十、百数十の獲物を狩り続けてきたチック・ピー一家の狩りにおける、セオリー通りの動き。

 獣のテリトリーで、不意討ちを受けた時とは真逆の状況、チック・ピー一家の穴蔵、それも、周到に準備を整えたキルゾーンでの待ち伏せとなれば、妥当な結果だったと言える。

 

「なんだぁ、来る前に終わってるじゃねぇか?」

「拍子抜けだねぇ」

 

 洞窟の奥からのっそりと姿を現したのは、愛用のブッチャーハンマーを担いだマイクとニン夫婦。

 押っ取り刀で、刀の代わりにハンマーを掴んでやって来た様だ。

 

「まぁ、ほっとしたねぇ、アンタが大げさに言うからびびっちまったよ」

「やったった!」

「いや、まだくたばってねぇのかよ……」

 

 少しホッとした顔のニンの周りで跳ねる“倅”達に目をやりつつ、マイクはモズの早贄(はやにえ)状態で息も絶え絶えに舌をだらりと出して喘いでいる熊に向け、おもむろにハンマーを振りかぶる。

 美しく弧を描いたハンマーは吸い込まれる様に熊の頭頂部を捕らえ、突起がめり込む勢いそのままに頭蓋骨を粉砕した。

 涎と鼻水、血液と脳漿が飛散し、眼窩からは目玉が飛び出した惨状は、これ以上無い完璧なトドメだ。

 

「おやじぃ!」

「やったぜ!」

「うぇぇ……」

 

 今一釈然としない顔でハンマーを床についているマイクの横から、ニンが自分のハンマーを伸ばして、熊をつんつんするが、当然、ぴくりとも動かない。

 

「死んだな……」

「死んでるねぇ……バラすかい?」

「……だな」

「ひゃっほー!」

「みんなよんでくるぜ!」

 

 釈然としないまま頷くマイクをよそに、“倅”達が駆けだしてゆく。

 

(……まだ、ちりちりしてんだよなぁ)

 

 マイクは落ち着かな気にハンマーを撫で回しながら独りごちるのであった。

 

To Be Countinued...




 という訳で、八誌緒さんを幾度となく苦しめた、パイオツ熊さん退場……?

 つかぬ事を伺いますが、みなさん、ケモ娘とかお好きです?
 特に他意はないんですけどね、他意は……
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