いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~   作:八切武士

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 ヒゲのおまわりさん、困ってしまって……

 『なんてこった!』

 優しくて真面目なお巡りさん、貧乏くじ(“流され人”案件)を引き当ててるの巻



【第1部 第6流 ~ 少女はなにをやらかしたのか ~】

 

「そこの“ドーソジン”の先、もう少し行けば、ヤシオが、“流され人”の子が戦った場所につきます」

 

 ライアン卿は、道ばたに安置された小さな岩へ目をやった。

 かつて道を敷いた“渡り人”が一定距離毎に配置していったという、道を守る守り神だ。

 大体、適当な大きさの岩に、男女が仲睦まじく寄り添っている様子が彫りつけられている。

 “渡り人”は“イチリヅカ”や“マイルストーン”とも呼んでいたらしいが、道を辿って来訪する“悪いモノ”を遮り、道を守る神を奉る意味合いがあると彼が伝えた為か、地域によっては獣除けや、魔物除けの付与が施されてたりする。

 ひたすら街道を巡邏している時間が多い職務上、嫌という程目にするものだが、着せてる衣装が祭りの晴れ着だったり、結婚衣装だったり、棒人間だったり、色つきだったり、顔も濃かったり薄かったりと、結構な地域差があってちょっと面白い。

 

「む、なんだあれは?」

「道が……」

 

 “ドーソジン”を通り過ぎて暫く進むと、視界のど真ん中に何かわさわさしたものが一行の前に立ちはだかっている。

 ある程度曲がってはいても、ひたすら平らな道が続いている筈の街道に林が生えていたのだ。

 それはもう、わさわさと。

 

「まだ若木ですがやたら葉っぱが青々としてます、それに、獣共の死体が……すげぇ虫だ、うじゃうじゃいます、妙だな、死体にゃ虫がたかってない」

 

 足を止めた一行の前で、道の先に目を凝らしたニールが口頭で状況を報告してゆく。

 確かに言われてみれば、ある程度は死体にたかっていそうなハエでさえも死体にたからず、地面の濃い“染み”に群がっている。

 

「狼と、鹿と猪……人間の頭とか、手と足が、ざっと、四、五人分てとこですか」

 

 遠目にもその現場は凄惨な状況だった。

 幾つもの動物の死体が転がり、道はぶちまけられた液体……恐らくは血液で広い範囲がドス黒く染まっている。

 更に、血液の染みには大量の種々さまざまな昆虫が蠢き、特定の恐怖症もちの人間にとっては正気度を失いかねない光景を生みだしていた。

 

「総員、警戒せよ」

 

 ミルドレッドとカイルの遺体を載せた愛馬の手綱を取っていたライアン卿が指示を飛ばす。

 全員が武器を準備した状態で現場へ近づいてゆく。

 

 近づけば、見れば見るほど異様な現場だった。

 “森林鮫”すら破壊できない筈の主要幹線の舗装を割り裂いて花が咲き、貫いた木が青々とした若芽を萌えさせている。

 そして、その周りにはお互いを喰らい合った獣達が息絶え、ミルドレッドの証言にあった野盗の痕跡はズタズタになった衣服らしき布切れや武器、そして僅かに食い残された頭部や手足の先だけが残されていた。

 そして、更に異様なのは、生えた草目、血液の染みで蠢く虫達だ。

 ウジ虫や各種芋虫、ミミズまでが元気に這い回り、甲虫が染みを舐め、羽虫が宙を飛び、それらを捕食する鳥類や小動物がたかり、食物連鎖図じみた狂宴を繰り広げている。

 集合体恐怖症や、昆虫恐怖症にとっては悪夢としか言いようのない光景に、アイラはそれからそっと目を逸らして周囲を確認し始めた。

 ニールはしょうがねぇな、とでも言いたげに鼻を鳴らし、食い入る様に異常な場所を観察する。

 

「これは……そうだな、何とも、説得力のある風景だな」

 

 思わず呟かれたライアン卿の感想に、兵達は内心頷いていた。

 街道を警備するライアン卿達は、“渡り人”がもたらしたこの道がどれ程頑丈に舗装されているか知悉し、日々の警備行動でも自らや、捕縛対象の体を硬い路面へ打ち付け、武器をへし折り、術を炸裂させ、それでもさしたる傷を受けぬ堅牢さを日々実感している。

 

「それに、これだけの事があったのに、血生臭くありませんな……むしろ心地よく、落ち着く様な」

 

 明らかに大量の血が流れ、死体を片付けてすら居ないのに、ライアン卿達の鼻をくすぐるのは屍臭ではなく深山の清涼な風、香ばしい柑橘系を思わせる芳香。

 事件現場としては余りにも異様だった。

 

「……気の緩みは危険だが、お嬢さん、ここで何があったんだ?」

 

 肩を軽く小突くと、トムは、まるで仕事終わりにエールを一杯キメた様だった表情を引き締め、背を伸ばした。

 馬上で背筋を伸ばしたままじっと目の前の光景を見つめているミルドレッドを見上げ、ライアン卿が問う。

「最初、彼女と出会ったのは、ここから少し行った所にある河原でした、あんまり綺麗な格好のまま倒れてるものだから、妖精か何かが化かそうとしてるんじゃないかと思ったけど、彼女の服が、“流され人”さんの“学生”が着てる“ぶれざー”って服にそっくりだと気がついたんです……私、“流され人”さんのお話しが好きなんで」

「ああ、私も仕事上、“そう言った本”はそれなりに目を通してはいる、“せいらーふく”程ではないが、“ぶれざー”も、何と言うか、特徴があるな」

 

 実際一部、裕福な層が通う私塾や教育機関は“渡り人”の学生が纏っていた“せいらーふく”や“ぶれざー”を制服として採用していたりする。

 

「はい、凄く良い布地で染み一つ無い新品みたいっていうのもあったけど、もう、スカートが凄く短くて!カイルなんか、最初顔を真っ赤にして目を逸らしてましたよ」

 

 馬上でうつ伏せになっているカイルの背にのった手が布地を強く握りしめ、顔がくしゃりと歪む。

 “流され人”の学生が纏っている制服をアレンジした所で、流石にミニスカートはコピーしていない。

 普通はくるぶし、どんなに短くしてもふくらはぎ半ば程度まで。

 ちょっと段差があれば太股が丸見えになりそうな膝上丈等は、かなり品のない夜のお店まで行かないとそうそう見られるものではないのだ。

 

「そりゃあ、丸出しの太股なんていい若いもんには刺激が強すぎまさぁ、でしょ、ライアン卿」

「おい、トム、そこで私に振るな、まるで私が“流され者”に色目を使って成敗される色ボケ貴族になるだろう?」

 

 大げさに肩を竦めてみせると、ミルドレッドは僅かに口角を上げ、目元を拭った。

 

(気丈な娘だ)

 

「あはは、それにその子、“メガネ”もかけてて、髪の毛も真っ黒だったから、もう、“流され人”さんに間違い無いと思って、介抱したんです、そしたら目を醒まして……話を聞いたら、霧熊に襲われてコリブの滝から落ちてきたって、あそこ、高さが40ヤードはあるのに、まぁ、嘘言ってる様には見えなかったですけど、あの子も、殴られて何か高い所から落ちた、って訳が分からなかったみたいなので」

「成る程……普通は死ぬな」

「ぺちゃんこか、溺れ死にですな」

 

 ライアン卿の言葉にトムも深く頷く。

 だが“流され人”であれば何でもあり得る。

 本当に何でも。

 

「とは言え、“流され者”ですからねぇ、明らかに殺せる間合いで斬っても、“何故か”薄手を追わせる事しかできないとか、彼らは訳分かりませんから」

「何があっても不思議ではないな」

 

 暫く前に関わり合いを持った“流され人”も確かにそういう能力はあった。

 それでも、噂に聞く“流され人”達の能力としては割とささやかな方だ。

 

「それで取りあえずうちの村に来て貰おうと思って、この辺じゃ一番近かったし、で、あの子の持ってる不思議な鞄とか、食べ物とかの事をおしゃべりしながら歩いてたら、行商人の夫婦が通りかかったので軽く挨拶して、そうしたら10分もしない内に行商人の奥さんだけ馬で逃げてきて、落馬したんで助けようと思ったら、野盗が10人位追ってきてたから、三人で逃げ出したんです」

「成る程、最初は個人の行商人を襲っていた訳か……」

「三人を襲ったのは、あくまでも偶発的で、行き当たりばったりの行為だったと」

「些か慎重さに欠けるが、目撃者を残したくなかったという事か」

 

 確かに野盗にとっては失態だっただろうが、それでも、“流され人”という偶然要素がなければ、口封じ自体は成功していたに違いない。

 

(奴らにとっては不運、だが、我々にとっては奴らを狩る千載一遇の機会……街道を行く民の安堵の為、この機会失うわけには行かぬ)

 

「”不思議な鞄”、その他についても聴取は必要でしょうな……あくまでも慎重に、ですが、どうせ詳細は問われるでしょうし……ただ、まずは、肝心の”流され人”殿を見つける必要がありますが」

「そうだな」

 

 トムに言葉少なに頷き、ライアン卿は部下の方へ目をやった。

 

「報告!」

 

 話がとぎれるのを待っていたニールがすかさず声を上げる。

 空気を読むのも、優秀な偵察兵としての重要なスキルだ。

 

「よし、報告せよ」

「目の前の木と草ですが、もの事態はその辺にあるものと同じです、が、確かに“あの”舗装をうち割って根付いております、生存者はなし、身元確認が可能なめぼしい文書、印形、紋章などはありませんでしたっ!」

 長話をしている間に、ニールはあの虫まみれの場所をしっかり探索してくれたらしい、全く頼りになる古参兵である。

 

「よろしい、よくやった」

「報告します!」

 

 野外活動をそれなりにする職とはいえ、あの虫の大群は流石にキツい。

 人の嫌がる仕事を率先してやり遂げた部下をしっかりと労い、少し離れた所から走り戻ってくるアイラへ目を向ける。

 

「うむ、報告せよ」

「現場から、何かを引きずっていった跡があります、というか、その跡自体に木と草が生えてるんですが、森の奥へ続いてます」

 

 明らかに、その“引きずられたナニか”が現場をこんなにした原因だろう。

 アイラも嫌がっていた割には、しっかりと仕事をしてきた様だ。

 

「……話の腰を折ってすまんな、君達が盗賊から逃げ出してどうなったのかな?」

「あ、はい……息が止まるほど走る続けて、走れなくなったら、二人に引きずられる様に逃げて」

 

 ミルドレッドの表情が揺れた。

 

「無理はしなくていい、ゆ~っくり、ゆ~っくりでいい」

 

 催眠にかける様な間延びしたトムの声が響くと、彼女は大きく肩で息をした。

 

「はい、気がついたら、カイの胸から矢が、生えてて……頭が真っ白になって、もう、駄目だと思った」

 

 言葉を途切れさせた彼女を黙って見つめる。

 トムも黙って控える、無論他の者もだ。

 

「でも、気がついたら、彼女が目の前に立ってたんです、背中を向けて……“メイド服”でした、気がついたら変わってたの」

「“メイド服”ぅ?」

 

 思わず少し間抜けな声を出してしまい、ライアン卿は咳払いで誤魔化す。

 

「彼女、カイの鉈をとったらすごい勢いで走り出して、そしたら、足をすぱっと斬って、背中から刺されてるのに、さした相手の頭に鉈の半分がいつの間にかめり込んで……斬っても、刺されても、矢が刺さっても、斧が胸に刺さったのに、全然死なないの!」

 

 ミルドレッドの目が据わってきた。

 トムがライアン卿に目配せしてくるが、首をふり返す。

 

(もう限界だろう、そろそろ休ませた方が良い)

 

「でも、最後は新しく森から来た連中に網を投げられて引きずり倒されたら……あいつら、あの子を、あの子を……」

 

 不意にミルドレッドが馬上で嘔吐した。

 慌ててアイラが駆け寄り、ニールと協力して馬上から抱えおろす。

 

「あの子を食べてたのよ!斧で骨を叩き割って、剣で肉を斬りとって、お腹の中に頭をつっこんで」

 

 泣きながら嘔吐を繰り返すミルドレッドの背中をさするアイラの目が、少し滲んでいる。

 彼女もそこそこの場数は踏んでいるが、流石にこれはひどい。

 

「なんてこった」

 

 妙に平坦な言い方に眉を顰めながらトムへ目をやると。

 彼は肩を竦めて首を振った。

 

「そう言いたい気分だったんだろ?」

「ああ、そうだな……全くだ」

 

 付き合いの長い相棒は実に察しが良い、嫌なほどに。

 

 To Be Continued......





おし○ことか、う○ちが出てなくて本当に申し訳ない
タイトルに偽りありになってしまった

まぁ、八誌緒さんでてないからなぁ
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