いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~   作:八切武士

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 ヒーローは体に悪い
 多分精神的な健康も損ないます


【第1部 第7流 ~ 耐久ミッションは帰るまでがミッションです ~】

 

 おしゃれなドアを閉めようとして立ち竦む。

 

(あれ、私、何をしてたんだっけ?……うわ)

 

 外開きのドアの隙間から何かが雪崩れ込んでくる。

 ぼうっとしていたせいで、体勢を崩されてしまった。

 完全に押し倒される。

 

(そう、だ、ゾンビ……)

 

 腕に激痛が走る。

 鼻腔に腐臭が満ちた。

 

《ほ、骨が折れた……ちくしょ!》

 

 高強度ポリエチレン繊維製の戦闘服はリミッターの外れたゾンビの咬撃程度で破れる事は無い。

 が、残念ながら小指側の細い骨、尺骨はその圧力に耐えられなかった様だ。

 完全に粉砕骨折したし、まだゾンビは喰い付いたまま。

 右手で握りしめていたPDWのグリップを手放してナイフを抜き、喰い付いているゾンビの顎下から斜め上に突き刺して延髄を抉る。

 運動中枢を破壊されたゾンビはようやく顎を開いたが、おかわりのゾンビが三体、もう、手が届く間合いにいた。

 

 発砲音。

 

 右手側のゾンビの頭が弾ける。

 

 上に乗っかっていたゾンビをはね除け、飛びかかってきた左側のゾンビに正面から掌底をぶち込む要領でアイアンクローを決め、仰け反った顎下から軌道を避けてナイフを突き刺し、延髄を抉りぬく。

 更に発砲音がして、真ん中にいたゾンビが床に倒れ終わるのを待たず、黒い戦闘服に身を包んだ人影が重厚そうなドアを体当たりする様にして閉じて施錠する。

 

《八誌緒、もう、このビルに生存者はいない、さっきので最後だ》

 

(アンリ?)

 

《ええ、切り上げましょう》

 

(そうだ……わたし、生存者の救助しにきて……でも、別の所で……夢?)

 

 応えながら左手のひらを開け閉めしてみると、違和感は無い、腕はもう完全に治っている。

 ゾンビの服でナイフを拭っていると、アンリが部屋の奥から観音開きのかなり巨大な冷蔵庫をずりずりと引きずってきて、体当たりノックされている扉の前へ横倒しにして据えた。

 中身もたっぷり詰まっている様なので、充分もつだろう。

 ペントハウスの中を出て行くアンリについて、割れたガラスを踏み越えて外へ出ると、急ごしらえの“救出部隊”のブルーチームが“要救助者”と一緒に集合していた。

 

《レッド、イエロー、グリーン全てのチームがピックアップ完了、我々が最後です》

 

 びょうびょうと吹き付けるビル風に負けじと、夜間迷彩に身を包んだ通信兵が叫ぶように告げる。

 

《了解、撤収準備!》

 

 だだっ広いホテルの屋上、プール、個人ヘリポート付きのペントハウスには、もう一握りしか“人間”は残っていない。

 次のピックアップヘリにブルーチームの隊員を相乗りさせても問題ないだろう。

 最悪、“力自慢”の隊員は外に掴まらせておけば何とかなる。

 

(そろそろ夜が明ける……今は、彼らを避難させなくては)

 

 降下してくるヘリの背後で朝日が頭を覗かせている。

 

《“代引”が“配達”されるまで、あと、二十五分です!》

 

 撤収には余裕がある、が、残念ながら、これ以上、生存者の捜索をしている余裕迄はない。

 部下達が、不安そうな表情の要救助者達をヘリへぽんぽん放り込む様に乗り込ませてゆく。

 彼らが不安そうなのは、強力な“対人間忌避フィールド”の影響で、ここから立ち去らなければいけないという示唆を受け続けているからだ。

 “夜に適応した人間”でも根本は“人間”、ある程度の効き目はある。

 

《撤収!》

 

 取りこぼしがない事を確認し、ヘリにとびのると、ローターの回転が増し、ぐい、と機体が空へ持ち上がる。

 “灼陽の使徒”共が用意したサーモバリック弾が何キロトン級か迄は、“穏健派”からの情報にも無いが、少なくともこの町を完全に吹き飛ばす想定だろう。

 全力で飛ぶヘリ眼下の街路では、よろよろと歩き回る、余り今風ではない“走らないタイプのゾンビ”が蠢き、ヘリを追いかける動きを見せるが、すぐに背後へ流れ去ってゆく。

 

(夜間、多くの人間が眠っている中で“対人間忌避フィールド”を発生させ、“普通”の人間をある程度待避させてから、複数箇所でゾンビを解き放ち、“夜に適応した人間”を襲わせる、最後に街ごと吹き飛ばして証拠隠滅……どうしてそんな馬鹿げた計画がうまくいくと思った?純粋主義者共が……ん?)

 

《正面、トラック、生存者です!》

 

 ゾンビ以外は閑散とした街路をピックアップトラックが爆走している。

 大抵の住民が、整然と車に乗ったまま出て行ったので、道路に放置車両は無く、逃走を阻むものはない。

 

 ゾンビ以外は。

 

 即座に隊員がドアガンを掃射し始める。

 ピックアップトラックを追うゾンビの先頭がなぎ倒されるが、三々五々、ゆるゆると包囲網をしいてゆくゾンビは密集率が足りない。

 わざわざ撃たれに集まってくれるダッシュゾンビ程効率よく片づけるのは無理だ。

 

(あのまままっすぐ走れば街の外へ出るだろうが……)

 

 ゾンビをはね飛ばしながら走るあの速度では、爆発の範囲外までは間に合わない。

 朝焼けの空気で確保されたクリアな視界に、ピックアップトラックの架台で身を寄せ合う幼い姉妹とそれを抱き抱える母親らしき女性が目に入る。

 運転しているのは父親か、叔父か。

 幼い姉が、しっかり抱えた妹の頭をただただなで続けている。

 小さな手で。

 

 息を吐いて、無線を開く。

 

《レッド、イエロー、グリーン、そちらのピックアップは何分でここまで戻れる?》

《レッド、十分はかかります》

《イエロー、機体損傷、十五分はかかる》

《グリーン、こちらも十分だ、すまん》

 

 そろそろ残り時間は二十分を切りそうだ、ちんたら折り返していたら、爆心地から逃げられない。

 

《あそこのビルへ寄せろ!》

《何するつもりですか!》

 

 パイロット席から聞こえる抗議に、壁をぶったたいて応える。

 

《時間がない、急げ!》

 

 不承不承と言った感じで手近のビル屋上でホヴァリングしたヘリから、軽機関銃と予備弾倉を一つ、ショットガンとドラム型の弾倉を幾つか、擲弾発射筒とその弾帯、ついでに消防斧をぽいぽいと投げ落とす。

 

(PDWの弾はまだある、手榴弾も使ってない……)

 

《総員ガスマスク着用!アンリ、この先に野外サッカー場がある、そこへトラックを誘導しろ!ここから周囲十キロのゾンビを誘引しておく》

 

 最後に飛び降りようとすると首根っこを掴まれる。

 

《ぎゃあ!やめてぇ!ソレやめろ!俺たちがあのお方に滅ぼされちまう!》

 

 涙目でしがみつこうとしてくる金髪イケメンの顔面に本気の後頭部頭突きをいれ、一瞬の手の緩みを逃さず、ためらい無く飛び降りる。

 

《作戦目的は“助けられる人間は全て救助する”だ、任務を遂行しろ……どうせ、“死にはしない”、行け!早く!》

《あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーッ、俺だけで怒られるの絶対に、絶対に、絶対に嫌ですからねぇぇぇー!》

 

 アンリの悲鳴を乗せて、ヘリが離れて行く。

 まぁ、泣き言は言うが優秀な奴だ、何とかしてくれるだろう。

 擲弾発射筒用の予備弾ベルトを首にかけ、消防斧を腰ベルトにさす。

 軽機関銃のキャリーハンドルを左手で掴み、擲弾発射筒のグリップを右手で掴む。

 

《よし……》

 

 屋上を見回すと普通のアパートか雑居ビルらしく、給水タンクにエアコンの室外機、あと葉野菜やミニトマトが植わったプランターが十個程、あとは物干し台がある。

 出入り口は端の所に、よくある階段とドアだけの狭い空間……塔屋がぽつんとついている。

 おあつらえむきにドアノブじゃなくて頑丈そうな取っ手がボルトで固定されている。

 残念ながら物干し竿は通りそうに無かったので持ってきた消火斧の柄を通してカンヌキ代わりにしておく。

《おっと》

 

 カンヌキを入れてすぐ、ドアをどんどんと全身ノックする音が始まった。

 ビルに居たゾンビが早がけしてきたらしい。

 取り敢えず気休めに手近の重量物としてありったけのプランターをドアの前に積んでおく。

 

《野菜もったいないですね》

 

 プチトマトの酸味と甘みのバランスがすばらしい。

 家庭菜園にしては割といい感じに育っていただけに少々罪悪感を感じる。

 

《これで少しはもちますね》

 

 急いで屋上の端へ走り、屋上の柵の下から軽機関銃と擲弾発射筒を通して柵をよじ登る。

 端っこに立ち、風を感じながら顔のメガネに触れ、そっと、外す。

 意識を解放すると、“匂い”が目に見えそうな濃度で周囲に満ち、広がって行く。

 数秒、瞑目し、メガネをかけ直す。

 

 奴らが、空を見上げていた。

 ろくに見えないはずの目を見開き、何かを求める様に天へ両の手を差し伸べる。

 

 ぽん、と間抜けた音がなった。

 ほんの微かな白煙を曳きながらとんだそれは、甘い匂いに焦がれた群衆達の足下で秘められたエネルギーを瞬間的に解放する。

 爆心地でなぎ倒される人型の物体を確認しながら、排莢と再装填を繰り返し、カニバル開始の祝砲を上げて行く。

 瞬く間に弾帯に入っていた擲弾を撃ち尽くし、本体を投げ捨てる。

 キャリーハンドルを掴んで軽機関銃を引き寄せ、ビルにゆるゆると殺到する群に向けた。

 フル装填状態で十キロ近いから、流石にぴたりと据えるのは無理だが、的は大量にいる。

 撃てば当たるだろう。

 引き金を絞ると、まるで削岩機の様な振動と共に毎分800発で7.62mmの猛打がゾンビ共に降り注ぐ。

 人間相手ならどこかへ当たれば即ダウンだが、痛痒を感じないゾンビ相手だと頭にクリーンヒットしない限り、なかなか倒れない。

 

 “おおきい”のも“ちいさい”的へも、無心で弾を撃ち込む。

 

 ついでにビルの下へ、夕食に食べた物から練成された何かいい匂いのする粘着物を、口から大量に廃棄する。

 風に散らされながら天から降り注いだ粘着物は、浴びてしまったゾンビ達に白煙をあげさせ、狂乱を引き起こした。

 苦痛など感じるはずの無い死者が痛みに悶え、混乱を引き起こす。

 意図しない“口撃”だったが、多少の時間稼ぎの役には立ちそうだ。

 

(やっぱり、慣れない……こんなこと)

 

 今の内に空っぽにしておいた方が、近くで見た時にまだマシだろう。

 雑に口元をぬぐい、撃ちきった100連弾倉を外して予備に付け替える。

 

《ふぅ……ふぅ》

 

 チャージングハンドルを引いて次弾装填し、もう一度眼下の“群衆”へ向けて打ちまくる。

 更に一分も保たずに100発を撃ちつくし、銃身から陽炎を立ち上らせている軽機関銃を屋上へ放り出す。

 既に、どんどんという殴打音は消えていたが、その代わりにぎりぎり、めりめりという妙に切迫感を感じさせる音が響いてきている。

 鉄製の扉が圧を受けて内側からたわんでいるのだ。

 今にも蝶番が吹き飛びそうな勢いである。

 ちらりと左腕に巻いた腕時計に目をやって、残り時間を確認。

 

《まだ、十五分程度有る……長いなぁ》

 

 とうとうドアの変形に耐えかねたのか、ドアから蝶つがいが千切れ飛び、一気に内容物が屋上へ溢れだした。

 圧縮されて潰れたゾンビの中からまだ運動機能を完全に破壊されていない這いずりゾンビが這いだし、後続のゾンビ達がそれらを踏みつけながらよろめき出る。

 前もってピンを抜いておいた攻撃型の手榴弾をそこへ放り込む。

 ゾンビの頭上を越えて階段の中へ転がり込んだ手榴弾が閉鎖空間で爆発し、既にあふれ出ていたゾンビが蹈たたらを踏んだ。

 取りあえずよろめいているゾンビをPDWで“処理”してゆく。

 高い貫通力を持つ4.6mm弾は易々と人体を貫通するが、古式ゆかしいゆっくりゾンビを沈黙させるにはヘッドショットで脳幹を破壊する必要がある。

 あっという間に40連マガジンを空にして手放し、そのままサイドアームのハンドガンを引き抜いて射撃を継続する。

 重い反動を残して発射された.45ACP弾はゾンビの頭へ命中すると、糸が切れた様に体をくずおれさせる威力があった。

 貫通力は無いが、さすがアメリカの“敵”を散々殺しまくってきた弾薬だ。

 “牛殺し”の異名は伊達では無い、が、しかし、脳以外への命中ではさしたる効果もなく、体が少し揺らぐ程度が精々なのは変わらない。

 こちらもあっという間に弾倉と薬室分を含めた11発を打ちつくし、ホルスターへ突っ込む。

 背後へ退きながら、直線的なデザインにドラム型の弾倉がくっついたデザインのショットガンを拾い上げ、引き金を絞る。

 存外軽い反動と共に発射された12番ゲージの“榴弾”は安定翼フィンを展開しながら短い距離を飛翔し、“人体”へささやかな内蔵炸薬とアルミ片をぶちまけた。

 毎分300発を指切りバーストで制御しながら36発分バラ撒き、第一陣を一山幾らのひき肉へ変え、階段へもう一発手榴弾のおかわりを放り込む。

 その間に手持ちのPDW、ハンドガン、ショットガンの再装填を行い、一ミリたりともずれていない眼鏡の位置を直す。

 

(あと、十一分……はぎぞう……、後で怒られるぅ、気が重いなぁ、ああ、もう、みんな逃げ終わった?)

 

 あちこちから妙に重い落下音がして、改めて周囲へ目をやると、三方のビルから結構な数のゾンビが投身自殺を始めていた。

 

《うわぁ……これは、ちょっと》

 

 殆どは飛距離が足らずにそのままビル間へ落ちていってしまうが、たまにうまく着地を決める個体がいる。 大抵は足をやられるか、そのまま頭を強打して動かなくなるが、這いずり始める個体も居るし、仲間の上に着地した個体は無事起き上がっていた。

 

 これはまずい。

 

 攻め手が一方じゃなく、散発的に三方から攻められるのでは、耐久ミッションの難易度が天と地ほど違う。 とりあえず立っているゾンビからPDWで銃撃を浴びせ、その間に階段に向かって手榴弾の追加を投げ込む。

 PDWをリロードしてそろそろ近くなってきている這いずりゾンビを片付け、更にリロードして、階段から上がってきていたゾンビへ撃ち込む。

 

(あと、八分……品切れ)

 

 PDWを捨て、最後の手榴弾を階段へ投げ込み、ショットガンと最後のドラム型弾倉を拾う。

 左手に弾倉を持ったまま、ショットガンの銃床を脇の下で挟んで固定して射撃するが、元々スペック上は片手射撃が可能な銃、頭へクリーンヒットさせるのは難しくとも、胴体に当てるのは問題無い。

 さっきとは違って換えの弾倉に入っている“榴弾”は市販品とは桁違いの“非人間用”だ。

 胴撃ちさえできれば、一発でそこから真っ二つ以上にできる。

 

《ごめん、あと、六分でおわる、おわるから!》

 

 殺到する小柄な影から手足が千切れ飛び、飛び散る脳症と乳歯の散弾を浴びる。

 目玉を踏み潰しながら撃ち続け、撃針の空打ち音を合図に空の弾倉をリリース、即座に左手のドラム型弾倉を装填、射撃を続ける。

 まるで無限にリポップする様に、階段から、隣接するビルからゾンビが湧きだし、降り注ぐ。

 

《五分……》

 

 視界が狭まる。

 気のせいか、遠くから轟音が聞こえる気がする。

 そろそろ屋上に足の踏み場が無い。

 

《残弾無し》

 

 ショットガンを放り捨ててハンドガンを引き抜き、ブーツに歯を立てるゾンビの頭をぶち抜く。

 掴みかかるゾンビに突きつける様に銃を向けて引き金を引き、倒れるまで撃ち続ける。

 

 一発、二発、三発、四発。

 

 中々延髄を捕らえきれず、弾薬を無駄にする。

 伸ばされる手を敢えて掴み、眼孔をぶち抜く。

 後頭部から脳症を噴き出すゾンビを蹴り飛ばし、後続に押しつけて退く。

 左肩に激痛が走る。

 背後から噛みついているゾンビに自殺の要領で銃口を押しつけ引き金を絞る。

 

 轟音。

 

 耳鳴りがする。

 咬圧が緩んだ所でゾンビを振り捨てるが、左腕を掴まれる。

 掴まれた左腕を引き寄せ、頭に残弾を叩き込む。

 後頭部から内容物を吹き出して倒れる体を払いのけて退くと、背中が柵に当たった。

 残り弾数が少ない弾倉を捨て、交換。

 

《マグはあと一本、でも、あと三分……》

 

 もう轟音は体に物理的な震動を感じるほどに近い。

 じわりじわりと近づいてくるゾンビに銃を向け、撃つ。

 身体的な疲れは無い。

 

 ただ、体が重い。

 

《八誌緒……全員安全圏へ、脱出した》

《了解、任務完了》

 

 ただ、そう応える。

 言うべき事はない。

 

 最後の弾倉を交換し、撃ち尽くす。

 

《あと、2分……》

 

 ハンドガンを捨て、グローブを外す。

 腰の後ろから、最後の武器を抜く。

 

 それは、刃渡りが三十センチ程も無い諸刃の短剣。

 幅広い投身を幾何学的な血溝が覆い、柄から持ち手までくまなく茨の意匠があしらわれた実用性皆無の美術品。

 それを握り込むと、血を吸い、深紅に染まった茨が伸び、手を手首を突き刺し、鼓動する様な震動を伝えてくる。

 

(これは、“この人達には”使いたくなかった……)

 

 柵へ預けていた体を起こし、体から力を抜いて立つ。

 

《ごめんなさい、少し“痛く”します》

 

 当然聞いていないゾンビが伸ばした腕を凪ぐ。

 

《@[p@[p;;[ol[p[-iop@j@j@0u!》

 

 人語を成していない叫び、だが、叫びの主は余りにも人間くさい動きで失った腕を抱え込んでうずくまる。 腕を一振りして苦痛から解放し、ごろりと転がり落ちる首から目を逸らして前へ出る。

 

 周囲をびりびりと衝撃が叩いている。

 

 轟音以外の音がなくなった世界で死者の胸を刺し、首を落とし、両目を切り裂く。

 痛みを取り戻し屍人がのたうち回る中、刃物が踊る。

 

 そして、音の無い閃光が終わりを教えてくれた。

 

 

~ a while later ~

 

 

 十メートル四方程度の暗い部屋。

 その中央に据えられた頑丈そうな金属椅子。

 そこに彼女は座らせられていた。

 簡素な青色の検査着に体を押し込まれ、幾重にも体を固定した革ベルトはボルトで固定されている。

 その拘束を、椅子ごと揺るがす勢いで少女は吠えていた。

 人語ですら無い、絶叫。

 唯一拘束されていない首から上を振り回し、髪を振り乱し、ただただ叫ぶ。

 隣の監視部屋でその光景を前に佇んでいた少女の手が、強化障壁の上で拳に変わる。

 

《生存者は?》

 

 背後を見ずに質問を飛ばす。

 

《132名、最後に救助された家族も問題ありません……“穏健派”を通じて“保護プログラム”を提供予定です》

 

 僅かに空気も揺らさずに入室した金髪碧眼の偉丈夫は膝をつき、礼をとってから報告を行う。

 

《爆轟が起きると、12気圧以上の圧力に全方向から圧縮されて内臓という内臓が破裂するわ、そして3000℃位の火に体の外も中も焼かれて、その後は燃焼で広範囲の酸素が無くなってるから窒息して、燃え残りの霧状になった燃料だった吸い込めば致命的……あの子、“何回死んだ”と思う?》

 

 言葉も無く項垂れる偉丈夫に目をやった少女は肩口まで伸ばした髪を揺らしてため息をつく。

 

《体は治っても、“人間”の心は何度も死に続ける様にはできてないのに》

《いえ、それは、正直“我々”でも大概無理かと》

 

 話している内に、ぴたり、とまるでスイッチを切った様に八誌緒の動きが止まり、首が落ちる。

 無限のスタミナを持つ彼女は、ほぼ一日中狂乱しているが、不特定のタイミングで、今の様に不意に動かなくなタイミングがあった。

 

《全く、どこ行ってるのよ……あなた、私のメイドになったんでしょ?》

 

 だらしなく目と口を開けっぱなしという、到底人にはお見せできない寝顔を晒す旧友にため息をつき、少女は踵を返す。

 

《あの子を回収した時の詳細をお願い、ちょっと、気になるわ》

 

 To Be Countinued...

 





 前回に引き続き下ネタ不在で申し訳ない。
 その代わりに暴力特盛りにしておきましたので許して……
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