いっぱい出たね♪ じょろじょろ出ちゃう黄金水 ~ これって、地層処分するしかないんでしょうか? ~ 作:八切武士
※今回、食事前、食事中に読むのは割とお勧め致しかねます。
『つまみ食いはおやめ!』
『みぎゃっ!』
備蓄のハーブソーセージを頬張っている、せがれの脳天を、ニン・チック・ピーはいつも持ち歩いているすりこぎで思い切りぶん殴る。
ソーセージと一緒に舌をかみちぎったせがれがのたうち回るのを放置してすりこぎを振り回し、別の倅にさっさと残りのハムとソーセージを運び込ませてゆく。
『この間入荷した肉はこれで全部だね』
地下深く掘られたその空間はひんやりと保冷され、ほぼ、冷凍庫並の温度を保っていた。
ここは熟成が完了した保存食を最後にしまっておく倉庫だ。
幅10m、奥行き20m四方はある倉庫はまだ三分の一程度は開いている。
暫くは食いつなげるが、何かがあって稼げなくなった場合を考えるともう少し備蓄が欲しい。
『仕入れに出掛けた連中はどこまで行っちまったんだい、日が暮れちまうよ』
『あいつら、かいどーいった』
娘が跳びはねる。
『埃が立つだろ!』
こちらもすりこぎでぶん殴り、悶絶してる二人の首根っこを掴んで倉庫から放り出す。
ドアを締めていると、せがれがぱたぱたと廊下を走ってくる。
『かーちゃん、かーちゃん、あいつらかえってきた、なんか、すくねくなった』
『ああ、あいつらドジったね!とーちゃん呼んできな』
『わかったあ』
ばたばたと駆けだしたせがれを放って置いて、ニンはのっしのっしと、騒がしい声が聞こえる方へ歩いて行く。
“食堂”の辺りから聞こえてくる様だ。
『ふん、実入りは良かったようだね』
狂乱した様な叫びと、足を踏みならす音は、もう乱痴気騒ぎといっていい。
ニンが踏みこむと、そこは邪教の宴と化していた。
食卓の上にどん、と置かれたドス黒い血にべっとりと染まったボロボロの投網だったもの。
そのど真ん中に、妙に小綺麗な少女が安置されていた。
太股丸出しの破廉恥な、しかしものは良さそうな服を着た少女の髪は黒々として長く、顔には透明な板が2枚はまった高そうな装身具を身につけている。
そして、その傍らにはクリーム色を基調として、タータン柄をあしらわれた背負い鞄が置かれていた。
鞄には袋がくっ付いているのだが、それはびりびりに破かれて、中身が全部無くなっている。
そして、その周囲では透明な瓶に入った飲み物を呷りながら、口の周りを茶色に染めた倅達が踊り狂っていた。
『チック・ピー♪チック・ピー♪チー、チック、ピー♪』
『にくやむしゃむしゃ モツやむぐむぐ』
『くってもくっても まだなくなんね』
『むげんにくー!』
顔を真っ赤にして、ぐい、と黄色い液体を呷り、透明な袋に入った茶色いモノを指につけ、ちゅぱちゅぱしゃぶると、実に幸せそうな表情になり、ぴょんぴょんスキップを踏んで輪舞する。
完璧に酔っ払っていた。
泥酔していた。
『なんだいこりゃ?』
せがれ達の狂乱に目をぱちくりさせたニンの後ろから、ドスドスと足音が響き、ドアが蹴り開けらる。
蝶つがいは何とか持ちこたえたが、壁に叩き付けられたドアは脆くも破壊音を立てて砕け散った。
『うるせー!』
踊り狂っているせがれがボディブロー、ストレート、右フックでふっとんでゆく。
ぶっ倒れた倅達が丸まって呻く様を見下ろして床につばを吐き、マイク・チック・ピーは説明を求め、嫁に目をやった。
『こりゃ、なんの騒ぎだぁ?』
『知らないよ!あたしがきたとにゃ、こうなってたんだよ』
かっかしてる旦那に怒鳴り返し、ニンは掃除用に置いてあった水桶を引っ掴むと手近のせがれに中身をぶっかける。
ついでに背中を蹴っ飛ばす。
『起きな!』
『いでぇ!いでぇよぉ』
泣きながら転がり回るせがれの襟首を掴んでマイクが持ち上げる。
『どんなドジ踏みやがった、帰って来てねぇ連中は?』
思い切りビンタをはる。
往復ではる、更にもう一度往復する。
『い、が……しんだぁ!みんな、しんだよー!』
『はぁ?なんだとぉ!』
思いっきりぶん殴られたせがれは、もう一度床の上に伸びた。
これは水をかけた程度では目を醒まさなさそうである。
『ちいっ!』
マイクは別のせがれを持ち上げ、ビンタする。
目が醒めるまでビンタする。
『へ、へめへ、とーちゃん、やめへくれぇ……』
『よーし、何があったか、言え!』
床に正座させられたせがれは、自分が漏らした小便の上で、いつも通りにショボめの行商を襲った事、そして、馬に乗った方を逃がした事。
そして、それを他のヤツに見られたから殺そうとした事を語った。
『ばかやろう、ちかくに住んでるヤツには見られるなっつったろが!』
『ぎゃひッ!』
げんこつがおちる。
マイクはせがれの前にしゃがんで、ぴたぴたと頬を叩く。
『で、ちゃんと、全部ぶっ殺したんだろうなぁ~?』
せがれが座っている水溜まりが広くなった。
『りょうしはたすかんね……おんなはふたりいたけど、ひとりはそこ』
『んん~?もう一人はどこいった?』
マイクに髪を掴んで揺すられたせがれの顔から滝の様な汗が流れる。
『どっかのへいたいがきて……つれてった』
せがれの顔面は壁とお友達になり、髪の毛が結構抜けた。
だん、とマイクが床を踏みならすと、せがれたちのうめきがぴたりと止まる。
『後始末はしたんだろうね?』
今度はニンが床に転がったまま目を見開いているせがれをすりこぎでつついて詰問した。
『いっぱいけものとまものきて、したい、むしゃむしゃした、したいないないなった!』
『あな、うめた、せーきじゅつ、しっかりうめた、わからなくした!』
転がってるせがれ達が叫ぶ様に報告する。
ニンはむっつり口を曲げ、すりこぎをタシタシと手のひらに叩き付け始めた。
『なら、ここまでは追えねぇだろうが、めんどくせぇ事になったな、しばらく森のほうじゃ稼げねぇ』
『10人以上死んだよあんた』
流石に思う所があるのか、ニンの声は少し暗いが、マイクは軽く肩を竦めるだけだ。
『ガキならまた勝手に増えんだろ、暫く稼げねぇから食い扶持が減った方がいいぜ……しっかし、今回の稼ぎは、このメスガキだけか?こんだけ肉が付いてりゃ、太らせる必要はねぇな』
マイクは八誌緒の太股肉をぷにぷにつつき、ブラウスの上から腹肉をぐにぐにと摘まむ。
たっぷりと脂肪と肉が詰まっているのが分かる。
『割に合わねぇが……なんだ、すげぇうまそうな匂いがすっぞ』
マイクはテーブルの上に置かれた未開封の透明な瓶を拾う。
『ガラスじゃねぇな……ん!』
蓋を捻って中身を嗅いだマイクは中身を一口飲んで、ぶはぁ、と息を吐く。
『こいつぁ、呑んだ事ねぇ程上等な酒だ!』
もう一口あおり、キャップを閉める。
テーブルの上には空になった瓶が2つ、まだ中身のある瓶が3つ。
そして、茶色いペーストが入った透明な袋が3つ、その内の一つが開いている。
やたらとかぐわしい香りが袋から漂っていた。
マイクとニンは、ごくり、と喉をならし、震える指を袋にさしこみ、指先についた茶色いモノを口へ入れる。
『ウンメェー!』
『ウマーイ!』
夢中で口の周りを真っ茶色にしながら袋の中身を手づかみで貪る二人。
『こいつぁ噂に聞く“流され者”が切望するっていう“ミソー”とかいう調味料なのか』
『これで、味付けたらたまんないソーセージが出来るよ!』
二対のギラついた瞳が、脳天気なアホ面で寝入る八誌緒に突き刺さる。
To Be Countinued...
「やりやがったッ!
マジかよあいつら
やりやがったッ!!
チック・ピー一家すげえッ!!」
知らないっていうのは怖いネ……