「ちわーっす。ガク先輩居る?」
「やぁ力男くん。咲黄くんから貰ったマホくんのグッズはそこに飾っているが……そういう話をしに来たのでは無いのだろう?」
体育祭が終了し、折角貰ったのだからとマホくんグッズを部室に飾り終わった頃。二人三脚を走り終わった後に見事な転び方をした力男くんが部室へと訪れてきた。
ふむ。彼の性格的に後片付けを手伝うのかと思っていたが、わざわざ部室に訪れるとは。私を呼ぶように誰かに頼まれた? いや、それは無いだろうね。
私は周りから避けられるような性格をしているし、教師に発明品について問い詰められるような事も無い筈だ。発明品自体は体育祭に持ち込んだが、使用したのは力男くんの借り物競走での1回のみだからね。しかも使用した時は審査員から許可も出ていた。それで呼び出される可能性はあまりにも低い。
ならば緊急性の高い要件の可能性だが、焦っている様子が見られない事からこれの可能性も低いだろう。となると、緊急では無いが重要な話だろうかね?
「実はさっき、コマツールがこの学校に来ていたようなんだ」
「なんだって?」
どうやら重要性の高い話のようだ。
それにしてもコマツールか……私はコマツールの顔を見たことが無い。だから仮に学校に忍び込んでいても気付けないだろうね。特に今日のように大勢が学校に来るイベントの日となれば、怪しい人物が居ても見逃してしまうだろう。
だが、力男くんは何処でそれを知ったのだろうか。
力男くんはコマツールの顔を知らない。もし知っているのであれば、顔と名前を認識している為、千里眼で居場所を突き止められるし、念聴で相手の会話も筒抜けだ。
こう改めると、情報戦と言う意味では強力な力だね。力男くん自身が厄介事に自ら首を突っ込むような性格では無いから、その能力との噛み合いは悪いけれど。
「今さっきマホに下駄箱で会ったんだが様子がおかしくてな。テレパシー使ってみたら、その理由が」
「コマツール、と言うわけか」
「そゆこと」
ふむ。力男くんは無闇に超能力を使うような人間ではない。だから体育祭を見に来た観客1人1人にテレパシーを使うのは少々不思議に思っていたが、マホくん経由なら納得だ。
「他に何か知っている事はあるかい?」
「2日後の夜に学校を破壊するそうだ。もし止めたいならその日に学校に来いとも」
「罠だね」
「罠だろうな」
マホくん1人程度ならば簡単に倒せるだろうに、わざわざ見逃したとなると十中八九、マホくん達全員を誘き寄せる罠だろうね。
だが少し不可解だ。コマツールの強さはこの前のマホくん達の様子から察することが可能だ。例えマホくん達が4人居ようとも苦戦どころか劣勢になるほどの強さだからね。それなのに誘き寄せる? マホくん達が学校に通っているのを知っているならば、不意を付いて倒す程度の事は可能だろうに実に不思議だ。
揃っている状態で倒すのに意味がある? いや、その場合なら前に出来た筈だろうね。なら5人目が揃うのを待っている……のも無いね。異様なまでに5人目が誕生するのを警戒しているのだから、待つ必要性は考えられない。ならば他の理由が?
「…………情報が足りないね。相手の行動が見えない」
「ガク先輩でも分からないか」
「私はあくまで手に入れた情報から、推測しているだけだからね。情報も何も無い状態で、相手の行動理由を探れと言うのはさすがに無理さ」
「それもそうか」
「で、力男くん。君はどうするんだい?」
「…………そりゃあ、勿論」
「戦うと、君は言うだろう。だがその選択肢はオススメしない」
「なんだと?」
私の言葉に力男くんは眉を顰める。
おっと、まさかそんな反応をするとはね。以前の力男くんならば、マホくん達に丸投げして、遠くから高みの見物をしていたのだがね……マホくん達と関わって心境に変化があったようだね。だが駄目だ。
「私と違って君には特殊な力がある。だがその程度では到底戦えるとは思わないし、却って足手まといだ」
「ぐっ」
「それに、君……震えているぞ」
無意識だったのか、力男くんは自身の指先が震えているのを認識して目を見開く。
心では「見過ごすことは出来ない」と思っているかもしれないけれど、それに対して精神と身体が追い付いていないようだね。例えるならば「跳び箱を跳べる」と考えていても、怪我した時の景色がフラッシュバックしたり、恐怖で何も出来ない状態が今の力男くんだ。
考えるだけなら誰でも出来る。けれど考えるだけで何もかもが上手く行くことは有り得ないし、特にトラウマを乗り越えるのならば尚更である。
「首を突っ込みたいのなら、まずはその恐怖を乗り越えたまえ。話はそれからさ」
「…………」
「何も出来ない部分に思う所はあるのだろうがね。今回はマホくん達に任せたまえ」
私が頭脳面でマホくん達に協力しているように、力男くんには力男くんにしか出来ない事がある。だからここはドンと構えてほしいものだ。
だが、マホくん達だけでは倒すのが厳しいのが現実だ。はぁ……万が一の切り札とは言えど、一度も使用せずにワルインダーを倒せれば良かったのだがね。そうは言ってられないほどに敵は強力らしい。
私自身この切り札は切りたくないモノだ。けれど万が一が訪れたとなれば、本人は私の静止を聞かず戦いに参加するだろうね。全く……万が一訪れない事を私は祈る事しか出来ないようだ。
「すまないね」
「?」
私は一瞬だけ人体模型の方へと視線を向けるが、すぐに力男くんへと視線を戻す。そんな私の行動に力男くんは疑問を浮かべる……が、その程度の行動は既に読んでいる。
君は今の私の言動を疑問に思ったのだろうが、それを簡単に教えるような性格はしていないさ。どうせテレパシーを使っているのだろう?
「だーもう、なんでテレパシー破れるんだよ!」
「君が分かりやすいからさ」
テレパシーは思考が読まれる厄介な能力だけれど、能力ではなく本人を攻略すれば問題は無い。力男くんは疑問に感じた出来事に対して使用する場合が多いからね、あえて疑問を浮かべるような行動をして、相手を煽るような事を考えれば簡単に攻略が出来るのさ。
「失礼します」
「ん? あぁ、マホか」
私と力男くんが話していると、ノック音と共にマホくん達が部室へとやってきた。後片付けを終えた後なのだろう、あまり体力の無い咲黄くんがヘトヘトしており、緑くんに背負われている。
「あれ? 力男さん、ランちゃんの所に行った筈では」
「少しガク先輩に用事があってな。ちょうど今終わったから、向かおうとしてたんだ」
「そうでしたか」
重要性の高い話であったため、すぐ私の所に来てくれたのは嬉しいが、ランくんに用事があるのなら、一言伝えてから部室に訪れても良かっただろうに。
そうして力男くんはマホくん達と入れ違うような形で部室へ出ていった。さてと、話の内容は力男くんから聞いたのと殆ど変わらないだろうね。同じ話を2度聞くことになるが、ここは知らないフリをしなければ。
「どうやら全員揃って私に用事があるようだが、いったいなにかね?」
「実は━━━」
…………君に負担を掛けてしまうようで申し訳ないね。本当なら何もかも解決した後にペンヨウくんと再開させたかったし、相手の目的が不明な以上また命を狙われると思って隠し続けていたが、この辺りが限界かもしれない。
だからこそ万が一、マホくん達の命が危ない時は君の力を借りさせてもらおう。頼んだよ、ニワヨウくん。
次回は時間を飛ばして2日後の夜になる予定です。要はコマツールとの戦闘開始ですね。
【第二回】好きなキャラアンケート
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超能 力男
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マホ・ツカエール/スカイブルー
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赤元 勇子/スカイレッド
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長神 咲黄/スカイイエロー
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恋路浜 緑/スカイグリーン
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ペンヨウ(マホの妖精)
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ライヨウ(勇子の妖精)
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フクヨウ(咲黄の妖精)
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クラヨウ(緑の妖精)
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アクロコ
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リュウ/スリュウ・コマツール
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アヤイト・コマツール
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ワルインダーの総帥
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草加 ラン
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力学 心(ガク先輩)
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陸上部の部長