学校の破壊を止めるため、コマツールへ戦いを挑んだマホ達。しかしコマツールはあまりにも強く、立てた作戦も失敗してしまった。
それでも諦めずに戦い続けたがとうとう限界が近くなり、コマツールの最後の攻撃を喰らいそうになった瞬間、咲黄がマホ達を庇うのであった。
※前回に継続で魔法少女ではなく本名で呼んでいます。え、理由? マホ達があまりにも動揺してて、呼び慣れてる方の名前が先に出ちゃってるから。
「他人を庇うとは。何処まで言っても魔法少女は甘す……おや?」
コマツールの降らした槍によって、咲黄ちゃんの姿が確認出来なくなるほどの土煙が巻き起こりました。
私達はそれをただ呆然と眺める事しか出来ず、攻撃が終わり土煙が晴れると、そこには地面へ突き刺さった槍だけが残っていました。
咲黄ちゃんの姿が無く、私は姿が見えない事に疑問を覚えると共に、まさかと言う最悪な光景が頭を過ります。
ごめんなさい咲黄ちゃん、ごめんなさい。私に……私に力が無いばっかりに。後悔したくないと頑張った結果、咲黄ちゃんが犠牲になってしまって……ごめんなさい、ごめんなさいッ!
「跡形も無くなるほどの威力にはしてないはずです。ならば避けましたかね? ですがあの傷だらけの状態でいったいどうやって……」
涙を流して咲黄ちゃんへと謝罪する中、コマツールも咲黄ちゃんの姿が見えない事に疑問を思ったようで、何処へ行ったのかと、泣いている私達を見向きもせずに辺りを見渡そうとします。
「ぐっ、なんですかこれは!」
すると横からコマツールの顔へと、複数の発煙筒が勢いよく投げ込まれます。その発煙筒からは煙が吹き出し、まるで意思を持っているかのように、コマツールの全身を囲うように煙が纏わり付き、コマツールの視界すらも封じていきます。
「え?」
身体に纏わり付くと言う、本来なら有り得ないような煙の動き。ですが私はその動きに、そしてその発煙筒に見覚えがあります。
そう、あれは体育祭で力男さんが借り物競走に出た時の事。お題として発明品を探していた時に、ガク先輩が持っていたモノです。私はもしやと、希望を抱きます。
「ぐあっ!」
視界を塞いでいる煙を取り除こうと、踠くコマツールですが、そこに咲黄ちゃんをお姫様抱っこしている、ある人物がコマツールの顔目掛けて膝蹴りを喰らわせます。
突然視界が見えなくなった事による動揺からか、コマツールはその攻撃をマトモに喰らい勢いよく吹き飛ばされます。
暗くてよく見えませんでしたが、コマツールを吹き飛ばした人物に月の光が差し込み、その全体像が少しずつ写し出されました。
一目で分かる筋肉、咲黄ちゃんがガッシリとお姫様抱っこ出来るほど丈夫な身体、視界に入れるだけで恐怖が込み上げてくる見た目、ですがその何処か立ち振舞いは何処か安心感を覚えるその人物こそ、
【…………】
人体模型でした。
「「「…………誰!?」」」
ガク先輩や部長さんが助けに来てくれたのかと思いきや、あまりにも予想外すぎる人物の助太刀に私達は、身体の痛みすら忘れて驚きの声を上げます。
「知らない人が出てきたよ!? そもそもアレって人なの!?」
「おおお、落ち着いてください勇子ちゃん。あれはきっと幻覚です。ええ、人体模型が動くなんて非現実的です。だから幽霊とかじゃななな」
「マホが一番落ち着きなさい!」
一目で筋肉が分かるのは、人体模型らしく身体の半分に筋肉が描かれているため。身体が丈夫なのは創り物のため。恐怖を覚えるのはそもそも夜に怖い見た目をしている人体模型を見たため。そして安心感を覚えるのはコマツールに攻撃を喰らえる姿を見たからです。
咲黄ちゃんを助けてくれたり、コマツールを攻撃した所を見るに味方なのでしょう。なのでしょうが……こう、人体模型を間近で、しかも夜に見ると怖いですね。
「どうやら間に合ったようだね」
「ガク先輩!?」
私達が動く人体模型に驚いていると、部室に残っていた筈のガク先輩が校庭まで来ていました。私はダメージや疲労で動かせない身体はそのままに、首だけをガク先輩へと向けます。
「部室に籠ってるんじゃなかったのかしら?」
「嘘に決まっているだろう? 私は君達を助けに来たのさ」
「助けにって……ここに居たら危ないわ。早く部室に戻りなさい!」
「危ないと言われてもね。私に動けない君達を見捨てろと? ここでコマツールを倒さなければ、私の部室も破壊されると言うのに?」
ガク先輩の言葉は尤もです。
危ない場所に来てほしくない気持ちは緑ちゃんと一緒ですが、私達が完全に戦えなくなれば学校は破壊されます。そしてガク先輩の部室も一緒に。そうなれば、学校内に居ようが危険な事には変わりません。
「それに私が無防備にこの場に姿を現すとも?」
「どういうこと?」
勇子ちゃんの疑問の言葉は、たった今私達の視界を暗くした影によって解消されます。誰が居るのかと、影が延びてきた方向へと視線を向けると、そこには咲黄ちゃんをお姫様抱っこしている人体模型が立っていました。
「うひゃあ!? いつから居たの!?」
【…………】
「すまないね、私の方は準備に丸2日も掛かって遅れてしまった。それでそっちは……あぁ、やっぱりそうするのか。だが良いのかい? そしたら君は……そうか。なら私からもう何も言わない、存分に暴れたまえ」
何も喋らない人体模型━━━声帯が存在してないので、喋れないのは当たり前ですが━━━に、ガク先輩は内容が理解出来ない会話を一方的に喋り、人体模型から咲黄ちゃんを受け取ります。
そして人体模型は私達へ軽く視線を向けて、吹き飛ばしたコマツールの方へと突撃していきました。
「ん、あれ。私……みんなを守ろうとして、それで」
「咲黄!」
「「咲黄ちゃん!」」
咲黄ちゃんは朦朧とした意識の中、うっすらと開けた目で私達の姿を確認します。そして私達が無事な事を確認すると、軽く息を吐いて安堵します。
「あぁ、私。みんなを守れたんだ」
「君は友達を守れたさ。誰も文句は言わない、だから少し休みたまえ」
「そっか。良かっ、た……」
私達が姿を見届けて緊張の糸が切れたのか、咲黄ちゃんは全身の力が抜けて、ガク先輩に寄り掛かるような形で意識を失いました。
「なんですか貴方は。私の邪魔をしないでほしいですね」
【…………】
「黙りですか。魔法少女は当然警戒対象ですが、私が一番怖いのは貴方のような正体不明な存在ですからね。そんなに戦いたいのなら、まずは貴方から倒すとしましょう!」
発煙筒の煙が消え、膝蹴りを喰らったからか、頬が赤くなっているコマツールは、今度は突然現れた人体模型へと攻撃を始めました。
人体模型はその攻撃を、体操選手のような動きで避け続けます。人によっては綺麗な動きに見えるかもしれませんが、私からすればその動きは身体を大切にしていないような、まるで自分自身の身体では無いかのような無茶苦茶な動きに違和感を覚えます。
私も動こうと思えばあの動きは出来るかもしれませんが、腰から上を地面と平行に逸らしたかと思えばバネのように起き上がらせたり、常に全力以上の動きをすれば、すぐにでも身体が悲鳴を上げてしまうでしょう。ならばあの人体模型はいったい……?
「ねぇガク先輩。あの人体模型っていったい何かしら? 味方、と思って良いのよね?」
「あれは私の部室に置いている人体模型さ」
「あー! 思い出した! ガク先輩に「人体模型になった緑ちゃん」って紹介してたんだった!」
「その思い出し方は止めてくれないかしら?」
「あれが、緑ちゃん……!」
「誤解を生む言い方も止めてくれるかしら?」
あの人体模型が味方であると判明すると共に、安全な場所に隠れていた筈ペンヨウが勢いよく私達の所へ飛んできて、コマツールと激しい戦いを繰り広げている人体模型へと指を差します。
「ニワヨウセイ!」
「え?」
「あれは絶対にニワヨウセイ!」
「ペンヨウ、気は確かですか?」
きっと暑さでおかしくなってしまったのでしょう。
今がいくら夜とは言え、夏である事には変わりません。水分を取らなければ熱中症になりますし、ずっと外に居たら暑さで意識が朦朧としてくるでしょう。こんな状態のペンヨウを外に出しておくのは危険ですので、急いでガク先輩に室内に居れてもらわなければ。
「違うセイ! ペンヨウには分かるんだセイ!」
「ふむ。まさか当ててくるとはね。姿形が変わろうとも一瞬で正体を導き出せたのは、まさしく友情と呼ぶべきかね?」
「ええ!?」
私は昔見た記憶の中のニワヨウの姿と、今目の前で戦っている人体模型を比べます。身長はぬいぐるみ程度の大きさと、人の形を模した人体模型とでは比べるまでもなく違います。次に見た目、この世界で言う鶏のような姿をしているニワヨウと、人体模型とでは似ても似つきません。
まさに別人。恐らく10人中10人全員が「別人」と答えるほどの変化。しかしニワヨウと友達であるペンヨウ、そしてガク先輩の発言からして同一人物なのでしょう。ですが……
「変わりすぎではありませんか!?」
「ちょっとした事情でね。だがまぁ詳しい事は後で話そうではないか」
ちょっと所の問題では無いのですが。
私は喉元まで出てきた言葉をグッと飲み込みます。気にはなりますが、今は先にコマツールをどうにかすべきです。不意を付いたのもあってか、今は人体模型もといニワヨウ1匹で戦えていますが、少しずつ押されつつあります。このままだと、ニワヨウも私達と同じように地面へ伏してしまうでしょう。
「気絶した咲黄くんは兎も角として、君達は動けそうかい?」
「そうしたいのは山々なんですが」
「ふむ。身体が動かないと」
「はい」
私達の身体は休憩を挟んで回復はしたものの、それはあくまでほんの少し。指1本動かせない状態から、立ち上がろうにも上手く力が入らない程度です。
このままずっと休憩を挟み続ければ、いつかは立ち上がれる程度に回復しますが、恐らくはそれより先にニワヨウが倒されてしまうでしょう。
「安心したまえ。私が何の準備もせずにこの場にノコノコと現れるとでも?」
「それってどういう」
なんとかしなければ。
私達がそう思うのは予想してか、ガク先輩は白衣からボタンが取り付けられたリモコンを取り出します。そしてそのボタンを押すと共に、校庭に設置されているスプリンクラーが何かを校庭中に撒き散らしました。
「水……じゃなさそうね。そもそもこれって水分なのかしら? 濡れてる感じすらしないのだけれど」
校庭中に霧のように撒き散らされるそれは、優しい光と共に私達の全身へと降り注ぎます。すると少しずつではありますが、身体に力が入るようになってきました。
「ん、あれ。身体に力が戻ってくる……!」
「ふむ。準備に手間取って、試運転を一度もしていなかったが、どうやら成功したようだね」
「何を撒いたんですか?」
さっきまでの私達はボロボロの状態。起き上がれる程の力はなかった筈なのに、スプリンクラーから撒き散らされたそれを浴びてからは、ゆっくりとですが立ち上がれるようになりました。
常識的に考えれば、浴びただけで元気になる代物は存在しない、つまりは有り得ないです。ですがガク先輩となれば、そんな常識は関係無いのでしょう。
「何を撒いただなんて……君達は私が何を研究していたか忘れたのかい?」
「
「それは私の研究テーマだね」
「気絶する薬かしら?」
「惜しい。それは元気が出る薬の副作用だね」
「分かった! なんちゃらパワーだ!」
「勇子くん、せめて名前は覚えてくれたまえ」
元気パワー。それはガク先輩がずっと研究を続けている代物です。まだ完全には分からないと言っていましたが、それとこの現象にどういう関係が?
「魔法少女の力の源は元気パワーなのは知っているだろう? そしてその力を使いこなしている君達に分け与えたとなると?」
「凄い元気になる!」
「正解さ。勇子くんには花丸をあげようではないか」
「やったー!」
ゲームで言うならば、HPやMPを回復したと考えて良いのでしょうか。力男さんのお家で遊んだゲームの中に、そういうアイテムが出てくるものがありました。
「とは言っても、
「ありがとうございます、ガク先輩!」
ほんの少しでも、動けるのなら問題ないです。
私達は力の籠った両足でその場に立ち上がります。ニワヨウがダメージを与えていようが、私達が再び立ち上がろうが、コマツールが強敵なのは変わりません。
ですが何故でしょう。希望が見えたからか、元気が湧いてくるから、それとも気絶してしまっている咲黄ちゃんの分まで頑張りたいと思っているからか。今の私達は負ける気がしません!
「行きましょう!
「うん!」
「任せなさい!」
本当ならこのシーンまでを前回にしようと思ったけど、テンポ感早くて絶望感が薄れるかな? と思って止めました。
次に
ちょっとした裏話
今回の「私達の絶望が希望に変わる瞬間な件です」は
28話の「私達の希望が絶望に変わる瞬間な件です」を意識してます。ちなこの回は、怪人化したニワヨウが敵となってマホを襲う話となってます。
【第二回】好きなキャラアンケート
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超能 力男
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マホ・ツカエール/スカイブルー
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赤元 勇子/スカイレッド
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長神 咲黄/スカイイエロー
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恋路浜 緑/スカイグリーン
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ペンヨウ(マホの妖精)
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ライヨウ(勇子の妖精)
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フクヨウ(咲黄の妖精)
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クラヨウ(緑の妖精)
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アクロコ
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リュウ/スリュウ・コマツール
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アヤイト・コマツール
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ワルインダーの総帥
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草加 ラン
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力学 心(ガク先輩)
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陸上部の部長