「さて、と……ニワヨウくん。大丈夫、と言う様子では無さそうだね」
【…………】
コマツールが浄化される姿を見届けた私達は、変身を解いてニワヨウの方へと振り向くと、そこにはバラバラになった人体模型の上に光の球が浮いていました。
この光に私は見覚えがあります。
それはライヨウが、フクヨウが、クラヨウが、私達の前に現れた時と同じです。勇子ちゃん達の強い思いに導かれて光の球として現れた時のと一緒です。あの時はこの手のひらサイズの光の球が大きくなると共に、今のライヨウ達の姿を形取っていきました。しかし……
「あわわ、ニワヨウが小さくなってるセイ!」
「ど、どうしてですか!?」
ニワヨウは姿を形取るどころか、少しずつ小さくなっていっています。それはまるで燃料が無くなった焚き火のように。
「それはニワヨウくんが力を使い果たしたからさ」
「どういうことよ!」
「まずニワヨウくんは身体を持たない、魂だけの状態となっている。これはライヨウくん、フクヨウくん、クラヨウくんと同じだね。そんな彼らは何故身体があるのか、それは元気パワーを使って実体化しているに過ぎないんだ。所謂仮の肉体と言ったところだね。それを持続するには元気パワーが必要であり、ライヨウくん達は魔法少女としての力である元気パワーを、君達から借りてそれを維持しているんだ。けどニワヨウくんはそうじゃない、元気パワーを貸してくれる人物が居ないから身体を保たせるのには限界がある。だから少しでも力を温存するため、実体化ではなく借り物の身体に入ってもらって━━━」
「…………?」
「長い長い長い長い! もっと分かりやすく説明して頂戴!」
「あ、頭がグルグルするよ~」
「勇子ちゃん大丈夫ですか、頭から凄い煙が!」
下を向いて、座り込みながら一気に話すガク先輩に私達は着いていけず、勇子ちゃんに至っては情報を一気に取り込んだのが影響してか、知恵熱で頭から煙を吐いていました。
「おっとすまないね。簡潔に説明するとニワヨウくんは元気パワーが足りなくて存在を認知出来なくなる。要は電池が切れて動かなくなる機械と似たようなモノさ」
「え? じゃ、じゃあニワヨウとはここで」
「あぁ、そうだともペンヨウくん。ニワヨウくんとはここでさよならだ。奇跡が起きない限り、もう二度と会えないだろうね」
奇跡が起これば。それは希望の光のように聞こえますが、ニワヨウが元に戻る奇跡が起こる。それはコマツールとガク先輩が先程話していた他の妖精達も蘇る話に繋がります。
蘇るのは奇跡以外有り得ない。コマツールはそう言っていました。ガク先輩は奇跡を現実にすれば良いと前向きでしたが、逆に言えば奇跡を起こさなければ蘇られる事が出来ないとコマツールの言葉を肯定している事になります。
その奇跡が起こる可能性は何パーセントか。聞かずとも、不可能に近いモノだと察せてしまいます。つまりペンヨウがまたニワヨウと会えるのは、きっと……。
「なんで……なんでニワヨウの事を教えてくれなかったセイ!」
「ペンヨウ落ち着いてください!」
「そうだよ! ガク先輩にも何か理由があったのかもしれないよ!」
「教えてくれなかったのか、と言われてもね。元々私は自分の研究の為に━━━」
「ガク先輩! 意地悪はメッ、だよ。もしまた意地悪するならゴニョゴニョ」
ガク先輩へと怒りの矛先を向けるペンヨウを、私と勇子ちゃんが落ち着かせようとしますが、何故かガク先輩は火に油を注ぐかのようにペンヨウの怒りを買おうとしてします。
一発触発を通り越して、あと数秒でペンヨウがガク先輩へと掴みかかって喧嘩を始めてしまいそうな時、咲黄ちゃんはガク先輩の言葉を遮り、何かを耳元で呟きます。
「……はぁ、分かった。本当の事を喋ろうではないか」
「やけに素直ね」
咲黄ちゃんが説得してくれたのか、ガク先輩の様子が一変して、両手を上げて降参のポーズをします。ガク先輩を説得出来るなんて、咲黄ちゃんを何を喋ったんでしょうかね。
「私が君達の正体を調査していたある時、光り輝く球体を見つけたのさ。私はそれが何か調べて、その結果として判明したのが」
「ニワヨウだった、と言う訳ね」
「あぁ。本来なら君達と交流を持って以降、すぐに知らせるべきだったのだろうが、敵は妖精を狙っているようだからね。何処から情報が漏れて私やニワヨウくんが狙われるか分からない以上、下手に喋れなかったのさ」
リュウさんはワルインダーの幹部でしたし、コマツールは頭が回ります。私達のちょっとした言動から、ニワヨウが━━━つまりはペンヨウ達4匹以外にも妖精が居ると知れば━━━生きていると知れば、無関係な人達を巻き込んでもニワヨウの命を狙ってきたでしょう。
魔法少女に変身するためには妖精の力が必要です。もし誰かがニワヨウの力を借りて5人目の魔法少女になる、なんて事はワルインダーは絶対に避けたいでしょう。
もしこの前の戦いでコマツールがニワヨウの存在を知っていれば、5人揃わなければ脅威ではないと考えて、私達を見逃すこと無く、そして助けが呼べない空間でトドメを刺されていたでしょう。
結果論にはなりますが、秘密にしてくれたからこその今があるのだと。きっとその行動が正しかったのだと、頭では理解しています。ですが、それを納得出来るかはまた別の話です。
私達、特にニワヨウと友達であるペンヨウには一言ぐらい伝えてくれても良かったのでは。理解を示しつつも、感情や心では肯定出来ず、思わずガク先輩の行動を否定してしまいます。
「出来ればこの戦いにはニワヨウくんを参加させたくなかった。もし戦うとなれば、存在を保つ力すらも無くなって今の状態になるのは分かっていたからね。だから私は……っとと」
「ガク先輩!?」
座り込んでいたガク先輩はその場で立ち上がろうとしますが、バランスを崩して倒れそうになりました。そこを緑ちゃんがガク先輩の身体全身を支えるようにして助けます。
すると何を思ったのか、ガク先輩の顔を無理矢理上げて表情を確認した後、自身のおでことガク先輩のおでこをくっ付けました。
「ちょっと! 熱もあるし隈も凄いじゃない!」
「え!?」
「ふむ。さっき私に触れた咲黄くんには黙ってもらおう頼んでいたが……全員に知られたのなら、隠す必要性は無さそうだ」
私はそこでガク先輩の行動を振り返ります。
ここに来てから、今に至るまでのガク先輩におかしな点は無かったか。どうして体調不良に気付けなかったのかを。
ガク先輩は咲黄ちゃんに肩を借りていました。コマツールが倒れたのを見て腰が抜けたのかと思いましたが、本当は体調が悪くてマトモに歩けなかったから。
ガク先輩はペンヨウにお礼を言われた時に顔を隠しました。頬が赤くなっていたので照れているのかと思いましたが、本当は熱があるのを隠すため。
ガク先輩は咲黄ちゃんに耳打ちされると簡単に本当の事を喋りました。咲黄ちゃんが説得したのだと思いましたが、本当は発熱と隈があるのをバラされないようにするため。
思い返せば不自然な行動は幾つもありました。ですが私はそれは気のせいだと、ガク先輩にしては珍しい行動だと見過ごしてしまっていました。
「実の所、発明に夢中で丸2日寝ていなくてね。お陰で体調を崩してしまったのさ」
「まさか!」
私はガク先輩との会話を思い出します。
『すまないね、私の方は準備に丸2日も掛かって遅れてしまった』
『ふむ。準備に手間取って、試運転を一度もしていなかったが、どうやら成功したようだね』
一つはニワヨウに話しかけている時、もう一つは今は止まっているスプリンクラーを起動させた時です。
準備と言うのはスプリンクラーに関する話。そしてコマツールから予告があったのは2日前。つまりガク先輩は私達が相談した日以降、寝ずにスプリンクラーの準備を進めていたことになります。
「まぁ私の事は良いさ。それよりもニワヨウくんが今にも消えそうだからね、何か言い残した事があるなら今の内に全て喋るのをオススメするさ」
「……ガク、怒って悪かったセイ」
「何の事かね? 私は自身の研究の為に動いたに過ぎない。君に謝られる筋合いは無いさ」
研究が目的で、私達を助けたのは結果に過ぎないとガク先輩は話しますが、それが嘘であると私は簡単に見抜きます。
もしガク先輩の言う通りならば、幾つか不自然な部分があります。同じような発明をするのなら、以前創った水鉄砲があるのに、わざわざ校庭のスプリンクラーなんて手間が掛かるものを選ばないでしょう。
それに開発時期は丸2日。私達が相談した直後に学校の部品を使って発明をしているのは、偶然で片付けるには時期の都合が良すぎます。まるで最初から私達を助けるために動いていたかのように。
ペンヨウもその事に気付いているのか、自身の体調すらも構わずにボロボロになってでも私達を助けてくれたガク先輩へ、小さく「ありがとう」と呟いて頭を下げると、ニワヨウへと振り向きました。
「ニワヨウ。久しぶりセイね」
【…………】
「ニワヨウは此方の世界に来てから、どうだったセイ? ペンヨウは友達が増えたセイ。ここに居る勇子や咲黄、緑の他にもよく一緒に遊ぶ力男やランも居るセイ」
【…………】
「実は他に友達が居て、実はワルインダーの幹部だったアクロコやリュウも友達セイ。驚いたセイか? 最初会った時は嫌いだったセイが、話をしていく内に完全に悪い奴じゃないと知ったセイ」
【…………】
「ニワヨウにも紹介したいセイね。他にもこの世界に来てからテレビゲームって言う、小さな箱に映る人を操る遊びがあったりして、ニワヨウとも遊びたいセイ!」
【…………】
「だから」
最後は笑って送ろうと決めているのか、ペンヨウは楽しそうにこの世界での思い出を語ります。友達が出来た事、敵対していた相手とも仲良くなれた事、この世界特有の娯楽。
「だから。さようならなんて、嫌セイよぉ……!」
「ペンヨウ……」
しかし話していく内に笑顔であった段々と表情が曇り始め、ペンヨウの目から涙が溢れ始めました。私はそれを静かに見つめます。
本当は声をかけたい。励ましたい。でもペンヨウがニワヨウと話せるのはここが最後かもしれない。その時間を邪魔出来ないと、私は拳を握って強く耐えます。
【ペ、ンヨウ】
「ニワヨウ!?」
するとニワヨウが突如として喋ります。そして喋るのには元気パワーを多く消費するのか、小さくなるスピードが速くなります。後数秒で消えてしまいそうな中、私にはそれでもペンヨウと会話をしようと力を振り絞っているように見えます。
【ま、た。会お……う】
「ッ! また会おうセイ! 次は会った時は沢山、沢山話したり遊ぶセイ! 約束セイよ!」
ペンヨウは涙をゴシゴシと手で拭いて、拙いながらも笑顔を浮かべてニワヨウと遊ぶ約束をします。そしてその約束を結ぶと共に、
次回からは少しの間日常パートが入りますが、シリアスしてた反動で、書きたい日常シーンが増えてしまったので、急遽ですが6.5章(日常パート)始まります。
【次章予告】
コマツールも倒し、残りは総帥1人となったワルインダー。そんな俺たちは束の間の日常を楽しんでいた。ランが横から構って構ってしてきたり、宿題忘れた奴が居たり、ガク先輩やペンヨウが俺の家に遊びに来たり……やっぱ楽しいな、この
次章:俺達の日常が相変わらず喧しいで章(仮)
※予告なので、実際の本編と内容が変更する場合があります。でもちゃんと日常パートだよ!
【第二回】好きなキャラアンケート
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超能 力男
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マホ・ツカエール/スカイブルー
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赤元 勇子/スカイレッド
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長神 咲黄/スカイイエロー
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恋路浜 緑/スカイグリーン
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ペンヨウ(マホの妖精)
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ライヨウ(勇子の妖精)
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フクヨウ(咲黄の妖精)
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クラヨウ(緑の妖精)
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アクロコ
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リュウ/スリュウ・コマツール
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アヤイト・コマツール
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ワルインダーの総帥
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草加 ラン
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力学 心(ガク先輩)
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陸上部の部長