【完結】俺のクラスメイトが魔法少女な件   作:のろとり

113 / 166
 現在の時刻は6月12日の6時27分、ギリギリの投稿です!


第百十三話 科学部の先輩がお休みな件です

「ん~……」

 

「咲黄、どうかしたかしら?」

 

「お兄ちゃんが見えたの。ほら、あそこ」

 

 力男さんが土下座で、鬼教官呼ばわりしてきた事を謝ってきた日の放課後。私達4人が一緒に帰ろうとした時、咲黄ちゃんがある方向を指差しました。

 

 そちらの方向を確認すると、そこは3年生の下駄箱。部長さんが制服姿で帰ろうとしているのを目撃しました。学年が違いますし、部長さんは放課後いつも部活をしているのもあって、こうやって下駄箱で見かけるのは珍しいですね。

 

「一緒に帰りたいの? それなら私達の事は気にせず」

 

「あれ、でも変じゃない?」

 

「変って、何が変なのよ」

 

「ランちゃんが「今日も部活だー!」って元気だったのに、部長先輩が部活休むのはおかしいなーって」

 

「確かにそうね。具合でも悪いのかしら」

 

 ランちゃんが部活があると言うことは、同じ部活に所属していふ部長さんも部活がある事になります。緑ちゃんの予想のように、体調が悪いのでしょうか。でも顔色が悪かったり、フラついている様子はありませんね。

 

「お兄ちゃーん!」

 

「おお咲黄か! どうした!」

 

「お兄ちゃんって今日部活だよね?」

 

「それなんだが……少しガクっちの所に用事があってな」

 

「ガク先輩に用事ですか?」

 

 部長さんがガク先輩に用事、しかも部活に休んで学校の外に出るとなると、家に直接に行くような内容でしょうか。

 

 私が疑問で首を捻っていると、部長さんは鞄からクリアファイルの中に入った紙を何枚か見せてきます。書かれている内容は難しくてよく分かりませんが、計算式や化学式が書かれているのを見るのにこれは恐らく、

 

「プリント、ですか?」

 

「ああ! 今日、ガクっちは体調が悪くて休みだからな。宿題のプリントとかを持っていくんだ!」

 

 そういえばと、私はお昼の時の事を思い出します。

 いつものようにお昼を食べる場所として、科学部の部室を借りた時ガク先輩の姿はありませんでした。毎回部活に居るわけではないので「今日は居ない日ですかね」と軽く考えていましたが、今日はまだ一度もガク先輩を学校で見ていません。

 

 学年が違うからと言えばそれまでですが、昨日のコマツールとの戦いが終わった後。ガク先輩をお家まで送り届けて「明日には元気になるから問題ない、それより君達は明日に備えて早く帰りたまえ」と言われましたが、もしかしてその後に体調が悪化してしまったのでしょうか。

 

「でもお兄ちゃん、今度の大会が最後でしょ? 練習しなくて良いの?」

 

「大会は大事だな。でも、ワイとしては部活や大会よりも人を助ける事の方が大事だからな!」

 

 3年生である部長さんは今度の大会を最後に部活を引退するようです。なので部長さんは部長さんじゃなくなって、今後は部長さんと呼ぶことは無くなり……あれ、そうえば部長さんの名前は聞いたことが無いですね。じゃあこれからなんと呼べば……いえ、それは一度置いておきましょうか。

 

 部長さんの自身の事よりも、人を助ける事を優先する心意気は尊敬します。ですが、私は今すぐにでもガク先輩に会いたいんです。会って、昨日無理させてしまった事を謝りたいです。

 

「あの、部長さん。部長さんの代わりに私がそのプリント持っていっても良いですか?」

 

「ん? ワイに対する気遣いなら不要だぜ。何故なら自分から進んでやりたいと思った事だからな!」

 

「気遣いではなくて……その。少し、ガク先輩にお話がありまして」

 

「…………そうか! ならこれは預けるぜ!」

 

「ありがとうございます」

 

 部長さんは少し考えた後、私に何か事情があると察してくれたのか、プリントが入ったクリアファイル渡して、昇降口とは反対側へと歩を進めていきました。恐らくはガク先輩の家に寄る用事が無くなったので、部活に行くのでしょう。

 

「と言うわけで、すみません。ガク先輩の所に寄るので、今日は一緒に帰れません」

 

 私はそんな部長さんの後ろ姿を確認してから勇子ちゃん達の方へと振り向き、頭を下げました。

 

「ねぇマホちゃん。私も心配だからガク先輩のお見舞いに着いていっても良いかな?」

 

「えっと、それは……」

 

「勇子ちゃん。あまり大勢で行くと、ガク先輩ビックリしちゃうよ」

 

「そうよ。もしかしたらそれで体調が悪化するかもしれないわ」

 

「あ、それもそうか。それじゃあマホちゃん、先に帰ってるね!」

 

 そうして私は家にまっすぐ帰る勇子ちゃん達とは別の道を通って、ガク先輩のお家へお見舞いに行くのでした。

 

 

 

 

 

「心様。お友達がお見舞いに来ました」

 

「ふむ。部屋にあげてくれたまえ」

 

 ガク先輩のお家へ来た私は、家政婦さんに案内されてガク先輩の部屋へとお邪魔しています。

 ベッドで横になっているようですが、顔色1つ変えないガク先輩の目には昨日の隈はありませんでした。それどころか頬が赤くなっている様子も無いことから、体調は回復していると考えて良いのでしょうか?

 

「それでは心様。私はメイドとしての仕事がありますので」

 

「君はメイドではなく家政婦だろう?」

 

「私は家政婦ではなく、メイドの家政婦です」

 

「ちょっと何を言ってるか分からないね」

 

 家政婦さんがパタンと扉を閉めて、部屋を出ていきました。そして足音が遠ざかるのを確認してから、私は部長さんから預かったプリントを渡してから、ガク先輩へと頭を下げました。

 

「ガク先輩。昨日はコマツールの事で、無理をさせてすみませんでした」

 

「無理だなんて。アレは私の勝手に行動した結果さ、マホくんが謝るような事は一切無い」

 

「ですが」

 

 言葉を続けようとする私に、ガク先輩は手のひらを私に向けて出してきて口を止めてきます。そして身体を起こしてベッドに腰を掛けます。

 

「それに、体調面を心配しているのなら問題ないと伝えよう」

 

「と、言いますと?」

 

「私の発明品の中に元気になる薬があるのを忘れたいのかい?」

 

「あっ!」

 

 私は体育祭の準備をしていた頃を思い出します。

 アレは準備が一段落終わって、科学部の部室に寄った時の事です。準備で疲れているだろうからと、ガク先輩がリュウさんに元気になる薬を飲ませていました。

 副作用として、気絶すると言う特大のデメリットがありますが、体調を良くする面だけを見ると、その薬を使うのが1番早い回復方法と言えるでしょう。

 

「尤も、これは予想していなかった使い方ではあったし、寝不足までは回復出来なかったがね。だからほんの1時間前まではグッスリだったさ」

 

 本来は体調を良くする(元気になる)の使い道が1番最初に思い付きそうなんですが。医療に使えば大勢の人を救えそうですが、ガク先輩はあくまで自身の研究に関する使い方しか考えていないようですね……。

 

「ところでペンヨウくんは居るかい? 少し話があってね」

 

「ペンヨウならここに」

 

「呼んだセイ?」

 

 私は鞄の中からペンヨウを取り出します。家政婦さんが部屋を出てから誰も近くを通った音はしませんので、ガク先輩以外の誰かを見つかることは無いでしょう。最悪の場合、ペンヨウをぬいぐるみとして誤魔化します。

 

「ペンヨウくん、君には改めて謝罪をしようと思っていてね。すまないね、ニワヨウくんの事を黙っていて」

 

「…………」

 

「私にも事情があった、と説明するのは言い訳に過ぎない。君が怒るのは無理はないし、例え君に嫌われたとしても、それだけの事はしたと自覚はあるからね。逆恨みをするつもりもないさ」

 

 昨日の夜、戦いが終わった後にガク先輩はペンヨウがニワヨウに話をする時間をくれました。けれどそれは結果に過ぎません。

 結果がどうあれ、ニワヨウが生きていて、尚且つペンヨウと友達であることを知っていたのにも関わらず、ガク先輩が何も言わずに黙っていた事実は変わりません。

 

 誰にもニワヨウが生きていると言わなかったからこそ、不意の行動に誰も対応出来なくてコマツールを倒せた。それは頭では理解していても、感情がついていくかは別の話です。

 だからガク先輩は、ペンヨウが感情的になって嫌われるような事態になっても、それを受け入れる覚悟でいるのでしょう。

 

「確かにペンヨウに何も言わなかった事には怒ってるセイ」

 

「…………」

 

「でも! ガクはニワヨウにもう一度会わせてくれたセイ。それだけでペンヨウは満足セイ。だからガク、ありがとうセイ」

 

 昔の、魔法世界に居た頃のペンヨウだったならば。良く言えば感情に素直、悪く言えば感情に振り回されていた頃のペンヨウならば、ガク先輩の行動に感情を剥き出しにして怒り、嫌っていたでしょう。

 

 しかし今の、もっと言えばペンヨウが私の元から離れて力男さんの所で1日ほどお世話になった時からでしょうか。その時に力男さんに「感情的になりすぎるな」と叱られたのか分かりませんが、ペンヨウは一時的に感情を爆発させる事はあっても、状況を理解してすぐに冷静さを取り戻すようになりました。

 

 それが顕著に出たのは昨日の戦いでしょうか。ニワヨウが怪人として現れた時はメンタルが不安定だったのもあり、勢い任せに宛もなく飛び立ってしまいました。

 しかし昨日はニワヨウが生きていた事に驚きながらも、すぐにガク先輩へ噛み付くような事はありませんでした。

 

 そして事が終わった後も感情を爆発させる事はありましたが、ガク先輩に噛み付くよりもニワヨウと言葉を交えるのが優先すべきだと怒りの感情を押さえ付けていました。

 

 私の知らない所でペンヨウ(友達)が急激に成長してるのを見ると、ペンヨウが遠くへ離れていってしまったような感覚にモヤモヤしてしまいますが、今はその成長を素直に喜ぶべきでしょう。

 

「私は君に礼を言われる筋合いは無いさ」

 

「それでもセイ」

 

「そうか。ならば仲直りの印としてこれを飲んでくれないかい?」

 

「分かったセイ」

 

 礼を受け取ろうとしないガク先輩と、それでも礼をするペンヨウ。ずっと平行線のまま話が続くかと思われましたが、ガク先輩の差し出した液体をペンヨウが飲んだ事で話は終了しました。

 

「ところでこれって何セイ?」

 

「妖精を人間に変える薬さ」

 

「何黙っていて飲ませてるセイ!?」

 

 あぁ、ガク先輩はガク先輩のままなんですね……。

 ついさっきまでペンヨウの成長をモヤモヤとした感情を抱えながら眺めていましたが、我が道を往くような態度で人を勝手に薬を飲ませて実験に巻き込むガク先輩を見て、私のそのモヤモヤは引っ込んでいきました。

 

「ふむ。どうやら失敗だったようだね。君に飲ませたのは妖精になった人間を、また人間に戻す薬だったからね。元の種族が妖精の相手を人間に変化出来るか試してみたが、どうやら効果が無いようだね。妖精を人間に変化させるのは難しい、そう考えるべきのようだ。ところで此方の薬なのだが━━━」

 

「マホ、さっきガクが素直に謝ってた姿は幻だったセイ?」

 

「ハハハ……」

 

 幻では無いのは分かっていながらも、ペンヨウに対してどう返せば良いのか分からない私は苦笑いで誤魔化すのでした。




 本当は魔法少女組全員で見舞いに行く予定だったけど、4人(+4匹)の大勢で見舞いに行くのは違和感あるので代表して1人に行ってもらいました。
 ペンヨウとガク先輩がこの前の戦闘で若干ギスギスしてそうだから、謝る描写欲しいな~と思ってペンヨウのパートナーであるマホが代表になった経緯があったり。


 次回で6.5章を終わらす予定です。短いって? 元々、6章に纏めるには雰囲気変わりすぎ&キリが良いって理由が区切っていましたので。

【第二回】好きなキャラアンケート

  • 超能 力男
  • マホ・ツカエール/スカイブルー
  • 赤元 勇子/スカイレッド
  • 長神 咲黄/スカイイエロー
  • 恋路浜 緑/スカイグリーン
  • ペンヨウ(マホの妖精)
  • ライヨウ(勇子の妖精)
  • フクヨウ(咲黄の妖精)
  • クラヨウ(緑の妖精)
  • アクロコ
  • リュウ/スリュウ・コマツール
  • アヤイト・コマツール
  • ワルインダーの総帥
  • 草加 ラン
  • 力学 心(ガク先輩)
  • 陸上部の部長
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。