「力男、話をしに来たセイ」
「そうか。じゃあ回れ右して帰れ」
満月の光が街を照らす時間。俺は自室からボッーと月を眺めていると、夜なのにペンヨウが話がしたいと来たので、はよ帰れと窓を閉めようとした。
「閉めようとするなセイ!」
「ぶべッ!」
しかし窓が完全に閉まる前に、ギリギリ部屋の中に飛び込んできて、勢いそのまま俺の顔面へぶつかった。
い、痛い……大丈夫だよな、顔めり込んでたりしてないよな? 前が見えねぇ状態になってないよな?
「こんな時間になんだ。外居たらマホや勇子が心配するだろ」
「ぐっ。反論出来ないセイ……」
焦っている様子は見られず、それどころか図星を付かれたような反応をしてるって事は本当にただの話だけみたいだな。一応緊急性のある何か発生したのかと警戒したが、杞憂だったようだ。
「「…………」」
おい、話しろよ。
話があるって言うから何を喋るのかと待ってみたが、ペンヨウはただ黙って月を眺めていた。そして俺もペンヨウが喋ると思っていたため、黙って月を眺めていた。
え、いや……何の時間? これじゃあ単に一緒に月眺めてるだけじゃねぇか。もしかしてペンヨウは俺が喋るのを待っているのか? そっちから話があるって言ったのに、俺の言葉待ちとは……まぁ雑談で軽く場を暖めてからじゃないと喋りにくい話題なんだろうな。ここは軽くジャブでも打つか。
「月が、綺麗だな」
「告白セイ?」
ジャブ打ったらストレートで返された件。
なんでそんな知識持ってるんだよ。告白の言葉として「貴方を愛しています」って意味で使われるけど、これは純粋に月が綺麗って話だよ。そもそも俺がペンヨウに抱いてるのはLOVEじゃなくてLIKEだし。
「何処でその知識手に入れたんだよ、緑からか?」
「そうセイ」
「あの恋愛脳め……ちなみにだけど、どんな風に教わった?」
「月が綺麗と言われたら、相手を逃がすなと言われたセイ。どういう意味セイ?」
「あー、気にするな。てか覚えるな、一生忘れて月でも眺めてろ」
月が綺麗=告白なのは理解してるけど、そこから先は理解してないのか。緑としては「自身に告白してきた相手が居るなら、逃がさずに結婚まで突き進め」的な意味で言ったんだろうが、ペンヨウにはまだ早かったようだな。
俺は緑の言葉に対して、疑問を浮かべるペンヨウの意識を逸らすために、満月を指差す。満月見て緑の言葉を頭から抜かしとけ、月の景色だけ頭に入れとけ。
「月、本当に綺麗セイね。こんなに月が綺麗なら、ニワヨウにも見せたかったセイ」
ようやく場が暖まって、本題に入りやすい雰囲気になったようで、ペンヨウは月を眺めながらニワヨウの事を思い浮かべる。
綺麗な景色ってのは、今の俺とペンヨウのように誰かと共有した方が楽しさも嬉しさも倍増するかな。俺も前世でもっと生きてれば
「なぁ、ペンヨウ。前に夜景を眺めた事を覚えてるか?」
「魂は人の心に、だったセイね」
「よく覚えてるな」
「力男から聞いてきたのにその反応は何セイ……」
ペンヨウと俺は似ている、と勝手に思っている。
友達を救えなかった、友を失う後悔を経験している、強大な力に対して何も出来ない歯痒さを持っている。
俺は間に合わなかった、何も出来なかった、知るのが遅かった。そして前世の後悔を今でも背負っている。
経験したからこそ、俺はペンヨウに同じ後悔はしてほしく無い。
友達自身を救えない辛さを知っているから、せめて心だけは助けられるように。
友を失う後悔を知っているから、せめてその後悔を軽くするように。
何も出来ない悔しさを知っているから、せめてその悔しさを引き摺らないように。
「力男」
「なんだ」
「この前ニワヨウと会ったセイ」
「……ガク先輩から事情は聞いている。大変だった、の一言で済ませるには色々とあったようだな」
相手の現在地だけ知れる千里眼と、会話だけしか聞き取れない念聴だけでは分からなかった部分など━━━どうして咲黄がピンチだったのかや、その場で起こった詳しい状況など━━━を、今日アクロコが気絶から目覚めた後に聞いた。
まさか誰にも喋らず、それどころかテレパシー使える俺にも知らせずにニワヨウの事を隠し続けていたなんてな。ガク先輩と言えど、さすがに予想外すぎる。
「力男に言われたように最後は笑顔で見送ったセイ」
「そうか」
かつて俺はペンヨウに言った。
『最後は笑顔で見送れないと、それは一生心に残る』と。実際、俺がそうだ。親友の最期を笑顔で見送れず、ひたすらに後悔を重ね続けた。後悔して後悔して後悔して後悔して……俺は最期、なんて思っていただろうか。記憶が薄れていたのもあって、今ではもう思い出せない。
「力男は笑顔で見送れたセイ?」
「ッ……なんの事だ?」
「力男は前に「笑顔で見送れないと一生心に残る」と言ってたセイ。もしかして力男は過去に」
「悪いがそれは秘密だ」
ペンヨウは「過去に経験したのか」と聞こうとしたのだろうが、俺は言葉が続くよりも前にペンヨウの口を指1本で塞ぐ。
自分ではどんな表情をしているのか分からない。だが、俺を見たペンヨウが思わず顔を俯かせて、小さく「ごめんセイ」と謝る程なのだから、さほど酷い顔をしているのだろう。
前世も、親友も、世界を滅ぼした邪神の話も、全ては過去に起こったやり直しの効かない出来事だ。今世でギャーギャー喚き散らしても何も変わらないのは分かっている。だから、今から喋るこれは独り言だ。誰がなんと言おうと独り言である。
「なぁ、ペンヨウ。ワルインダーの件で一段落したら、ある男の昔話を聞いてくれないか? 一生残る後悔をした男が、自分と同じ後悔をする人物を増やしたくないと思ってる。臆病で自分勝手な男の話をな」
「…………セイ!」
この昔話は『
これは
要は死人に口無しってやつだ。死人は口を聞かないんだから、偶然にも
「ところでペンヨウ。時間は大丈夫か? あまり遅いとマホ達が家出したと勘違いするぞ」
「うっ……それは困るセイ」
「なら早く帰っとけ」
「分かったセイ」
もしマホ達に一言ぐらい、声を掛けていれば「こんな遅い時間に出掛けるなんて悪い子ですよ!」って説教されてそうだな。あれ、お母さんかな?
多分だが俺と1対1で話がしたかったけど、マホ達に外出について話すと一緒に付いてこようとするから、夜に来たんだろうな。
夜なら人通り少ないし暗いから誰かに見られる危険性は低いし、マホ達もこんな夜に勝手に出歩くとは思ってないだろうし。
さすがにペンヨウもこのまま長居する予定は無かったようで、本題は話し終わったようで簡単に帰るのを承諾した。
「力男、
「おう、
俺が窓を開けると共に、ペンヨウは満月をバックに空を飛んで遠くへ消えていった。
また明日、か……明日は学校休みだから遊ぶ時間は沢山あるんだよな。ペンヨウは今約束したとして、マホもペンヨウが来るなら着いてくるだろうな。ランも誘うか? あぁでも陸上部の大会があるから来れないか。
俺は思っていた。明日も平和な日になるだろうと、何か事件が起こることもなくペンヨウ達と楽しく遊べるだろうと。その
翌日、とてつもなく長い1日が始まるとも知らずに。
【次章予告】
ペンヨウと遊ぶ約束をした俺は、朝目覚めると地面から光の粒が溢れだしており、多くの人が道に倒れているのを発見した。
なぁガク先輩。これ何が起こってるんだ? うんうん、なるほど。世界や人から元気パワーが吸い取られていて、このままだと世界が滅びるのかぁ……冷静になってる場合じゃねぇ! 悪いマホ達、どうかワルインダーの総帥を倒して世界を救ってくれ!
戦闘力皆無の俺が行っても足手まといになるから留守番してるよ。世界の命運に対して何も出来ずに誰かに頼るのは歯痒いけどな。ってあれ、ガク先輩。そんな驚いてどうし……え、あ。は…………?
最終章:俺達の最後の戦いが幕を開けるで章(仮)
※120%シリアスの章になります。
【第二回】好きなキャラアンケート
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超能 力男
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マホ・ツカエール/スカイブルー
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赤元 勇子/スカイレッド
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長神 咲黄/スカイイエロー
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恋路浜 緑/スカイグリーン
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ペンヨウ(マホの妖精)
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ライヨウ(勇子の妖精)
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フクヨウ(咲黄の妖精)
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クラヨウ(緑の妖精)
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アクロコ
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リュウ/スリュウ・コマツール
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アヤイト・コマツール
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ワルインダーの総帥
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草加 ラン
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力学 心(ガク先輩)
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陸上部の部長