前回と同じ作業BGMです。
わりと描写削ってダイジェスト感覚にしたのに、いつもの1.5倍ぐらいの長さになってしまった。
「うーん。なんか天気が怪しくなってきたな。一雨どころか嵐でも来そうだ」
何処に行ったのか検討も付かない状態で探していたので当たり前だが、俺は数時間経っても空界を見つけられなかった。それどころか空を真っ黒な雲が覆い始めており、まるで世界の終わり暗示しているかのような薄気味悪く、そして不気味な空模様であった。
空界を探し始めた頃は天気も良く、通行人もそれなりには居たのだが、今では嵐が来るかもと思っているからか、誰1人として通行人は見当たらなかった。
空界を探し続けたい気持ちはあるが、このまま嵐に巻き込まれたら探すどころの話ではない。ミイラ取りがミイラになるじゃないが、このまま嵐が発生したら、俺はそれに巻き込まれて空界と同じように行方が分からなくなるだろう。
嫌な予感がしているが、それを振り切ってでも一時的に天気が回復するのを待つべきか。それとも空界を探すのを続けようか。
俺がそう頭を悩ませていると、近くで「ドシンッ!」と何かが落ちる大きな音がした。
「ん? なんだこの音」
最初は誰かが窓から物でも捨てたのかと思った。しかしそんな事をする理由が無いし、今の俺が居る場所は道路の左右に店や家が多く点在している場所だ。
わざわざ道路から物を投げるなんて危険な行為をこんな天気の中するとは思えないし、仮にしたとしても簡単に家を特定されて警察に通報されたり、周りから危険な人物だと腫れ物のように扱われるだろう。
そこまで考え、俺はもしや嵐がすぐそこまで来てるのではと想像した。もしそうならば、風に誘われて道路標識や信号機が落ちてきたと考えればあの音に納得が行く。
本来なら今すぐにでも避難するべきだろう。しかし俺は怖い物見たさに、物が飛んできても良いようにと路地裏に身体を隠して音がした方向を見る。
「空界!?」
「あ、う……この声、聖夜か?」
「ちょっ、なんでそんな傷だらけなんだよ!? つーか待ってろ、今救急車呼ぶから!」
そこに倒れていたのはボロボロな空界だった。
俺は無我夢中で路地裏から飛び出し、空界へと近付く。嵐でここまで吹き飛ばされてきたのだろうか。だがそれにしては周りに物が少ない。もし吹き飛ばされたのなら、空界だけではなく様々な物が道路に散在しているだろう。
この後に起こる結果を知っている今の俺はそこまで頭が回るが、前世の俺は空界にしか意識が向いておらず、嵐にしては違和感のある状況であると全く気付けなかった。
「……ここから離れろ。アイツが来る、聖夜を危険な目に合わせられない」
「何の、話だよ」
アイツ? アイツってなんだ。アレと言う物を指す言葉や固有名詞じゃないなら、空界の言う「アイツ」とは人を指す言葉だろう。不審者でも居るのかと辺りを見渡したが、その「アイツ」とやらの姿が見えない。
「……いいか、俺の事は忘れろ。戦いに身を置いた結果、すぐにでも命が尽きそうな俺の事はな。そうしないとお前も同じ運命だ」
「おい、ちゃんと説明しろよ!」
戦い? 命が尽きる? 同じ運命?
言葉自体は理解している、その言葉の意味も分かる。けれどまるで適当に辞書を引いて、そこから単語を摘出したかのように、会話が全く成立してない事に俺は不気味さを覚える。
「……お前は何も知らなくて良い。家に帰ってのんびりしてろ。アイツは俺が必ず」
「必ず、なんと言うつもりだ?」
突如、空から声が聞こえた。
俺の前世の世界は特殊な力も摩訶不思議な生物も存在しない。居るとしても精々胡散臭い奴か、種ありのマジシャンだけだ。
現実的に空から声が聞こえるなんて有り得ない、あったとしてもスカイダイビングぐらいだろうが、こんな天気でそんな事をする人物なんて居ないし、仮にしようとしても誰かに止められるだろう。
俺は息を呑み、ゆっくりと上を向く。
きっと空界はそれを通るような形でこの場所へ落ち、大きな音を立てた為俺は空界を見つけられたのだろう。
それは前世の俺の理解を越えた代物であった。実際には見たことがないが、今の俺には分かる。それはきっとペンヨウやガク先輩が魔法世界や此方の世界に来た時に発生した空間、所謂異世界を渡れる空間なのだろう。
その空間からある人物が現れた。
いや、生物と言った方が正しいのだろうか。俺の見たアレを人なんてカテゴリーに含めたくは無いし、そんな枠組みで収まるような存在ではないだろう。
「だ、れだ。お前……」
「我は『邪神ゼメツ■■■■■■』。全ての世界を破滅へと誘う者だ」
悪寒が走る。
邪神ゼメツなんちゃらと名乗る存在は、大きさは2m程度の人型であり、全身は真っ黒で大きな両腕を身体から生やしていた。そして脚は無く、代わりに下半身が影のように地面まで延びていた。
明らかに生物としての格が違う存在。世界を破滅に導く、なんて厨ニ病全開な発言も、その姿から発せられる雰囲気だけで本当に出来るのだと確信する。
あまりの恐怖に俺は邪神の名前を完全に聞き取れない。聞き取れるほど冷静ではなく、聞いてはいたが右から左に流れて頭に残らなかったのだ。
前世の記憶を夢として見ている今も、完全に聞き取れないのはそれが理由だろう。この夢は俺の記憶であるため、俺が知らない事まで夢として現れる事は無い。ま、もうコイツと会うことなんて一生無いだろうし、会いたくも無いから忘れて問題ないだろう。
「邪神? 世界を破滅? 何言ってんだよ。全然分からねぇよ!」
「邪魔だ」
「……逃げろ、聖夜!」
邪神が俺をなぎ払う。服に付いた埃を払うように、俺なんか眼中に無いかのように。力の入ってない、指先で触れるか触れないか程度の動きであった。
それでもその行動は俺の身体を吹き飛ばし、俺を何回も地面へとバウンドさせた。生きている、動けない程の痛みではない。しかし俺は恐怖に呑まれ、蛇に睨まれた蛙のようにその場から動けなかった。
「がふっ、げほっ!」
「力無き人間が、我に敵うとでも?」
「……邪神。お前の目的は俺だろ。聖夜に手を出すな」
邪神と空界のやり取りに俺は全く付いていけない中、空界は俺を邪神から庇おうと、俺の前に立って両腕を広げる。
「渡世 空界。その身体で何が出来る、我に敵う力があるのか?」
「……そんなのは関係ない、俺はお前に立ち向かうだけだ。喰らえ『アルティメットパンチ』ッ!」
空界の右手が光り、邪神の胸元へとパンチを繰り出す。邪神をそれをマトモに受けたが、空界の渾身の一撃も邪神を倒す程度には至らず、ほんの少し傷跡を残す程度であった。
「ふむ。我に傷跡を残す威力とはな」
「……これでも、駄目か」
空界はその場に力無く倒れ、邪神はそんな空界、そして俺に興味を失ったのか俺達に背中を見せて何処かへと消えようとする。
何が起こったのは理解が追い付かない。ボロボロな空界、邪神と名乗る存在の登場、空界の使う超常的な力。非現実的な数々に俺は幻でも見てるんじゃないかと思ってしまう。
けれどこれは紛れもない現実、実際に起こった出来事だ。前世の俺はこれまで知らなかっただけで、超常的な力や摩訶不思議な存在が居るのだと認知した。世界が終わる、その間近で。
「ま、待てよ。お前、何処に行くつもりだ!」
「もう貴様らとは2度と会う事は無い。世界が滅ぶまで、精々その無力さを噛み締めろ」
邪神から見ればちっぽけな存在の俺の質問に答えたのは、気まぐれか、或いは無力感に苛まれる人間を見るのが好きと言うねじ曲がった性根をしているのか。
邪神はその言葉を最後に姿を消した。それと共に天気が一変する。嵐でも来そうな雲はある一転へと風を、雷を、火を集める。きっとそれらを纏めた物を星に降り注げて、邪神は世界を終わらせる気なのだと俺は直感する。
俺には抵抗する力も知識も無いも無い。ならせめて最後はと、俺は邪神が居なくなった事で恐怖から解放された身体を這いずらせながら、空界の横へと転がり、空を眺めながら話しかける。
「空界。何があったか、聞いても言いか?」
「……俺は元々、この世界の人間じゃない」
「え?」
空界の言葉に俺は驚き、無意識に口を開く。
しかし不思議とその言葉が本当であると確信した。それはきっと、さっきの現象を見たからだろう。超常的な力や摩訶不思議な存在が居ると知ったから、空界の言葉を信用出来たのだろう。
「……俺が居た世界はあの邪神を名乗る存在に滅ぼされた。偶然にも生き残った俺は世界を転々として、いつの日か邪神を倒そうと力を付けていた」
「じゃあお前が前に言ってた妖精って」
「……その時に会った。ぬいぐるみのような見た目をした、少し変わった奴らだったな」
邪神と空界の言葉から察するに、あの邪神は複数の世界を滅ぼしてきたのだろう。そしてその中に空界が元々住んでいた世界もあった。
空界は邪神に世界が滅ぼされる前に逃亡し、妖精の居る世界━━━恐らくだが、ペンヨウ達の妖精国の事だろう━━━など複数の世界を渡り、邪神と戦う力を身につけた。しかし結果としては、俺が転生しているので……つまりは、そういうことだ。
「……この世界を知るため俺は学生として知識を付ける事にした。だが俺は昔のように失うのが怖くて、誰とも関わろうとしなかった」
「いや、お前わりと関わってたぞ。主に人助けで」
「……誰とも、関わろうとしなかった」
「無視すんな。ちゃんと話聞け」
世界が滅びると言うのに、俺は世間話をするかのように空界の言葉へ茶々を入れる。空界自身は関わらないようにしていたようだが、全然そんな事は無かったのだと、どうしても言いたかったのだ。
「……力を付ける過程で人を助けていった。助けて、助けて、助けて。いつしかそれが当たり前に思われていた」
「あの時と一緒だな」
あの時とは、空界が学校で周りに助けを求められていた時だ。空界は助けるのが当たり前、困ったら空界を頼る、そんな雰囲気が学校中漂っていた。
「……俺が困っていても誰も助けてくれなかった。なんて薄情なんだと絶望した。お前に会うまでは」
「あのお守りの時か」
「……あぁ。あの時のお前は素直じゃなかったが、俺を助けてくれた。確かああいうのは、ツンデレって言うんだった」
「どこで学んだ? ねぇ、その言葉何処で学んだ?」
空界の重い過去話を聞いていた筈が、いつしかいつもの雑談のようになっている。俺は最後でも変わらないなと笑みをこぼし、ふとある事を思い出す。
「あ、そうだ。はい、またお守り落としてたぞ」
「……しまった。ありがとう、聖夜」
「今度紐を硬く結ぶ方法教えるわ」
まるで平和な明日が訪れるかのように。
俺と空界は会話を続ける。これが最後の会話になる察していながらも、ギャーギャー喚いて震えるようも、せめて最期はいつものように過ごしたいと思って。
「つーか気になることあるんだけど、聞いて良い?」
「……最後なんだ。それぐらい構わん」
「アルティメットパンチって技名ダサくね?」
「……泣くぞ」
「ああ悪い悪い悪い! あー良いよなぁアルティメットパンチ。うん。なんかこう、響きがカッコいい!」
「……ふっ、そうだろう? この技名決めるのに1万年は使ったんだ」
「いや、もっと有意義な時間の使い方しろよ」
空界のネーミングセンスは一生、それこそ空界が俺のように転生していたとしても、名前のセンスだけは治ることは無いだろうと言う実感がすら。
そういやコイツ、一緒にゲームした時に主人公の名前を「主人公」にしようとしてたな。名前が主人公の主人公ってなんだよ、聞いたことねぇよ。
「…………空界」
「……なんだ」
「いや、なんでもない」
俺は空界だけでも逃げないのか、そう一瞬だけ聞こうとしたが、出来ているならとっくにしているだろう。それに空界はさっきかは口しか動かしていない。もう身体を動かす力も残っていないのだろう。
「……聖夜。最後に手、握って良いか?」
「おう。ついでにお守りも握っとけ、また落としたら探すの大変だからな」
「……じゃあ聖夜も一緒に握ってくれ。これなら失くさない」
俺は空界が落としたお守りを間に挟むようにして、空界と手を繋ぐ。その手は俺も空界も震えていた。
なんでもっと早く気付けなかった。その後悔が俺の心を絞め続ける。ちっぽけだろうとも、俺に超能力みたいな超常的な力があれば空界を助けられたかもと、悔やみ、後悔し、涙を流す。
「……聖夜。また明日な」
「あぁ、また明日会おうな」
俺は空界と一生果たせない約束を交わし、とうとう力と意識を失い2度と動くことはなかった。
━━━もし俺に『次』があれば、空界のように戦っている超常的な力で戦っていたり、摩訶不思議な生物だったりを
【
元居た世界が邪神に滅ぼされたが偶然にも生き延び、邪神討伐を掲げて長年、数々の世界を渡りながら力を付けていった。あとついでに妖精国にも行った事がある。世界と共に消えているので、本編開始時点で既に故人。
名前の由来:世界を渡る、空間を渡る
ちなみに『
次回から
【第二回】好きなキャラアンケート
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超能 力男
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マホ・ツカエール/スカイブルー
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赤元 勇子/スカイレッド
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長神 咲黄/スカイイエロー
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恋路浜 緑/スカイグリーン
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ペンヨウ(マホの妖精)
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ライヨウ(勇子の妖精)
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フクヨウ(咲黄の妖精)
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クラヨウ(緑の妖精)
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アクロコ
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リュウ/スリュウ・コマツール
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アヤイト・コマツール
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ワルインダーの総帥
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草加 ラン
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力学 心(ガク先輩)
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陸上部の部長