【完結】俺のクラスメイトが魔法少女な件   作:のろとり

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第百二十一話 俺の友達が戦いへ旅立つな件

「何をそんな叫んでいるのかね力男くん」

 

「叫ぶに決まってるだろうが! 消えるも滅ぶも意味一緒だから、同じ運命だからな!」

 

 何が「安心したまえ」だよ。何処に安心出来る様子があるの? 不安しか無いよ。つーか転生したのにまた世界が滅ぶとか嫌なんだけど。もうあんな思いしたくないんだけど。

 

「力男さん、落ち着いてください」

 

 俺が動揺している姿を見てかマホは真剣な顔で、だが子どもに語り掛ける母親のように、相手の気持ちを尊重するような優しい声色で話しかけてきた。

 

「世界が消えるなんて結末、私達は受け入れられません。リュウさんのお義姉さんには何か叶えたい願いがあるのかもしれませんが、こんな方法は間違って……あ、お代わり頂きますね。モグモグモグモグ」

 

「マホ、鮭の入ったお握りってあるセイ?」

 

「私が今食べてるのがそれですね。食べますか?」

 

「ありがとうセイ!」

 

「…………」

 

 なんだコイツら。

 そんなにも真剣な表情してるから、何か良いこと言うと思うじゃんか。食事優先するのかよお前……いや、さっきガク先輩に食べるか話すかの二択を選ぶよう言われてたから、今もその二択で食べるのを選んだのは容易に想像つくけどさ。もう少し食べるの我慢出来なかった?

 

「そうだよ力男くん。ここは私達に任せゴホッゲホッ! 待っで、お茶が気管に入っ……!」

 

「勇子、背中叩くライ。それで呼吸を整えるライ」

 

「ごめっ、ライヨウ!」

 

「…………」

 

 むせてるじゃねーか。

 任せてほしいって言おうとしたんだろうけど、この状況見てると任せるの怖いんだけど。この後ラスボス戦なんだけど、ワルインダーの親玉こと総帥との戦いが待ってるんだけど。

 

「ソワ……ソワ……」

 

「どうした咲黄、そんなソワソワして。もしかして世界が終わるって聞いて落ち着かないのか? まぁ無理も無いよな。世界の命運を背負えなんて辛いだ」

 

「お兄ちゃん、もう走ってるかなぁ……」

 

「こんな状態なら大会自体が開催してないと思うフク」

 

「え!? じゃあ早く元凶をボッコボコにしないと!」

 

「…………」

 

 怖いんだけど。

 勇子に感じてた「任せるのが不安で怖い」って感情じゃなくて、ただただ純粋に咲黄が怖いんだけど。ブラコンをこんな状況でも突き通してるのはもはや尊敬の粋にあたるけど、兄の為にこの元凶をボコボコするって発言するの怖いんだけど。

 

 え、冗談だよね。お前の目の前にその元凶の義弟居るんだけど。義弟、お前の姿見てガタガタ震えてるけど。その発言冗談と捉えて良いんだよね、本気じゃないよね?

 

「力男、私達が戦っている理由を覚えてるかしら?」

 

「ああ。街やともだ」

 

「この街や友達を、この平和な生活を守るためよ」

 

「俺の言葉に被せるの止めてね?」

 

 なんだこのボケ集団。

 食事優先するし、喋ってる途中でむせるし、ブラコンだし、言葉を遮ってくる。もしかして不安なの? 世界を命運なんて重荷背負ってるから不安になってる? 

 

「私達を信用しなさい。それとも、私達が信用出来ないのかしら?」

 

「いや、自分の欲しか考えてなかったり、今の光景見たら信用も何も無いんだけど」

 

「何も返せないクラ」

 

 どんなに強大な力を持っていようと、世界を滅亡させようとする組織と戦っていようと、実際はただの人間であり子どもだ。宿題を後回しにして遊びたいと言う欲を優先したり、自分の守りたいモノが守れないと思わず感情が爆発したりと、魔法少女は完璧な存在ではない。

 

 それは分かってる、だが言われてくれ。

 さっきの光景見て「信用しろ」はもはや一周回ってボケだろ。完璧な存在じゃないのは分かってるけど、ここまでボケられて信用しろ言われても困るだけなんだけど。

 

「……うん。私達を信用してくれてるようで安心だわ」

 

「おーい、人の話聞け。数秒前の記憶飛んだ?」

 

「ちょっと何言ってるか分からないわね」

 

「お前が何を言っているんだ?」

 

 どうやら緑は誰かに記憶を改竄されてしまったらしい。俺は信用が地の底に落ちる光景を見たと言った筈なのに、何故か緑の中では俺が緑達の事を信用している事になっているようだ。わぁ大変だ、どうにかしないとなー。

 

「さて、茶番は終わったかね?」

 

「茶番言うな。あってるけどさ」

 

 このままボケる状況が続くと思われたが、完全に肩の力が抜けたと判断したガク先輩の鶴の一声で、俺達はふざけるのを止めた……いや、実際にふざけてたのは緑だけだが。

 

 マホは天然だし、勇子は単に喋ろうとしてお茶が気管に入って、咲黄は純粋にブラコン。あれ、じゃあ3/4が素でボケてただけじゃね?

 

 その言葉が喉まで出掛けたが、俺は口を閉ざして言葉を飲み込む。世界滅亡のカウントダウンが迫ってでも、ガク先輩は肩の力を抜かすために俺達がふざけるのを眺めるだけだったんだ。

 

 それをわざわざ止めたとなると、ここからは真面目な話をするのだろう。これ以上ボケに加担するのはここで終わりだ終わり。

 

「さて。マホくん達が魔法世界に行くのは確定として……力男くん、アクロコくん、リュウくんはどうするかね? ちなみに私はここに残る。帰りを確保する必要があるからね」

 

 てっきり全員で魔法世界行ってワルインダーに殴り込みを掛けるのかと思ったが、ガク先輩はこの場に残るようだ。

 

 よく考えたらそうか。魔法世界を行き来する空間が不安定な状態だから、マホと妖精達はあっちの世界が出身だから兎も角として、もし空間が閉じるような事態が発生したら勇子達が帰れなくなる。

 

 ワルインダーを倒せたとしても、帰れないなら完全な勝利とは言えない。帰るまでが遠足と言う言葉があるように、帰るまで戦いは終わったと言えないのだから。

 

 だから帰り道を確保する人材、及び空間が不安定にならないようメンテナンスする人材としてガク先輩は確実に残らないと駄目か。仮に空間が消えたとしても、ガク先輩なら再構成出来るかもしれないし。

 

「僕は行きまス。総帥……いエ、義姉さんがどうしてこんな事をしたのか知りたいんでス」

 

 どうやらリュウはマホ達に付いていくようだ。

 ワルインダーのアジトの外観とかを知っているから案内人として適役だろうが、まぁ……一番の理由は今言った通りに話がしたいからだろうな。

 

 俺やマホは兎も角として、同じ組織に居たアクロコや家族のリュウですらワルインダーの目的に関する概要は全て知らない。

 

 もし全てを知って再度敵対するような行動を取ったとしても、俺達はリュウと戦いはするだろうが、言葉で攻めたりはしない。何故ならそれは何もかもを知ったリュウ自身が、納得して決めた選択だからだ。俺としては敵対してほしくないが……その辺りはリュウ次第だな。

 

「ワニャアはここに残るセイ。総帥に一言ぐらいは怒りをぶつけたいワニが、それは終わってからでも出来るワニ」

 

 そして意外にもアクロコはここに残るようだ。

 てっきりマホ達に付いていくと思ったんだがな……あ、もしかしてだけど今会ったら命取られると思ってるのか?

 

 まぁ手を下したのがコマツールと言えど一度抹消され掛けたからな。組織を抜けたリュウは兎も角として、ワルインダーはアクロコが生きているのを知らない。もし和解も何もしてない状態で会えば問答無用で再び命を狙われるだろう。

 

「それじゃあ俺は……」

 

 どうするべきか。

 正直に言えば怖い。邪神に出会った時のように、強大な力に何も出来なかったのを思い出してしまう。もう二度と同じ思いはしたくない、そう誓ったのに世界を滅亡させる存在と対峙する事を考えるだけで身体が震えてしまう。

 

 だが俺は元々、戦うためにこの力(超能力)を手に入れた訳ではない。空界のように、今のマホ達のように超常的な力を持つ奴らを支える為に、助ける為に手に入れたのだ。

 

 もしこんな状態の俺がマホ達に付いていっても、助けるどころか助けられるだろう。足手まといになる、それだけは避けたい。

 

 それに……ここから先は支えるや助けるなんて話じゃない。マホ達とワルインダーとの意地と意地のぶつかり合いだ。そこに俺が、部外者が介入する余地は無い。

 

「俺はここに残る。これはお前らがケリをつける話だからな」

 

 歯痒い思いはあるが、これ以上俺が出来ることは何も無いからな。今の俺が出来るのは精々、マホ達がワルインダーの総帥を倒して和解するのを祈るだけだ。

 

「ふむ。どうやらメンバーは決まったようだね。ではこれを渡しておこう」

 

「これはなんですか?」

 

 いつから用意していたのか、ガク先輩は部室に置いてある机の引き出しを開け、そこから小さなバッヂをマホへと投げ渡す。

 

「通信機さ。ま、これで出来るのは私が君達の声を聞く事。そして此方から喋ることだがね」

 

 何その名〇偵コ〇ンに登場する探偵団バッヂの下位互換みたいなの。でもこれがあれば待機してる俺達にもマホ達の状況が伝わるのか。中々に便利だな。

 

 俺自身は千里眼+念聴で、マホ達の状況を声だけとは言えど確認出来る。だがガク先輩とアクロコはそういう訳にはいかない。俺が得た情報を共有する、と言う手もあるが超能力で読み取った内容を一言一句口頭で伝えるのは手間である。てか普通に面倒臭い。

 

 それだったら今ガク先輩がマホに渡した通信機のように、最初から全体で情報を共有した方が楽だ。

 

「では全員でこの空間に手を伸ばして、魔法世界へ行くよう願いたまえ」

 

「はい!」

 

 マホ達は先ほどガク先輩が展開させた、不安定な空間へと手を伸ばして目を閉じて願い始める。すると空間が段々と形を精製し始め、俺が前世に見た時と同じ空間が構成された。

 

 これで魔法世界に行けるのか。この空間を見てると邪神を思い出すようで気分が悪いが、世界の滅亡を止めるための方法って考えると心強いな。

 

「やったー! 2回目の世界旅行だー!」

 

「勇子、別に私達は旅行する訳じゃないのよ?」

 

「文字通り世界を飛び越えてるから、言葉の意味がちょっと違うかな……」

 

「それでは行ってきます!」

 

「義姉さン。貴方はいったい何を考えテ……」

 

 空間が構成されると共に1人、また1人と続々魔法世界へと旅立っていく。そしてとうとう、魔法世界に行くメンバーはペンヨウだけとなった。

 

「力男、約束忘れたら駄目セイよ!」

 

「分かってる。また明日、だったな。日付としては今日だけど」

 

「覚えてるなら良いセイ。戻ったら沢山遊ぶセイ、だからゆっくり待ってるセイよ!」

 

「あぁ。ゆっくり待ってるさ」

 

 その言葉を最後にペンヨウは空間を潜り、魔法世界へと旅立った。世界を守る為に、ワルインダーの総帥を倒す為に。

 

「…………また明日、か」

 

『……聖夜。また明日な』

 

『力男、また明日遊ぶセイ!』

 

「今度こそ、その明日を迎えたいな」

 

 俺は前世で果たせなかった約束を思い出し、今度こそその約束を叶えたいと、誰にも聞こえないほど小さな声でボソッと小さく呟くのであった。




 今回何故かギャグになりましたが、全体的に見ればこの章は6章(体育祭&コマツール戦)よりもシリアスなんだ、シリアスなんだよ……。


 次回はマホ視点になります。
 力男は部室に残ってるので戦いに不参加です。それで良いのか主人公と思われそうですが、ずっと主人公は戦いには出向かない選択肢を取ってましたからね。最終決戦だからと、顔を出すのはちょっと違和感がありますので。

【第二回】好きなキャラアンケート

  • 超能 力男
  • マホ・ツカエール/スカイブルー
  • 赤元 勇子/スカイレッド
  • 長神 咲黄/スカイイエロー
  • 恋路浜 緑/スカイグリーン
  • ペンヨウ(マホの妖精)
  • ライヨウ(勇子の妖精)
  • フクヨウ(咲黄の妖精)
  • クラヨウ(緑の妖精)
  • アクロコ
  • リュウ/スリュウ・コマツール
  • アヤイト・コマツール
  • ワルインダーの総帥
  • 草加 ラン
  • 力学 心(ガク先輩)
  • 陸上部の部長
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