【完結】俺のクラスメイトが魔法少女な件   作:のろとり

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 一話に纏めるには短い話を短編集と言う形で一つに纏めてみました。時系列や視点はぐちゃぐちゃなので0.5話扱いです。
 今回は一話二千文字程度の短編5本立てです(計1万文字越え)。お品書きは下記の通りで、読みたい話にすぐ飛べるようURLも付けておきます。

・持ち物検査~力男視点~

・魔法世界でマホと再開~マホ視点~

・マホにホラを吹く力男とラン~力男視点~

・逃亡するワニヨウと妖精達~ワニヨウ視点~

・学生組の防寒対策~力男視点~


その6.5 俺達の小話が集合な件

【持ち物検査~力男視点~】

 

「そこ、ぬいぐるみは学校に必要無いから持ってきたら駄目だぜ」

 

 これはまだ魔法少女がマホと勇子の二人だけだった頃。リュウが転校してからしばらく経った時期にあった出来事。

 俺はランと一緒に登校していると、先生が校門の目の前に立って持ち物検査しているのを見つけた。とは言っても、俺は特に関係無いけどな。変な物とか持ち込んで無いし。

 

 それにしても、ぬいぐるみねぇ……まさか学校にぬいぐるみを持ってくる奴が居たなんて。全く誰だよそんな事してるのは。ちょっと気になるし顔ぐらい見てみるか。

 

「え、あ……いえ。これはぬいぐるみでは無くてですね」

 

(どうしましょう。このままだと先生にペンヨウが没収されてしまいます!)

 

 いやお前(マホ)かよ?

 何してるの? ねぇ何してるの!? 確かにぬいぐるみに見えるけどさ、それを否定するつもりは無いけどなんで朝から妖精(ペンヨウ)が没収されかけてる現場を見る羽目になってるんだよ!?

 

『あわわ……どうしようライヨウ。このままだとペンヨウが没収されちゃうよ!』

 

『諦めるライ』

 

『ライヨウ!?』

 

 マホが先生に問い詰められているのなら、同じように妖精を連れている勇子はどうかと、周りを見渡すとどうやらまだ荷物検査を受けていないようで、マホを遠くから見ながら何かボソボソと独り言を喋っていた。

 

 テレパシーでその内容を確認すると、バッグの中に隠しているライヨウと話しているようで、ペンヨウが回収されない方法を話し合っているようだが、ライヨウはペンヨウを助けるのを完全に諦めていた。

 

 多分だけど、無理に助けようとしたら余計騒ぎになるからだろうな。正直に妖精うんぬんの話を伝えてもより疑いが増すだけだろうし、無理矢理荷物検査を突破した所で後で先生に呼び出し喰らって問い詰められるだけだろうし。

 

「なぁ勇子」

 

「うわぁ! ってなんだ、力男くんか」

 

「声掛けただけで驚かれるのはちょっと心にくるな……まぁ良いや。あのマホが持ってるのって大切なモノなんだろ?」

 

「え? う、うん。先生に没収されると凄い困る!」

 

 テレパシーで勇子達の事情は知っているが、勇子達からすれば俺が魔法少女だの妖精だのの秘密を知っているのを知らない。事情を一切聞かずに助ける事も可能だが、端から見れば学校の規則を破っているマホに非がある。

 

 ここでマホを庇ったとしても、マホや勇子からすれば俺がペンヨウを庇う事を不思議に思うだろうし、先生からしてもそこまで庇うなら逆に何かあると疑われてしまうだろう。

 

 幸いにもマホの日頃の行いもあってか、単に間違えて学校に持ってきたと思われているようだ。放課後には返されるだろうが、もし手元にペンヨウが居ないと、そこで学校にお菓子を持ってきて没収されているリュウに知られれば面倒な事になるだろう。

 

 例えばマホとペンヨウが離れ離れの時に怪人を呼び出されたり、ペンヨウを誘拐させられたりと……膝をついて落ち込んでいるリュウにそこまで考えられる余裕は無いだろうが。念には念を入れた方が良いだろう。

 つーかアイツ、自分の使命忘れてないよな。いや、忘れてた方が嬉しいんだけどね。嬉しいんだけど、それはそれで純粋に心配になる。

 

「ラン、あれ回収出来そうか?」

 

「朝飯前だ。任せとけ!」

 

 ならする事は一つ。先生に見つからずペンヨウを確保する、それに限る。

 学校の規則を破るのは心苦しいが、世界が終われば規則も守る事も破る事も出来ない。それと俺の超能力だと回収しようとすると、誰かに見られるので無理だ。

 

 本当はランの力を借りずに一人でどうにかしたいが、サイコキネシス使って誰にも見つからない屋上へ運んだとしたら、確実に周りに居る生徒の誰かに空飛ぶぬいぐるみとして見られて注目を浴びるだろう。それ以前にペンヨウが勝手に身体が動くって驚いて喋りそう。

 

 他に使えるとしたらテレポートだろうが、マホ達は俺の超能力について何も知らないからな。突然景色が変わればペンヨウは驚くだろうし、なんとかマホと合流しようと学校内を動き回れば騒ぎになるだろう。うーん、やっぱこの超能力わりと使える場面限られるな。

 

「隠しても無駄だぜ。放課後にはちゃんと返すから、今は先生に預けるぜ」

 

「で、ですが」

 

「イヤッフウウウウ!」

 

 先生に没収されないように背中にペンヨウを隠し持つマホの後ろを、ランは某赤い配管工のような声出しながら強風を起こして走り、そのまま荷物検査を無視して教室へと逃げ込んだ。

 あ、そういやランはまだ荷物検査受けてなかった。ま、まぁランは学校に変なモノは持ってきてない筈だ。そう思う事にしよう!

 

「い、今のは……?」

 

「マホちゃんマホちゃん」

 

「どうしました勇子ちゃん」

 

「今ランちゃんにペンヨウを持ってもらってるから、検査そのまま通れるよ!」

 

「え!? ハッ、ペンヨウが居ないです! じゃあ今の風は」

 

「うん。ランちゃんだよ」

 

 困惑するマホの肩を指先で叩き、事情を説明する勇子。

 あまりにも一瞬すぎる出来事だったのでペンヨウが居ないの気付かず、少しだけ驚いた様子を見せたマホだったが、事前に事情を説明していたからか、その驚きもすぐに収まった。

 

「ん、あれ。ぬいぐるみは何処に行ったぜ?」

 

「き、気のせいじゃないかな〜。そ、それよりもマホちゃんの荷物は確認終わったよね。ね!」

 

「先生。後が詰まってるから早く勇子の持ち物確認お願いします」

 

「あ、あぁ。分かったぜ。ツカエール、取り敢えずは教室に行っていいぞ」

 

「は、はい」

 

 よし、これで問題は解決したな!

 俺は心の中でガッツポーズして、マホが教室へと向かうのを見送る。勇子もランと同じように没収されるようなモノは持ってきてないだろうし、俺自身も問題ない。勝ったなガハハ!

 

「赤元、これなんだぜ?」

 

「「あっ」」

 

 そう調子に乗っていたのが行けなかったのだろう。

 勇子のカバンをチェックする先生の手元にぬいぐるみ……もとい、勇子がさっきまで話していた妖精のライヨウが不満そうな顔で持ち上げられていた。

 

 この後めっちゃ誤魔化してライヨウを回収した。

 いや、あの……うん、ごめん。お前のこと忘れてた。

 

 

 

 

 

【魔法世界がマホと再開~マホ視点~】

 

「マホ、朝よ~!」

 

「うぅん。後もう少し……」

 

「ほら。早く起きなさい!」

 

「わぁ! さ、寒いです……ってあれ。お母さん!? どうしてここに!?」

 

 今日は朝から一段と冷えるようで、もう少し寝ていたいと毛布を被ろうとしましたがお母さんに剥がされてしまいます。

 体内時計の感覚からしていつもより早い時間ですし、学校まではまだ時間があります。なので暖まってから毛布から出ようとしましたが、お母さんが目の前に居ることに驚き眠気が吹き飛びます。

 

「どうしても何も、此方に帰ってきたのでしょう? まだ寝ぼけてるのかしら」

 

「え? あ、そうでした」

 

 帰ってきた。そう話すお母さんの言葉と共に、寝ぼけていた頭が働き始めて昨日の出来事を思い出します。

 昨日は確か……あぁそうです。リュウさんのお姉さんであるワタカラと戦って、全てを裏で手を引いていたコマツールもとい、邪神ハメツールを倒しました。

 

 その後は一度勇子ちゃん達の世界に戻った後、皆さんに別れを言って魔法世界に帰って来たんでした。たった1日……もっと言えば半日も経っていない短い時間でしたが、とても濃い出来事でした。

 

 全ての元凶であるハメツールを倒した為、今後は魔法少女に変身するような機会は訪れないでしょう。そして、此方と彼方の繋がりが途絶えてしまった以上、今後勇子ちゃん達と再開する機会も……。

 

 ガク先輩は「また会える可能性自体は存在する。けれど実際に実を結ぶかどうかは難しく、生きている間に成功するかも限らない」と言ってしました。

 

 ですが希望を捨ててはいけません。

 ガク先輩も魔法世界と彼方の世界を頑張って繋げようとしてくれているでしょうし、私も何か出来る事がある筈です。妖精国は復旧している頃で私が今行っても邪魔になるでしょうから、まずは城下町に行って図書館で勇子ちゃん達の世界に行く方法が無いか調べるとしましょう!

 

「それとマホ、貴方にお客さんよ。お店で待ってもらってるから早く顔を出しなさい」

 

「私にお客さん……?」

 

 そう意気込んでいましたが、お母さんの言葉によってその勢いは収まります。

 私に用事がある人なんて珍しいですね、それにこんな朝早くからなんて。ペンヨウ辺りが私の様子を見に来たのかと思いましたが、ペンヨウは朝が苦手なのでここに来ているとは考えにくいです。ならばいったい誰が?

 

 私は疑問を胸に抱きながら、着替えてお店の方に出ます。朝御飯はまだ食べていませんが、待たせてしまっているようですからね。せめて顔だけは先に出しておかなければいけませんね。

 

「魔法世界のご飯美味しいな。ところでちゃんと金はあるのか? 無断飲食とか俺嫌だぞ」

 

「安心したまえ。以前ここに来た時に換金済みさ」

 

「それなら良かったけどさ……お、マホ起きたか。昨日ぶりだな」

 

「やぁマホくん。お邪魔させてもらっているよ」

 

「?????」

 

 お店の方に顔を出すと、昨日別れの挨拶を言った力男さんとガク先輩が居ました。

 えっーと…………うん。ちょっと待ってください。

 

 ここは一度昨日の出来事をもう一度思い出すとしましょうか。

 私はまず勇子ちゃん達に別れを言いました。次にガク先輩に二度と会えない可能性が高いと言われました。そして魔法世界に帰ってきて久しぶりに自分の家で寝ました。

 

 それが昨日あった事です。そして今日はそれから1日経ちました。つまりは明日と言う事になります。

 ガク先輩は言いました。生きている間に勇子ちゃん達と再開出来る可能性はあまりにも低いと。そんなガク先輩、そして私達を影ながら支えてくれていた力男さんが目の前でご飯を食べています。

 ふむふむ、なるほど。全てを理解しました!

 

「おやすみなさい」

 

「今の間に何があった!?」

 

 目の前の出来事は全て夢だと思った私は、その場で横になり寝ようとしましたが両肩を力男さんに掴まれ、起きろと身体を上下に揺らされます。

 

「離してください力男さん。私は夢から覚めるために今から寝るんです」

 

「言ってる事が支離滅裂なんだが!?」

 

「まぁ落ち着きたまえ。ここは私から説明しよう」

 

 そう混乱している私を見て、昨日別れた以降の説明が必要だと思ったガク先輩が一度席へ座るようジェスチャーをし、まずは落ち着いて話を聞くべきだと示してきます。

 

「端的に話すと、奇跡が起きて私達の世界と魔法世界が行き来可能になった。これでマホくんは勇子くん達といつでも会えるよやったー。説明は以上さ」

 

「?????」

 

「ガク先輩、全部あってるけどザックリしすぎだ」

 

「ふむ。理論や詳細を述べるよりも、淡々と事実を伝えた方が混乱しているマホくんの頭に入ると思ったのだがね……」

 

「その結果放心してるんだが!?」

 

 私はガク先輩の説明に頭が落ち着かず、口をポカンと開けてフリーズするのでした。

 

 

 

 

 

【マホにホラを吹く力男とラン〜力男視点〜】

 

 ランにプレゼントを渡した日から数日ほど。俺とランとマホは放課後の教室で雑談していた。俺の家で集まって時折遊ぶメンツではあるが、外でこの三人ってのは珍しいと思う。いつもならここに勇子や咲黄、緑やリュウが居るしな。今日は各々用事があってこの場に居ないけど。

 

「知ってるかマホちゃん? ジュースって他のジュースと混ぜるとより美味しくなるんだぜ」

 

「そうなんですか!?」

 

 おい待て何教えてんだ。

 お前(ラン)アレだろ。ラーメンにカレーとケーキ混ぜたら美味いと思ってるだろ。そんな訳ねぇからな。

 

 個性と個性がぶつかり合って没個性になるだけだから。野菜ジュースとコーラ混ぜた所で完成するのはコーラの味がする野菜じゃなくて、無駄にシュワシュワする野菜だからな!

 

「マホは半年ぐらい前まで海外暮らしだっただろ? だからそういうちょっとした裏技には疎いんだろうな」

 

 けどその話には乗った。

 俺はランの言葉を修正せず、そのまま話に乗っかった。まぁ流石のマホも話を続けていけば嘘だと気付くだろ。素直すぎて嘘を嘘だと見抜けないけど、地頭自体は良いから違和感を覚えるだろうし。

 

「でも力男さん達は混ぜずにそのまま飲んでますよね?」

 

「それはアレだ。カルピスって原液のまま飲まずに水で割るよな? つまり俺達は原液のまま飲んでる。大体そんな感じだ」

 

「な、なるほど!」

 

 通っちゃったよ。

 自分でも苦しい嘘ってか、明らかに怪しい嘘付いたのに曇り一つ無いキラキラした目で頷いてるよ。止めろ、そんな純粋な目を俺に向けるな。罪悪感で胸が締め付けられる。

 

「じゃあ緑ちゃんがこの前コーヒーにミルクや砂糖を入れてたのも!」

 

「…………あぁ。そういう事だ」

 

「そうだったんですか!」

 

 んな訳ねぇだろ。

 俺は内心突っ込むが、その言葉を表に出す事が出来なかった。

 

 収拾付かなくなってきたんだが、これどうしよ。

 マホに「実は嘘でした〜」ってバラすか? いや、でもマホの事だからそれを「またまた、冗談なんて言ってどうしたんですか。さっき力男さんが自分で言ってたじゃないですか。ジュースはコーヒーのように混ぜるものだって」と、俺のさっきの発言信じてマトモに受け取ろうとしないかもしれない。

 

「今度一緒にジュース混ぜようぜマホちゃん!」

 

「メロンソーダにオレンジとリンゴと混ぜたら美味しいですかね!?」

 

「あー……きっと美味しいと思うぜ!」

 

 やべぇよ。この話振ったランですらソッと目を離してるよ。マホの言葉を否定しきれずに、言葉濁してるよ。これお前が始めた物語だろ……。

 

「なぁラン、なんか後戻り出来なくなってきたんだけど。どうする?」

 

「元々は力男のせいだぞ。オレは純粋にジュース混ぜると美味しいって話してたのに」

 

 え、そうなの?

 俺てっきりランが冗談言ってるだけと思ったんだけど。でもよく考えたら、ジュースを混ぜて飲む話はたまに聞くな。俺はやった事ないから本当に美味しいか知らんけど。じゃあアレか。つまりは俺の勘違いか。

 

 ふむ。なるほどなるほどぉ…………よし、ここは素直に言おう。

 この前のドッヂボールの件で学んだからな。素直に、そしてすぐに謝らないとバチが当たるって。あとちゃんとケジメも付けないと。

 

「なぁマホ。一つ良いか?」

 

「はい。なんですか?」

 

「俺はマホに嘘をついた、悪い。だから詫びとしてここで切腹をする」

 

「え?」

 

「ラン。介錯を頼む」

 

「おう任された!」

 

 俺は床に正座し、定規を両手に掴んでケジメとしてランに介錯を頼んだ。

 ランが介錯━━━意味合いとしては、切腹してる相手の首を斬って楽にする事。まぁ今回の場合は実際に首を斬ったりしないが━━━の意味を知っているかは分からないが、任されたと言ってるので多分大丈夫だろう。

 

「許してくれマホ。これは俺のケジメだーッ!」

 

「あわわわ。止まって、止まってくださーい!」

 

 雑談をしていたら唐突に切腹をし始めようとする俺を、マホはいまいち状況が理解出来ないまま、慌てて切腹を止めるのであった。

 

 

 

 

 

【逃亡するワニヨウと妖精達〜ワニヨウ視点〜】妖精組

 

「逃げたフク! 追うフク、絶対に逃がすなフク!」

 

 世界に平和が戻ってから何週間が経った頃。

 ワニャア達は妖精国の復旧で忙しい日々が続きながらも、毎日を平和に過ごしているワニ。フクヨウが誰かを捕まえようと躍起になっているワニが、誰が何と言おうとも平和ワニ。

 

「待つヘビ〜」

 

「きっとまた彼処に行くつもりトラ!」

 

 城で働く兵士、ヘビヨウとトラヨウ━━━邪神を倒した後に妖精国と一緒に元に戻った妖精達だから、力男達は一度も会ったこと無いワニ1━━━がワニャアを追ってくるが何も聞こえないワニ。あー、いったい誰を追ってるワニかね~。

 

「逃げるなフク、ワニヨウー!」

 

 …………はい。ワニャアですワニ。

 世界が平和になった後、ワニャアは自ら牢屋に入って罪を償おうとしたワニ。けどフクヨウに「牢に入るのは国を復興させてからにするフク。人手が足らないから早く手伝うフク」と言われて渋々手伝ってたワニ。手伝ってたワニが、なんか仕事が増えてくるワニ。ある程度復興終わった筈なのに仕事が増えるワニ。

 

 何かおかしいと思って調べたワニが……そしたらフクヨウがワニャアを牢屋に入れないよう必要無いもの含めて沢山仕事を回してきてたワニ! 約束が違うワニ。落ち着いたらワニャアが牢屋に入るって約束だったワニ!

 

 だからワニャアも約束を破るワニ。約束を破って、ワニャアが居なくても手が回る程度の仕事を終わらせた後に、他の妖精達の目を盗んで牢屋に自ら入る事にしたワニ!

 

「はぁ、はぁ……しつこいワニ!」

 

 そんなワニャアを逃がさない為か、妖精国の城に居る妖精達がワニャアを捕まえようと追いかけ……なんか数多いワニね。さっきまで数匹だけだった筈なのに、百匹近く増えてるワニ。ワニャアの事どんだけ捕まえたいワニ!? と言うかそんなに居るなら何匹かは仕事に戻れワニ!

 

 このまま逃げてても埒が明かないワニ。それどころか、数の暴力でいつかは追い込まれるワニ。こうなったらあそこに逃げ込むワニ!

 

「ライヨウ、匿ってほしいワニ!」

 

「騒がしいライ。いったい何してるライ」

 

 ワニャアは図書館で本の整理をしてくれているライヨウの元へと駆け込んだワニ。

 本来ならライヨウは城に在住している訳では無いワニが、ガクが勝手に借りた本を元の場所に直したり、本の順番を直したりと秘書のような事を自主的にしてくれているワニ。

 

 そんなライヨウは慌ただしく図書館へ入ってきたワニャアに対して、顔でうるさいと言いながらも事情を聞いてくるワニ。けど外からバタバタと聞こえてくる足音が時間が無いのを示してくるワニ。

 

「説明する時間は無いワニ! 兎に角、ここにワニャアが居るのは秘密ワニ!」

 

「ワニヨウはここフク!?」

 

「図書館では静かにするライ」

 

 ワニャアがカウンターに隠れたと同時にフクヨウが扉を勢いよく開けて図書館に入ってくるワニ。その勢いで本が数冊床に落ちたような音がして、ライヨウの声に怒りが滲み出てるワニ。

 

 後が怖いワニがここは一旦黙るワニ。フクヨウ達がこの場を去ってからライヨウに謝って牢屋を目指すワニ。

 

「ライヨウ! ここにワニヨウは来てないフクか!?」

 

「…………その前に聞かせるライ。どうしてワニヨウを追ってるライ?」

 

「サボりフク」

 

「ワニヨウはそこライ」

 

「ライヨウ!?」

 

 一瞬でライヨウがワニャアを売ったワニ。

 どうしてワニャアを売ったワニか! 仕事を残して牢屋に入ろうとしてるからワニか! それとも図書館が騒いだワニか! はたまたフクヨウ達がワニャアを追って結果的に図書館を荒らしたからワニか!? ……ちょっと売られる心当たりが多すぎワニね。

 

「ここは逃げるワニ!」

 

「追うフクー!」

 

 

 

 

 

「なんとか、ここまで……逃げ切れたワニ!」

 

 あれから何度か隠れては見付かるのは繰り返したワニが、とうとうワニャアは牢屋まで逃げ切れたワニ。しかも牢屋の鍵はちゃんとワニャア自身が持ってるから、外から鍵を開けてワニャアを無理矢理出すのは不可能ワニ。

 

 これでワニャアの勝ちワニ。そしてワニャアはここで罪を償ってずっと投獄されるワニ! 今更ながら思ったワニが、逃げながら自分から牢屋に入るのっておかしな話ワニね。

 

「牢屋まで逃げ切るとは凄いフク」

 

「誉めたって何も出ないワニ!」

 

「いや、ワニヨウは凄いフク。あんな大勢から逃げ切るなんて普通じゃ出来ないフク」

 

「そ、それほどでも無いワニ」

 

「だからここから出るフク」

 

「えへへ~分かったワニ……って出ないワニよ!?」

 

 あ、危なかったワニ……!

 まさかワニャアを誉めて牢屋から出そうとしてたワニなんて。ワニャアでなければこの高度な罠に引っ掛かってたワニ。フクヨウ、なんて恐ろしい策士ワニ!

 

「なら次の作戦フク」

 

 フクヨウはまだ何か企んでいるようワニが、ワニャアはもう引っ掛からないワニ。どんな罠でも来るからこいワニ。ワニャアにかかれば簡単に突破するワニ!

 

「フクヨウ。注文の品を持ってきたクラ」

 

「ありがとうフク」

 

 どんな罠が来るのかと思えば、牢屋の前にやってきたのはクラヨウだったワニ。

 クラヨウは自分の店を再開させたと噂で聞いたワニが、注文の品を持ってきたと言ってる所から察するに、フクヨウが出前でもしたワニかね?

 

「何を持ってきたワニ?」

 

「カツ丼クラ」

 

「美味しそうワニ……で、でもワニャアの決心は食べ物程度で揺るがないワニ!」

 

「そんな警戒しなくても、これはワニヨウに渡す用フク」

 

「え、そうワニか?」

 

 ワニャアは無意識の内に出ていたヨダレを吹いてフクヨウの言葉にキョトンとするワニ。

 なんだ、警戒して損したワニ。でも牢の中だと鉄格子が邪魔してカツ丼が受け取れないワニ。鉄格子の隙間はワニャア達妖精でも出入り出来ないぐらい小さいワニだから、どんぶりが通る隙間なんて無いワニ。

 

「ワニヨウ。檻が邪魔でカツ丼渡せないから一旦出てくるフク」

 

「分かったワニ」

 

 まぁ仕方ないワニね。

 牢屋の鍵はワニャアが持っている以上、外からどうやっても開けられないワニ。かと言ってここで意地を張って食べない選択肢を取ったら折角作ってくれたのにが勿体ないワニ。べ、別にワニャアがカツ丼食べたいとかじゃないワニよ! 本当ワニよ!

 

「牢屋を出たワニ。だから早くカツ丼を渡すワニ!」

 

「今フク!」

 

「捕まえたヘビ~」

 

「もう逃がさないトラ」

 

「え? あ、しまったワニー!」

 

 クラヨウからカツ丼を受け取ろうと牢屋から出たワニが、これはフクヨウの高度な作戦だったようで、ワニャアが牢屋から出た瞬間に物陰に隠れていた兵士に押さえつけられたワニ。

 

「このまま王室まで運ぶフク!」

 

「騙されたワニー!」

 

 ワニャアは抵抗するワニが、昔━━━ワルインダーで幹部をしていた頃━━━のような力が残っていないワニャアは兵士達の拘束を解くことが出来ずに、そのまま王室へと逆戻りとなったワニ。

 

 次は誰にもバレないようにこっそり脱出をしようと、クラヨウ特製のカツ丼を食べながら心に深く誓ったワニ。あと今度からお昼はクラヨウに頼んでカツ丼を出前してくれるよう頼むのも忘れないようにするワニ。

 

 

 

 

 

【学生組の防寒対策〜力男視点〜】

 

「おはようございまス」

 

「おはよう」

 

「よっ、リュウおはよう!」

 

「あぁランさン。おはようございマ……ス?」

 

 朝、教室に来て授業の予習をしていたリュウに挨拶をすると、俺達に視線を向けたリュウは目の前に見えるものが幻覚であるよう祈り、一度目元を抑えて再度開く。

 

「すみません状況が理解出来ないでス」

 

「寒いから力男で暖まってんだ! リュウも暖まるか!?」

 

「お前は俺を下敷きにする気かよ」

 

 しかし目の前の光景……ランが俺のコートを着ながら背中に乗っている━━━所謂二人羽織のような━━━姿に変化は無い。ランは甲羅に籠る亀の如く俺の背中に縮こまっていたが、リュウに話しかける時と話しかけられた時だけ顔を出している。

 

「つーかそろそろ降りてくれない? 教室着いただろ」

 

「やだ! HR始まるまで力男の背中にくっつく!」

 

「周りからの視線が痛いんだよ!」

 

 二人羽織で登校してきてる光景が明らかに異質なんだよ! あといい加減降りろ。両手両足でバッテン作るように背中に乗ってるせいで、俺全然暖かくないから。制服とコートの間にランが入ってるのが理由で隙間風めっちゃ吹いてくるから。

 

 スカートじゃなくてズボン履いてる分、多少は寒さを軽減出来てるんだろうけど、ランは寒くないのかよ……あぁいや。いつも動いてるから常時体温が高いのか。

 

「おはようございます」

 

「みんなおっはよ〜!」

 

「おはようマホ、勇子。来たばかりで悪いんだが、ランを説得するのを手伝って……」

 

 俺がどうランを背中から降ろそうか考えていると、グッドタイミングと言うべきだろうか。マホと勇子が一緒に登校してきた。

 俺は二人にどうにかしてランを引き剥がしてもらおうと考え、後ろを振り返ったが、そこで見た光景に言葉を無くした。

 

「…………マホ。その格好はなんだ」

 

「二人羽織と呼ばれるものです!」

 

「合ってるけど求めてた答えと違う。てかなんでそんな格好してんだ」

 

「勇子ちゃんが寒いそうでして。これなら登校と防寒を同時に行えますよ!」

 

「ふっふーん。私が思い付いたんだよ!」

 

「ランと同じ事言ってやがる……」

 

「え? あっー! 本当だ!」

 

「お揃いだな勇子ちゃん!」

 

「二人羽織をお揃いなんて表現するの人生で一度も無いだろ」

 

 みんな考えてる事は同じってことか。いや、普通二人羽織が被るなんて無いけどね。ランも勇子も何があったら「寒いから二人羽織しよう」なんて発想になるんだよ。

 

「みんなおはよぉ〜」

 

「咲黄さんおはようございまス。この状況をどうにカ……」

 

「お兄ちゃん、教室着いたから降ろしてぇ~」

 

「分かった!」

 

「あノ、すみませン。それ最近の流行りなんですカ?」

 

 訂正しよう。咲黄も同じ事を考えていた。

 優正に背負われて教室に来た咲黄は寒いのに弱いのか、完全に開き直っていない目を擦りながら優正の背中から降りる……が、寒いのか降りたのにもう一度乗り、優正はそれが当たり前と言わんばかりに咲黄を背負いまた二人羽織を再開する。

 

 え、なに。俺が知らないだけで寒い日は二人羽織して学校に登校するのが流行ってるの? 聞いた事無いよ俺の学校で二人羽織が流行ってるなんて。それとも単にコイツらがおかしいだけか?

 

「おはようって、えっと……これは一体どういう状況かしら?」

 

「あ、良かった。緑は二人羽織じゃない」

 

「二人羽織が複数人居る方が珍しいわよ!?」

 

 良かった、単にコイツら(ラン達)がおかしいだけだった。

 俺は緑が普通に登校してきた姿を見て、自分の認識は間違っていなかったんだと安堵して緑に状況を説明する。

 

 まぁ状況を説明すると言っても、寒いから二人羽織で登校してきたらみんなのアイデアが被ったってだけなんだけどな。うーん、言葉にすると意味不明。

 

「そういや優正は隙間風とかで寒くないのか?」

 

「咲黄が居れば寒さなんてへっちゃらさ!」

 

「お兄ちゃん……!」

 

「咲黄……!」

 

「あそこだけ温かそうですネ」

 

「そうだな」

 

 きっと咲黄と優正の周りだけ暖房でも付いてるんだろうなぁ。

 兄妹のイチャイチャを軽くスルーし、冷えた手をランの首筋に当てて寒さで驚いた拍子に背中から降ろす作戦を実行していると、緑が何かを考えているような仕草をしているのに気付いた。

 

「どうした緑」

 

「そんな格好してて良いのかしらと思ってね」

 

「何がですか?」

 

 悪目立ちすると言う意味の言葉では無さそうだ。

 つーか既に悪目立ちしてるから今更か。じゃあなんの心配だ? 服が伸びるって心配じゃないだろうし、HRまではまだ時間があるから知らない内にHRが始まってるなんて話でも無いだろうし。

 

「一時間目、外で体育よ」

 

「「…………え?」」

 

「今暖まっていると、外に出た時余計寒いでしょうね」

 

 勇子と咲黄の疑問と絶望が混ざった声と共に俺は合点がいった。

 そういや一時間体育か。確かにそれなら暖まった状態で外に出るとより寒く感じるか。プールだって身体が暖かい状態で入ると寒く感じるし。水温に慣れれば寒さを感じなくなるけど、体温が高いほど慣れるのに時間かかるよなぁ。

 

「マホちゃん。私をマホちゃんのジャージの中に入れてくれないかな?」

 

「それは流石にジャージが伸びてしまうので……」

 

「お兄ちゃんと私は一心同体だよね。だから一緒に体育に出てくれるよね?」

 

「咲黄さン。無理を言ってはいけませんヨ」

 

 お前ら魔法少女として戦ってた頃並に絶望してね?

 寒いのは嫌だとマホや優正にすがる二人だが、いくら助けを求めても一時間目に体育があるのは変わらない。どれだけ「終わった…………」と口にしても、絶望(体育)希望(中止)にはならない。今更行動しても既に決まった結果(授業)は変えられないのだから。

 

「ところでランは外に出るの嫌じゃないのか?」

 

「動けば暖かくなるからな!」

 

 なお、一方のランは体育を楽しみにしていた。

 まぁランならそう言うと思ってたよ。あと早く背中から降りろ、後ろに居られると席座れないし、人一人ずっと背負うのは辛いから地味にサイコキネシス使って地面から0.1mmぐらい浮かしてズルしてるんだよ。

 

 

 

 

 

「今日は持久走だぜ」

 

「よし。新記録目指そう!」

 

「動けば暖かくなる! 動けば暖かくなる! 動けば暖かくなるな!」

 

「あぁ、目の前にお兄ちゃんが見えるよ……!」

 

「咲黄さんしっかりしてください! 優正さんは教室で授業を受けていますからね!?」

 

「ここは地獄ですカ?」

 

「よく覚えておきなさいリュウ。冬になると学生ってのは大体こうなるわ」

 

「そうなんですカ!?」

 

「おい待て嘘付くな。いや、正確に言えばあってるけど……あってるけど、その説明だと誤解をまねく」

 

 余談であるが、体育の授業中、中々にカオスな状態になっていた。

 まぁこれぐらい騒がしい方が寒さを紛らわす事が出来るから良いか。俺はジャージの中に手を入れてパイロキネシス━━━炎を作り出す超能力。俺の場合は出力が弱くてカイロぐらいの温度しか出ないけど━━━を使ってるから、そこまで寒くないけどな。

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よりメタい説明をすれば、本作初登場のキャラ




【オマケ】
「今日の勉強は英語の発音練習だ。ラン、俺の言葉を繰り返せよ?」

「分かった!」

「How are you?」

「ハワイはユー? いや、ハワイは地名だって流石のオレだって知ってるぞ!」

「ダメだこりゃ」


【オマケその2~クリスマスver~】
サンタその1:力男は信じてない派。年齢的にもサンタの正体を知っている。

サンタその2:マホは信じてない派。そもそも魔法世界にサンタの話自体が存在しないから、信じる信じない以前に存在を知らない。

サンタその3:勇子は信じてる派。毎年サンタの正体を暴こうと徹夜しようとするが、眠気に負けていつも寝てしまう。

サンタその4:咲黄は信じてる派。ただし毎年願ってる「兄と結婚したい」と言う願いが叶わないのは若干不満に思ってる。

サンタその5:緑は信じてる派。サンタなんて居るわけ無いじゃないと言う態度をしているが、内心ではクリスマスが近付くと毎回ソワソワしてるし、サンタが来るのはワクワクして夜眠れない。

サンタその6:ランは信じてる派。サンタを捕まえようと自室で待ち構えているが、プレゼントが自室以外(リビングや玄関など)に置かれるので一度も成功した事が無い。

サンタその7:優正(元部長)は信じてない派。ただし毎年咲黄の為にサンタ役をしており、夢を壊さないように表ではサンタは居ると言っている。

サンタその8:ガク先輩は信じてる派。自分にプレゼントを渡してくれるサンタが誰なのかは気付いている。全世界でサンタの容姿や名前が共通しているので、実際にサンタは存在していて世界各地が目撃された結果存在が広まったのではないかと考えている。

サンタその9:リュウは信じてる派。魔法世界に居る時にサンタからプレゼントが無かったのは、世界が違うからと思っている。

サンタその10:ワタカラは信じてない派。より正確に言えば、初めてサンタの話を聞いたと同時にその正体も聞いたので、信じる信じない以前の話だったりする。

サンタその11:自称メイドはサンタ派。ガク先輩の両親と一緒にガク先輩へとプレゼントを渡しているが、正体はバレている。前に一度だけ「クリスマスプレゼントはメイドです♡」と書いた紙を自分の首に掛けた事がある。

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