【完結】俺のクラスメイトが魔法少女な件   作:のろとり

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 魔法少女くるみを狂ったほど見てます。
 公式がYouTubeに何話か上げてるのでオススメです。
 私の推しはパイレイトとくるみです。

今回の作業用BGM:美少女魔法少女恐竜天使戦士とぼく


その12 魔法少女達の追跡から俺達が全力逃走な件

「邪魔するぞフクヨウ」

 

 ワニヨウに鬼ごっこを提案した俺は、自分サイコキネシスを使い空を飛び、誰にも見つからないように窓から城へ侵入した。

 

 マナーと言うか、人の()に窓から入るのは行儀が悪いってレベルの話ではないが、入り口から堂々と入ったらワニヨウを連れてるのを見られるからな。フクヨウに話を通す暇も無く大騒ぎになるだろうから、悪いが行儀の悪さは見逃してくれ。

 

 そして千里眼で調べたフクヨウが居る部屋の窓から侵入したのだが、どうやらフクヨウ以外には誰も居ないようだ。

 侵入する前に千里眼を使ったと言えど、知り合い以外は調べられないからな。他に誰か居るならアプローチを一度考え直す必要があったが、これはラッキーだな。

 

 …………今更だが、俺のしてる事ってなんか強盗みたいだな。窓から侵入したり、住民(妖精)が少ない場所から城に侵入したり。なんか少し悲しくなってきた。

 

「邪魔するなら後にしてほしいフク。今此方はワニヨウを探してるフク」

 

「じゃあまた後で来るかワニヨウ」

 

「分かったワニ」

 

「……!? !?」

 

 無意識の内に返事を返したからか、フクヨウは俺が空中に居るのにもワニヨウがこの場に居るのにも気付いていないようだ。

 このまま話しかけてもラチが明かないと、一度出直そうとしたが俺とワニヨウの会話を聞いて、探し人が居るのにワンテンポ遅れて気づいたようで空中に居る俺達を二度見してきた。

 

「ちょっと待つフク!」

 

「え、やだ」

 

「嫌ワニ」

 

 窓から外に出ようとする俺達をフクヨウは止めようとしてくるが、ちょっとした意地悪で静止を無視しようとする。

 まぁ実際には待つんだけどな。そうじゃないと、わざわざここに来た意味が無いし。

 

「フクヨウ。うるさいライ……って力男ライ。久しぶりライ」

 

「お、ライヨウ久しぶりだな。鬼ごっこしようぜ」

 

「ライ?」

 

 部屋の外にフクヨウの声が洩れていたのか。眉を潜めながら部屋に入ってくるライヨウは最後に会った時と変わった様子は無く、まるで昨日もあったかのように平然と挨拶してきた。

 

「制限時間は一時間。ルールはワニヨウを抱えた俺が、お前達に捕まらないよう妖精国中を逃げるだけ。簡単だろ?」

 

 フクヨウ、そして今来たライヨウにも聞こえるよう俺は床スレスレまで高さを調節━━━大丈夫だとは思うが、床に足を付けないのは土足禁止だったら床が汚れてしまうため━━━し、鬼ごっこのルールを説明する。

 

 説明と言っても、制限時間と場所指定しか説明する事無いけど。他に普通の鬼ごっこと違う点があるとすれば、鬼が俺達を捕まえたら交代せず即終了するぐらいか。

 

「鬼ごっこなんてしてる暇は無いフク」

 

「捕まえたらワニヨウが王様の席に座ると言ったら?」

 

 忙しくて遊ぶ暇は無い。

 そう俺の提案を断ろうとするフクヨウに、俺は確実に食らい付いてくる(条件)を追加する。

 

「…………少し席を外しても良いフク?」

 

「おう。じっくり考えとけ」

 

 するとフクヨウは一言二言で断る事はせず、少し無言を貫いてからゆっくりと考えたいと、部屋から出ていった。

 もしフクヨウがこの勝負に勝てばワニヨウは王様として働いてくれる。もう逃げも隠れもせず、無駄な疲労を重ねる事も無くなるのだ。即行で頷かなかったのは少し意外だったが、きっと勝率を計算か何かでもしたいのだろう。

 

「力男、いったい何が狙いライ?」

 

「単に遊びたいだけ」

 

「バレバレの嘘は止めるライ。そういう態度の相手は何か企んでるって本に載ってたライ」

 

「本の知識凄いな」

 

 元々隠すつもりは無かったとは言え、突然鬼ごっこするなんて言ったら不信感や疑問を持たれるか。ところで相手の態度で企みが分かる本って何処にある? それ読んでガク先輩対策をしたいんだけど。

 

「戻ったフク。さっきの話、受けて立つフク!」

 

「そうこなくっちゃな。ワニヨウ、しっかり俺に捕まってろよ」

 

「ワニ!」

 

「よし。鬼ごっこ開始ー!」

 

 鬼ごっこが始まる前に捕まえるのはルール違反だと思っていたのか、それとも面倒だから動かなかったのか。何をするでもなく、ライヨウとちょっとした世間話をしていると、フクヨウが扉を小さく開けて部屋へと戻ってきた。

 

 俺は鬼ごっこをする準備が出来たと話すフクヨウに笑みを浮かべ、ワニヨウを抱えて不意を付かれてもすぐ超能力を使えるように心構えをしてから開始の合図を叫ぶ。

 

「行くフクー! 全員でワニヨウを捕まえるフクー!」

 

 それと同時に、扉を突き破るかのような勢いで妖精達━━━この城で雇われている奴らだろうか━━━が、部屋へ雪崩れ込んできた。パッと見ただけでもその数は100を越えており、一人と一匹を捕まえるには明らかに過剰戦力である。

 

「え……いやちょ、多くね!?」

 

「さっき席を外した時に声を掛けておいたフク」

 

「え、ズル。そんな戦法で勝って嬉しいかよ」

 

 魔法少女側の妖精とは思えないフクヨウの言葉に引いている間に、俺とワニヨウは妖精達に包囲しまった。

 一匹一匹の大きさは小さいので包囲と言っても小さな円ぐらいの大きさではあるが、この数を全員かわせと言われたら魔法少女でも厳しいだろう。

 

「『テレポート』」

 

 ま、超能力()には関係無いけどさ。

 俺はテレポートを使い、その場から一瞬にして城の外へと移動した。サイコキネシスで宙を浮きながら、さっきまで居た部屋の様子を見ると、俺の姿が消えた事に妖精達は混乱しているようであった。

 

「ふぅ、危ない危ない」

 

「力男、超能力は隠さなくても良いワニ?」

 

「まぁ妖精達にはもう知られてるからな。それに元の世界ならまだしも、魔法世界でなら超能力の事バレても問題ないだろ」

 

「そういうものワニ?」

 

「そういうものだ」

 

 騒ぎになったり、面倒事に巻き込まれるのが嫌だから隠していたが、もう妖精達には俺が超能力を持っているのはバレているからな。知られてるのを隠しても意味無いし、今は全力でやらないとな。

 

「ところで何処に逃げる?」

 

「何も考えてなかったワニ!?」

 

「うん。妖精国に来たの初めてだから、右も左も分からん」

 

 そもそも俺達の中で妖精国に来たことあるのは、この国の住民の妖精達と魔法世界出身のマホ、それと調査の為に単独で盗み……もとい、色々と借りてたガク先輩だけだからな。

 テレポートは自分の知ってる場所以外にも、視界内の場所にも移動出来るから鬼ごっこする分には問題ないが、トイレの場所すら知らない俺では、人気の少ない場所を見つけるのですら難しいだろう。

 

 今更ながら俺不利すぎない? 鬼ごっこ宣言する前に妖精国の観光でもしてれば……あぁいや、観光はさっきまでしてたんだ。その上で観光中断してこんな事してるんだった。

 

『妖精国の国民に告げるフク。妖精国の国民に告げるフク』

 

「え、なにこの放送」

 

「最近作った放送機ワニ。危険が迫った時に備えて、すぐ国中に連絡出来るようにしたワニ」

 

 へぇ、ちゃんと防衛機能とか付けたんだ。

 ワルインダーの一件以降、何かあった時に備えて放送機を作って国中に連絡出来るようにしたようだ。なんかこれ聞いてると、学校の校内放送思い出すな。

 

『ワニヨウが人間と一緒に逃亡フク。捕まえた相手にはご褒美を渡すフク』

 

「褒美だってさ。何貰えるんだろうな」

 

「食べ物100年分だと思うワニ」

 

 へぇ、わりとベタな褒美なんだな。

 まぁ実際に「何が欲しい?」って言われたら、パッと出てこないから先に決めてもらった方が楽な時とかあるけどさ。

 

『今からワニヨウが妖精国から出ないよう結界を貼るフク。繰り返すフク、ワニヨウが妖精国から出ないよう結界を貼るフク』

 

「結界?」

 

「まだ調整中の外敵から身を守るためのものワニ。結界があると外にも出れず、妖精国の中にも入れなくなるワニ」

 

 へぇ、敵意に関係無く相手を閉じ込めるのか。

 一度使ったら結界内の妖精も出れなくなりそうだが、それらあくまで調整中だからだろうな。もし調整が終われば、人一人分程度の大きさにでも抑えれられるのだろうか。ところでさ、

 

「なぁ、ワニヨウ」

 

「なにワニ?」

 

「これ。結構不味くね?」

 

「そうワニね」

 

 俺達が逃げてるのは妖精国中に知れ渡った。

 捕まえたら良い感じの報酬がある。

 結界があるから国の外には逃げられない。まぁ出るつもりもないけど。

 

 うーん……これ逃げ切れるか?

 空中ならセーフ理論で結界の外、もっと言えば妖精国の遥か上空にテレポートを試してたけど、遮られて結界内のギリギリ部分までしか移動出来ないな。取り敢えずはサイコキネシスで空を飛んで時間を稼ぐしか……。

 

「あ、やべ」

 

 そう考え込んでいたからだろうか。

 空中を漂っていたのは相当に目立っていたようで、俺達の周りには360度見渡す限り妖精だらけであった。その数は城で囲まれた時とは比較にならず、今すぐにでも動かなければ捕まってしまうだろう。

 

 俺はワニヨウを落とさないよう力強く抱き、サイコキネシスで自身の身体を操り捕まえようとしてくる妖精達を振り切ろうと、空中を縦横無尽に動き回る。

 

「落ちる、落ちるワニ!」

 

「知らん! 安全バー無しのジェットコースターだと思って楽しめ!」

 

「無理ワニよ!?」

 

 ついでに急落下や急上昇付きだ! 料金は無料だから有りがたく思え!

 超能力を駆使してなんとか妖精達を避ける俺だが、空の移動となれば殆どサイコキネシスで宙を移動した事の無い俺と、毎日のように浮いている妖精達とでは経験の差があったようで、段々と追い込まれていく。

 

「捕まえ━━━」

 

「『テレポート』」

 

 そしてある一匹の妖精が俺に触れようとしてきたが、それより前にテレポートで地面へと着地し、何回かそれを繰り返し空からでは居場所が確認しずらい路地裏へと身を隠す。

 

「あの数は流石に想定外だなぁ……」

 

「力男、どうするワニ?」

 

「超能力を駆使すればなんとかなるから、取り敢えずは大丈夫だ」

 

 サイコキネシスとテレポートを組み合わせれば今みたいに逃げられるだろうけど、地理の面と人数を考えれば俺達は圧倒的に不利だ。

 例えばこの路地裏で前と後ろ、そして空中すらも囲まれたらピンチと言わざるを得ないだろう。一応、テレポートで俺の知ってる場所……妖精国の入り口や、さっきの城に移動したりは出来るけどな。

 

 まずは一息付くとしよう。

 いくら超能力が便利と言えど、それを除けばただの一般人だ。身体は酸素を欲するし、集中力が切れれば気配を感じる取る事も出来ない。それに超能力を使うには集中力や判断力が必要だからな。

 

 さっきから何度も使ってるテレポートも「自宅に飛びたい!」と考えたらポンッ! と自動で飛んでくれる訳じゃなくて、ちゃんと周りの景色とか想像しないと飛べないし。

 一先ずは誰か来る前に少しでも精神を休めないと。

 

「あ、見つけた!」

 

「ッ!」

 

 壁に背を付けて息を大きく吐いた瞬間、路地裏に響く「見つけた」と言う言葉に俺は驚き、声の主の方向を警戒しながら向いた。

 俺を指した訳じゃないって可能性はあるが、今の状況的に俺を探してる誰かって可能性の方が高いからな。まったく、せめてちょっとぐらいは休憩する時間をくれよ。

 

「って、なんだ勇子か」

 

「なんだってなに!?」

 

「悪い悪い。それでどうした?」

 

「え? あ、あー……ほら。力男くんが急に居なくなったのが気になってね。みんなで探してたんだよ」

 

「別に先に観光してて良かったのに。悪かったな」

 

「気にしてないから大丈夫だよ。ほら、早くみんなの所に行こう!」

 

 一言離れるとは伝えていたが、あまりにも急だったから心配させてしまったようだ。事情言ったら多分ついてくるか、問答無用でワニヨウで連れていかれてただろうから仕方無かったとは言えど、観光の時間を潰してまで探してもらったのは申し訳ないな。

 

「……ッ!」

 

「ど、どうしたの? ほら、私の手を取って!」

 

 俺は手を伸ばしてくる勇子へと一歩一歩近付き、その手を取ろうとして……その場で立ち止まる。

 あー、ちょっと待てよ。今の妖精国の騒ぎを気にもせず俺を探してたのか? 空には妖精達が沢山飛んでるし、フクヨウが放送で国中に連絡した筈だような。だから勇子達も今の俺の状況について知ってる筈だ。

 

 一応、一応の確認だ。もし俺の思い違いだったりしたら素直に謝ろう。それで全て許される……はずだ。

 

(このまま合流するフリをして、力男くんとワニヨウを捕まえる。ふっふっふっ……私のこの完璧でパーフェクトな作戦に穴なんて無いね!)

 

「…………」

 

 穴だらけじゃねーか。

 

 もしかしたら勇子達は俺達を捕まえようとしているかもしれない。そんな疑心暗鬼に駆られ、念のためテレパシーが勇子の心を読んでみたら、その予想は当たっていた。

 

 もしあの手を取っていれば、勇子は俺の手を力いっぱい握って逃げないようにしていただろう。サイコキネシスを使えば勇子ごと空を飛ぶことも出来るが、きっと変身されて力付くでおさえつけられ……あれ。結局の所、力で捕まってね? それもう魔法少女じゃなくて物理少女だろ。

 

「なぁ勇子」

 

「なぁに?」

 

「俺、テレパシー使えるの覚えてるか?」

 

「え? う、うん。覚えてるけど……ハッ!」

 

「逃げるぞワニヨウ!」

 

 勇子は俺の言葉の意味を察したのだろう。

 作戦バレたのだと気付いて俺に急いで駆け寄ってくるが、俺には超能力がある。真っ直ぐ来ても空に逃げれば良いだけの話である。

 

 あまり高すぎても妖精達に見つかるので、屋根辺りにまで浮いた俺は次は何処に逃げようか辺りを見渡す。幸いにも妖精達は結構高い場所にまで飛んで俺達を探しているようで、それがかえって路地裏の暗さと同化している俺を見つけられていないようだ。

 

「勇子達もワニヨウを捕まえようとしてくるのかよ!?」

 

「鬼役に制限を決めてなかったワニ」

 

「そうえばそうだったな。追いかけてくるの妖精だけだと思ってたし」

 

 一先ず動く前にマホ達の場所だけでも確認しようと千里眼を使おうとした瞬間、俺がさっきまで居た路地裏で何かが光った。いや、正確に言えば「何か」と言う曖昧なモノではない。その光は俺にとってよく知るものである。

 

「あ、ヤバいの見えた」

 

「どうしたワニ?」

 

「多分すぐに分か━━━あぶね!」

 

 その後に何が起こるのか。それを既に察していた俺は、サイコキネシスで自身を後ろに引っ張り路地裏から飛び出してくる人物をかわす。

 

 その人物とはやはりと言うべきか、勇子……もとい変身したスカイレッドであった。

 たった一回のジャンプで俺の居る場所まで跳んできた勇子だったが、さすがに空中で方向転換は出来なかったようで、重力に従って落下し、屋根へと着地した。

 

「うう、惜しい!」

 

 流石は魔法少女、一瞬の油断も出来ないな。

 俺は跳躍されて捕まらないように、屋根よりも高く空を飛んでいく。その分、路地裏の暗さと言うアドバンテージを失って、空を飛んでる妖精達に見つかるリスクは高くなるが、妖精複数と魔法少女一人のどっちが厄介か聞かれたら、スピードでも力でも負けてる魔法少女だからな。アドバンテージを失ってでも目の前の相手に集中する必要がある。

 

「空を飛べば勇子は俺に届かない。って事で逃げさせてもらうぞ」

 

「届かないって言うなら、届かせてみせるよ!」

 

「ん? 何言ってんだ。お前ら空なんて飛べな」

 

「『スカイリボン』」

 

「うおっ!」

 

 俺の足首めがけて飛んできたリボンを、テレポートで若干前━━━咄嗟で場所指定が出来なかったので、視界内もとい目の前のほんの少しだけ移動した━━━に移動する事でリボンの軌道を避ける。

 

「なるほどな。お前らが近づくんじゃなくて、俺を近づけようとしたのか、咲黄」

 

「うぅ。外れちゃった」

 

 いくら俺が遠くに逃げようが、捕まえて自分達の所まで引っ張れば関係無いって事か。なんかまるで漁師に捕らえられそうな魚だな。俺別に食べても美味しくないけど。

 

「あああああ」

 

「…………ん? なんだ」

 

 ここに居たら咲黄に捕まるからと、テレポートで移動しようとした矢先、何処かから声が響き始める。少なくとも俺の真下に居る勇子でも咲黄でも無く、空を飛んでいる妖精達のものではない。

 

「勇子、咲黄。何か喋ったか?」

 

「え? 何も言ってないけど」

 

「わ、私も何も」

 

 一応、二人に確認をとるがやはり違うようだ。

 辺りを見渡してもその声の主は見当たらない。単に遠くに居て肉眼だと見えないのか、俺の空耳か……多分空耳だな。もし何か事件が起こってるなら、何かしら騒ぎになってるだろうし。

 

「ならただの気のせい」

 

「うわあああああ!!」

 

「うおおおおおお!?」

 

 声の主を「気のせいだった」と空耳扱いした瞬間、俺めがけて謎の人影が飛んできた。あまりに咄嗟で超能力を使わず、持ち前の身体能力で身体を逸らしてその人間大砲を避けて、避けて……って何処まで飛んでいく気だ!? あのままだと妖精国の端まで飛ぶぞ!

 

「『スカイリボン』」

 

「え、スカイブルー!?」

 

 謎の人影、もとい人間大砲の正体は変身したマホ(スカイブルー)であった。

 明後日の方向へ吹き飛んでいきそうになったマホを、咲黄はリボンで捕まえて屋根の上へと着地させる。あまりの速さに酔ってしまったのか、顔が若干青く見えるが多分大丈夫だろう。

 

「うぅ、力男さんを捕まえるのに失敗しました」

 

「俺にはそれ以前の問題に見えるんだが?」

 

 明らかに捕まえるよりも、ぶつかるのがメインの行動だったように思えるんだが。ペンヨウみたいにぶつかろうとしてくるな、ぬいぐるみサイズの生物と人一人がぶつかる時の質量考えてくれ。あのままぶつかってたら、ギャグみたいに顔が凹んで「前が見えねぇ……!」状態になってたんだが。

 

「すみませんスカイイエロー。助かりました」

 

「ふふっ、どういたしまして。それで、どうしたの?」

 

「スカイグリーンのハンマーで打ち上げてもらって飛んできました」

 

「星にでもなりたいのかよ……」

 

 自分でも制御出来ないようなスピードをどうやって出したのかと思ったら、緑のハンマーでぶっ飛ばしてもらったのかよ。いやまぁ、テレポート出来る俺にスピードじゃ勝てないのは分かるけどそこまでするか!?

 

「何にせよ、ワニヨウは渡さないぞ」

 

「ワニヨウが居ないとみんな困るんだよ!」

 

「ワニ?」

 

 勇子の言葉にワニヨウは首を傾げる。

 急いでその場から離れようとした俺だが、本来の目的……ワニヨウに自信をつけさせる。そして周りがワニヨウ自身に期待していると知ってもらう為に、捕まるリスクをそのままに立ち止まる。

 

 良いぞ勇子、そのままワニヨウに言葉を投げ掛けてくれ。

 改めての話になるが、この鬼ごっこの目的は逃げ切る事ではない。ワニヨウに考えを変えてもらう事だ。その為には周りからどう思われてるかを知るのが必要だ。だから勇子、ワニヨウが自信を持つような言葉を頼んだぞ……!

 

「困るって言うと、どんな風にだ?」

 

「え? えっと……王様が居ないと妖精国が、妖精国が……なんかこう……色々と、色々と……そう! 色々とわーって大変なんだよ!」

 

「内容フワフワじゃねーか!」

 

 なんかってなんだ、具体性が何一つ無いじゃねぇかよ!?

 ワニヨウ困ってるよ。勇子を見て「何言ってんだろう」ってさっきとは別の意味で首を傾げてるよ、疑問じゃなくて理解出来なくて首を傾げてるよ。

 

「スカイレッド。ここは私に任せてください」

 

 そんな勇子を見て、代わりに自分が話さなければと思ったのだろうか。体調が回復したマホは一歩前へ出て、空に居る俺達を見上げて自信たっぷりな顔を見せてくる。

 

「力男さん。無駄な抵抗は止めて出てきなさい!」

 

「もう外なんだが」

 

「貴方は完全に包囲されています!」

 

「周りにガラ空きなんだが」

 

「今なら罪も軽くなりますよ!」

 

「…………マホ」

 

「はい」

 

「何を参考にした?」

 

「ドラマです。こういう時はこんな台詞を言えば良いのだと学びました!」

 

「あぁ、うん。そうなんだ……」

 

 えっへんと、かわいい顔でドヤ顔で胸を張ってくるマホに、俺はなんとも言えない微妙な反応をする。

 勇子のように考えが纏まって無いのならともかく、マホは天然(本気)でこれやってるから何も言えねぇ……。訂正したり、突っ込む気も失せてしまう。 

 

「じゃ、俺逃げるから」

 

「ま、待って。止まらないと……撃つよ」

 

「何を!?」

 

 仕切り直しや考える時間を作る意味も含め、今の状態だと目的を果たせないと判断し、その場から動こうとすると咲黄がオレに向けてステッキを向けてきた。

 

 撃つ? 撃つって何、そのステッキから銃弾でも出るの? いつからお前はそんな物騒になった……っていや、出るのはリボンだけか。

 じゃあ撃つのはリボンで、それを使って俺を拘束するって意味か。あー、ビックリした……いやそれでも撃つって表現はおかしくないか!?

 

「そっちが撃つって言うなら、此方も抵抗するぞ」

 

「どんな風に?」

 

「『パイロキネシス』」

 

 俺は手のひらから火を出してマホ達へ見せびらかす。

 常識で考えれば火に触れば熱い。しかしこの火は俺の超能力によって生み出されたものであり、俺自身は熱く感じない。逆に言えば俺以外は熱く感じるし、間違えて家に火が移ったら火事になるけどな。

 

「うわっ! 火が出た!」

 

「力男さんの超能力ってそんな事も出来たんですね」

 

「あぁ。お湯を沸かすのに便利だ」

 

「他の使い方は!?」

 

「いや、これ全然火力無いから。コンロの方が火力あるレベルで弱いし」

 

 今まで一度も見せてこなかった火を見て、マホ達は驚いているが、正直これに驚かれても困る。サバイバルみたいに火が必要な場合はともかくとして、日常でこの能力が役に立つ事は無いし。

 つーか下手に使ったら家具が燃えるから使えない。使った記憶と言えば、超能力で何が出来るか調べた時とガク先輩の実験に付き合った時ぐらいだし。

 

「だけどその火で何をするの? それじゃ私のリボンは燃やせないよね? それに下手に燃やしたら、周りの建物も巻き込んじゃうし」

 

 咲黄は俺の火に注意を払いつつ、俺の言葉が真実だと仮定━━━実際に本当なのだが━━━して何をするのか疑問をこぼす。

 その指摘は最もだろう。コンロよりも低い火力で燃えるほど魔法少女の技は弱くないだろうし、仮に燃えたとしても俺自身が捕まった状態でそれをすればリボンの火が延焼した自身が火だるまになってしまう。

 

「ん? 誰が火を使うって言った?」

 

「え?」

 

 でもそんな心配はいらない。

 俺の目的は火を扱う所に無い。俺が生み出した火に注目を集めて、それ以外の行動に対しての注意を弱める所にあるのだから。

 

「『テレポート』」

 

「「「あっ」」」

 

 別に一言も火を使うなんて言ってないけど? と、純粋そうな顔をして俺はプライドも羞恥心も無くテレポートをしてその場を離れた。

 

 俺の辞書に正々堂々やなんて言葉はない。最終的に目的さえ達成出来れば良いんだ。流石にテストで満点取りたいからってカンニングなんかはしないから、手段はちゃんと選ぶけどな。

 

 つーか魔法少女相手に超能力抜いたら一般人の俺が勝てる訳無いだろ。仮に超能力を足したとしても、純粋な戦闘力だと一般人と変わらないから力の勝負になったら勝てないし。

 

「いやぁ、アイツらは強敵だったな」

 

「口八丁で騙しただけだったワニよね?」

 

「そらそうだろ。俺が実力で勝てるわけねぇんだから」

 

「堂々と言うのね」

 

「そりゃあな。超能力あるとは言え、マホ達に近付かれたら超能力使う前に反射神経の問題で捕まるし」

 

「だから離れてテレポートを使って逃げてきたって訳ね」

 

「そういうことだ…………でさ、ワニヨウ。今喋った?」

 

「喋ってないワニ」

 

「あー……そうかぁ、喋ってないかぁ。じゃあ今喋ったのは」

 

「私よ」

 

 うん。途中から妖精特有の語尾が入ってない声が聞こえる時点で、緑が居るんだろうなぁってのは察してたよ。

 俺は後ろから聞こえてくる緑の声に冷や汗を流し、振り向いたり一歩でも前に動くと捕まえにくる気配からその場から一切動けず、ワニヨウに世間話をするかのように話しかける。

 

「…………なぁワニヨウ」

 

「なにワニ?」

 

「ここから入れる保険って無い?」

 

「そこに無ければ無いワニ」

 

「そっかぁ……」

 

 これ積んだかな。

 後ろ向けないからテレパシーで緑の思考を読めないし、メッセージ(テレパシー)は視界内の相手じゃないと送れないし、テレポートを使おうとしたらその気配を察して捕まえてくるだろうし、他の超能力で注意を逸らそうとしたら俺が何か企んでるとバレて有無を言わさず捕まるだろうな。

 

 だが待て。

 俺の背後を取ってるのに俺の行動を待っているって事は、緑は俺が何か企んでると思ってる? それとも俺が鬼ごっこなんて提案した理由を聞き出そうとしている?

 

 どっちなのか、それとも両方とも外れなのか。テレパシーを緑に使えない現状だと判断はつかないが、今ここで重要なのは緑は俺の行動に注意を払っている。つまりは今の俺の行動次第で、捕まってENDになるか、このまま様子見で時間が稼げるかの二択になるわけだ。

 

 ならまずは緑に怪しまれない行動をしよう。

 そして行動を移しつつ、この場から離れる作戦を考える。

 要約すると行き当たりばったりのアドリブでこの窮地から脱出する。一度でもミスれば捕まるが……距離を取れれば此方のものだ。

 

「緑」

 

「何かしら」

 

「話をしよう」

 

「四文字以内ね」

 

(みじか)ッ!?」

 

「はい四文字」

 

「今のカウントされるのかよ!?」

 

 あれ、バレてる? 俺の思考が外にでも漏れてる?

 完璧な作戦だった筈なのに時間稼ぎすらさせてくれないんだけど。思考する時間するくれないんだけど。

 

 あー、もう。こうなったらアレ使おうアレ! 多分意味無いと思うけど、このまま膠着してたら妖精やマホ達が集まってくるし。ワンチャン効果あるかもしれないからな、うん!

 

「…………あ、緑。後ろ」

 

「何よ。そんな手に引っ掛からないわよ」

 

「カップル居るぞ」

 

「ガタッ! え、何処何処!? カップルは何処かしら!?」

 

「食い付きすげぇな!?」

 

 さっきの時間返してくれない? 凄い緑対策や思考を計算して、この状況を抜け出す方法考えてたのに、明らかな嘘で形勢逆転したんだけど。恋愛脳の部分が脚引っ張ってるんだけど。

 

「なんにせよ、逃げるぞワニヨウ!」

 

「了解ワニ!」

 

「あっ! 待ちなさい!」

 

 俺は一瞬の隙を付いて緑の方向を向き、手を伸ばしてくる緑を避けるように、サイコキネシスで自身を引っ張るかのようにして後ろへと下がる。

 本当はテレポートを使いたい所だが、さっきみたいにテレポートした場所に誰か居たら今と同じ状況になっちまうからな。テレポートは落ち着いて千里眼を使えるまで一時的に封印だ。

 

(ファ◯チキください。ファ◯チキください。ファ◯チキください。ファ◯チキください。ファ◯チキください)

 

「雑念を送るの止めなさい!」

 

 俺は自身を捕まえようとしてくる緑に対して、テレパシーを送り行動と思考を妨害する。

 本来ならテレパシーは視界内の相手にしか使えないが、逃げる直前に緑の方向へ振り向いていたので使用条件は満たしている。

 

 取り敢えずこれで緑の思考を妨害して、俺が空中に逃げるって考えられないようにして……ってうお、あぶね!

 

「ちょっ!? おま、ハンマー振り回すのは反則だろ!」

 

「安心しなさい、あくまで風圧を送って集中力を乱すのが目的で、実際に当てるつもりは無いわ!」

 

「地味な配慮ありがとうな!?」

 

 確かに頭上や目の前へハンマー自体は迫っているが、それらはカスりもせずただ風を起こしているだけで、緑の言う通り当てるつもりは無いようで……あっ、これ目が乾いてくる! 目が乾いて瞬きしたくなるから、目を閉じて緑にテレパシー送れない! こうなったら言葉で集中力を切らす!

 

「マホ~何処セイ? ペンヨウを置いて何処かに吹き飛ばないでほしいセイ……あっ、力男!」

 

「生麦生米生卵! 生麦生米生卵!」

 

「カップルカップルカップルカップルカップル!」

 

「雑念を雑念で消すんじゃねぇ!」

 

「誰の言葉が雑念よ!」

 

「誰がどう聞いても雑念なんだが!?」

 

 くっ。もう緑を無視して空に逃げるか? でも空には妖精達が沢山居るし、ここで変に上に逃げたらハンマーに当たって動けなくなるだろうからな。

 テレポート使うにしても、こんな状態だと場所なんか指定出来ないし、さっきから風邪が強くて殆ど目を閉じてるような状態だから、視界内にテレポートするのも出来ない。どうにかこの場から逃げねぇと……!

 

「力男~!」

 

「え? ペンヨ」

 

 超能力と魔法少女。互いのプライドを掛けた高度(抵度)な心理戦は突如として終わりを迎える。理由はそう、第三者(ペンヨウ)の乱入である。

 

 ペンヨウの登場により俺は後ろを、緑は正面を呆然と見る。つまりペンヨウは俺の後ろから話しかけた事になるのだが……俺が振り返った瞬間、ペンヨウは目と鼻の先に居た。その距離凡そ3mm。

 

 理由は説明するまでもないだろうが、ペンヨウがいつ頃と同じように勢いよく突っ込んできたからである。とてもじゃないが、超能力だろうとも避けれるような距離感ではなく、この場に居る全員がこの後の展開を察しただろう。

 

「ごふっ!」

 

 ペンヨウが顔にぶつかってきた俺は、当たり所が悪くて気絶した。

 そうして妖精国を舞台にした鬼ごっこは俺の気絶によって幕を閉じた。

 

 

 

 

 

「あー、酷い目にあった」

 

「ご、ごめんワニ」

 

 それから数時間後。城の一室で気絶から目が覚めた俺はヒリヒリする顔を擦りながら、看病してくれたワニヨウを撫でる。

 

「別に謝られる程でもねぇよ。俺としても、超能力を全力で使える良い機会だったし」

 

 なんやかんやで全力で使ったのは片手で数えきれる程度だったからな。普通の生活でも超能力を使って楽をしたりは……たまにあるけど、そんな高い頻度では無いし。こんなに超能力をポンポンと使えてちょっと嬉しかったな。負けたのはちょっと悔しいけど。

 

「それでワニヨウ。お前は鬼ごっこしてどうだったんだ?」

 

「…………みんなワニャアの事を追いかけてきたワニ。アッチが勝ったところで、ワニャアが王様をするだけなのにワニ」

 

 鬼ごっこの感想もそこそこに、俺は本題へ入る。

 このフクヨウ達妖精がこの鬼ごっこに参加した目的は、ワニヨウを王様にしたいから。逆に言えば、ワニヨウ以外を王様にしたいなら参加を拒否したり、誰かがワニヨウを捕まえるのを妨害すれば良かったが……そんな事をする奴は誰も居なかった。つまりみんなは

 

「お前に王様を続けてほしいから頑張ったんだろ」

 

 これに尽きる。

 俺がテレパシーで判断する必要も無い。何故ならそれが真実だから。妖精達が行動で示したモノなのだから。

 

「なぁ、ワニヨウ。王様出来そうか?」

 

「…………」

 

 再度俺はワニヨウに問い掛ける。

 もしこれでワニヨウが「王様なんて出来ない」と言えば、無理なものは無理だとフクヨウ達に納得してもらうしかない。約束を破る事になるのは心苦しいが、やりたいないのに役柄を押し付けてたら今までと変わらないからな。

 

「やっぱり……まだ自信は持てないワニ」

 

「ん、そうか」

 

「でも」

 

「ん?」

 

「期待には答えたいと思うワニ。自信が無くても、ワニャアを王様に選んでくれたみんな(国民)の為に頑張りたいワニ」

 

「…………そこまで言ってくれるなら、身体を張ったかいがあったな」

 

 どうやら心配ないみたいだな。

 俺はしばらく見ない内に、王様の風格を漂わせるようになった友達(ワニヨウ)に寂しさを覚えつつも、最初の頃から今のこの成長を考えると嬉しさも覚えるのであった。

 

「力男ー大丈夫セイー!?」

 

「あ、ペンヨウの声だ」

 

 部屋の外から大声を出して部屋へと近付いてくるペンヨウの声が聞こえた。

 そうえば目が覚めた時にはペンヨウが何処にも居なかったな。まぁきっと色々あって席を外してたんだろうな。

 

「ワニヨウ」

 

「なにワニ?」

 

「また何かあったら言えよ。妖精国の王様としてじゃなくて、友達としてな」

 

「……ワニ!」

 

 と言っても、今のワニヨウなら大丈夫だろうけどな。

 俺は今度妖精国に来るのはいつにしようと考えながら、部屋の扉を開けてペンヨウを迎えるのであった。

 

 …………なお、その時にまたペンヨウが顔面にぶつかってきたのはお約束として受けとるとしよう。




 あーでもない、こーでもないと色々と書き直してたらだいぶ時間が経ってしまいました。ついでに1万文字越え。


【余談~魔法少女組の意識してる描写~】
マホ:天然。年齢よりも幼くて、尚且つ可愛い行動をするよう意識させて書いてる。
勇子:アホの子。本人なりに頑張ってるけど、空回ったり爪が甘かったり隙がある子として書いてる。
咲黄:自称目立たない子。周りに振り回されてるように見えるが、本人もノリノリになる時がある。瞬間的な爆発行動力ではマホと勇子を越える。
緑:苦労人。大型犬(約二名)を数匹連れてる子。みんなが「わー!」って全力で前に突撃するのを止めて、冷静に物事を考える。

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