あくまで番外編は「本編後じゃないと書けない内容(日常を謳歌するワタカラとか、妖精国のその後、力男達の本編後の日常など)を書く」って理由で始めたので。いくら辛くても私情とそれは区別します。
「と言う事でここはこうなるぜ」
「ふむふむ。なるほど」
「へむへむ。なるへそ」
「え? えっと……ほ、ほむほむ?」
「はむはむ……で、良いんですかね? お腹が空いてきました」
「ひむひム。ってこの流れなんですカ?」
「知らん。へむへむ言い始めたランに聞いてくれ」
一時間目の授業中、俺が無意識に呟いた頷きにランがふざけ、勇子は戸惑いながらそのまま乗っかり、マホもリュウも何故か続けて、「は行」をコンプリートしてしまった。
じゃあ次は「ま行」をコンプリートしよう……ってならないからな。アイツら今授業参観中だって分かってるのか? まぁいつものメンバーの中で保護者が来てるのは今の所
「ここで授業は終わるぜ。草加、挨拶を頼むぜ」
「起立! 気を付け! 着陸!」
「飛行機かよ!?」
授業参観だろうとランは平常運転であった。
着席ではなく着陸とボケるランに対して、みんなは予測していたのか。それとも特段気にならなかったのか、何も反応せず席に座った。なんだこれ、俺がおかしいのか?
「うぅ。緊張した~」
「授業参観で緊張するなんテ。勇子さんもまだまだ子どもですネ」
「あの……リュウさん、脚震えてませんか?」
「武者震いでス」
「私には緊張しているように見え」
「武者震いでス」
「え? ですが」
「武者震いでス」
「あっ……はい」
まるで空気イスをしているかのように脚を震わすリュウをマホは心配するが、リュウを武者震いだと押し通してくる。そんな圧に負けたのか、マホは武者震いだと納得する事にした。
あぁ、なんて言うか……平穏だな。授業参観って言うぐらいだから、いつも以上に騒がしくなると思ったが、ワタカラも静かに頷いてるだけだし、勇子達も見られてる自覚があるのか私語をせずに授業を受けてる。今日はこのまま平穏が続いてほしいなぁ。
「間に合ったかぁ!?」
「もう一時間目終わってるわね」
「Noooooo!」
「あ! お母さん、お父さん!」
速報。平穏、終了のお知らせ。
教室の扉を開けてやってきたのは勇子の父親であった。ぜぇはぁと汗をかき、息を乱している様子から察するに急いで来たのだろうが、既に一時間目は終了している。
その事実を知るや否や床に膝を付き、後ろからひょっこりと顔を出した勇子の母親は勇子を見かけるなり、絶望している人物を無視して勇子にバグをした。
「おーい。誰かこの状況に突っ込んでくれ……」
「言い出しっぺの法則って言葉知ってますカ?」
「リュウ、今すぐ記憶無くせ」
「何故!?」
その法則を出されたら俺が突っ込む必要が出てくるからだよ。
俺がさっき言った言葉を忘れてもらおうと、消しゴムを5円玉代わりにしてヒモを結び、リュウの目の前で揺らして催眠術を試みるが、効いている様子は全く無い。くっ、やはり5円玉じゃないと意味が無いのか!
「リュウ、逞しくなったな。こんなにも騒げるようになって……」
「授業態度に関する感想は無いんですカ!?」
「授業? あぁ、このIQ3億の私も何言ってるか分からなかったな」
「ワタカラってこんなポンコツだったか?」
「僕達の世界に学校なんて無いですからネ。急に分数だの、作者の気持ちだの言われても理解が追い付かないですヨ」
「そうえばそうだったな」
マホもリュウもすっかり馴染んでるから忘れてたけど、学校で習うような内容を事前知識も無く出されたら分からねぇか。俺も突然医学の専門用語説明されても理解出来る自信無いし。
「邪魔をする!」
「うおっ!」
ワタカラとリュウと話していると、空気の換気の為に開けていた窓から優正が姿を現した。
何処から出てきてんだよ……つーか3年の教室は2階だろ。え、もしかして2階の窓からボルダリングのように登ってきた? それとも窓のフチに脚をかけてジャンプしてきた? うーん、優正の事だから両方出来そう。
「どうして窓から入ってきてるんですカ……」
「少し事情があってな!」
「その事情は私が理由さ」
「あ、ガク先輩」
不器用な部分はありつつも、窓から教室を移動するような横着はしない性格の優正の事情とはどんなのか。そう疑問に思っていた所、優正の背中からガク先輩が顔を出した。どうやら優正の身体で見えていなかったが、おんぶされていたようだ。
「私が優正くんに頼んだのさ」
「優正の背中に乗って何してんだ」
「君たちの所に用事があってね。窓から入らせてもらったのさ」
「後半部分の説明をしてくれないか?」
俺が知りたいのはここに来た理由じゃなくて、窓から入ってきた理由なんだが。別に階段使って4階に登ってくれば良いじゃねぇか、窓から教室に入ってくるなんてランぐらいだぞ。
「優正も何か用事ですカ?」
「ワイは咲黄の様子を見に来たぜ!」
「咲黄さんの教室は隣ですガ」
「この教室からお兄ちゃんの気配がする……!」
「咲黄、ここはマホ達の教室よ? そんな所に居るわけ……えっ。本当に居るわ」
「咲黄ちゃん凄いね~」
「これは凄いで済まされるものなのかしら!?」
わぁ、また人が増えてきた。
変態的な第六感により優正の存在に気付いた咲黄と、そんな咲黄に付いてくるような形で俺達の教室へとやってきた緑とつぼみさん。
緑は間に合わなくて膝から崩れ落ちる勇子の父親、それを気にせず仲良く話し続ける勇子と勇子の母親。
俺の真似をして机に放置していた消しゴムを括り付けた紐で催眠術を掛けるラン、そしてランの催眠術に掛かって寝始めるマホ。
リュウの雄姿? を見届けてひたすらに涙を流すワタカラ、ずっと竹馬に乗ってるワタカラの視線を合わせて首を痛そうにしてるリュウ。
優正の背中に乗っているガク先輩、そのガク先輩を剥がそうと躍起になってる咲黄、咲黄が甘えてきてると勘違いして笑っている優正と……色々とカオスな現状を見て頭を抱えた。
「…………ねぇ力男。この状況は何かしら」
「ただの休み時間だ」
「この短い時間に何があったのかしら!?」
ホントそうだよ。まだ3分も経ってないんだが。
俺が「平穏が続いてほしい」とフラグを立ててしまった影響か、一瞬にして教室が騒がしくなってしまった。誰かにツッコミのポジションを変わってほしいものだ。
なぁ緑、緑はツッコミのポジションを変わってくれるつもりは……あぁ、うん。面倒事に巻き込まれるのは嫌なのか、それは俺も同じだ。
「つぼみさんヤホー!」
「やほ~ランちゃん」
「力男くんも久しぶり~。15年ぶりぐらい?」
「それだと俺まだ産まれてないんだが?」
15年前だと俺まだ前世なんだが。その頃だと前世で中学校生活を謳歌して……いや今も中学生か。じゃあ今も昔も一緒だから実質つぼみさんと15年ぶりだな(?)。よし、久しぶりだなつぼみさん! 前世ぶりだな!*1
俺はこの状況に疲れていた。
疲れすぎて思考回路がおかしくなっていた。そして俺が正気を失ったら収拾が付かなくなるので、無理矢理正気に戻った。どうも、超能 力男です。
「はい、つぼみさん。本返すよ」
「お~ありがとね~。それでどうだったかな~」
「面白かった。特にバナナのくだりがな」
「ふっふっふっ~そこはつぼみさんのお気に入りだからね~気合いを入れたよ~」
正気に戻った俺はつぼみさんに借りていた本を返す。
ちょうど良い所で1巻が終わってるから続きが気になるが、2巻以降は描いてる途中のようだ。出来たらまた読ませてもらおう。
「そうだガク先輩」
「なにかね?」
「俺らの所に用事ってなんだ? それが理由でここに来たんだろ?」
つぼみさんが緑と話している様子を尻目に、俺はガク先輩がここに来た理由を問いただす。
急ぎの用事って様子では無さそうだが、こんな授業参観の日にわざわざ此方に来るなんて何があったんだか。それに用事って言うなら、朝此方に来た時に済ませられただろうに。
「いやなに。用事ならここに来た時点で済んでいるさ」
「え?」
「両親の相手がするのが面倒だから匿ってほしいと言う用事さ」
「自分の教室に帰れ」
そんな理由で優正をタクシー代わりにするなよ……。
つーか扉からじゃなくて、窓から来た理由は親に絡まれないようにする為かよ。確かに2階から4階に窓越しで移動したら追い掛けては来れないけどさ……どんだけ面倒なの? いつもは「両親との時間を作ってる」と言ってる癖に、今日だけ避けてんじゃねぇよ。
「力男くん。なんだか私に冷たくないかい?」
「冷たい対応をされる行動をしてるからだろ」
「ふむ。すまないが記憶に無いね」
「この口か? この口がそんな嘘を言うのか?」
「
俺はガク先輩の頬を引っ張り抗議するが、我関せずと言った様子でいつものように喋り続ける。負けじと今度は頬を押すが対応は一切変わらない。相変わらず精神図太いな。あと頬っぺた柔らかいな。化粧水何使ってる?
「それで両親の何処が面倒なんだよ」
「ふむ。そうだね……私の両親は家に居る時間は少ないけれど、私との時間を出来るだけ確保しようとしてくれるのさ」
「自慢?」
「最後まで聞きたまえ」
俺はガク先輩の頬で遊ぶのを止めて事情を聞くが、何故か自慢されてしまった。
最後まで聞けと言われても、忙しくても時間を作ってくれるとか完全に自慢だろ。思いっきり愛情注がれてるって言う自慢だろ。
「それに答えるように私もその時間は予定を入れないようにしているのだが……イベント事になると、その愛情が少し暴走してしまってね」
「具体的には?」
「授業参観に来たいあまり、研究で実績をあげて無理矢理有給を取ってきたのさ」
「へー……ちなみにどんな実績?」
「情報を目や耳でなく、脳に直接送れる方法を見つけたのだとか」
「俺の超能力パクられた?」
俺のテレパシーと似たような事が科学で再現されたんだけど。
あくまで「情報」だから、スマホやテレビで得られるような内容の話なんだろうけど、なんだか負けた気がする。だが……だが、俺のテレパシーだって負けてないから! 相手に情報送るだけじゃなくて、心を読み取ることも出来るから!
「全く。いくら授業参観を見たいからと言って、最高級カメラまで持ってくるとはね」
「ただの親バカじゃねぇか」
「流石に学校でもこの調子となると面倒でね。優正くんに頼んで君達の教室に避難させてもらったのさ」
「なるほど、それでか」
ガク先輩なら周りの評判とか気にしないだろうけど、親の授業参観に対する意気込みを考えると、周りの視線うんぬんよりも関わるのが面倒だってのは納得がいく。
まぁガク先輩は嫌なら嫌だとハッキリ言う性格だから、そこまで嫌ってる訳ではないだろうけどな。大体思春期あるあるの「もう子どもじゃないんだから、私に構わないで!」ってやつだと思えば良いか。
「…………さて。そろそろ時間かね」
「ん? 教室戻るのか?」
「いや、戻る必要なんて無いさ」
「え?」
ふと、ガク先輩が「時間」だと呟く。
俺は教室の時計を確認するが、次の授業までは5分ほど時間がある。もしガク先輩の次の授業が体育や教室移動のようなモノなら早めに行動するのは納得が行くが、それは無い。
理由は単に俺がガク先輩のクラスの時間割を知っている━━━より正確に言えば、ガク先輩の実験から逃げれるよう前に調べた━━━からであり、次の授業は教室移動のない現代文である。
なら何故「時間」だと言ったのか。その理由はすぐ明らかになった。
「ふふふ。やぁ心、やっぱりここに居たのか」
「ふふっ。貴方の思考から何処に移動するのか推測するなんて朝飯前よ」
「力男くん紹介しよう。私の両親さ」
「…………帰りてぇ」
俺は更なる面倒事の気配を感じた。
ランの「起立! 気を付け! 着陸!」は実際に私が小学生時代に言った事あります。いや、違うんだよ……別にふざけた訳じゃなくて、ふと「やべ。ちゃく、ちゃく……なんだっけ。思い出せねぇ」とド忘れしたのが原因なんよ。
力男の「俺はこの状況に疲れてた」ってシーンの前後は深夜テンションで作ったので、力男も私も色々狂ってます。あと個人的に「どうも、超能 力男です」のシーンはお気に入り。
~力男と他キャラを絡ませる時のイメージ~
ガク先輩:秘密を共有したり、面倒事に巻き込んでくるので遠慮が一切無い。親しき仲にも礼儀ありって言葉があるけど、この二人に礼儀なんて言葉は存在しない。距離感で言うと親友。
ラン:阿吽の呼吸で相手の行動を察したり、物理的に距離が近かったりと友達以上の関係。ただし相手が絶対に隠したい秘密(超能力や転生など)には干渉しない気遣いは存在する。距離感で言うと幼馴染。
リュウ:同性なのもあって遠慮が無く、男子中学生らしい馬鹿げた事を一緒にする。この前は力男の歌う「お願いマッスル」に合わせてリュウがポーズをとっていた。距離感で言うと同性の友達。
優正:一応は先輩として敬意は持ってるが、言動には遠慮無く突っ込む。距離感で言うと年上の友達。
その他:クラスに一人は居る真面目系委員長のような感覚。それはそうとノリには乗るので、緑辺りから「やれやれって雰囲気出してるけど、力男も同類よ」と思われてる。距離感で言うと友達。
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