【完結】俺のクラスメイトが魔法少女な件   作:のろとり

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 キミプリ映画、9月12日公開!
 …………なんか、本編の最終回でも前書きでプリキュア映画の宣伝した気がするな。

 番外編最終回だからって気合い入れすぎて一度燃え尽きました。その翌日には復帰しましたが。
 現在時刻は朝6時30分。予約投稿時間は朝7時なので予約30分前に書き終わりました。眠い。


その18 俺達の日常が今後も続いていくな件

「おはよー」

 

「力男おはよう! 今日も寒いな!」

 

「それは腕を捲って言う台詞じゃねぇよ」

 

 季節は12月。

 冬休み、クリスマス、大晦日……様々なイベントが迫っている中、俺達は寒い空気と低い気温に身体を振るわせながら変わらず学校へと通う。一部寒さを感じてない奴も居るけど。

 

 つーかこの前寒いからって二人羽織しただろ。隙間風で俺だけが寒い思いをする中、背中に乗せて学校まで運んだだろ。なんで腕捲ってるの? 慣れたの、この寒さにもう慣れたの? それともお前の中では今は夏なの?

 

「おはようございます力男さン」

 

「リュウもおはよう」

 

 あ、良かった。リュウは腕捲りしてない。

 じゃあ俺の感覚は正しかったのか。いやぁ、良かった良かった……まぁそれはそうと、リュウにもリュウで言いたい事はあるけど。

 

「なぁリュウ。ちょっと厚着しすぎじゃないか?」

 

「最近寒いですからネ」

 

「お前ら二人を見比べると季節が分からなくなるんだが」

 

 俺はランとリュウへ互いに視線を向ける。

 片方はワイシャツを腕捲りしており、もう片方は帽子マフラー手袋セーターコートカイロと、ここだけ夏と冬が混ざってワ◯ピのパンクハザードのような状態となっていた。それかヒ◯アカの轟焦凍。

 

「ほれ、寒いなら俺のコート羽織っとけ。少しはマシになるだろ」

 

「ありがとうございまス」

 

「オレの部活着も貸すぜ!」

 

 ガクブルと震えるリュウをそのままには出来ず、俺はカバンを自分の机に置いてから、着ていたコートをリュウに掛ける。そんな俺を見て、ランも部活用のカバンからウインドブレーカー━━━薄い生地で出来たスポーツ用の服。より分かりやすく言うと、凄い動きやすいジャージのようなモノ━━━をリュウに渡す。

 

 これで少しでも寒さを凌げればと思ったと同時に、俺の耳に誰が廊下を駆けてくる音が聞こえる。HRまで残り5分、そんな時間に俺らの教室に遅刻しそうだと焦ってくる人物と言えば一人しか居ない。

 

「はぁ、はぁ……セーフ!?」

 

「アウトだ」

 

「アウトでス」

 

「アウトだぜ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 勇子である。

 豪快に教室の扉を開け、息切れをしながら俺らに遅刻してないか聞いてくるので三人揃って嘘を付いてみた。すると勇子は簡単に嘘に騙され、ショボンと顔を歪ませて地面へ座ってしまった。

 

「冗談だよ冗談」

 

「むっ。そういう冗談止めてよ~ビックリしたじゃん!」

 

「じゃあ遅刻しないよう起きろ」

 

「い、いや~朝はほら……ね。眠気って言う強敵が居てね」

 

「マホに退治(起こ)してもらえ」

 

「それはもうしました」

 

 勇子の後ろから顔を出すマホに「おはよう」と挨拶をする。

 起きられないのならマホに起こしてもらえと思ったが、どうやら既に実行済みだったようだ。

 てか本当にモーニングコールされてるのかよ……。冗談のつもりで聞いたのに。

 

「つーか一時間目から体育だって言うのに、そんな眠そうな目をしてて大丈夫か?」

 

「安心してください力男さん。勇子ちゃんが冬眠しないよう私がしっかり見張りますから!」

 

「冬眠はしないよ!?」

 

「それなら良いが……はいお菓子」

 

「え、もしかしてくれるの!?」

 

「ああ。冬眠する為には必要だろ?」

 

「だから冬眠しないよ! でもお菓子は貰うね。ありがとう!」

 

 俺は今にも閉じそうな目をしている勇子にお菓子を渡す。

 数日前、学校帰りに買ってそのまま忘れてたお菓子だが、冬眠用ならなんでも良いだろうな。取り敢えずはそれ食べて眠気を覚ましとけ、冬眠しないなんてフラグを回収するんじゃねぇぞ。

 

 

 

 

 

「すぅ、すぅ……」

 

「冬眠しちゃってるね勇子ちゃん」

 

「次に会えるのは進級してからになるわね」

 

「まずは冬眠の部分を疑問を持て」

 

 勇子は無事フラグを回収した。

 フラグが立った後、HRが終わった後までは良かったのだが、更衣室に移動するとなった途端、突然眠気が襲ってきたようで机に伏して寝てしまった。

 

 軽く肩を揺らしたが起きる気配は一切無く、マホにおんぶされて更衣室へと運ばれていた。流石に女子更衣室までは俺とリュウは連いていけない━━━着いて行ったら変態扱いされて捕まる━━━ので校庭で待っていたのだが、緑と咲黄が俺達と合流したぐらいしか変化はなく、勇子は未だにマホの背中で寝ていた。

 

「おーい勇子、起きろ。さっきまで冬眠しないと言ってただろ~?」

 

「ぐー、ぐー」

 

「起きる気配が全然しないですネ」

 

「なら仕方ない。諦めよう」

 

「早すぎませんカ?」

 

 いやだって起きないなら仕方ないじゃんかよ。

 一応テレパシーで心を読んでみたが、何も聞こえない……つまりは完全に眠りに入ってて意識が無いようだし。もし浅い眠りだったら、微かにテレパシーが聞こえてくるんだがなぁ。

 

「持久走楽しみだなぁ……今日こそは10秒を切るぜ!」

 

「あれ、今日走るの何メートルだっけ?」

 

「3000m」

 

「目標タイムは?」

 

「10秒未満」

 

「持久走って知ってる?」

 

 これ(持久走)そういう種目じゃねーから。

 持久走って言うのは、長い距離を数十分単位で走る競技だから。あくまで目的は長い距離を走る部分だし、人類はそこまで速く走れねぇよ。ちなみに俺は持久走嫌い。なんであんな長い距離を走らないといけないんだよ。

 

(なぁリュウ。持久走で超能力使うの有りかな?)

 

(無しですヨ。そもそも超能力は隠してるんですよネ?)

 

(いや、ほんの数ミリ浮くぐらいだったらバレないと思ってさ)

 

(ドラ◯もんですカ!)

 

 リュウにテレパシーで超能力を使って走るのはどうか相談したが、案の定駄目だと言われてしまった。

 やっぱり駄目か。少しぐらいなら超能力使っても平気だと思ったが、言われた以上はちゃんと実力で走るしかないな。

 

「でも走りたくねぇなぁ……」

 

「もつ鍋、美味しいなぁ。えへへ」

 

「よし緑、今から煮込むから鍋用意しろ」

 

「何を煮込むつもりなのかしら!?」

 

 何を煮込むってそりゃあ……な。

 俺は寒い風で身体を震わせる中、夢の中で暖かい鍋を食べている勇子に怒りが沸いて緑に鍋を用意してもらおうとしたが、流れで俺が何を想像したか(さっ)されてしまい、拒否されてしまった。

 

「冗談だよ冗談。それよりどうする? 流石に勇子を背負って走る訳にはいかないだろ?」

 

「オレなら出来るぞ!」

 

「私も出来ます」

 

「僕もでス」

 

「改めてだけど怪力多くない?」

 

 だがこれは授業だ。誰かが勇子を背負った走ったとしても、それは勇子の為にならない。勉強と同じように自分自身の力で成し遂げないと意味が無い。誰かが代わりをしては勇子の成長を奪ってしまうのだから、勇子には起きてもらわないといけない!

 

 …………と言うのは建前で、本音を言うと勇子も走らせないと俺の気がすまない。より具体的に言うと、勇子だけ楽をするのは嫌だと言うただの私念だ。

 

「あっそうだ」

 

「何か良い案が思い付いたの?」

 

 俺はなんとか勇子を起こす方法を考えていると、ふと良い作戦を思い付いた。そうだよ、最初からこの方法があったじゃねぇか。なんでさっきまで思い付かなかったんだが。

 

「勇子、早く起きないとさっきの菓子没収な」

 

「ハッ! おはよう!」

 

 俺は勇子の耳元でボソリと呟くと、起きる気配が無かった様子はどこへ行ったのやら。勢いよく顔を上げて目を覚ました。

 しかし寝ぼけているからか、景色が教室から校庭へ変わっているのに脳が追い付いてないのか。何処か目がトロンとしており、状況があまり理解出来ていない様子であった。

 

「勇子ちゃんおはよう」

 

「ん、あれ。ここは……?」

 

「勇子さン、何処まで記憶が残っていますカ?」

 

「HRが終わってから確か……どうしたんだっけ。それに、私いつの間に体育着に着替えたの?」

 

「私が着替えさせました」

 

「んう? ありがとうマホちゃん」

 

「ほら、シャキッとしなさい。今から持久走よ」

 

「…………え?」

 

 ボンヤリとした意識を少しずつ引き上げ、寝落ちする前の出来事をゆっくりと振り返っていた勇子だったが、緑の言葉でその思考は固まる。

 

 違う。聞き間違い。気のせい。そんな訳は無い。

 そう内心で自問自答を繰り返しながら、一度深呼吸をして辺りを見渡す。するとそこには、記録を計る準備をしている先生と等間隔で置かれた小さな三角コーンがあり、何をするのは察せられる状態となっていた。

 

「冬眠しても良いかな?」

 

「さっきしない言っただろ」

 

 持久走を嫌がっている勇子は冬眠で危機を脱しようとしたが、俺らがそう逃がすわけも無く一緒に嫌々ながらも走るのであった。

 

 …………いや、一つ訂正しよう。ランとマホとリュウは三人で誰が一番速くゴール出来るか競争を始めたので一緒には走っていない。

 だから持久走ってそういう種目じゃねーから!

 

 

 

 

 

「昼の時間だぜ!」

 

「はい弁当」

 

「力男ありがとうだぜ!」

 

 一時間目の体育(持久走)で疲労した身体も数時間も経てば回復し、俺はマホ達が科学部の部室で昼食を食べに行くのを見届けた後、自分のカバンからラン用の弁当を出して手渡す。

 

「…………前から思ってましたガ、ランさんのお昼は力男さんが作っているんですカ?」

 

 転校当初、目の届かない場所で悪事を企まれるよりは一緒に行動して監視した方が良いと、打算ありきで誘って以降、なんやかんやでずっと俺とランと三人で昼食取っているリュウは、ラン用の弁当を出した俺を見てボソリと以前から抱いていたらしい疑問をこぼした。

 

「ん? あー、別に毎日って訳じゃないけどな。ただ、ワニヨウが居た時の影響で誰かに飯作らないと落ち着かない体質になってきて」

 

「そういうことでしたカ」

 

 一人の時は購買で買ったモノで適当に済ませてたりしてたが、ワニヨウが居候を始めた辺りから既製品だけは寂しいと思い料理を始めた。

 

 前世ではあまり料理をしたことが無かったので当然失敗はあったが、半年もあれば上達していつしか昼は購買ではなく弁当を作るようになっていた。それはワニヨウが妖精国に帰ってからも変わらず、それどころか誰かに飯を作りたい欲が溢れ出してきて、ランにも弁当を作るようになったのだ。

 

「あッ」

 

「どうした?」

 

「お昼、忘れましタ……」

 

 俺とランに続くように弁当をカバンから取り出そうとしたリュウだったが、何やら血の気が引いたような顔をしており、事情を聞くと昼を忘れてしまったらしい。

 

「ありゃ。今から購買行っても人多いだろうからなぁ……俺の分けるぞ」

 

「オレもオレも!」

 

「ありがとうございまス……!」

 

「あ、でも箸が無いな」

 

「シャーペンを箸代わりにしまス」

 

「ちゃんと箸で食え」

 

 いや、やるけどさ。たまにふざけてシャーペンや鉛筆を2本を持って「箸の物真似~」ってするけど、本当に箸代わりにして食べようとするんじゃねーよ。

 ちょっと待ってろ、購買で割り箸貰ってくるから。結構混んでるだろうけど、先頭まで進んで割り箸取ってくる程度ならそんな時間かからないだろうし。

 

「失礼する」

 

 俺は席を立ち教室の扉を開けようとしたら、それより先に外から扉を開ける人物が居た。

 その人物とはリュウの義姉、ワタカラ・コマツールであった。一応の話ではあるが、ワタカラはこの学校の生徒でも先生ないし、なんなら魔法世界で旅をしているはずだ。なんで居るんだコイツ……あっ、もしかしてアレか。

 

「不法侵入?」

 

「私を悪者扱いするな」

 

「人生振り返れ」

 

 ほんの数ヶ月前まで世界滅ぼそうとしてきたじゃねぇか。

 邪神に唆されたとは言えど悪い事してたのは事実だろ。もうそんな事をするつもりは一切無いだろうが、これからはリュウを大切にして生きとけ。

 

 と、軽口はこの辺りにしておくか。

 よく見ればワタカラの胸元には来客であるのを示すネームプレートが垂れ下がっており、不法侵入ではなくキチンと受付を済ませてから学校に来たらしい。

 

「スリュウ、忘れ物だ」

 

 ワタカラは俺の前を通り、リュウの目の前に立って風呂敷で包まれた四角い何かを置いた。

 見た目でなんとなく予想はつくが、透視で確認してみると中身は弁当━━━箸もついている━━━であった。どうやらワタカラはリュウの為に弁当を持ってきてくれたらしい。

 

「義姉さン、僕の為にお弁当持ってきてくれたんですカ?」

 

「泊まった時に弁当が机に置いてあるのを見つけてな。気が向いたので持ってきた」

 

「あれ、でもワタカラって旅してるからリュウと一緒に暮らしてる訳じゃなかったような……」

 

「何か言ったか?」

 

「いや、何も」

 

 うん。多分俺の記憶違いだな。

 なんかワタカラ自身は視野を広げる為に魔法世界を旅して、リュウは知見を広げる為に此方の世界に残って学校に通っているが、きっと気のせい……じゃねぇよ。旅する行ったクセによく此方の世界に遊びに来てる上に、リュウの家に泊まってるんじゃねーか。

 

「では私は失礼する」

 

 もっとリュウと話すと思っていたが、あまり部外者が居るのはよく無いと思ったのか。ワタカラは首から下げているネームプレートを机に置いた後、ずっと持っていた外で履き用の靴を穿き、窓の縁に脚を掛けて忍者のような素早い動きで帰っていくのであった。

 

「窓から帰るのかよ!?」

 

「窓から帰るのは行儀が悪いぞー」

 

「自分の今までの行いを思い出せ」

 

 ランも今まで窓から何度も出入りしてただろ。

 もしかしてだけど窓を第二の玄関だと勘違いしてる?

 

「リュウは窓から帰らないようにな」

 

「そんな事しませんヨ……」

 

 分かってはいるけど、窓から出入りした奴(ワタカラ)する奴(ラン)が居るから、身体能力的に4階から移動するのが容易なリュウ見るとどうしても不安になっちまうんだよ。

 

 俺はリュウが良識のある奴で助かったと内心安堵し、席に座って三人で昼を食べるのであった。

 

 

 

 

「それで勇子ちゃんが冬眠しようとしちゃって━━━」

 

「暇だから邪魔するぞガク先輩」

 

「あら、力男じゃない」

 

「やぁ力男くん。お茶でもしていくかい?」

 

ここ(科学部)はカフェかよ」

 

 放課後。

 ランは部活、リュウは用事であったりと、各々の予定でバラバラに帰る中、俺は暇だからと科学部にお邪魔すると、咲黄と緑がお茶をしており、ガク先輩は紙に何かを書いていた。どうする、外のプレートを科学部から茶道部に変えるか?

 

「やっぱ廊下は冷えるな。超能力で身体暖めよ」

 

 俺はこの場に超能力の存在を知る奴しか居ないのを良いことに、パイロキネシスで手のひらサイズの火を出して身体を暖める。

 

 カイロよりは暖かい程度だし、これより大きいサイズの火は出せないが今はこれで充分だな。てか逆に大きさ間違えたら校舎が全焼するからこれぐらいの方が有りがたい。

 

「ふむ。相変わらず君の超能力は便利だね」

 

「あっても無くてもさほど変わらんだろ」

 

「特別な力を持ってない一般人からしたら羨ましいものさ」

 

「肯定はするけどガク先輩を一般人とは認めたくない」

 

「私もそれには同意するわ」

 

 あってもなくても変わらない。

 これは前世(一般人)今世(超能力者)を経験した俺の持論だ。あれば便利ではあるが、あるからと言って特別な人間にはなれない。精々身近な誰かを守る程度の使い道しかないし。

 

「…………ところでガク先輩。さっきから書いてるそれはなんだ?」

 

 俺はガク先輩の手元を覗いて書いてある内容を読もうとする。

 しかし文字の意味が理解出来ない。これは俺がガク先輩から見て正面側、つまりは文字が反対になるような形で覗いているのが原因ではなく、そもそも俺の知らない言語なのが理由である。

 え、なに。英語では無いのはなんとなく分かるけど、これ何処の国の言葉。教えてガク先輩、悪いが俺は外国語はさっぱりなんだ。

 

「あ、実は私もちょっと気になってた」

 

「これは妖精国に関する重要な資料さ」

 

「え? それって私達が見て良いものなの?」

 

「見ても言語が異なる(理解が難しい)のだから問題ないさ。実はこの前手伝った時に運営部分で気になる事があってね。改善点を書いているのさ」

 

「科学以外にも国の運営も出来るのね」

 

「あくまで素人意見さ」

 

 妖精国の運営部分にまで意見してるの見るとなんか怖いな。

 本人としては素人意見のつもりなんだろうが、その意見の中に自分が有利になる要素入れてきそうで怖い。具体的に言うと、妖精国に自分の研究所を建てたりとか。

 

「失礼する。ガクっちは居るか!」

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「ふむ。少し待ちたまえ優正くん」

 

 ガク先輩に対して恐怖を感じていると、科学部の部室をノックする音と共に外から優正の声が聞こえた。

 部室へ訪れた優正に待つよう伝えると、ガク先輩は妖精国の資料を片付けながら俺に視線を送り、パイロキネシスで出した火を消すよう伝えてきた。

 

 なんとなく何かを隠してるのを察せられてる節はあるけど、優正は妖精とか超能力とか何も知らないからな。別に優正やランにならバラしても良いとは思うが、変に広めて第三者に知られる危険性を避けるなら仕方ないか。

 

「入りたまえ」

 

「失礼する! ガクっち、先生が探してたぞ! なんか他に科学部の部員を集めないと、部室を没収するとか」

 

「ぼ、没収!?」

 

「……今度は何をしたかしら?」

 

「何もしてないさ。大方、部員が私しか居ないのが原因だろうね」

 

「そうえば3年生(ガク先輩)が卒業したら科学部は誰も居なくなるのか」

 

 今更……と言うより改めての話になるが、科学部の部員は現在ガク先輩1人である。なのでガク先輩が卒業したら科学部は廃部になるし、なんなら部員が1人の時点で廃部されても不思議ではない。

 

 不思議ではないんだが、この人は実績だけは色々持ってるからなぁ。そのお陰と言うか、それを交渉材料にして今まで部活を成立させていたが、卒業となれば例え交渉材料があっても意味は無いだろう。何故ならこのまま存続させたところで部員が居なければ廃部は確定するのだから。

 

「ふむ。別に口八丁や適当な実績を建てて期限を伸ばすのも可能だが……今回は力男くん達を科学部に入部させようか」

 

「勝手に入れるな」

 

 ナチュラルに口八丁を手段に入れるな、俺達を部員にカウントしようとするな、新しく交渉材料を生成するな。

 

 俺はガク先輩の意見に頭を抱えるが、科学部を存続させる一点だけを見ればごねて期限を伸ばすよりも、新しく部員を集めた方が効率も廃部回避の確率も高いだろう。ただしそこに俺らの意思は存在しない。存在してくれよ。

 

「力男くん。君は善意とは何で成り立っていると思う?」

 

「急に何の話だよ……」

 

「善意には善意。優しくされたから今度は優しくする、物をくれたからお返しに何か渡す。そうやって互いに相手を気遣えば善意が成り立つと私は考えている」

 

「要するに?」

 

「私は善意で部室を貸し出してる。なら君達が私に善意で何かを返すべきではないのかね」

 

「善意の押し付け止めろ」

 

 止めてくれガク先輩、その(押し付け)は俺に効く。

 つーかガク先輩に善意について教えられるのなんか嫌だな。いつも善意や悪意なんて知らない、自分の知りたいを第一に突っ切るタイプの人だし。

 

「さて。建前はこの辺りにしておいて、部室が没収されたら君達はここを自由に使えなくなるのは君達も困るだろう?」

 

「え? う、うーん……」

 

「元々はクラヨウ達が周りに見つからないよう、誰も来なくて涼しい場所を探してたのよね」

 

「今はもう国に帰ったけどな」

 

「でも科学部が無くなるのはちょっと寂しいかな」

 

 涼しい場所が無くなると言っても、それはあくまで「誰にも見られない場所」と言う枕詞付きであって、それを外せば教室でも何処でも問題は無い。

 ただ……寂しくなるのも事実だ。なんやかんやでこの一年間遊びに来たり、呼び出されたり、実験に巻き込まれたりしてたからな。思い出の場所が無くなるとなれば何もしないのは流石に嫌である。

 

「どうするガクっち、ワイが科学部に入った方が良いか!?」

 

「君も私と同じ3年生だろう? 今年度で卒業するのだから、存続させたいと言う意味では難しいね」

 

「ハッ……そうえばそうだった!」

 

 俺達三人がどうするか相談している横で、優正も力になろうと入部を決意していたがガク先輩と同じ三年の優正が今入部してもあまり意味は無い。

 

「そうだなガク先輩。もし科学部に入った場合、俺に何かメリットはあるのか?」

 

「ふむ。私に交渉かね?」

 

「別に善意で入っても良いけど、どうせなら交渉してみたくてな」

 

「君のそのノリに付き合おうではないか」

 

「ガタッ! 今付き合うって!」

 

「緑くん落ち着きたまえ」

 

 恋愛に飢えすぎて難聴発症した?

 俺はちょっと悪ふざけでガク先輩に対して交渉を挑むと宣言し、ガク先輩もその悪ふざけに乗っかってきてくれた。

 別に交渉しなくても入部するつもりではあるけど、なんとなく交渉したい気分になったからする。ふっふっふっ……なんかこう、良い感じに自分に有利な条件を結んで入部してやるぜ!

 

「メリットその1。私がOGとして時折学校に来て勉強を教えられる」

 

「参りました。科学部に入れてください」

 

「「早い!」」

 

 交渉は成立した。

 

「ちょっと力男、今交渉するって言ってたわよね!?」

 

「ああ。そして交渉は無事終わった、今日から俺は科学部だ! よろしくな帰宅部!」

 

「怒るわよ」

 

 ごめんて。

 帰宅部煽りした事を緑に謝るが、交渉自体は今ので終了している。あまりにも早い交渉であったが、メリットが魅力的すぎるのが悪い。

 

「真面目な話をすると、色んな事情込みとは言え勉強教えてるのに赤点ギリギリの科目がある三人の点数が上がるってだけで充分お釣りが来る」

 

「あー……」

 

 きっと緑の頭には俺と同じ例の三人が思い浮かんでいるのだろう。

 テストの度に赤点ギリギリの科目が必ず一つはある勇子、ラン、リュウだがそれは俺らが勉強を教えた状態であってそれだ。

 教える側の咲黄とマホは頭が良く、緑もそれなりではあるが、2年生、3年生となって授業の内容も難しくなると考えれば、ずっと勉強を教えられるかは分からないだろう。

 

 俺も俺で前世では前世では高校1年生の途中まで生きてたから、その辺りまでの内容は頭に入っている。ただし人に教えられる自信は無い。自分で覚えるのと人に教えるのは全然違うからな。

 

「正直私も少し社会で躓いてるのよね。歴史の流れがちょっと……誰と誰が恋仲なのかってのは覚えてるのだけれど」

 

「記憶がピンポイントすぎない?」

 

 それをもう少し歴史の流れを覚えるように使えないの?

 あ、その恋仲を覚えられる記憶力を使って歴代の将軍全員覚えてるのか。凄いな、テストだと歴代将軍の暗記問題なんて出ないから殆ど役に立たないけど。

 

「ほれ、入部届さ」

 

「助かるわ」

 

「あれ? ねぇガク先輩。ちょっと枚数多くないかな?」

 

 無事に入部を決意した緑、咲黄、そして俺に入部届を配るガク先輩であったが、その手にはこの場に入部する俺ら3人分の枚数ではなく、何故だか7人分の入部届が握られていた。

 

「これは力男くんの分さ」

 

「俺に分身しろと?」

 

「してくれるのなら私も有りがたいのだがね」

 

「出来ねぇよ」

 

「ワイが教えようか?」

 

「悪い優正。俺まだ人間止めたくないんだ」

 

 優正が分身出来るのは周知の事実だからともかくとして、俺には分身出来るほどのスピードは無いし、超能力でそういった事も出来ない。かと言ってガク先輩が意地悪で何枚も入部届を渡してくるとは思えないし……あぁ、なるほど。

 

「マホ達の分か」

 

「よく分かったね」

 

「枚数的にな」

 

 ガク先輩が握ってる入部届の枚数は7枚。

 ここに居る俺、咲黄、緑を除けば残るのは4枚。俺の周りでガク先輩を恐れずに科学部に入部するような人物が居るか考えれば、思い付くのはマホ、勇子、ラン、リュウ。丁度その4人である。

 

「じゃあ俺の分含めて5枚貰ってくぞ」

 

「1枚10実験さ」

 

「高いな!?」

 

「そもそも10実験って単位は何よ……」

 

 俺が実験に巻き込まれる回数だよ。

 まぁ廃部は避けられようだから取り敢えずは安心だな。俺の身の保証は安心も安全も無くなったが。

 

 

 

 

 

「あー、もしもし?」

 

『力男暇だ、助けてくれ!』

 

「俺はドラ◯もんかよ」

 

 学校から帰宅し、飯も風呂も済ませ就寝の時間。

 ベッドでゴロゴロとしていると、ランから電話が掛かってきた。暇だから相手をしてほしいようだが、俺は今から寝るんだ。そんなに相手にしてほしいなら明日の学校まで我慢してくれ。

 

『暇だ暇だ暇だ暇だ』

 

「知らねぇよ。明日の準備して早く寝ろ」

 

『だからお前も陸上部に入らないか?』

 

「前後の文脈どうした、時でも飛ばされた?」

 

 言葉と言葉が繋がってねぇんだよ。今暇だから陸上部に入れは会話を為して無いんだよ、会話のキャッチボールどころかドッヂボールなんよ。

 

「あー、そうだラン。部活関連の話にはなるが、科学部に入るつもりは無いか?」

 

『力男、まさかオレを逆スカウトするつもりか? だがオレはレアだぜ』

 

「別に無理にとは言わんよ。ただ、陸上部はそのままに席だけでも置かないのかと思ってな」

 

 俺はランとの会話でガク先輩から貰った入部届を思い出し、ランを科学部に入らないか勧誘する。

 ランが陸上部一筋なのは分かっているが、幽霊部員としてならワンチャンあるかもと思っている。それにマホ達は誘ってランだけ誘わないのも、仲間外れにしてるみたいで嫌だからな。入部するかだけでも確認しておきたい。

 

『力男……オレにも陸上部のプライドってのがあるんだぜ? そう簡単に別の部活に入るってのは』

 

「メリットその1。ガク先輩がOGとして時折学校に来て勉強見てくれる」

 

『実はオレ、前から科学に興味あったんだ』

 

「手のひらドリルだったりする?」

 

『ドリルじゃないちゃぶ台だ!』

 

「意味同じじゃねぇか」

 

 俺と同じような反応してんじゃねーよ。

 あとちゃぶ台はそんな簡単にひっくり返すモノじゃないから。本来ならテーブルとしての役割だけだからな。

 

「じゃあ幽霊部員一人確保ってことで」

 

『力男力男、実はもう一人部員にしたいのが居るんだが良いか?』

 

「ん? 咲黄と緑は話を通したし、マホ達は明日にも話す予定だが……誰を誘うんだ?」

 

『学校に居るお化け』

 

「本物の幽霊を部員として連れてこようとするんじゃねぇ」

 

 それやったら幽霊関連が苦手なマホと勇子とリュウが悲鳴あげるじゃねぇか。それに幽霊部員ってのは席だけ置いてて部活動に参加しない人物の話であって、本物の幽霊を部員として扱う事じゃねぇよ。

 

「つーか入部届けに幽霊の名前書いても先生に却下されるだろ」

 

『えー……』

 

 「えー」じゃないよ。生徒じゃない奴の名前書いた所で先生に居ない奴の名前は書くなと返されるだけだし。

 

「じゃあ明日、入部届け用意しとくから」

 

『また明日なー力男。おやすみ!』

 

「おやすみ~」

 

 俺はランとの通話を終えて携帯を机に置き、部屋の電気を消して毛布を被る。やっぱり冬は冷えるな、もう少し厚めの毛布出した方が良いかな。

 

「はぁ~……今日も疲れた」

 

 冬の寒さを誤魔化すかのように、俺は意識を身体の外ではなく今日の出来事を振り替えるのに集中させる。

 今日も色々とあったな。勇子が冬眠しそうになったり、リュウが弁当を忘れたり、科学部の廃部が秒で無くなったり、ランと電話したり……ホント。この世界は楽しいな。

 

「また明日、だな」

 

 俺にとってそれは呪いのような言葉である。

 前世では約束を結んだ直後に世界ごと亡くなり、今世ではペンヨウが妖精国へと帰ってしまい、結局は果たせなかった。

 けれど今は違う。因縁も問題も無くなり、残るは自分達の手で掴んだ平和だけ。今度こそ約束を守れるのだと思うと嬉しくなり、俺は笑みをこぼす。

 

 明日にはどんな楽しいことが待っているのか。

 そう考えただけでも心は弾み続け、いつしか俺の意識は底へと沈み明日を迎える(約束を果たす)のであった。

 

~THE END~




 番外編、全18話(+オマケ2話)で無事完結です。
 本編後じゃないと書けない話を全部書いた結果、思ったより長くなってしまった……。ボリューム(文字数)だけで言うと本編の4分の1ぐらいあります。なげぇよ。

 番外編最終回はただの日常回でしたが、これは番外編を書き始めた当初から決めてました。力男達の戦いは完全に終わって、これからは平穏でなんて事の無い日々が続いていくと示したかったので。


 読者の皆様へ
 ここまでの読んでくださりありがとうございます。
 本作品の投稿はこの番外編をもって終了と致しますが、また機会があれば別の作品で会いましょう。
 それでは!

一番好きな章は?

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