推しの声が聞こえる……………これは夫婦を超えたな(確信)   作:一味違う一味

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第34話

「ア゛ア゛ァァァァァァッ!!」

 

 

 

 過去一番の絶叫、もはや断末魔に等しい叫びを上げるリコリスを尻目に俺は『姉』を嘲笑する。

 

 【同胞渇望】は不思議なスキルで、物理的に(こちらから)は干渉出来ないにも関わらず、向こうからは干渉されるのだから。

 

 さて、意図せずにさっきの目的である()()()()()()を叩き込めた訳だがリコリスはどうなるか。

 

 

 

「えっ、リコリスッ!? そんな、ちゃんと庇えてなかったの!?」

 

 

「あ……」

 

 

 

 ……目覚めの一発のつもりがリコリスには致命的だったようで、ピクリとも動かなくなった。どうやら、やりすぎてしまったらしい。

 

 さらに、軽く発狂した『姉』がリコリスの方へ行ってしまった。今までは怒り狂いながらも最低限の会話を成立させる知能はあったであろうに、尋常ではなく動転してる今ではそれも望めまい。

 

 運が悪ければ二人とも戦う気力を無くしてしまうだろう。マジかよ、こんな消化不良で終わるのは嫌だぞ。

 

 最悪、逃亡されるかもしれない。それは避けたいので逃げ道を塞ごうと、殆ど原型がない扉へと向かえば『姉』の献身的な看病によりリコリスが目覚めた。おお、しぶとい。

 

 爆発的に増えた腐肉戦士の影響で、リコリスが最初に食らった時よりダメージが増えてる筈だがリコリスは耐えきった。素晴らしいことだ。

 

 少し焦っていた俺は、冷静さを取り戻し『姉』へと声を掛ける。

 

 

 

「よかったな、妹さん生きてて。じゃあ続きをやろうか、もちろん(リコリス)も一緒にな」

 

 

「貴様……」

 

 

 

 先程までの怒りに染まった燃えるような視線ではなく、冷たい氷のような眼差しの『姉』。

 

 抱かれてるリコリスは目覚めたと言っても、殆ど動けない程度には弱っている様子だ。

 

 けれど、戦闘に支障は少ないだろう。生きてればスキルは使えるだろうし、『姉』という最高クラスの前衛が居る今はリコリスが動く意味も薄いので構わない。

 

 だから早く戦おうじゃないか。

 

 

 

「……ァネウェ」

 

 

「あっリコリス。気が付いたのね、守れなくて本当にごめんなさい」

 

 

 

 まだ焦点の定まらないリコリスが『姉』を呼ぶ。それが余程、嬉しかったのだろう。俺へ向けていた冷たい目付きは瞬く間に消え去り、慈愛に満ちた瞳をリコリスへ向けた。

 

 ちくしょう、この感動の再開(小芝居)が終わるまで待たなきゃいけないのかよ。

 

 

 

「ァネウエ……」

 

 

「なぁに? 私はここよ」

 

 

 

 まだかな、まだかな、と待ち続ける。

 

 いっそのこと、二人のやり取りをぶち壊したい衝動に駆られるが、それで二人が戦闘時のパフォーマンスを落としてしまえば本末転倒だ。

 

 せっかくなので万全の状態で戦ってほしい。それが、より完璧な『証明』に繋がるのだから。

 

 他に出来る事と言えば、リコリスは願いが叶った影響で燃え尽き症候群のようになっていない事を祈るばかりだ。

 

 

 

「アネヴェ、アネウエ」

 

 

「り、リコリス、どうしたの? 何でもお姉ちゃんに話してごらんなさい」

 

 

「ァネウェ……」

 

 

「私の目を見てリコリス。大丈夫だから、もう()()()()()!」

 

 

 

 あまりにも暇で暇で仕方なかったので、壁にエリカの似顔絵を描いていると姉妹の会話が少し不穏な方向へ流れてることに気付く。

 

 

 

「アネウエ……ドコ……」

 

 

「私はちゃんと居るわ。ほら、おてて握って上げる。昔みたいで楽しいわね?」

 

 

「ワラワ……ヒトリハヤダ……」

 

 

「もう貴方は一人じゃないわ、私とずっと一緒にいましょう。お願いだから、私とお話……」

 

 

「アネウ……エアネヴエアネゥエァネウエアネウェアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエアネウエア゛ア゛ア゛ネ゛ネ゛ネ゛ウ゛ウ゛ウ゛エ゛エ゛エ゛ェァァァァァァッ!!」

 

 

「リコリス! リコリス! 落ち着きなさい! 傷はもう治ってるわ、痛い事なんて何もないの! だから正気に戻って!」

 

 

 

 リコリスは燃え尽きるどころか燃え上がっている。だが、それも当然かもしれない。

 

 哀れにも『姉』を認識出来てない様子のリコリスにとって願いは叶っていないに等しいのだから。

 

 しかし、これでは二人の精神が著しく消耗して、弱るかも知れないという不安もある。

 

 まぁ、それはそれとして復讐対象の不幸が愉快だという気持ちも大きい。この場において唯一幸福を感じてるのは俺だけなのだから。エリカ万歳。

 

 どう見てもまともな状態には見えないリコリスに『姉』は懸命に話し続ける。彼女達の目には、すでに俺など映していない。

 

 

 

「取り敢えず、もう少し見学かな」

 

 

 

 それが終われば、彼女等姉妹が戦えるにしろ戦えないにしろ無理矢理戦ってもらい決着をつける予定である。

 

 クライマックスは近いだろう。

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