推しの声が聞こえる……………これは夫婦を超えたな(確信)   作:一味違う一味

39 / 39
第37話

◆ルーベンside

 

 

 

 

 

 

 

 

 【忍耐】で生き残った腐肉戦士を殲滅した俺は地面に寝転がり空を仰ぐ。周囲に山の如く積もった灰は、それだけ腐肉戦士が多かった証拠だろう。

 

 ついでにデパートは、いつの間にか炎上していた。焼け石に水なスプリンクラーの音が聞こえる。人の悲鳴は聞こえなかった、逃げたか全滅したのだろう。

 

 ちなみにリコリスと『姉』は、モンスターと違って死んでも灰にならなかった。

 

 どうでもよくて忘れていたが、ゲームでもSR以上のキャラクターは灰にならなかったので、その設定を引き継いでいるのだと思われる。

 

 達成感と疲労で何もしたくない気分であったため、デパートの崩壊や炎など気にせずゴロゴロしていると、俺の勝利を祝福する美声が響く。

 

 

 

〔お疲れ様、やれば出来るじゃない〕

 

 

「ありがとう、最後は敵のドジが大きいから満足とはいかなかったけどな」

 

 

〔その運も含めてアンタの実力よ。この私が褒めて上げてるんだから、もっと喜びなさい〕

 

 

「はははっ。十分に喜んでるし、悦んでるよ。俺がエリカから貰うもので喜ばない筈がない」

 

 

 

 ただ、そう。今は全てを出し切るような戦いの勝利の余韻を味わっており、極端な興奮状態から極端な冷静状態へと移行している。いわば賢者タイムに近い心境だ。

 

 エリカを無下にするつもりは毛頭ないが、エリカからすれば俺の反応が淡白に感じるのかもしれない。もしかして寂しいのか? やっぱりエリカは可愛いな。

 

 

 

〔そう? ならいいわ〕

 

 

 

 どうやら特に寂しくなかったようだ。

 

 俺の方が寂しくなったのでゴロ寝から体育座りになって地面に『の』の字を書く。

 

 

 

〔そんな事より、メッセージを開きなさい。面白いものがある筈よ〕

 

 

 

 そ、そんな事……

 

 ショックで放心するのをギリギリ堪えて、エリカの指示に従うと確かに()()()()()があった。

 

 『能力』を得てから最初に色々調べた時以来、一度も開かなかった『メッセージ』欄で点滅する赤ランプ。それは『コグモ』でボッチの俺にメッセージが届いていることを示していた。

 

 ボッチにメッセージを送る奴など決まっている。熱心なアンチか──

 

 

 

「運営から、か」

 

 

 

 

 

『人類の皆様、第一章クリアおめでとうございます。

 

 第二章の実装は168時間後を予定しております。

 

 それまでは、()()()()を用意させて頂きましたので、お楽しみ下されば幸いです』

 

 

 

 

 

 記念すべき(?)『能力』を得てからの初メッセージは定型文のお祝いと事務的な連絡だった。これは俺以外にも送られているのか? まぁ、どちらでも構わないか。

 

 それよりも重要なのは、さらなる強敵が保証されたと言う事だ。素晴らしい、第一章(今回)のように偶然近くにボスがいるとは確率は低いだろうが、存在が確定しただけでも期待が湧くというものだ。

 

 どうか、他の連中に倒されませんように。

 

 そう祈りながら軽く目を瞑る。

 

 

〔どう? アンタの最強証明(目的)にピッタリだと思うんだけど。お気に召したかしら?〕

 

 

「……最高だな」

 

 

 

 エリカの声に、ゆっくりと目を開きながら噛み締めるように告げる。流石はエリカだ。俺への理解度が最高値に達しており最早、俺自身を超えるかもしれない。

 

 それだけでなく、他の奴なら腹立たしいだけのSっ気もエリカだと俺の好みにド直球だったので、今でなければ狂喜して躍りたいくらいだ。

 

 

 

〔アンタなら、そう言うと思ったわ。せいぜい生き延びて私の期待に応えなさい〕

 

 

「当然だ」

 

 

 

 けど、ずっと気になってる事がある。

 

 

 

「……俺に何を()()してくれてるんだ?」

 

 

 

 恐らく、()()の内容とは、以前にエリカの様子がおかしくなった時の原因だろう。

 

 秘密主義の彼女が教えてくれるとは考えにくいが、それでも今を逃せば二度と機会は無いかもしれない。

 

 そんな思いが半ば無意識に口を動かした。

 

 だから───

 

 

 

〔……いいわ。少しだけなら教えてあげる〕

 

 

 

 この返答にはかなり驚いた。

 

 今は余程、気分が良いのだろうか。余韻など吹き飛ぶ驚きがあり、即座に姿勢を正す。

 

 

 

〔アンタは私が、ずっと探してたヤツに()()()かもしれないの。だから死んだら困るし、期待もしたってわけ。分かった?〕

 

 

 

 照れ隠しなのだろう。若干早口で捲し立てたエリカの「分かった?」は、質問の(てい)を成してはいるものの、「はい」以外の返事を認めない雰囲気だった。そんなところも可愛いぞ。

 

 それはそうと、返事に悩む。なにせ俺はエリカのフワフワした回答に確信が持てないのだから。

 

 故に、俺が言うべき事は─────

 

 

 

「……分からなかった」

 

 

 

 素直に白状した。

 

 当然だが、エリカの質問(?)に無言を返すなど出来ないし、嘘を吐くなど以ての外だ。

 

 どうしよう。この問答でエリカの期待(・・)に答えられないと判断されて、捨てられたら俺は心が死んでしまう。

 

 なにか挽回する方法はないものか。

 

 

 

〔なら、分かるように努力しなさい。私は自分にも他人にも厳しいのよ〕

 

 

 

 よかった、怒ってなかったらしい。むしろ、まだ機嫌が良さそうな雰囲気すらある。

 

 なら俺の答えは決まっている。

 

 

 

「勿論するさ。そして、エリカの期待なら応えてみせるよ」

 

 

 

 絶対にな。

 

 そうして俺はエリカとの逢瀬を堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

◆???side

 

 

 

 

 

 

 

 灰と瓦礫の山と化した黒い祭壇の儀式場に、偶然少女の遺体が落ちてくる。

 

 その遺体は不思議なことに外傷はなく、けれども全身を紅で染め上げていた。

 

 少女の顔は驚愕と絶望に満ちており、何かを求めるように掌を前へと伸ばしていた。

 

 ここに誰かいれば、あまりの痛ましさに目を背けるか、晒された哀れな顔に布を掛け手を合わせたくなるだろう。

 

 しかし、ここには誰も居ない。

 

 あるのは何の役にも立たぬガラクタのみ。生物など皆無である。

 

 そんな儀式場に謎の光源が転がって現れる。

 

 それは少女のように降ってきた訳ではなく、壁の隙間から出てきたのだ。謎の光源の形は綺麗な真円の中に複雑な模様が刻まれており、俗に言う魔法陣の見た目をしていた。

 

 どこかの一途な狂人が本の封印から開放した魔法陣である。

 

 その魔法陣は儀式場の遺体を発見すると歓喜したように飛び上がり、そのまま少女の遺体に貼り付く。

 

 すると、魔法陣は肌に溶けるようにして消え去った。

 

 魔法陣が現れた事で微かな彩りを見せた祭壇も元の静寂を取り戻すかと思えば新たな異変が起こる。独りでに動く魔法陣など目ではない異変が。

 

 

 

「ぬぅ……」

 

 

 

 間違いなく死んでいた少女の遺体が僅かに動き出し、声を上げたのだ。

 

 蒼白く変色していた肌は白磁器のような純白となり、負の感情に塗れていた表情は少女らしいあどけない可愛らしさを感じさせた。

 

 

 

「姉上……」

 

 

 

 苦痛と恥辱に濡れて死んだ少女は蘇る。皮肉にも自身の最愛を蘇らせるために用意した手段で。

 

 このような現状を幸か不幸かは誰にも分からない。それでも寝言で最愛を呼ぶ今の彼女は幸せそうだった。




これにて一章完結です! 続きは書けたら書きます
(`・ω・´)ゞ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

TS悪役令嬢神様転生善人追放配信RTA(作者:佐遊樹)(オリジナルファンタジー/コメディ)

悪役令嬢にTS神様転生して実は善人だけど追放されるRTAの様子を配信しようとした。▼気づいたら金!血筋!権力!女!女!イケメンヤンデレ!暴力!暴力!暴力!って感じの異世界ライフを送る羽目になっていた。▼そういう感じのお話。▼小説家になろう様とのマルチ投稿です。▼一迅プラス様にてコミカライズ連載中です。▼エンターブレイン様より書籍版が発売中です。


総合評価:46657/評価:9.1/連載:196話/更新日時:2026年04月25日(土) 19:23 小説情報

殺人を強要されている内に快感を覚えてしまう清純乙女『風』(作者:乙女竜)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

三つ編み眼鏡茶髪TS美少女に転生した主人公が周りを曇らせるお話の筈だったんですけど、主人公も曇っちゃいました。▼人殺しを強要されて「ごめんなさい……」とか震える声で言っている自分の口角が上がっていることに気づいて、口元に手を寄せながら荒い息で「え、なんで…?」ってゾクゾクしちゃう女の子、見たくない?▼私は見たいです。よろしくお願いします。▼時々その気持ちが強…


総合評価:9345/評価:8.71/連載:22話/更新日時:2026年02月19日(木) 17:32 小説情報

塵埃の魔法少女【完結】(作者:難民180301)(オリジナル現代/冒険・バトル)

性根が腐ってる元魔法少女ちゃんが、新人魔法少女たちをいじめる話。日記形式+三人称。曇らせ要素あり。


総合評価:41730/評価:9.12/完結:10話/更新日時:2023年11月03日(金) 06:00 小説情報

「は?負けたいんだが?」(作者:天野ミラ)(オリジナル現代/冒険・バトル)

最高の魔法少女である私が最も輝くのはきっと───負ける時なのだろう。▼全ての百合好きと曇らせ好きと負け犬ワンちゃんへこの小説を捧ぐ▼これは、ちょっと人より性癖の尖った(本人談)マゾでナルシストな現役最強魔法少女が、周りを曇らせたり、溺愛されたりする純愛?百合物語である。▼直崎ゆきふり 様よりスクイレのファンアートをいただきました!▼とっても可愛く描いていただ…


総合評価:5984/評価:8.59/完結:78話/更新日時:2026年02月13日(金) 20:12 小説情報

TS転生人外ロリ、厭世魔法少女の使い魔になる(作者:蓋然性生存戦略)(オリジナルSF/冒険・バトル)

とりあえず地球が爆散して転生することになった人間が一人。▼元凶を名乗る自称神様モドキに願いを聞き届けてもらい、TS転生人外ロリになった彼は、転生直後に浮かれた気分だったためにボコられ、とある魔法少女の使い魔にされてしまう。▼最初は死にたくないがための投降だったが、次第に魔法少女《エンドロール》の私生活の彩りの無さに対し、お世話魂に火がついた。▼これは、厭世家…


総合評価:4059/評価:8.69/完結:12話/更新日時:2026年05月15日(金) 14:40 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>