推しの声が聞こえる……………これは夫婦を超えたな(確信)   作:一味違う一味

4 / 39
第4話

「……まずは『能力』確認だな」

 

 

 

 3つの中で俺が『能力』確認を優先した理由は2つある。1つ目、自分の強みと弱みを認識することにより、それに合った情報を集めるためだ。どうしても単独行動では人手が必要な情報集めが弱いので集める情報を限定して弱みを消そうと思ったからだ。

 

 2つ目の理由は、実際やらなければ分からないが、上手く行けば食料確保をしなくて済むかもしれないからだ。うまい飯を食うのは好きだが、別に食えなくなるわけでもないので、解決出来るならしたいというのが本音だ。

 

 こうして理由を上げていくと、『能力』確認で間接的に他の2つも調べられるので、これが一番いいだろう。

 

 ……3つの中で一番エリカに近しい内容だったことは関係ない。ないったらない。

 

 多少、ステータスの確認方法に迷ったが、スキルを発動したときの要領でメニュー画面を意識すれば、目の前に半透明のウィンドウが現れたので、その後はステータスの項目を探し選択するだけだった。

 

 パッと見だがメニュー画面はゲーム時代と同じだったので、その点は使いやすくてありがたい。

 

 

 

「では、ご開帳っと」

 

 

 

 

 

 ユーザーステータス

 

 名前 :【ルーベン】

 

 レベル:【150】

 

 能力 :【エリカ・デュラ】

 

 クラン:【ー】

 

 

 

 

 

 ユーザーステータスはゲーム時代と、そこまで差異はない。強いて言うならば『能力』の欄が追加されているくらいだろうか。

 

 他の欄の『レベル』『クラン』は勿論のこと『名前』まで同じだったのは少し驚いた。これは日本人としての名前を捨てて『コグモ』での『名前』で生きろということか?

 

 

 

「別にいいけど」

 

 

 

 自分で名付けたのだから当然かもしれないが『名前』は割と気に入っている。さらに、『名前』はエリカが呼んでくれたことで俺の中で箔が付き絶対に手放せないモノとなった。(むしろ、エリカが俺の日本人名を知らないと思うので、そっちはいらないまである)

 

 今回の事は渡りに船かもしれない。

 

 過去の全てを諦めて惰性でゲームを続けていただけの情けない俺との決別に。今後は生まれ変わったつもりで生きていこう。

 

 

 

「本命の『能力』はどうだ?」

 

 

 

 

 

 ステータス【エリカ・デュラ(UR)】☆5

 

 

 親愛度:10202

 

 

 能力値

 

・ATK:7000

・VIT:1000

・DEX:2000

 

 

 スキル

 

 ・アクティブスキル

 

 

 

 名称:【自己完結】

 

 効果:[50秒間、自身に【デバフ無効】【ATK+100%】のバフを付与]

 

 

 名称:【絶対制裁】

 

 効果:[最もHPの低い敵単体のバフ全て解除、ATKの1200%ダメージ]

 

 

 名称:【同胞渇望】

 

 効果:[敵全体へATKの800%ダメージ、自身以外の味方全体へ最大HP15%ダメージ]

 

 

 

 ・パッシブスキル

 

 名称:【怨憎会苦(おんぞうえく)

 効果:[戦闘時に敵と味方の数によりATKが変動する]

(自身以外の味方が2人の場合、補正値が0となる。

 味方が1人増えるごとにATK-100%、味方が1人減るごとにATK+100%)

 

 

 名称:【復讐誓約】

 効果:[300秒に1度、HPが0になった際にHPが最大値で復活]

 

 

 

 

 

 メニュー画面やユーザーステータスを出した時と同じように『能力』の選択を念じると、思った通り内容が表示される。

 

 見なくとも言える程に繰り返し目に焼き付けた俺が育てたエリカのステータスだった。細部は多少なり異なっているが、概ねゲーム通りである。

 

 

 

「ストーリーの能力じゃなくて、ゲームの戦闘システムの能力なのか」

 

 

 

 初めてスキルを発動した時から予想はしていたが、それでも目で見て確信を持てると安心感がある。

 

 一応、【絶対制裁】を発動した要領で他のアクティブスキルも試すが問題なく発動した。現在は試しにくいので後回しにしたが恐らくパッシブスキルの方も発動するのだろう。

 

 また、『蠱毒(こどく)蜘蛛糸(くもいと)』はターン制ゲームだからだと思われるが、スキルのクールタイムが変わっていた。ステータスの細部が変わっていたのはその部分だ。

 

 具体的には、スキルの発動時間が1ターンから10秒に、1度の戦闘に1度だけ発動するスキルは300秒に1度へと変わっていた。

 

 それもゲームシステムを無理矢理や現実化した結果生まれた歪みであるのだろうが、害は無いと思われる。実際に使ってみないとなんとも言えないが。

 

 仮に何か副作用があって、それが理由で死んだとしても本望である。

 

 『能力』を与えたのが『コグモ』運営だったとしても、俺にとって『能力』とはエリカの一部だ。

 

 そして『能力』が原因で死んだのなら、それはエリカに殺されたに等しく恨みなど抱く筈もないし、『能力』を持ったまま死ねるのなら最後までエリカを感じながら死ねるのだ。これ程の素晴らしい死に方はない。

 

 まぁ、その場合は志半ばで死んでいると思うので、それが心残りとなり少しは死にたくないと思うかもしれないが。

 

 そうこう考えている内に自身に起こる異変に気付く。

 

 強烈な寂寥(せきりょう)感と、噂に聞く薬物の禁断症状のような治まらない渇望、これは──

 

 

 

「エリカに構ってほしい……」

 

 

 

 推し成分の不足だ。

 

 やっぱり、しょうがなくなかった。どうしよう、抑えきれない。

 

 俺のエリカ好きは自身の想像を遥かに超えていたようだ。思考がエリカ以外に何も考えられなくなる。

 

 

 

「話したいよ、エリカ」

 

 

 

 異常は精神だけに収まらず、肉体にまで現れた。

 

 最初に感じたのは寒気だ。そこから全身に鳥肌が立ち、震えが止まらなくなる。

 

 

 

「……寂しいよ、エリカ」

 

 

 

 次は強烈な吐き気と目眩だ。足から力が抜けていき、尋常ではない倦怠感と同時に視界が端から白く染まっていく。

 

 

 

「会いたいよエリカ、構ってくれエリカ、触れ合いたいよエリカ、無視は止めてくれエリカ、エリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカエリカ………」

 

 

 

 自然と口が開きうわ言のように内心が零れ出てきた。

 

 このまま死ぬのではないかと思うほど打ちのめされていると、生命の危機で活性化された脳内に天啓のような発想を得る。それは数少ない俺の意志でエリカを感じられる方法だ。

 

 

 

「エリカはココ(・・)に居たんだったな」

 

 

 

 自分でも何を言っているのか、半分理解できないまま無意識に口から出たソレは俺にとって間違いなく希望だった。

 

 薄れゆく意識の中で縋り付くように、俺は何時の間にか閉じていた『能力』ステータス画面を再度開く。

 

 

 

「やっと、会えた」

 

 

 

 内心で吹き荒れていた渇望と、どんどん大きくなっていた寂寥感が、満たされた事による安堵で和らいでいく。

 

 一部を除きステータス画面には直接触れられないので、突き抜けないように注意しながら、表示されるエリカ・デュラの文字を優しくなぞる。

 

 触れられない事を寂しく思いながらも、そんな自分の女々しさに苦笑が漏れる程度には今の俺は余裕があった。

 

 落ち着いてくると自分がどれだけ不安定だったか理解できる。最愛のエリカに話しかけてもらえた事で自分でも無意識の内に、さらなる関わりを求めていたようだ。

 

 なんと強欲なのか。

 

 そう自己嫌悪に陥りかけるも、またあの(・・)状態に戻るのは嫌なので全力で抗うが、ジリジリと精神が昏い場所へ近づくのを感じられた。

 

 いかん、楽しいことを考えて持ち直さなければ。

 

 その一心でステータス画面を凝視し、エリカニウム(ルーベン専用の精神安定用物質)を補給して何とか持ち直して、はぁと溜め息を吐く。

 

 

 

「キリが無い」 

 

 

 

 思ったよりも安定していなかった自身の精神を嘆く。何か手っ取り早く全快になる方法は無いかと考えていると、あることに気づく。

 

 ステータスとは多くのゲームがそうであるように、『蠱毒の蜘蛛糸』でも自身の状態やスペックを示す、現実の制度に例えるなら身分証のような物だ。

 

 そんな俺の身分証(ステータス)で輝くエリカ・デュラの文字。これが示すことは。

 

 

 

「俺とエリカが一心同体だという事か」

 

 

 

 恋人のように個人間の約束で成り立つフワフワした関係ではなく、夫婦のように紙切れ一枚で関係を左右される薄い関係でもない。

 

 俺の中にエリカがいる。

 

 これで俺達が恋人や夫婦の概念を超越した新しい存在だと証明された訳だ。最高だ、人生で一番気分がいい。

 

 しかも俺が愛を証明出来れば、今よりさらに上の関係になれるかもしれない。裏切ってなどやるものか、誰にもこの立場を渡さない。

 

 そう、なぜなら──

 

 

 

「エリカは俺だけのものだ」

 

 

 

 さっきまでが嘘のように元気を取り戻して、独占欲に燃えた俺は完全復活を果たした。

 

 単純だとバカにすることなかれ、俺みたいにエリカさえいれば生きて行けるような単純な生き物は、単純な理由の方がパワーが出るのだ。

 

 エリカとの絆(?)を目視した俺は上機嫌になった。

 

 

 

〔……気持ち悪いことを言わないでくれる?〕

 

 

 

 おっと、口に出てたか。思考を纏めるときに口に出すと纏まりやすいから、無意識に喋っちゃうんだよな。

 

 いや、それよりも重要な事が起きてた。

 

 

 

「エリカ!?」

 

 

 

 それは俺が狂おしい程に求めていた、エリカの声だった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。