≪幕間≫については、『修学旅行』『朱乃との関係』『レイヴェルの扱い』の三本がメインになってきます。
それは駒王学園の休み時間のこと........................
「へえ~~~、じゃあアーシアさんって日本には来たことが無いんだ~~~」
「はい。仕事の都合上いろんな国に行ったことはありますが、日本は今回が初めてですね。
だから、今度の修学旅行はスゴく楽しみなんです♪」
「アーシアさんって、髪サラサラだよね。何か特別なトリートメントとか使ってるの?」
「いえ、普通のシャンプーとリンスですよ? あ、でも日本では手に入りにくいかもしれませんね」
「スゴいよね~~。お仕事で、しかもその歳で色んな国に行ってるなんてね」
「うんうん、確かイリナさんやゼノヴィアさんと同じところで働いてるんでしょ?
アーシアさんはどんなお仕事をしてるの?」
「えっと................主に怪我人の手当てや病人の看護ですかね。あとは身寄りの無い子どものお世話なんかもしてます」
「じゃあ、医療従事者ってこと? スゴいじゃん!」
「そんな、私なんてまだまだですよ//////////////」
花が咲いたような笑顔でクラスメイトと話すアーシアさん。彼女はイリナやゼノヴィアと同じように短期留学生として、この駒王学園の二年に編入してきた。
何故、呂布さんの奥さんである彼女がこの駒王学園にやって来たのか。
それは呂布さんがアーシアさんのために色々と手を回したからだ。
何でもアーシアさんは、これまで『学校』というものに行ったことが無いらしい。
そのため『蒼天の紅旗』を除けば同年代の友達というのが、ほとんどいないとのこと。
そのことを憂いた呂布さんが、この機会にアーシアさんに『人付き合いを学ばせつつ、「蒼天の紅旗」以外にも友達を作ってもらいたい』ってことだそうだ。
理由としてはヴァーリなんかと同じだな。ただヴァーリとは違い、アーシアさんは友達作りに積極的で今では部長や朱乃さんと双璧を成すほどの人気者だ。
しかも部長や朱乃さんは『高嶺の花』って感じで近寄り難い感じだけど、アーシアさんはその気立ての良さから親しみやすいため、ある意味部長たちよりも人気が高いかもしれない。
何しろ誰隔て無く接する優しさと常に笑顔を絶やさない素直な性格から、既に『駒王学園の聖母』と呼ばれているほどだからな。
だが、彼女の人気の秘密はそれだけではない。その理由が...................
「でもやっぱり一番スゴいのが、私たちと同い年なのに既に『婚約者』がいるってところだよね!」
「そうそう! お相手が同じ職場の同僚で、結婚式も職場の皆で祝ってくれるんでしょ!」
「は、はい。私たちのリーダーにあたる方が主導になって企画してくれてるみたいです。
ただ皆さん、今はお忙しいみたいなので、挙式は落ち着いてからということになっています♪」
「いいな~~~、職場恋愛で職場で結婚式を挙げてくれるって最高じゃん!」
「うんうん。しかも恋人や彼女を通り越して、『婚約者』だもんね! 今まで私たちの近くにはそんな人いなかったもん」
「エヘヘ♪ ありがとうございます♪ でも皆さん、私なんかより素敵な方ばかりですから、きっと良い人に出会えると思います/////////////////////」
(え? 何この笑顔? 人間ってこんな輝く笑顔が出来たの?)
(アカン、この子と話してたら自分が如何に醜い存在なのかを思い知らされる!)
(天使や、この子はホンマもんの天使やったんや.................)
そう、これがアーシアさんが人気になったもうひとつの理由。
アーシアさんみたいな可愛らしい女の子がクラスに編入してくれば、人気者になるのは当然。
そして年頃の女子であれば、恋バナに話が移るのは必然。
編入初日の休み時間でクラスの女子が恋人の有無を確認したところ、アーシアさんは自分が婚約していることを話した。
質問した当人含めクラスの女子は驚愕、そして聞き耳を立てていた男子は阿鼻叫喚、クラスはまさに騒然とした。
もちろんそんな噂が広まらないはずはなく、アーシアさんに婚約者がいることは編入初日に光を超える速さで学園中に広まった。
ちなみにこの日の夜、学園の男子は枕を涙で濡らしたとか.....................。
だがアーシアさんの凄いところは、そんな話が広まったにも関わらず人気を落とさなかったところだ。
それどころか女子は、アーシアさんのことを『進んだ女性』として尊敬するようになった。
そして男子は婚約者がいようが、その性格と母性からより熱狂的となり、彼女の称号は『聖女』から『聖母』へとランクアップした。
さすがは呂布さんの奥さんだ。ちょっと男の影が出来た程度で、たちまち人気を落としてしまうようなアイドルとはワケが違う。
これが『人徳の差』というものなのだろう........................。
「よ~~~し、LHR始めるから席につけ~~~」
休み時間が終わり、担任が入ってきたのを確認するとクラスの皆が席についた。
........................いよいよ今日のメインイベントの始まりか。
「昨日連絡していたとおり、今日のLHRは修学旅行の班決めをしてもらう。
とりあえず今から全員で話し合って、7人1組のグループを決めてくれ」
担任の先生がそう言うとクラス全員が席を立ち、思い思いにグループを決めようとする。
【班決め】。それは修学旅行を楽しめるかどうかの重要なファクターである。
男子なら可愛い女子と、女子は意中の男子と一緒に班を組むことに全力を傾けるだろう。
本来であれば、俺もそんなお気楽な気持ちで班を決めていたと思う。
だが俺、イリナ、ゼノヴィアの三人は目を合わせ頷くと真っ直ぐにアーシアさんの下へ向かった。
「アーシアさん、修学旅行一緒に回ろうよ!」
「そうそう! それでさ、その婚約者さんについて詳しく聞かせてよ!」
「アーシアさん。俺、京都に親戚がいるんだ。だから、京都には何回も行っているから案内できるぜ」
「俺は体力に自信があるから、アーシアさんの荷物持ちになるよ。ほら、アーシアさんって華奢だからさ」
「え、え~~~っと.....................」
しかし、さすがは『学園の聖母』。男女問わず、近くにいたクラスメイトに囲まれて同じ班になろうと誘われている。
アーシアさんもいきなり大勢に話しかけられて、困惑している様子だ。
................................悪いな、お前ら。皆のためにもお前たちとアーシアさんを組ませるわけにはいかないんだ。
「アーシアさん。修学旅行、俺たちと一緒の班を組んでほしい」
周りにいるクラスメイトを掻き分けた俺は、いつになく真面目な顔と口調でアーシアさんを誘った。
だが、そんな横入りを周りの連中が許すはずもなく抗議してくる。
「おい、兵藤。抜け駆けすんなよ!」
「そうよ、私たちだってアーシアさんと同じ班になりたいんだから」
「アンタは松田&元浜の変態コンビと組んでなさいよ!」
よし、これで皆の意識をアーシアさんから俺に移すことが出来た。ここで更に畳み掛ける!
「........................そうだな。けど、一番重要なのはアーシアさんの意思だろう? まずはアーシアさんが誰と組みたいかを確認するべきなんじゃないのか?」
「うぐっ! た、確かに.................」
「な、なに、今日の兵藤........いつもと全然様子が違う」
「うん、確かにここ最近雰囲気が変わった気がしたけど..............兵藤ってこんな真面目な顔が出来たんだ」
「ありがとな、わかってくれて嬉しいよ。それでアーシアさんは誰か組みたい相手はいるか?
ちなみに俺はイリナとゼノヴィアとも班を組んでいる」
「え、イリナさんとゼノヴィアさんも一緒なんですか? ではせっかくですし、ご一緒してもよろしいでしょうか?」
よし、狙い通り! 同じ『蒼天の紅旗』のメンバーであるイリナとゼノヴィアが一緒なら、アーシアさんも『一緒に回りたい』って思うはずだからな!
「ああ、もちろんだ」
「良かった。一緒に楽しもうね、アーシアさん♪」
「よろしくな、アーシア」
「はい。こちらこそよろしくお願いします♪」
そうして周りの皆も『アーシアさんの希望なら仕方ない』といった感じで離れていった。
中には諦めの悪いヤツもいて食い下がってきたが、イリナとゼノヴィアの他に松田、元浜、桐生とも組んでいるため定員オーバーであることを伝えて引き下がらせた。
ふぅ、とりあえず計画の第一段階は無事クリアだな.................これで良かったんですよね、アザゼル先生。
何故に俺、イリナ、ゼノヴィアの三人がここまでアーシアさんと同じ班になろうとしているのか。
話は昨日の夜に遡る.............................。
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場所は兵藤家の一室。そこにはアザゼル、ヴァーリ、グレモリー、シトリー、イリナ、ゼノヴィア、黒歌、ヴァレリーと錚々たるメンツが集まっていた。
「.................全員揃ったな。リアス、あの三人はどうしている?」
「呂布様はクロウ・クルワッハと模擬戦。アーシアさんとオーフィスはお風呂に行っているわ」
「よし、じゃあアイツらがいない間にさっさと決めちまうぞ」
今回の集まりの発起人であるアザゼル先生が話を進めようとするが、俺には何のことやらさっぱり分からない。
そもそもこの集まりも『呂布さんたちには内密に話し合いたいことがある』としか聞かされていないからな。
でも、この部屋の重苦しい空気から察するに俺以外の皆は分かっているみたいだ......................いったい何を話し合うんだ?
「あの~~~、アザゼル先生。決めるって何をですか?」
「ああん? そんなの修学旅行中におけるアーシアの護衛計画についてに決まってんだろ」
「え、護衛? 何でそんなのが必要なんです? 普通に修学旅行を楽しむんじゃダメなんですか?」
「「「「.....................................」」」」
俺がアーシアさんの護衛について疑問を挙げると周りの皆は何故か『コイツ、マジか?』みたいな反応をされた!
ナニナニ!? 何で皆してそんな呆れたような顔してるの!? 俺ってば何か変なことでも言った!?
「..................イッセー、お前の中で『アーシア・アルジェント』という存在はいったいどんな認識なんだ?」
「え?『認識』、ですか? そりゃあもちろん、呂布さんの奥さんで素直で可愛らしい女の子って感じですけど?」
「................はぁ、お前が『その程度』の認識でしかないってことは、よ~~~く分かった。
じゃあ全員の意識を統一させるため、順番に説明してやる」
何か質問に答えただけなのにアザゼル先生に溜め息を吐かれたんだけど..............心なしか皆も可哀想なものを見るような目で見てくるし。
それに『その程度』って、じゃあ皆は違うってこと?
「まずイッセーが言った通り、アーシアは現状『唯一の呂布の妻』だ。
つまり、各勢力におけるアーシアの立ち位置は呂布と同等ということだ。ここまではいいか?」
まぁ、呂布さんの奥さんなんだから呂布さんと同等の扱いを受けるのは当然だよな。
うん、大丈夫。ここまでは付いていけてる。
「無論、アーシアは呂布から見ても特別な存在。呂布にとっては一番近しい女性だ。
だが言い換えれば、呂布にとって『弱点』に成りうる存在でもある。そんな美味しい獲物を『禍の団』が放っておくと思うか?」
確かに................絶対無敵、完全無欠とも言える呂布さんだが、自分の奥さんが人質にされたら身動きが出来ないだろう。
そしてアイツらなら、アーシアさんみたいな可愛らしい女の子でも平気で人質に取ろうとするはずだ。
「あれ? でも、アーシアさんには神喰狼が護衛についてますよね。それなのに俺たちが更に護衛するんですか?」
「アイツらだってバカじゃない。アーシアの守りを固められてることくらい分かっているはずだ。だから、アーシアを直接狙うような真似はしないだろう」
「じゃあ、何で俺たちの護衛が必要なんですか?」
「.................お前たち駒王学園の二年生は、これから何がある」
「? 何って、そりゃあ修学旅行ですけど?」
「そうだ。修学旅行、つまりアーシアに近しい人物が一斉にこの町から離れるということだ。
この町は日本神話群に加え、俺たち聖書陣営。更には『蒼天の紅旗』まで目を光らせているから、普段なら問題ないだろう。
だが京都となると日本神話群との兼ね合い上、目が行き届かない。奴らがこの機会を逃すとは思えない」
「っ、それってまさか................修学旅行に行っている生徒が狙われるってことですか!?」
「人質を取るために他のヤツを人質にする。ゲスな連中がよくやるゲスな手口さ」
確かにアイツらなら一般人を人質にするくらい平気でやってくる。
実際、一般人である俺の両親も人質にしていたからな!
「アーシアさんの性格上、生徒を人質に自身の身柄を要求されたら断ることは出来ないでしょうね」
「そういうことだ、ここまでが大前提の話。問題はここからだ。
イッセー、お前の目から見て呂布、オーフィス、アーシアの三人はどう映ってる?」
「どうって、そりゃあ『仲の良い家族』。それこそ、実の親子みたいに見えてますけど...............」
これに関してはみんな同じ気持ちだろう。あの三人が外に出かける時は、必ず呂布さんとアーシアさんの間にオーフィスが入る形で手を繋いでいる。
その光景は端から見れば、『仲良し親子』が手を繋いでいるようにしか見えない。実に平和な光景だ。
俺たち全員、そんな場面を見ては暖かい気持ちになっているからな。
「そうだな、俺もだいたい同じ感想だ。実際、呂布はもちろんのこと。オーフィスもアーシアのことをとても大事にしている。
さて...................これでアーシアを拐われたなんて言ってみろ、どうなると思う」
「....................もしかして、メチャクチャ怒られます?」
「バカ野郎! そんなレベルで済むか!! 普段のアーシアに関しちゃあ、学園では俺たちがいる。それ以外では呂布かオーフィスのどちらかがついている、だから問題はなかった!
だが、今回オーフィスはアーシアとは一緒にはいけない。そしてオーフィスの抑え役として呂布も残らないといけない。
だからこそ呂布は、俺たちを信頼してアーシアのことを任せてくれるんだぞ? その信頼を裏切ってみろ、いくらお人好しの呂布でもブチギレるぞ!!!」
「ブ、ブチギレ、ですか? あの呂布さんが?」
「当たり前だ。イッセー、自分に置き換えてみろ。例えばリアスの護衛を『蒼天の紅旗』に任せたとする。
だがリアスはテロリストに拐われて、帰ってきた時には既に傷つけられたり穢された状態だった...................お前なら『蒼天の紅旗』を許すか?」
「っ、そんなの許せるはずないじゃないですか!!!」
部長の護衛を任されておきながら....................拐われて、傷つけられて、穢されて、帰す?
あり得ねえ、俺ならテロリストはもちろんのこと。その護衛をしていた『蒼天の紅旗』は全員血祭りに上げる!!!
っ、なるほど、確かにそう考えると呂布さんの怒りの矛先が俺たちに向くのは十分ありえるな。
ブチギレた呂布さん..................冥界で見たあの圧倒的なまでの怒り、アレが今度は俺たちに向けられるのか。
ダメだ、平和な修学旅行に似つかわしくない『死』以外のワードが思い浮かばない。
「言っておくが、イッセー。俺たち全員、呂布が『全力』でキレたところは見たことがないからな。
以前、冥界で見た時とは比べ物にならないくらい凄惨なことになると思えよ」
「いいいいいいい!! アレ以上、ですか!?」
「当然だ。俺たちが見てきたのは『手遅れになる前』の怒りだ。呂布はいずれも手遅れになる前に防いできた。
『手遅れになる前の怒り』と『手遅れになった後の怒り』、どっちの怒りが激しいかは言うまでもないだろ」
そりゃあ手遅れになった後の怒りの方が激しいだろうけど..................マジかよ! あの時ですら、冥界の空がとんでもないことになってたんだぞ!?
アレ以上って、もはや俺の頭じゃ想像すらできないんですが!?
「神の怒りは『天の怒り』、魔王の怒りは『地の怒り』。そして呂布の怒りは『天地の怒り』だ。
人間界にだって『災厄』という形で影響が出てくるだろう」
「さ、『災厄』って、いったいどんなことが起こるんだよ...................」
「それに関しては、試しに『神の子を見張る者』で計算してみた。冥界で見た時の怒りのエネルギー、仮にあの倍のエネルギーがこの日本で炸裂した場合」
「「「「「「「ゴクリッ」」」」」」」
呂布さんの強さを未だ計りきれていない事実に恐怖する俺たちは、アザゼル先生の言葉を固唾を飲んで見守った。
そして緊迫した空気の中、アザゼル先生はゆっくりと口を開いた...................。
「地震なら、少なくとも世界最大規模と言われている『チリ地震』かそれ以上。そんな大地震が日本列島全体を襲うことになるのは確実だ。
もしかしたら、地震だけじゃなく富士山を含めた日本中の火山の大噴火も起こるだろう..................怒りの余波でこの威力だ、俺たちに向けられる怒りはもっと重いと思え」
『日本壊滅』.............アザゼル先生の話を聞いて、俺たちの頭にはこの四文字が浮かんだだろう。
おかしい、映画やアニメの中でしか起こらないであろう未曾有の大災害なのに『呂布さん』が絡むと凄く身近なことに感じてしまう。
「ちなみにこれは、あくまで『倍のエネルギー』で計算した結果だ。それ以上のエネルギーが放出された場合は、どうなるかは全くわからない」
この世の終わりじゃないですか!!! 少なくとも日本中の火山が大噴火なんかしたら、この国は終わりますよ!!!!
まさか、ただの修学旅行が日本を滅ぼしかねない原因になりかねないだなんて...............グッバイ、俺の青春。
「.............これで俺たちが今、立たされている状況が理解出来たはずだ。じゃあ本題に入るぞ」
「ねえ、アザゼル。思いきってアーシアさんだけ修学旅行には参加させないってことは出来ないの?」
「リアス、それは俺も真っ先に考えた。だがそうなった場合、間違いなく呂布の耳に入る。
そして呂布は何がなんでもアーシアを修学旅行に参加させようとするだろう。最悪、呂布がオーフィスを連れて京都に行きかねない」
「となると、護衛計画のことをアーシアさんにお教えすることも出来ませんね。アーシアさんなら呂布殿にお伝えするはずですから」
「じゃあ、『師匠やオーフィスさんには内緒にしてくれ』って頼むのはどうですか?」
「匙、それは悪手です。その場合、今度は私たちが『アーシアさんの危機を黙っていた』という問題が生じます」
「そうなったら、たとえアーシア・アルジェントの護衛に成功したとしても、呂布にバレた時点で俺たちに呂布の怒りが集中するな」
皆がそれぞれ意見を述べていく。あの匙やヴァーリまで真剣に考えているあたり、この一件の深刻さが伺える。
「なら、いっそのこと呂布さんとオーフィスも京都に行ってもらうのはダメなんですか?」
「アーシアを狙うようなテロリスト共に呂布とオーフィスが手加減なんかすると思うか?
あの二人の力に京都の地が耐えられるわけないだろ」
「怒れる『深紅の武人』と『無限の龍神』か...............それだけでこの国は跡形もなく消滅するだろうな」
「ああ、最低でも駒王町はこの世界から消えることになる」
「え? 何で駒王町だけ?」
「『深紅の武人』と『無限の龍神』を同時に怒らせて、俺たちが無事でいられるわけないだろ。
そして、日本そのものが消滅しかねない事態に日本の神々が黙っているとも思えない。
町一つ差し出すことで、あの二人の怒りを鎮められるなら喜んで差し出すだろうよ。っというか、俺なら間違いなくそうする」
「まったく、本当に神も仏もない世の中ね.................まぁ、記憶改竄などで不都合な情報を隠蔽してきた私たちが言えることではないのだけれど」
................なるほど。あの二人が京都に行くどころか、アーシアさんの危機を悟られるだけでアウトなわけね。
「なぁ、イリナ、ゼノヴィア。今回『蒼天の紅旗』から誰か増援には来てくれないのか?」
「うん............私たちもリーダーに相談したんだけどダメだった」
「ああ。今、『蒼天の紅旗』は凄く慌ただしくしていてな。これ以上の増員は出来ないと断られてしまったよ」
「同じく悪魔、天使、堕天使からの増員も無理だ。例の駒王学園での協定があるからな、聖書陣営の戦力増強にあたるようなことは日本神話群が認めない」
増援は見込めない、最大戦力である呂布さんとオーフィスもいない。
正真正銘、俺たちだけで護衛をやらないといけないってことか。
「つまり、『呂布さん、アーシアさん、オーフィスさんに気付かれることなくアーシアさんを秘密裏に護衛する』ってわけね」
「『シークレットサービス』ということか。それなら任務でやったことがあるな」
「そういうことだ。ところでタマモ、頼んでいた件についてはどうなっている」
アザゼル先生がタマモさんに尋ねると、タマモさんが真剣な表情で立ち上がる。
いつもの陽気な雰囲気とは大違いだ。この人、こんな顔も出来たんだな。
「はい。天照様にお願いしましたところ、『今回ばかりは協力してやる』とのことです。
ただ日本の神や精鋭は別件で必要としているため、動かすことが出来ません。
そこで、天照様の命令で京都の妖怪たちに協力していただけることになりました」
「よし、現地の協力者を用意してもらえたのはデカイ。
ちなみに『禍の団』については、何か情報は入っているか?」
「八坂様の指揮の下、京都では既に警戒態勢が敷かれております。しかしそれらしい存在は、まだ確認されておりませんわ」
「わかった。生徒たちの周囲は俺たちが目を光らせておく。何かあれば、すぐに連絡してくれ。情報は逐一共有だ」
「承知いたしましたわ。八坂様にも連携は密に取るように伝えておきます」
「聞いての通りだ、今回の護衛は京都の妖怪との共同で行うこととなる........................だが、決して油断するな。
俺たちは京都の妖怪たちでは手が回らない、アーシアや一般生徒の警備と護衛だ」
妖怪たちが京都全域を守り、俺たちがアーシアさんや他の生徒たちを直接守るってことだな。
この間みたいな失敗は許されない。文字通り、俺たちの肩にこの国の運命が掛かってんだからな!
「アーシアと同じクラスであるイッセー、イリナ、ゼノヴィアはアーシアと同じ班になれ。そして常に誰か一人はアーシアの側にいろ。
くれぐれも一般生徒とのみで班を組ませるんじゃねえぞ」
「「「はいっ!!!」」」
「木場、シトリー、ヴァーリは他の生徒の護衛だ、俺とロスヴァイセも一般生徒の護衛に回る」
「「「「「はい!!!」」」」」
「わかった」
その後もアーシアさんと同じ班になった俺たちの京都を回るルート、非常時の際の逃走ルート、避難場所などを綿密に決めていった。
「よし、だいたい今決められるのはこんなところだな。
他の部分については、当日の状況などを確認しながら随時決めていくぞ」
まぁ、実際にやってみないと分からないことって多いからな。
気になったことは、その都度アザゼル先生かロスヴァイセさんに相談するとしよう。
「あとは...............朱乃についてだな」
「え、朱乃さんがどうかしたんですか?」
「ほら、聖書陣営内での呂布様の伴侶選び。アレの最終選考が修学旅行の日程と被ってるのよ」
「さ、最終選考!? もうそんなところまでいってたんですか!? 全然、気付かなかった................」
「仕方ないわ、イッセーは修行で忙しかったもの。朱乃は修行や学校の合間を見ては、ちょくちょく冥界に行っていたのよ?」
そうだったんだ。そう言えば朱乃さん、何日か姿が見えないことがあったな。
学校を休んでたこともあったし..................てっきり修行でいなかったとばかり思ってた。
でもそうか、ようやく朱乃さんの想いが報われようとしてるんだな。
「すみません、朱乃さん。俺、まったく知らなくって............おめでとうございます。あともう少しですね! 俺、応援してます!!」
「うふふ♪ ありがとう、イッセーくん♪」
「案の定、貴族共がつまらねえ妨害を仕掛けてきたがな。
けど俺や魔王たちの協力があったとはいえ、それらを全てはね除けちまうんだから.............ホント、大したモンだよ」
「奉先様の妻となるのですから、当然ですわ♪」
やっぱり妨害があったんだ。そりゃあそうだよな、何たって『世界最強』と繋がることが出来るんだからな。
既得権益やら政治的な思惑のことを考えたら、貴族たちが何もしないわけがない。
「ま、こっちのことは俺たちに任せて.................朱乃、お前はお前のやるべきことに専念しろ。
ようやくここまで来たんだ。『深紅の武人の妻』の座、意地でももぎ取ってこい!」
「もちろんですわ、アザゼル先生!」
おお~~~、朱乃さんがいつになく燃えている! これで呂布さんと結ばれるかどうかが決まるんだからな。
朱乃さんにとってはこれからの長い人生、愛する人と一緒になれるか、それとも尼として生きていくか..................まさに生きるか死ぬかの瀬戸際と言っても過言ではない。
「そういうわけだから、朱乃の主として私も最終選考には同行するわ。
ギャスパー、白音。何かあったら、ソーナに相談しなさい」
「「はい」」
部長と朱乃さんは冥界、修学旅行の関係者は京都、その他の者たちは駒王町で待機。
ここまで皆がバラバラになったことは初めてだ、本当に大丈夫なんだろうか?
特に俺たちなんかは呂布さんたちに悟られないように、護衛を完遂させなくちゃならないんだからな。
俺だけではなく、皆がかつてないほどプレッシャーを感じているとアザゼル先生が話し出す。
「お前たちが考えている通り.................今回、俺たちは色んな事情や都合が重なって、バラバラで行動しなきゃならない。
しかもそのどれもが『取り返しのつかない事態』に発展する可能性を秘めている」
「「「「................................」」」」
朱乃さんは自分の人生、俺たちは日本の存亡。確かに何かを間違えれば、取り返しがつかない。
「だが、やることは一つだ。全員、『目の前の自分のやるべきことに全力を注げ』!」
「「「「ッッッッッッッッッ!!!!」」」」
『自分のやるべきことを精一杯やる』。以前、賈駆にも言われたことだ。
あの言葉がいかに大事だったってことが、今ならよく分かる。
こんな時だからこそ、各々が自分のやるべきことを全うしなくちゃいけないんだ。
「全てを自分一人でこなせない以上、見えない部分は仲間を頼るしかない!
現場での急を要する判断は各々に任せる、面倒な事後処理は全部俺が受け持つ、お前たちは自分のやるべきことに『のみ』専念しろ!! いいな!!!」
「「「「「はいっっ!!!!!」」」」」
◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️
...................っというわけで、俺たちはアーシアさんに修学旅行を楽しんでもらいつつ誰にも悟られることなくアーシアさんを護衛しなくちゃならなくなった。
そう、俺たちが考えるべきは『アーシアさんの安全』のみだ。
あと松田、元浜、桐生の身の安全ってところか?
その他の生徒たちについては、他の皆に任せる。俺たちは俺たちのやるべきことを全力でやるんだ。
でも俺は素人だからな、後でイリナとゼノヴィアから護衛についてのレクチャーを受けないと!
それにしても、日本の存亡が懸かった修学旅行か...................皆には悪いけど、何かの間違いで中止になってくんねえかな。
最初は修学旅行編はカットするつもりでしたが、アーシアを再登場させた都合上、入れることになりました。
あと多少無理くりかもしれませんが、聖書陣営内での嫁選びについては一気に最終選考で進めました。
正直、マジでそろそろ朱乃については決着をつけたかったので。
(断じてネタが思い浮かばなかったわけではありませんwww)
それでは皆さん、次回で♪
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