今作の『修学旅行編』ではバトルは多くはありません。
この≪幕間≫はあくまで余談みたいなものですので。
修学旅行当日、俺達は揃って玄関でアーシアたちを見送っている。
「........................楽しんでこい、アーシア」
「お土産ヨロシク」
「はい。たくさん思い出を作ってきます♪」
俺とオーフィスの見送りにアーシアは満面の笑みで返してくれる。
よっぽど修学旅行が楽しみだったんだろう。ここ数日はずっとウキウキしていたからな。
俺なんか前世では、同じ班のメンバーに撒かれてボッチで回る羽目になったからね。
しかもその後、単独行動をしたということで担任の教師に俺一人だけが怒られた。
俺はむしろ被害者のはずなのに、他の班員たちが全員口裏を合わせたもんだから俺だけが悪者になってしまった。
だから俺個人では修学旅行には、良い思い出は無いんだけど........................アーシアなら、そんな心配は無用だろう。思う存分、楽しんできなさい。
「........................呂布さん//////////////」
ガバッッッ!!!
俺が前世のクソッタレな記憶を思い出してると、頬を赤らめたアーシアが突然抱きついて来た!
な、な、な、な!? い、いきなりどうしたってのさ!?
「えへへ♪ 離れ離れになる前に呂布さん成分を補給してます/////////////////////」
そうかそうか........................相変わらずこの天使様は俺を殺す気が満々の様だな。
この場で鼻血やら何やらを我慢出来た俺は、まさに『英雄』と称えられてもおかしくないだろう。
「ぐっ! た、耐えるのですよ、朱乃。この最終選考を勝てば、私もあんな風に誰憚れることなく抱きつくことが出来るのですから........................!!!」
「いいなぁ、アーシアさん。やっぱり正式な伴侶に選ばれないとダメってことですよね」
「アレを素でやれるのが、アーシアさんの恐ろしいところですわね........................」
アーシアの抱きつく姿を見て、ヒソヒソ話をする三人。朱乃は歯をギリギリと軋ませてどうしたんだろう?
「皆、そろそろ行きましょうか」
リアスがキリよく声を掛け、玄関の扉を開ける。彼女だけは駅まで一緒について行く事になっている。
何でも一誠に渡しておかないといけないものがあるらしい。
「「「「「はい!」」」」」
こうして一誠、木場、アーシア、イリナ、ゼノヴィア、ロス、ヴァーリは修学旅行に向かっていった。
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とうとうこの日がやって来た。高校生最大のイベントにして、俺にとっては命をかけた戦いの舞台でもある修学旅行が............................!!!
『相棒』
『おう、おはようドライグ。旅行中もよろしく頼むぜ!』
『わかっているさ。俺は全力でお前をサポートしよう』
『はは、やっぱりお前は最高の相棒だよドライグ。そうだな、今まで鍛えられてきたのは、きっとこの時のためだもんな。頼りにしてるぜ、ドライグ!』
駅に到着した俺は気持ちを切り替えて、ドライグと共に気を引き締め直した。
すると、まるでタイミングを計っていたかのようにゼノヴィアとイリナが話しかけてきた。
「....................いい顔してるね、イッセー君」
「ふ、どうやらいっぱしの『戦士』にはなれたみたいだな」
「まぁな。そういう二人こそ、なんか悟ったような顔をしてるじゃねえか」
「昨日、リーダーや賈駆さんから激励の言葉をもらったの。『後のことは自分たちに任せて、アーシアさんの護衛に全力を尽くしなさい』って」
「脳筋の私があれこれ考えたって無駄さ。いつも通りに『全力を尽くす』だけだよ」
流石は『蒼天の紅旗』、まさに『プロ』って感じだ。既に仕事モードに意識を切り替えてる。
『蒼天の紅旗』はこういう時こそ頼りになるよな。立場は違うが、言葉は交わさなくても俺達の心はとっくに一つになっている!
俺たちが決意を固めているとクラスメイトと談笑していたアーシアさんが近づいてきた。
「みなさん、これから四日間よろしくお願いします♪」
丁寧に頭を下げるアーシアさんに俺達は互いに顔を見合わせた後、ゆっくりと頷いた。
「................ああ。こちらこそよろしくな、アーシアさん」
「アーシアさんは『旅行を楽しむ事だけ』を考えてくれればいいからね」
「それを阻むものは、何であろうと私達が排除しよう」
「? よくわかりませんが、ありがとうございます! 一緒に楽しみましょうね♪」
ああ、何て眩しい笑顔なんだろう................何て素直な性格をしてるんだろう。
この笑顔を曇らせることなど決してあってはならない。
この子の流した涙の数だけ、駒王町には血が流れるんだからな!
そうして俺たちは新幹線へと乗り込み、京都へと出発した。
駅を出て十分くらい経つと、皆はそれぞれにお菓子やらなんやら取り出して楽しくおしゃべりしてる。
イリナとゼノヴィアもアーシアと桐生と一緒に仲良く談笑中だ。
本来ならこんな和気藹々となんてしてる場合じゃないんだが、俺たちの目的の中には『アーシアさんに修学旅行を満喫してもらう』ことも含まれている。
だから、警戒をしつつ表面上は普段通りに皆と接しなければならない。
俺はそんな器用なことは出来そうにないからな、敢えて皆とは離れている。
だが、さすがはイリナとゼノヴィアだ。パッと見、いつもと変わらない様子なのにその実、全く隙が無い。
二人とも周囲十メートルくらいなら、どんなに上手く隠していても不穏な気配は察知出来るらしい。
本当に頼もしい限りだ、コカビエルの一件で会った時にはまだそれほど大きな差がなかったはずなのにな。
それからしばらく松田と元浜のアホトークに付き合いながら時間を潰していると、前の席から女子の黄色い歓声が聞こえてきた。
見てみると木場君が通路を歩いて、こちらに近づいて来ていた。
「ええ!? 木場君が兵藤のところへ!?」
「何で彼が変態の巣窟に!?」
「やっぱり兵藤×木場君は鉄板なのね!」
........................一部不穏な発言があったような気がするが、聞かなかったことにしよう。
「よう、木場。どうかしたのか?」
「うん、向こうに着いてからの予定を確認しておこうと思ってね。
ほら、ホテルに着いたら荷物を置いて、すぐに班ごとの自由行動だからさ。夜までじっくり話す時間が無いだろう?」
「そういうことか。なら、俺たちの初日の予定は....................」
その後、俺たちは京都に着くまでの間、初日の行動予定を元に非常時の際のシミュレーションを何度も行った。
(ねえ、何の話かわかる?)
(ううん。でも、今の兵藤ってちょっとだけ................本当にちょっとだけだけど、カッコいいって思った)
(ええ、マジで言ってんのアンタ? 兵藤だよ? あの変態三人組の兵藤だよ?)
(でもでも、最近様子が変わったよね。前に松田と元浜が兵藤にエロ本買いに行かないか誘ってたことがあったんだけど、「悪い、他にやらなくちゃいけないことがある」って断ってたよ?)
(あ、それ私も聞いた。その後、松田と元浜が食い下がってたんだけど、兵藤は「今はそんなことをやってる場合じゃない」だって)
(マジで!? 信じられないわ................)
(夏休みが終わったくらいからだよね。何かあったのかな?)
(ついに国家権力のお世話になったとか?)
(ヤクザの娘にセクハラして沈められそうになったとか?)
((((う~~む、謎だ....................))))
そうして京都に着いた俺たちは、ホテルへと向かった。
京都サーゼクスホテル....................自分の名前をまんまホテルに使用するなんて、やっぱり魔王様はスケールが違うなぁ。
「すげえホテルだな................ウチの学校、こんな高そうな所に二年生全員泊まらせて大丈夫なのか?」
ホテルを見上げながら、松田がもっともな意見を口にする。俺も悪魔側に来てグレモリー家の凄さを知らなければ同じ様に思っていただろう。
てか、このホテルですら冥界の部長の実家に比べればまだ大人しい方だぞ。あっちは完全に城だったからな。
ロビーから少し進んだ所の入口を潜ると、ホールにはすでに駒王学園の生徒達が大勢集まっていた。
そのまま点呼等を行い、続いて先生達から注意事項が伝えられた。
俺たちはロスヴァイセさんから何故か百均について熱く語られた後、自由行動についての説明を受ける。
「では、これからみなさんそれぞれのお部屋に荷物を置いて自由行動に入ってください。時間は午後五時半までですから注意してください。
あと、あまり遠くまでいって迷子になってはいけないので、範囲は京都駅までとします」
長かった説明が終了し、俺達はそれぞれに部屋の鍵を受け取って自分の部屋に向かうことになった。
このホテルは基本的に二人組の洋室らしい。だが、その関係で俺だけが一人余ってしまったらしく、一人部屋になった。
少し寂しい気もするが先輩達の所へ潜ったり、イメトレする分には一人の方が丁度いい。
「つーわけでイッセー。お前の部屋の鍵はこれだ」
アザゼル先生から鍵を受け取り、俺は松田と元浜と一緒にエレベーターに乗り込んだ。
せっかくだし、こいつらの部屋でも覗いてみようかな。
松田が鍵を開け中へ入る。それに続いて俺も入ると、まず目に飛び込んだのは大きくて立派なベッド。
そして京都駅周辺を一望できる窓からの風景だった。
あまりの好待遇っぷりに興奮する二人のはしゃぎっぷりを眺めた後、俺は自分の部屋へ向かう事にした。
男子が泊まる階から二つ上に上がった階の隅、そこが俺の部屋だった。
「お、ここか」
他の部屋とは異なる和風の引き戸を開けると、そこには八畳一間の空間が広がっていた。
一応テレビやテーブルは揃っているが、どれも古臭いものばかりだった。
「おいおい、いくらなんでもこれは酷くねえか!」
「旅行資金のやりくりがこんな所に影響するとは。同情するぞイッセー」
「そうか? 別にそこまで言うほどでもないと思うけどな」
そりゃさっき見た部屋と比べれば数段劣っているとは思う。しかしそもそも、俺は以前もっと酷い環境で何日も過ごした事があるのだ。
ここなら用を足している時も、体を洗っている時も変な生き物やドラゴンに襲撃される事は無い。それらを考えれば、まさにここは天国だ!
「お、おい松田。見ろよ、イッセーの顔...............本気でここを気に入ってるみたいだぜ?」
「よし、俺に任せろ。 イッセー、 今日の夜は俺が持って来たお宝DVDを一緒に見よう! そうすりゃお前だって、いつものお前に「お宝DVD?」え? って、どわぁっ!? ロ、ロスヴァイセ先生!?」
いつの間にかロスヴァイセさんが俺達の背後に立っていた。
露骨に視線を逸らす松田達に首をかしげつつ、ロスヴァイセさんが俺に耳打ちしてきた。
なんでも、この部屋はこちら側................つまり悪魔関係の話をする時のために部長が用意してくれたらしい。
「そういうワケですので、私はこれから教師の会合があるので失礼しますね。
あなた達は午後からの自由行動を楽しんでください。ただし、京都の方々に迷惑をかける事はしないように」
そう言って、ロスヴァイセさんは立ち去って行った。残された俺たちは今彼女が口にした自由行動を取ることにした。
「それじゃあ当初の予定通り、アーシアさんたちを誘って伏見山に行こうぜ」
俺たちは女子を誘うため、部屋を後にした。
京都駅から電車で一駅進んだ稲荷駅。そこから下車することで伏見稲荷の参道へ入れる。ここが俺たちの初日の自由行動の目的地だ。
「出来ることなら、初日はホテルでジッとしていたかったんだがな」
参道への道すがら、ゼノヴィアが俺とイリナと並びながら軽く愚痴を溢した。
「仕方ないよ。今回の護衛任務には、『護衛対象に任務のことを悟られてはいけない』ってことも含まれているんだから。
アーシアさんが『出かけたい』って言うなら、私達も付き合わないと」
ゼノヴィアの言う通り、安全面のことを考えるならホテルから動かないのがベストだ。
しかし今回の任務は秘密裏に、かつアーシアさんに修学旅行を満喫してもらわないといけない。
そのためには表面上、俺達も修学旅行を楽しむ素振りを見せないとな。
「アンタ達! ぐずぐずしてると置いていくわよ!」
どうやら話している間に随分離されてしまったようだ。俺達は会話を中断し、駆け足で桐生達を追いかけるのだった。
歩き始めて既に数十分が経過していた。もうすっかりバテバテの元浜を最後尾に、俺達の伏見山への挑戦は続いていた。
「うわあ! 素晴らしい景色ですね」
「アーシア、写真撮るからこっち向いて!」
伏見山からの風景に感動するアーシアと、そんな彼女を写真に収める桐生。そんな二人を一瞥し、俺は階段を駆け上がる足に力を込めた。
「みんな、俺ちょっと先にてっぺんまで行って来るわ!」
みんなに断りを入れ、俺はダッシュで階段を上り始めた。やっぱり、山に登ったら頂上まで行かないと!
....................っというわけではなく、山頂付近から感じられる妙な気配の正体を調べるためだ。
他の観光客の皆さんの邪魔にならない様に階段を上って行く。しばらくして頂上らしき場所へ着くと、そこには古ぼけたお社があった。
周りには俺以外誰もいない。せっかくなので、俺はお社の前で手を合わせた。
「どうか....................どうか、この修学旅行が無事に終わりますようにっ!!!」
全身全霊、心の底から修学旅行の無事を願う................だが、願うばかりで何もしなければ、叶うものも叶わない。
故に、俺は俺に出来る事を全力でやらなければならないんだ。
「....................出て来いよ。そこにいるのはわかってんだ」
この場所へ辿り着いてからずっと視線を感じていた。しかもアーシアさんに視線が集中されていれば、いくら俺でも気付かないわけが無い。
突風で木々が大きくざわめく中、そいつ等は姿を現した。山伏の格好で黒い翼を生やし、頭部が鳥の連中と、狐のお面をかぶった神主姿の連中、そして、二メートル以上の身長で、全身が真っ赤な怪物。
そして異形の中から巫女装束を身に付けた女の子が前に出てきた。その頭部には、獣の耳が生えている。
もしかして、小猫ちゃんと同じく妖怪の子なのかもしれない。
「警戒させてしまったのなら、すまない。こちらには敵意は一切無いので安心してほしい」
「........................どういうことだ?」
「私たちは天照様の命により、『深紅の武人』様の奥方である『アーシア・アルジェント』殿を護衛する任を受けた京の妖怪じゃ」
「っ、そうか....................俺たちもアーシアさんの護衛をしている悪魔だ。でも、何で妖怪たちがアーシアさんを直接守ってんだ?
事前に聞いた話では、京都の妖怪は京都全域を守るってことだったはずだぞ?」
「........................すまんの。少し事情が変わったのじゃ。
故に私たちもアーシア殿を護衛することになったのじゃ」
「『事情が変わった』? それってどういうことだよ?」
「それについては、恐らく近いうちに再び顔を合わせる時が来よう。その時に改めて話をさせてもらうので、この場はひとまず下がらせてもらうぞ」
次の瞬間、突風と共に女の子達の姿は消えてしまった。
「....................行っちまった。いったい何が起こってんだ?」
狐娘さんと別れた俺は松田達と合流し、伏見稲荷での観光を終えホテルへ戻った。
俺たちはその日の豪華な夕食を心ゆくまで堪能した。いやぁ、流石は魔王様のホテル。やっぱり美味かったぜ。
そんでもって夕食後、俺はアザゼル先生とロスヴァイセさんに狐娘さんと出会ったことを報告した。
話を聞いた二人は非常に困惑した様子で、アザゼル先生はすぐに確認して来ると言ってどこかへ行ってしまった。
先生達と別れ、ロビーで松田達と明日の予定を話し合い、俺は部屋に戻る。そして布団の上でジッと過ごすこと十数分........................。
「さて....................行くか」
俺は立ち上がり部屋を抜け出すと、そのまま大浴場のある階まで下りて行く。
「あ、イッセーさん!」
俺がその階へ到着すると同時に、アーシアとゼノヴィア、イリナに桐生がタオルやら着替えを持って姿を現した。
「やあ、アーシアさん。これからお風呂か?」
「はい! イッセーさんはどうしてここに? 男子のみなさんの入浴時間はまだ先ですよ?」
「そうだっけ? あはは、俺とした事が勘違いしちゃってたな、すぐに戻るよ。
それじゃアーシアさん、ゆっくりお風呂タイムを楽しみなよ」
「はい!」
ニコニコ顔のアーシアさんが大浴場の入口へ消えて行く。そうだ、アーシアさん。キミは何も心配しなくていい。
(頼むぞ、イッセー)
(中のことは私達に任せておいて)
(ああ、誰だろうと侵入はさせねえ。ここは俺に任せてくれ)
続いてゼノヴィアとイリナが俺の肩を叩き、アーシアさんの後を追う。だが、残された桐生は疑わし気な視線を送って来た。
「アンタ................まさかこんな正面から覗くつもりだったの?」
「あはははは................」
思わず笑い声を洩らしてしまった俺を見て、桐生が首を傾げる。
『覗き』? ハハ、そんなことしてみろ。その日のうちにこの日本が地図から無くなるぜ?
「何よその笑い?」
「心配すんな。そんなことするつもりはねえよ。だから安心して入って来い」
何だか可笑しな気分になってしまい、笑いながら桐生に返す。
さて、ここにいたら変な疑いをかけられちまう、ひとまず非常階段の方へ向かうとするか。
「何なの? どうも調子狂うわね」
桐生と別れた俺は非常階段に座って、『その時』が来るのを待っていた。
これから起こるであろう戦いのため、精神統一をしていると階段を上がってくる人影が見えた。
「....................来たか、匙」
「兵藤、早いな」
「まぁな。それで..............首尾は?」
「兵藤に言われた通り、ロスヴァイセ先生と生徒会のメンバーには正面入口を見張ってもらってる。俺たちはこの非常階段からボイラー室を抜けるルートの警備だ」
よし、これでとりあえず守りについては問題ない。俺がアイツらの立場なら二手に分けて実行するはずだからな。
「なぁ、兵藤。本当に奴らは来ると思うか?」
「来る、間違いなくな。他でもない俺が言うんだから、間違いない。
俺もこんな状況でなかったら、ヤツらの側に回っていたはずだ」
「いや、それはそれでどうなんだよ....................と言っても、お前が言うと不思議と説得力があるんだよな」
そう、この日のためにホテルの見取り図を手に入れ、最適なルートを選出した俺はシトリーやロスヴァイセさんに情報を提供した。
『蛇の道は蛇』ってな。俺ならヤツらの思考と行動パターンが手に取るようにわかる。
そして俺の予想が正しければ、そろそろ来るはずなんだが....................................
「イッセー!? それに匙まで....................」
「........................マジかよ、本当に来やがったよ」
ようやくか。階段の上から松田と元浜、そして数人の男子が姿を現した。
「部屋にいないから探したぞ、イッセー。何でこんな所にいるんだよ?」
「それはこっちのセリフだ。お前ら、ここに何しに来た?」
「そんなの女風呂を覗きに来たに決まってるじゃねえか!」
悪びれる様子も無く元浜が答える。すると、後ろにいた男子が声をあげた。
「おい、元浜! いい物見せてやるって、まさか『覗き』のことかよ!」
「それ以外に何がある!!!」
「正気か、お前!? バレた時のこと考えろよ!」
「いつの時代も、偉業を成すことが出来るのは........................危険を恐れない者だけだ!
だからこそ、俺は前へと進む!!!」
「っ....................そうだな。一度しか無い高校生活、一度しか無い修学旅行。
なら、一度ぐらいは冒険をしないとな!」
元浜の答えに男子連中の心が一つになる、気持ちは分かるぜ、お前ら。
俺も出来ることなら........................お前たちと【楽園】へ冒険したかった。
「というわけだイッセー、匙。お前たちも俺達と一緒に理想郷へ行こうぜ?」
「............................断る」
「却下だ」
俺と匙がきっぱりと拒絶の意思を示すと、松田達は愕然といった表情を俺に向けて来た。
「あ、あれ? 変だな、俺の耳がおかしくなったのか? 匙はともかくイッセー。お前、今『断る』って言わなかったか?」
「ああ、俺は女風呂を覗くつもりは無い。そして、覗こうとするお前らを見逃すつもりもない」
「なっ!? 女風呂だぞ!? 俺たちの楽園だぞ!? それを覗かないなんて正気か!?」
「そうだな....................覗きたくないって言ったら嘘になる」
最近の学校じゃあ大人しくしているが、俺の女の子好きな部分は無くなってしまったわけじゃあない。
「だったら!」
「それでも俺は覗くわけにはいかないんだ。俺は........................俺はまだ死にたくねえんだよ!!!」
『ぐすん....................イッセーさんに、男の人に裸を見られちゃいましたぁ。もうお嫁に行けません』
『........................万象一切灰燼と成せ』
わかってる! 絶っ対こうなるもんね!! どう考えても駒王町が火の海になる未来しか見えないもんね!!!
見える................呂布さんの怒りの炎に飲み込まれる駒王町の姿が....................!!
「兵藤の言う通りだ。お前らは自分たちがやろうとしていることのヤバさを理解していない。お前らの欲望のために................『あの人』の怒りを買うわけにはいかねえんだよ!!!」
「俺たちがいる限り、何人たりともここは通さねえ!! それでも覗くって言うなら、俺たちの屍を越えて行くか! ここで命を落とす覚悟を決めろっ!!!」
俺と匙は自身を奮い立たせるよう、覚悟と闘志を漲らせる!
「くっ................本気なんだな、イッセー!」
「どうやら俺たちは共に天を戴くことは出来ないようだな!」
俺と匙の覚悟を見ても、なお退く様子の無い松田と元浜。どうやら俺たちの道は完全に違えたらしい。
あばよ、松田、元浜。お前らは............................最高の友達だった。
悲しき宿命により決別した俺たちの女風呂を巡る戦いが幕を開けたのだった。
何故、一誠が山じいの解号を知っていたかについては、作者のノリですのでお気になさらないでください。
『火の海=流刃若火』というイメージだったもので、つい♪
それでは皆さん、次回で♪
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