ソーナVSサイラオーグは色々な人の視点になりますので、ちょっと落ち着かないかもしれません。
でも、場面が一段落するタイミングで変えて読みづらくならないように頑張ります!
ソーナたちと分かれた俺とレイヴェルは、控え室に向かう途中で意外な人物に遭遇した。
「失礼。『深紅の武人』、呂布奉先殿とお見受けいたします」
通路の反対側からやって来たのは白髪褐色な青年。マントを着ていなければ、パッと見だと村正に似ていると言えなくもない。
「コクン................貴方は?」
「申し遅れました。私の名は【ディハウザー・ベリアル】。以後、お見知りおきを」
青年が胸に手を当て軽くお辞儀で挨拶をしてくる。へえ~~~、彼が『皇帝』ベリアルかぁ。
ディハウザー・ベリアル。長年、レーティングゲームのトップに君臨し続けており、『皇帝』の異名を持つ男。
その実力は魔王にすら匹敵すると言われており、多くの悪魔から畏敬の念を集めている。
原作ではレーティングゲームの不正を暴こうとした従妹の仇を討つため、リゼヴィムに協力した。
しかし、一誠の家族たちの愛により最終的には一誠たちに付いた。
「ディハウザー様、お久しぶりでございます」
「これはレイヴェル嬢。久しぶりだね、前にお会いしたのはルヴァル氏と対戦した時だったかな?
噂には聞いたが、本当に呂布殿の秘書になっていたんだね」
「はい。幸運にも呂布様のお眼鏡に叶いました♪」
どうやらレイヴェルはディハウザーと面識があるようだ。
そりゃあレイヴェルの兄二人はレーティングゲームのプロだからなぁ、会う機会もあるんだろう。
「それでディハウザー殿....................何かご用ですか?」
「呼び捨てで構いません、貴方ほどの御方に敬称を付けていただくような者ではございませんので」
あらそうなの? じゃあ遠慮なく呼び捨てにさせてもらうわ、歳も近そうだしね♪
あ、でも悪魔って見た目を変えられるんだよな。じゃあ、外見はそんなにアテにならないか。
でも、そういうことをするのは主に女性悪魔って聞いたような............................まぁ、細かいことはいいか。本人が良いって言ってるんだし。
「用というのは他でもありません。実は........................呂布殿にお逢いしたら、是非ともお尋ねしたいことがございましたもので、声を掛けさせていただいた次第でございます」
「? 尋ねたいこと?」
「はい....................こちらを御覧下さい」
ディハウザーはそう言うと、一枚の写真を見せてきた。写真には美しい女性と妙齢な男性。そして小学生くらいの男の子が写っていた。
普通であれば、何の変哲も無い家族写真だが........................俺はこの夫婦を知っていた。
そうか。あの二人、ちゃんと合流できたんだな........................。
「呂布殿....................この夫婦に見覚えはございますか?」
「........................ええ。お二人は....................お元気ですか?」
「ッッッッッッッッ!? っ~~~~~~、ええ................御覧の通り、息子も生まれ、今は我が領地の片隅で、静かに暮らしております....................やはり、貴方が........................!」
俺が答えるとディハウザーは感激したようで、涙を溢している。
そんなディハウザーを見て、レイヴェルが不思議そうに尋ねた。
「あ、あの....................ディハウザー様は呂布様と御面識がございましたのですか?」
「ズズッ................いや、これが初対面だ。ただ................私の親族が、以前に呂布殿に助けられてね。それを確かめたかったのだよ」
「まぁ、そうでしたの。流石ですわ、呂布様♪」
まぁ成り行きというか、食い物の怨みを晴らしたと言うべきか........................何にせよ、二人が幸せに暮らせているのであれば、俺の『スウィーツ』の犠牲も無駄ではなかったということか。
「呂布殿、本日のゲームについてはお伺いしております。ご多忙な中、お引き受けされたとのこと、ご苦労様です。
不躾ながら、ゲームが終わりましたらお時間をいただけませんか?
是非、貴方様にお会いして欲しい者たちがおります」
ん? 会って欲しい人たち? まぁ、たぶんこの話の流れからすると予想は出来るけど。
別に構わないよ、特に予定も無いし。
「ええ、構いません」
「っ、ありがとうございます! では後ほど、試合会場でお会いしましょう」
俺が承諾するとディハウザーは嬉しそうにこの場を去っていった。たぶん、俺と同じで専用の控え室が与えられているんだろう。
俺とレイヴェルはとりあえず、自分たちの控え室へと向かった。
その後、控え室でレイヴェルが煎れたお茶を飲んでいたら、さっきの写真についてレイヴェルが尋ねてきた。
試合までずいぶん時間があり、暇だったので俺は『十年前の駒王町』で起こった出来事を話してあげた。
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『ご来場の皆様、お待たせいたしました! これより若手悪魔同士によるレーティングゲーム新人戦、その最終試合を執り行います!!』
ワァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!
ソーナ会長たちと分かれた俺たちグレモリーは、関係者用の特別席に来ていた。
俺たちは今回の新人戦の出場選手ってことで、この特別席で試合を観ることになっている。
少し離れたところにはアガレスもいる。さらにポッカリ空いた席があるが、恐らくリタイアしたグラシャラボラスのために一応用意したんだろう。
ちなみにアーシアさんたちとは、ソーナ会長たちに会う前に鉢合わせした曹操が連れていった。
何でもアーシアさんは呂布さんの奥さんだから、この機会に神様たちへ顔合わせをさせたいんだとか。
でもそう考えると、朱乃さんも行った方が良かったんじゃあ.......................いや、たぶん『聖書陣営』は『聖書陣営』で神様たちへの紹介をすることになるんだろう。
それからイリナたち........というか『蒼天の紅旗』は俺たちとは違い、神様や魔王様方がいるVIPルームで観戦するそうだ........................せっかくだから、一緒に観たかったな。
『本日の司会進行は私、ナウド・ガミジンがお送りいたします。そして審判役には、先日の試合で解説役を務めましたリュディガー・ローゼンクロイツ氏をお迎えしております』
今日の試合は司会と解説だけじゃなく、審判まで就くのか。今までと違い本格的だな、これが『プロ仕様』ってことか。
『それでは早速、選手の入場です! まず西口ゲートより【サイラオーグ・バアル】チーム!!
実力・メンバー構成・チーム力は若手悪魔チームの中では最もバランスが良く、特に『王』のサイラオーグ選手は『若手No.1』の名に恥じない実力を持っています。
先日行われた赤龍帝との激闘は、皆様の記憶にも新しいでしょう。今日も私たちを熱くさせてくれる戦いが見られるのでしょうか!!!』
サイラオーグさんたちが姿を見せると観客は大盛り上がり! 観客席には専用の応援団旗まで用意されている。
聞いた話によると先日の俺との戦いでサイラオーグさんの人気が急上昇したらしい。
特に若い男性悪魔や熱血系が好きな女性からのファンが多いんだとか。
あんな殴り合いなんかで喜んでもらえるなんて....................嬉しい反面、何だか恐れ多いな。
『続きまして東口ゲートからは、【ソーナ・シトリー】チーム!! 新人戦が始まる前の評価こそ、出場チームの中で最も低かったシトリーチーム。
ですが新人戦が始まってからは、その前評価を覆すほどの好成績。
何とここまで全勝をマークしております! しかもその眷属のほとんどが、『元一般人』だというのですから驚きです!!
果たして宣言通り、『全勝』を達成することが出来るのでしょうか!? 注目が集まります!!』
ソーナ会長たちが入場すると、これまた観客席は大盛り上がり。ただサイラオーグさんと違い、ファンには子どもや家族連れが多く見られる。
「眷属のほとんどが元一般人でありながら、ここまで負け無しであること。
そして、ソーナの夢が『誰でも通うことが出来るレーティングゲームの学校を作る』ということ。
この二つが広まったことで、多くの転生悪魔・一般悪魔がソーナたちのファンになっているのよ。
『ソーナが作る学校に通えば、自分の子どもにも可能性が生まれる』ってね。
今では下級の転生悪魔や一般悪魔のほとんどが、ソーナの支持者と言っても過言ではないわ」
俺が両チームのファン層を見比べてると部長が解説してくれた。
確かにな。真羅先輩と匙以外は俺のように神器を持っているわけじゃない元一般人なのに、あれだけ強くなれるんだもんな。
なかなか機会に恵まれない転生悪魔や一般悪魔に取っては、まさしく『憧れの的』と言える。
........................凄いな、ソーナ会長。最初に聞いた時は『そうだったんだ』程度にしか感心してなかったけど、悪魔社会の実状を知ると難しいんじゃないかとも思ってしまった。
それでも会長たちは諦めず、地に足を着けて一歩ずつ夢に向かって、着実に進んでいるんだもんな。
俺なんか呂布さんに出会わなかったら、『ハーレム王』の在り方すら分からなかったって言うのに。
『それではここで、本日の試合を解説してくれる特別ゲストのお二人をご紹介いたします。
まずはレーティングゲームのトップにして現王者、『皇帝』【ディハウザー・ベリアル】様!』
『ごきげんよう、皆さん。本日はよろしくお願い致します』
司会者に紹介され、白髪褐色なイケメンが挨拶すると観客席から凄まじい歓声が上がる!
あれが現在のレーティングゲームのトップかぁ........................あれだけ美形な上に強ければ、そりゃあ人気にもなるわなぁ。
「アレが、『皇帝』ベリアル........................」
「噂では、その強さは魔王様にすら匹敵すると言われていますわ」
「僕たちにとっては、まさに雲の上の存在ですね」
「うぅぅぅ、なんか、威厳たっぷりって感じです~~~」
「そうね........................けど、いつか必ず倒してみせるわ。私の夢のためにも........................!」
朱乃さんたちはディハウザーさんの登場に緊張しているけど、部長は緊張しながらも闘志を燃やしている。
部長の夢は『レーティングゲームのチャンピオンになること』だからな。
そのためには、あのディハウザーさんを倒さなくてはならない。
いずれ倒すべき相手を前に奮起しているところは、ヴァーリに似てるな。
よぉーーーしっ! 俺も部長の夢を叶えるために、もっともっと強くならないとなっ!!!
『そしてもう一人................正直、この御方が来てくださるとは思いませんでした。
私、思わずサインをもらってしまったほど感動に打ち震えておりますっ!』
司会者が目を瞑り、拳を握りながら力説している。観客も司会者の様子を見て不思議に思っているようだ。
そういえば、解説はもう一人いるって言ってたな。でも、司会者の人は何であんなに喜んでるんだろう?
『ご紹介いたします! 天下広しと言えども、この方を超える強者は無く。また、その名を知らぬ者無し!!』
『【深紅の武人】呂布奉先様ですっ!!!!』
司会者の紹介を聞いて、さっきまで盛り上がっていた会場が一気に静まり返る。
スクリーンに映ったのはいつもの外套姿ではなく、黒いスーツをビシッと決めた........................呂布さんの姿だった。
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司会者に紹介され、解説用の特別席に足を踏み入れた俺を待っていたのは広大な楕円形のドームと............................見渡す限りに冷めきった観客たちだった。
皆さんは経験したことがあるだろうか? 自分が姿を見せた途端、興奮の坩堝炉と化していた大勢の人たちが水を打ったかのように静まり返る瞬間を............................。
何で何で何で何で何で何で何で何でっっっ!? 何で俺が出た瞬間に、急に静かになっちゃうのっ!?
もしかして俺ってば、歓迎されてない!? でもセラフォルーが『呂布くんが来てくれたら、絶対に盛り上がるから☆』って言うから来たんだよ!?
せっかく曹操や神様たちにも許可貰ってきたっていうのにさ!! それなのにこの扱いは酷過ぎない!?
せめて社交辞令でもいいから、拍手ぐらいしてくれたっていいじゃん!!!
ひょっとしたらディハウザーと一緒にいるのがいけないのかもしれない。カースト最下位のヤツがクラスの人気者と一緒にいるのが気に入らない的な。
でも、両チームのアドバイザーなんだから、こういう場面では一緒にいても不思議じゃないはず。
だとしたら原因は................................さっきの紹介の仕方かっ!!!
確かにあの紹介の仕方は痛すぎる! あんなどこぞのボクシングの試合みたいな紹介をされたら、『コイツ、自意識過剰過ぎだろwww』みたいに思われても仕方ない!!
観客だって百年の恋も冷めるってもんだっ!!!
おのれ、司会者め~~~。 人のことをあんな中二病感満載に紹介しおって~~~~、後で絶対に文句言ってやるっ!!!
それにしても、どうしよう........................もう俺ってば帰った方が良いのかなぁ?
いくらなんでもこの空気の中、試合をさせるのは選手たちが可哀相過ぎるだろ............................。
チョイチョイ
俺が本気で帰ろうかと考えてると、袖が軽く引っ張られる。
目線だけ隣に移すと秘書のレイヴェルちゃんが口パクで何かを伝えてきた。
『軽く、手を、振ってくださいまし』
持ってて良かった、読唇術。内緒話とかでも重宝するからね、けっこう便利なんだよな~~~これが♪
もうこれ以上、場が白けることもないだろうし........................とりあえず言われた通りに手を振ってみるか。
ギィヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!
もはや歓声なのか悲鳴なのか雄叫びなのか分からないほどの大音量!!!
それはまさしく『魂の咆哮』とでも呼ぶべき代物だったっ!!!!
すっげえ........................頑丈そうな分厚い窓ガラスが揺れまくって、ミシミシ言ってら。
音が壁となって襲い掛かってくるところを初めて目の当たりにしたよ。
オペラ歌手はグラスを割るほどの声量が出せるって言うけど、今のはグラスどころかビールジョッキすら割れるんじゃないだろうか................................。
でも良かった、手を振った瞬間にシュプレヒコールで追い返されるんじゃないかと思ったよ。
流石は我が秘書レイヴェルちゃん、もうこの子は一生手放せないね!
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呂布殿の登場により、恐らく会場が今日一番の盛り上がりを見せている中、私たちシトリーは既に落ち着きを取り戻していた。
「いや~~~、驚きましたね....................」
「うん、まさかあの呂布先生が解説として来るなんてね」
「だから師匠は俺たちとは別行動だったんだな」
「でも意外だよね。呂布先生ってば、自分からはそういうことはしない人だと思ったんだけど」
皆が呂布殿が解説役に就いていることを驚き、不思議に思っている。
確かに、呂布殿は自ら表に出るようなことをする方ではない。むしろ、人知れず皆のために動くような御方だ。
けど私には何故、呂布殿が解説役になっているのか。何となく想像が出来てしまっていた........................。
「恐らく、姉がまた何かやらかしたのでしょう....................ハァ~~~~~」
「「「「「あ~~~~、なるほど」」」」」
私の一言で皆が納得してしまうのも、我が姉たる所以なのでしょう。
試合前に係の人が『確認したい』と言って姉を探していたのは、このことだったのだ。
『深紅の武人』を解説役にして本当に問題ないのか最終確認をしたかったのだろう。
もちろん姉のことですから、さすがに同じ轍を踏むことはしないはず。
ちゃんと神々に許可を取った上で、呂布殿を解説役にお迎えしているでしょう............................たぶん。
そうでないと今後のことが恐ろしすぎて、試合に全然集中できませんっ!!!
まっっったく、あの姉ときたら........................あれほど、『試合前に余計な心労を掛けないで下さい』と言っていたのにっ!!!!
私が姉に対して憤っていると何とか観客の興奮を沈めた司会者が、息を切らせながらゲームを進行しようとする。
『ゼェ、ゼェ、ゼェ、そ、それではこれより、本日の特別ルールを、発表します。
本日のルールは........................【ダイス・フィギュア】です!』
『これはフィールドを駆け回るのではなく、試合形式で行われる短期決戦のルール。
そのため、レーティングゲームの中でもメジャーな競技の1つで、人気も高いルールとなっています』
【ダイス・フィギュア】ですか。これはライザー殿との模擬戦でも何度かやったことがあります。
両チームの『王』が6面ダイスを振り、出た目の合計で試合に出られる選手が決まるというもの。
そして選手には『兵士』なら1、『騎士』と『僧侶』なら3、『戦車』なら5、『女王』なら9と『悪魔の駒』の価値に沿った数字が割り振られる。
また、複数の駒を使用している場合はその分の価値となるため、『兵士』の駒を四つ使っている匙なら『4』になる。
出た目の合計値次第では複数の選手を出場させることも出来るが、連続して同じ選手は出せない。
また、『王』の価値はゲームバランスを踏まえて決まるため、ゲーム毎に価値が異なる。
司会者も同じようなルールの説明を行っているので、私の理解に間違いはないはず。
そして、この試合ではフェニックス家の協力で『フェニックスの涙』を両チームに一つずつ渡されるらしい。
つまりはサイラオーグを2回倒さないといけないということですね。
『それでは次に、本ゲームにおける両チームの「王」の駒価値を発表します。
審査委員会が決めた「王」の駒価値は、こちらです!』
サイラオーグ・バアル『12』
ソーナ・シトリー『10』
『サイラオーグ選手が「12」、ソーナ選手は「10」と表示されました!
おおっと、サイラオーグ選手の方が高評価ですが、逆に言うと出た目の合計が最大でない限り出場できないということになります』
私の駒価値は『10』ですか。まぁ、妥当な数字ですね。ライザー殿との模擬戦でも、呂布殿の見立てで私の駒価値は常に『9』以上でやっていましたから。
それにしてもこのルール、両チームのメンバー構成と駒価値....................恐らくポイントになるのは........................
私が試合の組み立て方を考えていると、司会者が解説にこの試合について尋ねた。
『今回の試合は【ダイス・フィギュア】となりましたが、ここで解説のお二人にこの試合についてお話を伺いたいと思います。
まずはディハウザー様、お願いいたします』
『そうですね。プロのゲームでもそうですが、やはり両チームのエースが試合の鍵を握っていると思います。
バアルチームはサイラオーグ選手、シトリーチームは「黒龍王」匙選手。この二人の戦いは見逃せませんね』
『ええ。エース同士の試合はこのルールの見どころでもありますからね。
それでは、呂布様はどう思われますか?』
ディハウザー様の話を聞いた司会者は、続けて呂布殿に話を聞く。
呂布殿はいつも通り表情を変えず、ゆっくりと口を開いた。
『現状は....................シトリーが有利................だが、その分....................盤面が複雑になった』
呂布殿の解説に司会者と観客は困惑、会場がまたも静かになってしまう。
無理もありません。呂布殿は口数が少なく、必要最低限のことしか話しませんからね。
ですが普段から接している私は、呂布殿の言っている意味がすぐに理解できた。
『え、え~~っと、呂布様。それはどういう意味なのでしょうか?』
『ディハウザーが言った通り....................バアルチームのエースはサイラオーグ....................シトリーチームのエースは匙だ。
そして............両チームのエースを倒すことが出来るのも....................エースのみ』
『つまり、「両チームとも如何にエースを温存できるか」がポイントということでしょうか?』
『それもある................ここで問題になるのが................【ダイス・フィギュア】というルール』
『? このルールが、ですか?』
『ん................このルールでは....................サイラオーグは....................レグルスを使えない』
「「「「「!!!!!!」」」」」
呂布殿の一言で会場中が驚きに包まれる....................そう、このルールでは試合に出場する選手の合計は必ず『12』以下となる。
つまり駒価値が『12』のサイラオーグはレグルスはおろか、他のどのメンバーとも組むことは出来ない。
また、レグルスが暴走する可能性を考えれば、単独はもちろんのこと他のメンバーと一緒にレグルスを出場させることも出来ない。
このように試合が開始する前から、私たちにとっては有利な状況となっている。
では、盤面が複雑になっているのは何故か....................呂布殿が解説を続けてくれる。
『サイラオーグがレグルス無しで....................匙を倒すには....................匙をかなり消耗させる必要がある』
『なるほど。ならばサイラオーグ選手は、なるべく早く匙選手を引っ張り出さないといけないってことですね』
『ん............ここで重要になってくるのが................両チームの................エースの駒価値。
サイラオーグが「12」................匙が「4」................つまり匙の方が............圧倒的に多くの試合に................出られる』
『確かに、2つダイスを振って合計が『12』になる確率は36分の1。
そしてバアルチームには、『3』より小さい駒価値の選手はいません。よって試合は合計数字が『3』以上の場合のみ成立します。
一方の匙選手は『3』以外の数字であれば、連戦でない限りは全ての試合に出ることが出来ます』
『ん................ここでソーナは................考えなくてはいけなくなった。
セオリー通り................エースを温存するか................それともエースを使って................試合を優位に進め................他のメンバーを温存し....................サイラオーグにぶつけるか』
『な、なるほど。そう考えますと確かに複雑になってきますね』
『ただ................あまり有利過ぎる手を打つと................サイラオーグは...............勝つことよりも.............時間稼ぎを重視してくる................可能性もある』
『そうなると、ソーナ選手は眷属を消耗させられてしまい、サイラオーグ選手を消耗させることは出来なくなってしまいます』
『ん................お互いにそういった思惑が..................透けて見えているから....................シンプルなルールだけに................差し手を間違えると................一気に形勢が傾くことになる』
「「「「................................................」」」」
『さ................さすがは「深紅の武人」!! その慧眼には恐れ入りますっ!!! まさに世界最強の看板に偽りなしっ!!!!』
観客も呂布殿の解説を静かに聞き入り、司会者も感心している。
流石は呂布殿、瞬時に見抜かれておられる。やはり『戦い』において、この方を超える者はいない。
そう。この試合のポイントは、如何にエースを温存するかだけじゃない。
エースを最大限活躍させられる状況をどうやって作るかが最大のポイントなのだ。
試合を左右するのは両チームのエース。しかし、試合の行く末を占うのはエース以外のメンバー。
呂布殿の仰る通り、ルールがシンプルだからこそ、差し手を間違えると試合の流れが一気に変わってしまう。
一手一手を慎重に打たなくては........................サイラオーグには届かないっ!!!
『続きまして、第一試合の出場選手を決定します。両チームの「王」は中央の設置台にお進みください』
審判に促され、私とサイラオーグがダイスの置かれた台の前に立つ。
審判の掛け声のもと、同時にダイスを振った。ダイスが台の上を転がり....................止まる。
出た数字は............................................
サイラオーグ・バアル『1』
ソーナ・シトリー『3』
『ダイスの合計値は「4」。それでは五分間の作戦タイムに移ります。両チームはその間に、待機場にある転移魔方陣に選手を移動させてください。
なお「兵士」の「昇格」は、フィールドに到着後に可能となります。
ですが、試合毎に「昇格」は解除されますため、その都度フィールドで「昇格」を行ってください』
私が戻り作戦タイムになると、待機場が防音対策用の結界で覆われる。
しかし出目合計は『4』ですか........................いきなり難しい数字が出ましたね。
私たちはすぐに出場選手の相談をすることにした。
シトリーVSサイラオーグの試合は【ダイス・フィギュア】にしました。
リアスの試合で採用しなかったのは、『全把握』の力で相手の出場選手が分かってしまい、面白味に欠けると思ったからです。
ちなみに呂布とディハウザーの縁については、第六十四話でちょろっと出てきてます。
それでは皆さん、次回で♪
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