気づくと小説を投稿してから、一年が過ぎてたんですね。全く気づきませんでしたwww
ここまで来れたのも、一重に御愛読いただいている皆様のおかげだと思っています。
このまま完結まで行きたいと思っていますので、よろしくお付き合い願います。
第七試合を終了し、会場は静まり返っていた................................。
今までは試合が終われば、どちらが勝っても観客は盛り上がっていた。
だが、もうすぐ試合が終わるというところで、観客たちはこれまでの盛り上がりが嘘かのように静かになっている。
それもそのはず、バアルチームのメンバーは残り『王』と『兵士』の2名だけ。
しかし『王』のサイラオーグは満身創痍、『兵士』のレグルスは暴走の危険性から単独での戦闘は不可能。
そしてルール上、サイラオーグとレグルスは一緒に出られない。もし次の試合が『7』~『11』であれば、レグルスは出場と同時に棄権することになる。
そのため、バアルチームで戦えるのは消耗しきっているサイラオーグだけ。
一方のシトリーは『王』、『兵士』、『僧侶』の三人がほぼ万全の状態で残っている。
次の試合でサイラオーグが出てきたなら『兵士』の匙、レグルスなら『僧侶』の花戒を出せばいい。
一試合挟んだとはいえ、第七試合は大して時間を稼げなかったからな。サイラオーグもほとんど回復できていないだろう。
レグルスを使えず、消耗したあの身体では匙には勝てまい。つまり、このゲームは八割方すでに勝敗が決しているということだ。
観客もそれが分かっているからか、静かに試合が終わるのを待っている感じだ。サイラオーグの応援団なんか、もはやお通夜モードだしな。
『え、え~~~~、そ、それでは第八試合の出場選手を決めたいと思います。
両チームの『王』は中央の設置台までお願いします』
こんな空気の中でも試合を進行しなければならない司会者には、心から哀悼の意を表させてもらおう。
俺だったら、居た堪れなさ過ぎて逃げ出しちゃうね!
でもまぁ実際、ルールが決まった時点で有利だったとはいえ、それでも終始リードを譲らなかったソーナの采配は見事だった。
椿姫が落とされても動じず、仁村・巡・草下・由良の四人が倒されても試合の主導権を握り続け、サイラオーグに逆転の隙を与えなかった。
もしサイラオーグの手を読まず、眷属たちの力に任せきりな采配であれば『こう』はいかなかったはずだ。
『シュートッッッ!!!!』
審判が合図するとダイスが同時に振られる........................はずが、ソーナはダイスを投げなかった。
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第七試合をほぼ予定通りの時間で終えた私。ここまで来れば後は詰将棋、サイラオーグに匙をぶつけるようにすればいいだけ。
攻めるところは攻め、手堅く打つべきところを手堅くしたからこそ、この状況を作ることが出来た。
もちろん何もかも予定通りだったわけではない。椿姫があそこで撃破されたのは予想外だった。
しかし、その後も眷属の子たちは取り乱すことはせず、自分が為すべきことに尽力してくれた。
私は本当に............................最高の眷属に恵まれた。ここまでサイラオーグを追い詰めることが出来たのは、間違いなくあの子たちのおかげだ。
あの子たちは間違いなく、私の誇り! 私の自慢の眷属だ!!
あとは皆が作ってくれたこの状況に終止符を打てばいい、それで私たちの勝利だ。
だというのに............................私の気分は晴れなかった。本当にこれで良いのか、と迷ってしまっている。
この試合で眷属の強さを十分に示すことが出来た。試合も概ね思惑通りに進めることも出来た。眷属の皆も本当によく戦ってくれた。
それなのに...............................何故か、何かが足りないような気がしてならない。
『ソ、ソーナ選手? どうかされましたか? ダイスシュートをお願いします』
それが何なのか私にも分からないせいで、ダイスを振ることが出来なかった。
私がダイスを振らないことに周りの観客も怪訝な雰囲気を出している。
でも私には振れなかった。今、この胸に抱いている疑問を解決しないことには............................仮にゲームに勝てたとしても、心から喜べない。何故だかそんな気がしていた。
けどここでダイスを振らなければ、試合放棄とみなされ失格となってしまう。
そうなれば、皆の頑張りが無駄になってしまう! それだけは出来ない!!!
私は........................どうすれば................................
「会長!!!」
私はどうすればいいか動けずにいると、待機場から私を大声で呼ぶ声がした。
振り返ると....................................匙が恐いくらいに真剣な表情で私を見ていた。
「会長............................笑われていきましょう!」
「............................匙?」
「正直、会長が何に悩んでいるのか........................俺には分かりません。
でもそれが非合理的で、間違っているのかもしれなくても............................会長が望んだことなら、迷わずやるべきです!!!
会長がやりたいことが世間から非難されるんなら、俺たちも一緒に非難されます!!
会場の皆から指を差されて笑われるんなら、一緒に笑われます!!!」
「....................................................」
「そうしてシトリー全員で皆からバカにされて、笑われても............................いつか皆で夢を叶えましょう!! そして最後は皆で一緒に笑いましょう!!!
俺は、俺たちシトリー眷属は................................どんな時でも、最後の最後まで会長の味方です!!!」
匙の言葉に私は全身が雷で撃たれたように痺れていた、後ろにいる桃も微笑みながら頷いている。
弟のように思っていた匙が、こんなに頼もしくなってくれているなんて................................。
私は匙と桃の心遣いに感動していると同時に、かつて呂布殿から言われたことを思い出していた。
『........................何かを成す時に............「何が正しいか」で行動するな................「正しさ」のせいで身動き出来なくなる...................「自分のやりたいこと」に........自分なりの「正しい理由」を後付けするものだ................自分が納得できる理由をな』
そうだ............................大事なのは正しいかどうかじゃない。私がどうしたいのか、だ。
何が正しいのかで行動してはいけない。呂布殿の仰る通り、正しさのせいで身動きが取れなくなってしまう。現に私は今もどうすればいいか分からなくなっていた。
重要なのは私がやりたいことに私が納得できる理由を付けられるのかどうか。
もしそれで周りからバカにされ、笑われたとしても................................絶対に後悔だけはしない。
私は『完全勝利』をしたい、誰もが認める形で。このゲームは最初から私が有利な状況で始まっていた、囲碁で言えば置き碁のようなもの。私たちはそのリードを守っただけ。
いくら駆け引きや采配が上手くいったとしても、最初から有利な状況であれば『完全勝利』とは言えない。
私たちシトリーが目指す完全勝利とは........................相手の全力を引き出し、受け止めた上で勝利する!!!
それが私たちシトリーの、夢を叶える戦い!!! ならば、私がやるべきことは一つ!!!!
「匙、桃........................私に付き合ってもらえますか?」
「「はい、会長!!!」」
私が今からやろうとしていること、それは仲間の努力を無駄にしてしまう行為。
ここまでのゲームの流れを完全に無視した愚行、こんなことをすれば『王』失格でしょう。
けど匙と桃は何も言わず、何も聞かずに勢いよく返事をしてくれた....................ありがとうございます、二人とも。
椿姫、巴柄、翼沙、留流子、憐耶.......................ごめんなさい、後でたくさん謝ります。
だからどうか、今だけは........................私のワガママを認めてください。
必ず............................『完全勝利』を果たして見せますからっ!!!!
「この試合の運営、および審査委員会の方々にご提案があります!!!!」
私はダイスを振らずにそのまま置き、会場にいる全員に向かって声を張り上げる。
スクリーンに私の顔がアップで表示され、観客も何事かとザワついている。
『て、提案、ですか? ソーナ選手、それはどういうことでしょうか?』
「はい、会場の皆さんもご理解されているかと思いますが............................このままサイラオーグ選手と匙選手が戦った場合、匙選手の勝利は確定的。
つまりこのゲームは、ほぼ勝敗が決してしまっているということです」
「「「「「ッッッッッッッッ!!!!!」」」」」
私の発言に会場が驚きに包まれる。いくら事実だからと言っても、こうまでハッキリと言ってしまうのはやりすぎかもしれません。
実際、サイラオーグも険しい顔をしていますからね。
「ですが、せっかくの新人戦の最終ゲームがこのような形で終わってしまうのは、あまりにも残念だと言わざるを得ません」
『................................では、どうされると?』
「はい、次の試合を最終戦とし........................両チームの『王』と『兵士』による2対2の団体戦を提案します!!!」
「「「「「!!!!!!!!!!!」」」」」
私の提案に会場の観客たちが息を呑む。無理もありません。負けている方から提案されるならまだしも、ほぼ勝ちが確定している側から、提案することではありませんからね。
けど、この試合での私の目的は既に八割方達成している。ここまで試合を有利に運び、眷属たちの強さと努力の成果は十分証明できたのですから。
つまり私たちは実質的に既に勝利を収めている。
もし仮に負けたとしても、私の『王』としての評価が少し落ちるだけ。チームとしての評価には何の影響もない。
............................もちろん、負けるつもりはありませんがね。
『確かに、この試合は既にシトリーチームが勝利していると言っても過言ではありません。
このまま試合を続けても、盛り上がりに欠けることは否めませんね』
『それならバアルチームに............................逆転の可能性を残して........................団体戦にした方が........................観客も最後まで楽しめるな』
ディハウザー様と呂布殿は、私の提案を肯定的に捉えてくれている。
恐らく呂布殿は、私がどうしてこのような提案をしたのか分かっているのでしょう。
『え、え~~~っと........................ソーナ選手の提案は分かりました。サイラオーグ選手はいかがですか?』
「............................俺には何も言う権利は無い。審査委員会の決定に従うだけだ」
『わ、分かりました。それではソーナ選手の提案を承諾するか、審査委員会に確認いたします。
皆様、今しばらくお待ちいただきますようお願いいたします』
司会者がそう言うと観客たちは再びざわめき出す。
さて................................果たして、審査委員会はどう判断するのでしょうか。
このまま結果の分かった試合を続けるか、それともエンターテイメントを重視しイレギュラーを認めるのか。
会場にいる全員が緊張した空気の中、審査委員会の決定を待った。
私たちが待つこと十数分、司会者の姿がスクリーンに投影される。
『お待たせいたしました、皆様! 審査委員会の決定をお伝えいたします。
審査委員会は................................ソーナ選手の提案を認めるとのこと!!!
よって次の試合を『王』と『兵士』による2対2の団体戦とし、最終試合といたします!!!』
ワアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッッッ............................!!!!
司会者が審査委員会の決定を伝えると、先ほどまで静かになっていた観客に熱気が蘇る。
ホッ....................良かった。これで却下されていたら、恥ずかしくて暫く外を歩けませんでしたね。
私がそんなどうでもいいことに安堵していると、サイラオーグが不敵な笑みで話しかけてくる。
「これはソーナに礼を言った方が良いのか?」
「結構です。言ったはずですよ、『私たちの覚悟を見せる』と。
もしお礼をしたいのなら............................出し惜しみなどせずに全力で掛かってきてください」
「っ............................ハーッハッハッハッハッハッハ!!!!
そうだな、その通りだ! ここまでお膳立てしてもらいながら手を抜いたりすれば、それこそ世間の笑い者にされるな!!
良いだろう! このサイラオーグ・バアル、全力でお前たちを倒すことを誓おう!!!」
私の軽口に笑って返すサイラオーグ。実際、これで私たちが負けたら、笑い者にされるのは私たちなんですけどね。
ですが構いません。夢を叶えるために人生を懸けると決めた時から、笑い者となる覚悟は出来ています。
「桃、すみませんがアナタはここで待っていてください。それから、全てのチャクラを匙に渡してください」
「分かりました」
「匙、舞台は整いました。後は........................アナタに『全て』を託します。存分におやりなさい」
「オッス!! 任せてください、会長!!!」
「元ちゃん、私や皆の分まで頼んだわよ」
「おうよ! 花戒のチャクラ、ありがたく使わせてもらうぜ!!」
桃が匙の神器にチャクラを注ぎ込む。私は匙が倒された時に備えておく必要がありますから、チャクラは渡せない。
匙が桃のチャクラを受け取ったことを確認すると、私たちはバトルフィールドへと向かった。
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バトルフィールドに転送された俺と会長。フィールドは見渡す限りの地平線、空には無数の星々。
更には地面にスモークみたいなのが焚かれていて、まるでどこかの惑星に迷い込んだみたいだ。
それにしてもさっきの会長、マジでカッコ良かったぜ!! ますます惚れ直しちまった、流石は我が会長!!!
そんな会長が俺を信じて、この大一番を託してくれたんだ。何がなんでも勝たねえとな! これで負けたら、俺はたぶん一生自分を許せそうにない。
俺が肩をグルグルと回していると、反対方向からサイラオーグさんとレグルスが近づいてきた。
「ソーナよ。やはり、まずはこのような状況を作ってくれたことに礼を言わせてくれ。
おかげで全力、とは言わないが気力十分で戦えそうだ」
サイラオーグさんが両腕を組みながら、威厳たっぷりな感じで笑っている。
そりゃあ単なる消化試合や負け戦じゃあ、やる気もでないよな。
「そうですか、それは良かったです。ですが............................」
会長が眼鏡の位置を直しながら答えると、懐から小ビンを取り出しサイラオーグさんに向かって放った。
サイラオーグさんもキャッチしてビンの中身を確認すると、今度は怪訝な表情になる。
「............................何の真似だ」
「言ったはずですよ、『私たちの覚悟を見せる』と。そのためには貴方の全力を打ち破らなければなりません。
先ほどから引きずっている右足、恐らく留流子の蹴りによるダメージが抜けていないのでしょう。
どうやら『フェニックスの涙』一つでは、巴柄から受けた刀の傷を治すので精一杯だったみたいですね」
「それで自分たちが使うハズだった『フェニックスの涙』まで俺に渡し、右足を治せと?
お前は死力を尽くした仲間の戦いを無駄にするつもりか?」
「それを言うなら、この戦いをセッティングした時点で手遅れです。
それに、もしあの子たちからの非難を受けたとしても、それは私たちシトリーの問題。
貴方が気に掛けることではありません。貴方はバアルチームの『王』として、この試合に勝つことだけを考えてください」
「....................................................」
「それとも............................負けた時の言い訳用に、そのキズは取っておきますか?」
「!!!!!!!!!!!!」
いつもの会長らしからぬ挑発的な物言い。だが、俺には会長の気持ちが分かっていた。
会長が望んでいるのはサイラオーグさんが全開に近い状態で戦うこと。
もちろん完全に万全な状態には出来ない。さすがに失った血液や体力までは戻せないからな。
だがそれでも、サイラオーグさんには全力で戦ってもらわないと俺たちが困るんだ。
俺たちが目指すのは単なる勝利ではなく、誰にも文句を言わせないほどの『完全勝利』なんだから!!!
サイラオーグさんも流石にそこまで施しを受けるのに気が引けているのか、なかなか『フェニックスの涙』を使おうとはしない。
会長だけじゃ足りないか........................ならここは、俺が後押ししないとな!
「使ってください、サイラオーグさん」
「ッッッッッッッ!?」
俺がフェニックスの涙を使うように伝えると、サイラオーグさんも目を見開いて驚く。
まぁ、自分からわざわざ相手に塩を送るようなもんだからな。
「もし俺が貴方の立場なら、ここはフェニックスの涙を使います。そして全力で試合に勝つ、それ以外のことは試合の後で考えます。
俺は会長の『兵士』だから........................どんな時でもチームのため、会長のために出来ることを全力でやる義務があります。
たとえ『フェニックスの涙』を使ったことで、周りから何を言われたとしても、それだけは変わりません」
「匙元士郎....................................」
「貴方が今やるべきことは、俺たちに気を遣うことでも、周りからの目を気にすることでもないはずです。
今、貴方が『王』として........................チームの勝利のためにやらなければならないことだけを考えてください」
「............................................」
俺がそう言うとサイラオーグさんは目を伏せて、何か物思いに耽る。
そしてしばらくすると目を開き........................フェニックスの涙を右足に振りかけた。
フェニックスの涙で足が治ったことを確認したサイラオーグさんは足を軽く動かして、足の感触を確かめる。
その顔は何かを吹っ切ったような清々しい表情だった。
「ソーナ................................良い眷属を持ったな。匙元士郎だけではない、他の者たちも本当に素晴らしい眷属たちだ。この俺が思わす嫉妬してしまいたくなるくらいにな」
「フフ、ありがとうございます。『世界最強』の指導者に恵まれましたので♪」
「っ............................その点については素直に嫉妬させてもらうぞ。
俺も呂布殿に修行をつけてもらいたかった。まったく、羨ましい限りだ」
先ほどまで威風堂々たる姿を見せていたサイラオーグさんだが、師匠の話になった途端に肩を落としながら落胆としている。
よっぽど師匠に鍛えてもらいたかったんだろうか............................俺たちは半ば反則みたいなやり方で修行をつけてもらったからなぁ。
何だか、少し申し訳ない気持ちになってきた。
『両チーム、そろそろ試合を始めてもよろしいでしょうか?』
俺たちが雑談をしていると審判が間に入ってきた。おっとっと、確かにちょっと無駄話が過ぎちまったな。
「これは失礼した。いつでも始めてくれて構わない」
「失礼しました。どうぞ始めてください」
『ではこれより最終試合を始めます........................試合、開始!!!』
審判の合図と共に会長は後ろに下がり、俺とサイラオーグさんはそれぞれの相棒に呼びかける!
「いくぜ、ヴリトラ!!!」
『おう、ネメアの獅子か! 相手にとって不足は無い!!!』
「やるぞ、レグルス!!!」
『ハッ! 我が全ては御身と共に!!!』
「「禁手化ッッッッ!!!!!」」
黄金と漆黒のオーラがぶつかり合い、フィールド中に広がった!!!!
原作では火力メインのグレモリーにばかり焦点が当たっていましたので、シトリーが活躍する場面がほとんどありませんでした。
なので今作では、ソーナが言ってたように『得手不得手が無いメンバーをちゃんと鍛えたら、万能チームになる』っというのを実現してみました。
ただその結果、自分でも『あれ? シトリー強くなりすぎじゃね?』と思ってしまった今日この頃。
そして【ONE PIECE】と【NARUTO】の凄さを思い知りました。
それでは皆さん、次回で♪
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