アーシアとの出会いはそんなに長くはなりません
第十話
「................護送任務?」
「まあ、そう捉えてもらって構わない。実際には新しく加入するメンバーを迎えにいってもらうだけなんだが........................今回は少し特殊でね」
俺は朝の日課である『相剥ぎ切り』(紙や木葉など薄いものを薄く剥ぐように切る訓練)をやり終え、朝食を取ろうとしたら曹操に執務室へ呼ばれた
「特殊?」
「ああ、教会関連の仕事だ」
そうなの? でもウチって教会、と言うか聖書陣営には関わらないようにしてたんじゃなかった?
「知ってのとおり、俺たち【蒼天の紅旗】では聖書陣営には関わらないようにしている。まあ、賞金首の『はぐれ』共や向こうから絡んできた場合は別だけどね」
うん、特に賞金首はウチの貴重な収入源だからね
「本来なら教会からの仕事なんて絶対に受けないんだが........................今回は依頼主が依頼主だからね、無視も出来ない」
「誰?」
「..............................ヴァスコ・ストラーダ司祭枢機卿だ」
あ~~~、それは断りづらいねぇ。なんだかんだで色々と世話になっているし。
「『蒼天の紅旗』には聖書の神の死を知ってしまったり、教会にとって不都合なため追放された者などが所属している。
そう言った者たちを事情を知っているストラーダ猊下が見逃し、教会に取りなしてくれているから助かっている部分もある..............................だから、あまり無下にも出来ない」
そうそう、ストラーダの爺ちゃんが『あまりにも不憫だから』ってことで、俺たちをこっそり紹介しているんだよね。
まぁ、『蒼天の紅旗』としてはそういう人たちは出来るだけ保護する組織だからね。仕方ない仕方ない
「..................内容は?」
「すまない、依頼内容は『聖女アーシア・アルジェントの保護』だ」
「聖女?」
「ああ、どうやら教会に傷付いた悪魔が現れて、その悪魔をアーシア・アルジェントが神器で傷を治したんだが、その現場を目撃されてしまったみたいでね........................追放処分を受けたそうだ。
それで、その子を俺たちで保護して欲しいというワケさ。メンバーの皆にはいつもどおり、『教会の勝手な都合で追放されたから保護する』と伝えておくよ」
あれ? それって確か....................................
「............自作自演............」
「っ........................流石だな、呂布。俺もストラーダ猊下も同じ見解だ。実は似たようなことが過去に何度か起こっている、しかも皆敬虔なシスターや聖女と呼ばれる女性達ばかりだ」
やっぱり..............................『ディオドラの乱』だ。
ディオドラ・アスタロト。現四大魔王の家系でアスタロト家の次期当主。
普段は良い印象を周りに見せているが、実際は敬虔なシスターや聖女を手篭めにする下衆野郎。
気に入ったシスターや聖女を自作自演で教会から追放させ、傷心のところにつけこみ自分の眷属にする。
リゼヴィムと並んで原作屈指のクズキャラだ!!!
「悪魔の名前は『ディオドラ・アスタロト』。これまでの手口なら必ず動くはずだ。アスタロト家の次期当主で上級悪魔のため、それなりの実力者が求められる。
しかし、教会に不満を抱いている者たちは動かせない。また教会関係者からの依頼のため他の者も同様。
表向きは教会関係者ではなく、彼女を慕う敬虔な信者からの依頼にしているからね。だから呂布、君にしか頼めないんだ」
上等だ! 原作やアニメでも『ゲスの極みクズ』って感じだったからな!! 遠慮なく殺ってやる!!!
原作崩壊? 知ったことか、【ゲス・即・斬】じゃ!!!
「........................行ってくる」
「ああ、補佐にはいつもどおり陳宮を付ける。すぐに向かってくれ」
了解了解........................え、今から? 朝ごはんは?
俺は執務室を出て陳宮と合流し、アーシアを迎えに行くのだった..............................朝ごはん抜きで。シクシク
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ハァ........................どうしてこんなことになってしまったんでしょう?
私はこれまで主の教えに応えようと思い、一生懸命働いてきました。あの悪魔の方を助けたのも、それが主の教えに沿うものだと信じたから........................でも。
「あぁ、これも主の試練なのでしょうか..............................」
結局、私は教会から追放されてしまった。これも私の祈りが足りなかったからでしょう........................いえ、そう思わないと私は..............................。
「........................それにしても、お迎えの人はまだなのでしょうか?」
教会を去る際に、ストラーダ猊下から『迎えを寄越すから広場で待っているように』と言われたのですが一向にそれらしい人が見えない。
それに、教会を追放された私をわざわざ迎えに来るなんていったいどんな人なんでしょう?
そんなことを考えていると近くを歩いていた男性が二人、私の方へと歩いてきた。
「へ~い、彼女!1人?良かったら俺達と一緒に遊ばない?」
「俺達、この辺りに詳しいから色んなところに連れていってあげるよ♪」
いきなり男性二人に話しかけられました、この人たちがお迎えなんでしょうか?でも何でしょう? 顔や目つきが少し怖いです。
「あ、あの、わたし、人を待っているんです。だから、その..................ごめんなさい」
私は怖がりながらも、何とか声を振り絞って断ります。ですが、男性の方々は不気味な笑みを浮かべて私のことをジロジロと見てきます。
「え~、そんなヤツ放っておこうよ。女の子待たせるなんて、絶対ロクなヤツじゃないって!」
「そうそう、俺達なら優しくしてあげるから。色々と♪ホラ、行こうぜ」
ガシッ
「ッ、痛つ!」
男性の1人が私の腕を掴み、強引に連れ行こうとします!!!
あぁ、主よ。これも貴方様が与えた試練なのでしょうか、それとも私の祈りが足りないことへの罰でしょうか? もしそうなら、私は..............................
シュン!フワァ....トッ
私が諦めの気持ちになっていたら、急に身体が宙に浮き、一瞬の浮遊感の後に仰向けになって抱き抱えられていました
「............遅くなって........すまない........」
フードを被っていて、顔までは分かりませんでしたが声から男性だということは分かりました。小さいけど、頼もしさを感じられる声。
先ほどの二人とは全然違い、私のことを本当に想ってくれているのが分かります
「おいおい、何だよオマエ!! いきなり現れて........................」
「そうだぞ、その子は俺らが先に........................」
≪黙れ≫
フードを被った彼がそう一言、二人に向かって言うと二人は突然倒れてしまいました!! 私は一瞬だけ寒気がしましたが、不思議と恐いとは思いませんでした。
何故かは分かりませんが、きっとこの人は悪い人ではないと思ったからでしょう。
二人が気絶したのを確認すると、彼は私をゆっくり下ろしてくれました
「あ、あの、ありがとうございました。私、あんな風に声を掛けられたの初めてで........................どうすればいいか分からなくて........................」
「フルフル、怪我は無いか?」
やっぱり........................この人は優しく、良い人です。助けたことを恩に着せず、私のことを心配してくれる。
ああ、主よ。先ほどは申し訳ございません、この方との出会いに感謝します。
「蓮殿~~~、待ってくだされ~~~!」
遠くから小さな女の子がこちらに向かって走ってきます。レン? それがこの方のお名前でしょうか?
「蓮殿、私を置いていくなんてあんまりですぞ! 私は蓮殿の補佐役なのですから!!」
「.......................すまない」
「あ、いえ、決して怒っているわけでは........................それにしても、いきなり走り出してどうかされたのですか?」
「........................危ないところだった」
「え?」
「............アーシア・アルジェント........」
私のことを知っている!? では、この二人がストラーダ猊下が言っていた方々!?
「あ、あの、レン?さんは私を助けてくれたんです。だから、その、あんまり責めないであげてください」
「いえ、ですから怒ってはいないのです。そうですか、貴方がアーシア・アルジェントさんですか。
我々はヴァスコ・ストラーダ司祭枢機卿より、貴方を保護するように仰せつかったエージェントなのです。
もう日が暮れますし、ひとまず今日はどこかで一泊して、明日我々の組織『蒼天の紅旗』へ貴方をお連れするのです」
こうして教会を追放された私は新しい出会いをするのでした。
ディオドラは潰します、たとえ原作が崩壊しようとも