深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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ようやっと若手悪魔の新人戦が終わっても、まだまだ今章は終わりませんwww






第百五十五話

 

 

 

目覚めると俺は知らない天井を見上げていた........................どうやらベッドに横になっているようだ。

 

身体にほとんど力が入らず、所々がズキズキ痛む。まるで全身を針で出来たギプスで固められているような感覚だ。

 

それに....................................

 

 

 

「あ、目が覚めたんですね、サイラオーグさん」

 

 

声に反応して右を向くと、匙元士郎が同じようにベッドにいた。ただ俺とは違い、身体を起こせており元気な様子だ。

 

ということは....................................。

 

 

「俺は................................負けたのだな」

 

「え!? いや、え~~~~~っと........................まぁ、試合の上では、そうですね///////////」

 

「ん? 試合の上では、だと? どういうことだ?」

 

「ええ。最後に俺たち、お互いに技を撃ち合ったじゃないですか? あの時の衝撃で二人とも気絶しちゃって....................俺たち撃破扱いになったんですよね。

だから、俺とサイラオーグさんは『相打ち』だったってことなんです」

 

っ............................そうだったのか。俺の方が目覚めるのが遅かったから、てっきり俺だけが倒されたのだと思ったのだがな。

 

 

「そうか、相打ちか............................だが、『王』である俺が気絶し撃破されたのだ。それは即ち『俺の負け』だということだ。

ふふ、まったく........................『兵士』でも『王』は取れるとはよく言ったものだな」

 

 

まさにチェス、レーティングゲームの基本中の基本だと言える。

 

今にして思えば、これまでの試合でシトリーは奇策と呼べるものは一切使ってこなかった。

 

ソーナの卓越した読みと眷属たちの力強い土台はあっても、戦術・戦略そのものは基本を踏襲したものだった。

 

もちろん基本をそのまま使うことはせず、自分たちなりに工夫と応用をしていた。だが、それでも相手の不意を突くような類の奇策は用いてこなかった。

 

つまり、シトリーにはそれだけの基礎能力がしっかりと身に付いているということだ。

 

恐らく、ソーナはこれから作る学校に通う生徒たちのために『基礎の重要性』を見せたかったのだろう。

 

特別な才能などで派手なパフォーマンスが出来なくても、基本をしっかりと積めばいくらでも活躍できるのだということを多くの者たちに知ってほしかったのだ。

 

 

................................俺は魔王になって、『才能主義』『血統主義』であるこの悪魔社会を変えたかった。

そのために俺自身、あらゆる努力を払ってきたつもりだった。

 

地道な基礎トレーニングをただ愚直に繰り返し、自分の身体そのものを鍛えてきた....................『才能』や『魔力』を持たない俺にはそれしか出来ることが無かった。

 

だが、ソーナは俺よりも一歩も二歩も先へ進んでいた。この若手悪魔同士の新人戦も、ソーナにとっては通過点でしかなかったのだろう。

 

あいつはもっと大きく、広い視野で物事を見ている。俺なんか、目先のことで精一杯だったというのにな....................................。

 

 

「ふっ、まったく............................どうりで勝てないわけだ」

 

「え? 何か言いました?」

 

「いや........................何でもない。それよりも、お前は随分ピンピンとしているではないか。もう動けるのか?」

 

俺は身体を起こすことすらままならない。しかし匙元士郎は起きるどころか、身振り手振りを見せている。

 

本当に相打ちだったのか疑いたくなるほどだ。

 

「え? ええ、まぁ............................日ごろから師匠に気絶させられては、叩き起こされるの繰り返しなんで。

だから俺、というかシトリーは気絶からの復活がわりと早いんですよね。アハハハハハ!」

 

................................そうだった。この男だけではなくシトリーは全員、あの呂布殿に鍛えられているのだった。

まさか頑丈さやスタミナだけではなく、自然回復能力まで高いとはな。

 

いったい呂布殿はどのような修行をシトリーに施しているのだろうか?

 

 

「あ、そうだった。サイラオーグさんが目覚めたら連絡するようにって、会長に言われてたんだった」

 

匙元士郎はそう言うと、ベッドから出て備え付けの内線でソーナへ連絡を取る。

その動きには疲労やダメージを感じさせないほどの軽やかさがあった。

 

やれやれ、何だか全く引き分けた気がしないな。実戦で互いに気絶などすれば、先に目覚めた方が勝者なのだから。

 

 

 

匙元士郎が連絡してから、程なくしてソーナが部屋にやってきた。しかしやってきたのはソーナだけではなかった!

 

「失礼しますね、匙元士郎さん....................サイラオーグ」

 

「っ、は、母上....................................!!!」

 

 

 

ソーナと一緒に部屋に入ってきたのは、俺の母上だった!!!

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

俺が内線で会長に連絡すると、会長と一緒に黒髪の妙齢な女性がやってきた。

話を聞くとサイラオーグさんの母親らしい。

 

へぇ~~~、この人かぁ、ずっと寝たきりだったところを師匠が助けたってのは。

 

聞いたところによると、目覚めてからはずっとリハビリを続けていて徐々に回復してるんだそうだ。

でも、まだ体力が回復しきっていないから遠出とかは出来ないらしい。

 

いきなりの母親の登場に驚きつつも、サイラオーグさんは何とか身体を起こす。

 

 

「っ、は、母上。い、いらしていたのですね。お身体の方は大丈夫なのですか............................?」

 

「ええ、アナタの晴れ舞台ですもの。お医者様に無理を言って許可していただきました」

 

「っ、そ、そうだったのですね................................」

 

 

あの豪胆なサイラオーグさんが、まるで借りてきた猫のように大人しくなっている。

流石のサイラオーグさんも母親には頭が上がらないようだ。

 

やっぱりいつの時代も母親は『最強』ってことなのかね?

 

何となく空気が重い感じがしたので、俺は空気を変えようと会長に尋ねる。

 

 

「あ、あの、会長。他の皆はどうしてるんですか!?」

 

「ええ。椿姫たちもサイラオーグの眷属たちも全員目覚めています。今は私の控室で眷属同士、交流を深めています」

 

そうだったんだ、とりあえず皆が無事で良かった................................俺もそっちに行こうかな。この部屋の空気はちょっと耐えがたい。

 

俺が何とかして退室できないか考えていると、サイラオーグさんが顔を伏せたまま口を開いた。

 

 

「っ....................................申し訳ありません。このサイラオーグ、敗れてしまいました。

母上のおかげで立ち上がることが出来たというのに....................................」

 

「そうですね。私はあなたに諦めてはいけないと、自ら膝を折ることはしてはいけないと言いました」

 

? 母親のおかげで立ち上がることが出来た? どういう意味だろう、確かにサイラオーグさんがいきなり立ち上がったのには俺も驚いた。

どうして立ち上がれたのかは不思議だったけど、ミスラさんが何かしたのか?

 

何か二人だけで分かってるみたいだけど............................。

 

負けてしまったことに落ち込むサイラオーグさん、しかしミスラさんは優しく微笑んでサイラオーグさんに呼びかける。

 

 

「ですが、謝ることなどありません。あなたは謝らなければならないことは何もしていないでしょう?」

 

「........................................え?」

 

思いがけないミスラさんの言葉にサイラオーグさんも顔を上げる。そしてミスラさんは変わらず、サイラオーグさんに微笑みかける。

 

 

「私は『諦めてはいけない』と言いましたが、『負けてはいけない』などと一言も言ってはいませんよ」

 

「ッッッッッッッッ!!!」

 

「あなたは己の全てを出し尽くして戦った。そのことは、それだけで賞賛されるべきものです。勝敗など関係ありません」

 

「っ、ですが........................俺が負けては、俺の夢が....................母上との約束も........................!」

 

「確かに、あなたの夢は遠のいたかもしれません。ですが無くなったわけではないはずです。

あなたの夢は、私との約束は............................敗北した程度で諦めなければならないものなのですか?」

 

「母上....................................」

 

「何度敗れても構いません。そのたびに立ち上がり、強くなりなさい。

そうして諦めなければ、いつか必ず夢は叶えられます」

 

「!!!!!!!!!」

 

「あなたなら出来るはずです。だってあなたは誇り高きバアル家の次期当主、そして............................私の自慢の息子なのですから」

 

「っ~~~~~~~、はい! このサイラオーグ、バアル家次期当主として、必ずや夢を叶え、母上との約束を果たして見せます!!!!」

 

 

ミスラさんの言葉でサイラオーグさんの目に今一度、炎が宿る。そしてその目からは............................大粒の涙が流れていた。

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

「っ............................すまない、二人とも。恥ずかしいところを見せてしまった」

 

「ズズッ、っ~~~~気にしないでください。こっちも何か、もらい泣きしちゃってましたんで........................!」

 

 

サイラオーグはひとしきり泣くと、私たちに謝ってくる。別に私は気にしていないのですけどね。

それに二人のやり取りを見た匙も一緒になって泣いてましたし....................................。

 

 

「気にしないでください。それよりも、サイラオーグに確認したいことがあります」

 

「? 確認したいこと?」

 

「はい...........................伝わりましたか、私たちの『覚悟』は」

 

「ッッッッッッッッ!!!」

 

 

私が尋ねるとサイラオーグはハッとした表情になる。そう、私が他の眷属を連れずにここに来たのは『これ』を確認するためだ。

 

私の夢とサイラオーグの夢は同じ方向を向いている。本来なら、一緒に協力し合って夢を叶えるものだ。

 

しかし、私たちの夢は非常に困難な道のり。それこそ悪魔の社会や歴史を変えることになる。

それほどまでに険しい道のり、『仲良しごっこ』『傷の舐め合い』レベルの協力では到底叶えることは出来ない。

 

私たちとサイラオーグ、それぞれが出来ることに全力を尽くさなければ辿り着くことが出来ない領域。

 

そのためには互いの『覚悟』と『強さ』を知らなければならなかった。

そして互いの『覚悟』と『強さ』を知る方法はただ一つ、互いの『本気』をぶつけ合う以外に無い。

 

このレーティングゲームはそのためのものでもあった。

 

 

先ほどまであった感動的な空気は無くなり、重苦しい空気が漂う。私とサイラオーグは互いに目を背けず、視線を合わせていた。

 

そうして互いに視線を交わし........................やがて、サイラオーグが目を閉じて、軽く笑みをこぼす。

 

 

「ふっ、ソーナも意地が悪いことを言うな。これほどまでの『モノ』を見せられて、否などと言えるはずがない」

 

「っ、では................................!」

 

「ああ、このサイラオーグ・バアル。全力でお前の夢に協力させてもらう! これからよろしく頼むぞ、同志よ」

 

 

私の問いにサイラオーグが不敵に笑いながら、答えてくれた!!

同志、ですか............................そうですね、これで私たちは一蓮托生。まさしく夢を叶える同志と言えますね。

 

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします」

 

「やったーーーーーーー!!! サイラオーグさんが協力してくれるなら心強いぜ!!! こちらこそ、よろしくお願いします!!!」

 

 

サイラオーグさんが私たちに協力してくれることになったことに両手を上げて喜ぶ匙。

私も新たな同志の加入を嬉しく思い、握手をしようと右手を差し出す。

 

しかし、サイラオーグは何故か困った顔をしてしまった。

 

 

「....................................すまない、左手でいいか?」

 

 

サイラオーグが私の差し出した手とは逆の手で握手をしようと言い出す。その表情は、何処と無く申し訳なさそうだった。

 

「? 別に構いませんが、どうかしたのですか?」

 

「ああ、実はな....................................」

 

そうして私たちは、サイラオーグの口から驚きの一言を聞かされた。

 

 

 

 

 

 

 

「右腕の感覚が................................無いんだ」

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

ソーナとサイラオーグの試合が終わって、俺とレイヴェルは当初の予定通りディハウザーに連れられ彼の控室にやってきた。

 

本当は先にサイラオーグのところに行きたかったんだけど、こっちが先約だったし仕方がない。

 

サイラオーグのところには後で行くとしよう。

 

 

「こちらです、呂布殿」

 

 

控室のドアを開き、俺とレイヴェルが部屋の中へと招かれる。

 

中には綺麗な紫がかった黒髪の女性と人柄の良さそうな男性、そしてその二人の特徴を受け継いだかのような可愛らしい男の子。

 

さらにもう一人、意外な人物がいた。

 

 

「リュディガー様!? どうしてこちらに!?」

 

「ハハハ、先ほどはどうも、レイヴェル嬢」

 

そう、さっきの試合で審判役をやっていた『リュディガー・ローゼンクロイツ』の姿があった。

 

これには俺もビックリ。てっきりディハウザーが『会わせたい人物』ってのは、『奥の男女』のことだと思ってたんだけどね。

 

でも、何で俺たちよりも早くこの部屋に到着してるんだろう。どこか近道できるルートでもあったのかな?

 

 

「申し訳ありません、呂布殿。本当は『私の身内』だけだったのですが、彼がどうしても呂布殿にお会いしたいと言っておりましたもので............................」

 

「............................別に構わない。ただ....................どうして俺に?」

 

「あ、いえ、私については後で構いません。何せ『皇帝』に頼んで、無理矢理この場に同席させていただいている身ですから」

 

あ、そうなの? じゃあ、お言葉に甘えてディハウザーの用件から片付けさせてもらおうかね。

 

 

「わかった....................ディハウザー、俺に会わせたいというのは........................そこの家族のことでいいのか?」

 

「はい、左様です。三人とも、こちらに」

 

ディハウザーが言うと奥にいた夫婦だろう二人と、その子供っぽい男の子が前に出てきた。

ただ男の子の方は緊張しているのか、女性の後ろに隠れてしまっている。

 

この二人........................やっぱりそうだ、『あの時』の二人だ。

 

三人が俺の前に来ると、奥さんっぽい女性が懐かしいものを見るかのように顔をほこぼらせる。

 

 

「呂布くん....................いえ、今は呂布『様』とお呼びした方がよろしいわね。私たちのこと、覚えているかしら?」

 

「ん........................元気そうで何より」

 

俺が答えると女性と男性が顔を見合わせて、満面の笑みを浮かべる。

忘れてなんかいないよ............................俺が苦労して手に入れた『スイーツ』が犠牲になったことはね。

 

 

「クレーリア、やはりこの御方がそうなのか?」

 

「はい、ディハウザー兄さま。間違いありません、この方こそ十年前............................私たち夫婦を救っていただいた『呂布くん』です♪」

 

ディハウザーが尋ねるとクレーリアは嬉しそうに返事をする。『夫婦』ってことは、やっぱり二人とも結婚してたんだね。

そうすると、そこにいる可愛らしい男の子は二人の子供ということか。

 

見たところ四~五歳って感じだけど、悪魔って出生率が低いんじゃなかった?

二人と会ったのは十年前で、その子供が四~五歳ってことは................................相当頑張ったんだなぁ。

 

俺が生命の誕生や夫婦の営みについて感慨深いものを感じていると、旦那さんが優しい笑顔で話しかけてくる。

 

 

「キミにはいくら御礼を言っても足りないぐらいだ。本当に........................ありがとう」

 

「........................気にしなくてもいい........................たまたま居合わせただけだ」

 

「ふふ、そうだね。だが偶然とは言え、キミがいてくれたおかげで私たちは助かったんだ。キミにとっては何気ないことだったかもしれない。

でもあの時の私たちには味方と呼べる者はいなかった。そんな私たちにとって、キミは間違いなく『英雄』なんだよ」

 

 

そんな大層なモンじゃないんだけどね。あの時の俺はスイーツを台無しにし、食べ物を粗末にしてくれたクソ野郎共に『人誅』をしただけだから。

 

 

「そしてそんなキミが............................今では世界最強となり『深紅の武人』と呼ばれ、多くの人たちからも『英雄』と称えられている。

それほどの存在に助けられたんだ、あの日の私たちは世界一幸せ者だったと思うよ」

 

そうなんだ........................俺は二度と出会えることが出来ない『スイーツ』を思って、枕を涙で濡らしたよ。

 

二人にとっては世界一幸せだったかもしれないけど、俺はこの世全ての不幸がのしかかってきたのかと思ったわ。

 

 

「そうね、アナタ。あの『呂布くん』がこんなに立派になるなんて............................私たちは幸せ者だわ」

 

「そうだな、クレーリア。今でも思い出すよ、『呂布くん』に助けられた............................あの日のことを」

 

 

 

二人が遠い目をするのを見て、俺も十年前のあの日のことを思い出した....................................。

 

 

 

 






次話より、少し過去編に入ります。

舞台は『十年前の駒王町』。時間軸は朱乃を助けた後になります。

それでは皆さん、次回で♪
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