ようやく、ようやく今章が終わりました!
長かった~~~~、やっぱり2試合分のバトルパートは長すぎましたねwww
「匙....................お前には生きて....................叶えたい夢があるんじゃないのか?」
「ふぁ、ふぁい............................」
「なら....................命を捨てるようなことは....................するな」
「わ、わふぁりまひふぁ............................」
気絶した匙を叩き起こし、『命を大事にしなさい』とお説教。俺の(拳を使った)説得に匙もようやく分かってくれたようだ。
ただ顔面を殴られて鼻の骨や歯が数本折れちゃってるけど........................まぁ、それはご愛敬ってことで♪
「ん............................今後は気を付けるように」
「ふぁい。は、はの、ひひょう。ふぉのふぇふぁ、なふぉひふぇふえまふぇんふぁ?」
(はい。あ、あの、師匠。この怪我、治してくれませんか?)
「罰として今日一日は............................そのままでいろ」
「ふぉ、ふぉんふぁ~~~~、ふぁいひょ~~~~」
(そ、そんな~~~~、会長~~~~)
「呂布殿の仰せのとおりです。その怪我の痛みをもって、しっかり反省なさい」
頼みの綱であるソーナにも断られ、涙目になりながら肩を落とす匙。今日一日って言ったって、もう夜遅いんだから我慢しなさい。
まぁ、今夜は痛みで寝れないだろうけどね。
「こ、これが呂布殿の指導........................シトリーが強くなったのも頷けるな............................」
俺たちのやり取りを見て、サイラオーグは若干引いている。他人事のように見てるけど、次はサイラオーグの番だからね?
もし言い訳するようなら、匙の二の舞だよ? 言っておくけど、こっちは怪我人だからって容赦しませんので。
「サイラオーグ............................お前もだ」
「っっっっっっ!!! は、はい....................お願いします」
俺が呼ぶと言い逃れしても無駄だと思ったのか、サイラオーグは神妙な顔つきになる。
「サイラオーグの目には........................俺の技が....................すぐに真似出来る程度のものに....................写ったのか」
「っ....................いいえ。あの時の俺は『負けたくない』という思いから目の前の勝負に固執し、己の身を省みておりませんでした」
「お前にも........................生きて叶えたい................夢があるんじゃなかったのか」
「はい........................俺は考えが足りませんでした。未熟な身で至らず、申し訳ありません」
匙と違ってちゃんと反省しているようなのでお仕置きのおかわりは無しとした俺は、次にサイラオーグが目覚めた『セブンセンシズ』ついて話す。
さらに『ライトニング・ボルト』はこの『セブンセンシズ』に目覚めなければ使えないことを教えてあげた。
本来であれば相応の修行を経て目覚める感覚だったが、サイラオーグは自己流で目覚めたこと。
そのうえ、目覚めた力をいきなり全力で使おうとした結果、サイラオーグの右腕が動かなくなってしまったことも説明した。
今回は運良く右腕だけで済んだが、下手をすると身体全体の感覚が無くなり........................最悪死んでいたかもしれないことも忠告した。
「俺がサイラオーグに..................技を見せたのは................お前を死なせるためじゃない」
「っ........................はい。心得ております」
「『滅びの魔力』を持たなかったお前は....................『バアル家の無能』と蔑まれ....................虐げられる日々を過ごしてきた」
「............................その通りです」
「だがお前は................それでも己自身の可能性を信じ................地道な努力を続けて....................少しずつ使える『力』を....................身に付けていった」
「............................はい」
「『ライトニング・ボルト』は........................そんなお前だからこそ....................見せた技であり................決して立身出世や....................我欲を満たすためのものではない」
「....................................................」
「ましてや........................自滅覚悟で使うなど....................もっての他だ」
見様見真似で俺の技を使って命を落とすとか、冗談じゃないよ! そんなことされたら、俺が死なせたみたいじゃん!! そんなの寝覚めが悪すぎるわっ!!!
まったく、人の技を勝手に自爆技なんかにされたら堪ったもんじゃないっての!!!
「っ~~~~~、はいっ! 俺は呂布殿が苦労の末に編み出した技を、自分の命で汚すところでした!! 呂布殿、未熟な我が身を諭していただき、感謝いたします!!!」
技や力に耐えられる身体も無ければ、使いこなすだけの知識や技術も無い........................そんな状態で目覚めたばかりの力を全力で使おうとすることがどれだけ危険なことなのかを知ったサイラオーグは、普段の様子とは打って変わって落ち込んでいた。
一方『セブンセンシズ』のことを知った曹操やソーナたちも言葉を失うほど驚いている。
まぁ、『セブンセンシズ』や『エイトセンシズ』については、シトリーはおろか『蒼天の紅旗』にも教えていなかったからね。
「それにしても驚いたよ。まさか、そんな力があるとはね~~~~」
「身体を細胞の原子レベルで掌握し、操作させる感覚とは........................初めて聞きました」
「ああ。通常持っているだろう『五感』とその上の『第六感』....................さらにその『第六感』すらも超えた『第七感』という感覚が存在するとはな」
「恐らく匙の神器の力で....................五感が無くなった結果....................一時的に目覚めたんだろう」
「そうでしたか........................ですが、これで『ライトニング・ボルト』の本質が分かりました。
物体を原子レベルで掌握できてこそ、原子レベルでの破壊。『消滅』という現象を起こせるのですね」
「サイラオーグは........................まだ目覚めたばかりだから............................そこまでは出来ないけどな」
俺が『セブンセンシズ』についての説明をすると納得したり驚いたりと反応は様々。
そんな中、『セブンセンシズ』について興味津々といった様子で曹操が尋ねてくる。
「呂布、その『セブンセンシズ』というのは『蒼天の紅旗』のメンバーに教えることは可能かい?」
「........................難しいな....................やるとしても................サイラオーグのように........................五感を順番に消していく修行となるから........................命を落とす危険がある」
「そうか........................だが、仕組みが分かればやりようはあるな。後でもう少し詳しいことを教えてくれ」
どうやら曹操は『蒼天の紅旗』の皆にも『セブンセンシズ』を会得させたいみたいだ。まぁ、俺が付きっきりでやれば安全に目覚めさせることは出来るけどね。
ただ正直、やりたくはないな~~~。だって、『セブンセンシズ』って極めると人間でも神クラスに匹敵する力が出せるんだよ?
実際、【聖闘士 星矢】でも『セブンセンシズ』に目覚めることで主神クラスの敵を倒してきたからね。そんな力にホイホイ目覚めたら、神様たちに目を付けられるんじゃないの?
けどまぁ、こうなった以上は黙っておくってことは出来なさそうだし........................細かいことは曹操に任せよう。
さて、と....................サイラオーグの怪我も治したし、必要なことも伝えた。そろそろ俺はお暇しようとするかね。この後はリュディガーの所にも行かないといけないし。
はぁ~~~~。やれやれ、今日はあっちこっちに行って大変だぁ。
「............................呂布奉先様」
『お腹空いてきたな~~~』と思いどこかで何か食べられないか考えていると、サイラオーグの母親のミスラさんが話しかけてきた。
そういえばミスラさんと会うのって初めてだっけ? 思ったよりも元気そうで何よりだよ、顔色も良さそうだし♪
だがそんなことを考えている俺を他所に、ミスラさんが突然頭を下げだした! どうしたってのさ、いきなり!?
「息子から、かねがねお話は伺っております。貴方様に救われていながら、今まで御礼を申し上げることも出来ず申し訳ありませんでした。
また、私の命だけではなくサイラオーグまで救っていただいたこと。貴方様の深い慈悲に厚く感謝申し上げます、私たち親子を救っていただき........................本当に、ありがとうございました」
ああ~~~、そのことについてね。でも、そのことについてはサイラオーグやリアスの母親から何度も御礼を言われてるしなぁ。
「お気になさらずに........................お礼ならサイラオーグやヴェネラナさんから.............................既に受け取っています」
「っ、いいえ、そういうわけにはいきません。私は命を、サイラオーグは人生を貴方様に救われたのです。何としてもこの御恩をお返しさせていただけなければ、バアル家の名折れでございます」
貞淑な雰囲気を出しながらも気丈な振る舞いを見せるミスラさん。流石は親子、こういったところがサイラオーグに影響したんだろうな。
俺としてはホントにもう御礼は十分なんだけど、毎度のことながらそれじゃあ納得してくれないよね。
っというわけで、ここはいつも通り返して話をスパっと終わらせよう。
「なら二度と........................サイラオーグがこんな無茶をしないよう........................貴方がブレーキを掛けてください........................それで十分です」
「ッッッッッッ!!!! っ~~~~~~、はい。サイラオーグには、私からよく言って聞かせます....................貴方様の慈悲深い御心遣いに、感謝いたします........................!」
俺が『あなたからもちゃんとサイラオーグを注意してね』と言うと、涙を流しながら喜ぶミスラさん。
よっぽどサイラオーグのことが大事だったんだろう。サイラオーグも母親想いだったし........................良い親子関係だ。
俺はそろそろ本気でお暇しようとするが、最後に言い忘れたことがあったので、それだけ伝えることにした。
「サイラオーグ」
「は、はい、呂布殿!」
「怪我が治って落ち着いたら........................人間界に来い」
「え? に、人間界に、ですか? それは何故でしょうか?」
「『セブンセンシズ』と........................『ライトニング・ボルト』について....................教えてやる」
「「「「!!!!!!」」」」
「ッッッッッッ!? よ、よろしいのですか、呂布殿!?」
俺がサイラオーグの面倒を見てあげることを伝えることに驚愕する面々、サイラオーグにいたっては信じられない物を見るような目だ。
だって、仕方ないじゃん。曹操にはああ言ったけど、サイラオーグはもう目覚めちゃったんだからさ~~~。
「目覚めた以上........................正しく覚えなければ危険だ。『セブンセンシズ』とは........................そういう力だ。
シトリーを鍛えるついでに........................修行をつけてやる........................構わないな、曹操」
「はぁ....................仕方ないな。ただし、『セブンセンシズ』については俺にもちゃんと教えてくれ。でないと、神々を説得出来そうにない」
「コクン」
「っ~~~~~~、呂布殿、ありがとうございます! ありがとうございます!!」
修行の許可が出たことで、涙を流すサイラオーグ。そんなに喜ばなくてもいいのに。
あと神様たちへの報告についてはお願いね、曹操。正直、俺から話すと『自分にも教えろ!!!』と騒ぎ出しそうだから........................特にオーディンあたりが。
シトリーと一緒にサイラオーグを鍛えることを伝えた俺は医務室を後にして、リュディガーとの待ち合わせ場所へと向かった。
呂布が去った後、先ほどまでの重苦しい空気から一変し、医務室は和気藹々とした雰囲気となっていた。
「ふふふ、良かったですね、サイラオーグ」
「ああ。まさか、このような機会に恵まれるとはな........................曹操殿も、感謝します」
「気にしなくていいさ。俺としても『セブンセンシズ』については大いに興味がある。実例は多い方が良い」
「サイラオーグさん、師匠の修行はガチでキツイですからね。本気で覚悟しておいた方が良いですよ?」
「サイラオーグ、呂布様のような御方から教えを受けられるなど滅多にあることではありません。
余すことなく、多くのことを学んできなさい。それが貴方の今後の人生において、大きな糧となります」
「うふふ♪ うるさいオジ様たちの相手は私がやるから、サイラオーグくんは気にしなくて大丈夫だよ☆」
皆がこれからの前途に明るい未来を感じている中、曹操がソーナに話を切り出す。
「さて、そろそろ俺の用事を片付けるとするかな。ソーナ・シトリー、今後のことについてキミに話がある。それから.....................『コレ』を渡しておこう」
曹操の真剣な表情を見て、ソーナも真剣な顔つきとなる。そして二人の話を聞いていくうちに、この場にいる全員の顔も厳しいものとなっていった。
リュディガーさんに連れられ、息子さんが入院しているという病院にやって来た俺とレイヴェル。
今日は本当にあっちこっちに連れまわされてるなぁ~~~。シトリーの修行も一段落したし、これが片付いたらどこか温泉にでも行きたい。
「こちらです、呂布殿」
リュディガーさんに案内されたのは特別病棟の個室。もう夜遅いというのに部屋の電気は付いている、子どもなんだから夜更かしはダメだよ?
ガチャ
「っ、お父さん!」
「シオン、良い子にしていたか?」
「うん! さっきまでお母さんと一緒に、お父さんが審判をしてた試合を見てたんだよ!!」
「そうか....................苦労を掛けてすまないな」
「いいえ、アナタも夜遅くまでご苦労様です」
リュディガーさんが部屋に入るとベッドで寝ていた子供と脇にいる女性がリュディガーさんを迎えてくれる。
女性の方は恐らくリュディガーさんの奥さん。そして問題の神器に苦しめられているってのがあの子かぁ
見た感じ、エカルラートくんとほぼ同じぐらいの男の子。これぐらいの歳の子なら外で遊びたいだろう、人生ままならないもんだ............................。
「っ、アナタ、そちらの方が............................!」
「ああ、私たちの事情を聴いてわざわざ来てくださった。シオン、今日はお前に会わせたい人がいるんだ」
「? だぁれ? お医者さん?」
奥さんが俺を見るなり驚いた表情をしたので、とりあえず俺とレイヴェルは軽く一礼する。どうやらリュディガーさんからは話を聞いていたみたいだな。
だが、シオンくんは俺がちょうどリュディガーさんの影に入っているため見えていないようだ。
「お医者さんじゃないよ。お父さんとの約束通り、ちゃんとお母さんと待っていられたからね。そのご褒美だ」
シオンくんに優しく笑いかけるリュディガーさんと目が合う。空気的にこのタイミングだろうと思った俺は静かに歩いて前に出る。
「初めまして、シオン............................呂布奉先だ」
「ッッッッッッ!!!」
俺がシオンくんの目線に合わせるためにしゃがんで挨拶をすると、ちっちゃなお目めを思いっきり開いて驚くシオンくん。
さすがに信じられないと思ったのか、シオンくんはリュディガーさんに俺が本物か確かようとする。
「え、え、え、え、え? ど、どういうこと、お父さん!?」
「シオンがいつも頑張って病気と闘っているから、呂布殿が応援に来てくれたんだよ。いつも『会いたい』って言ってただろう?」
「う、うん....................あの、ホントに、『シンクのブジン』さん、なんですか?」
「ああ、周りからは........................そう呼ばれている」
前々から思ってたけど、その『深紅の武人』って誰が名付けたの? 何かいつの間にか定着してたんで、『まぁ、いっか』って感じで流してたけどさ....................でも、少なくとも俺は自分から名乗ったことはない。
そんな『誰が名付け親なんだろう?』みたいなことを考えてると、シオンくんが目をキラキラさせながら騒ぎ始めた!
「すっごーーーーーーい!! ほんものだ、ほんものの『リョフホーセン』さまだーーーーー!!!」
夜も遅いと言うのにハイテンションなシオンくん。ここまで大喜びしてくれるなんて、こっちがありがたいくらいだよ。
でも、ここは病院なんだから少し静かにしようね........................って、特別病棟だから周りには他の病室は無かったんだった。
俺は喜んでいるシオンくんを微笑ましく見ながらも、妙な違和感を感じる。
普通、子供がこんなに騒ぐなら立ち上がるなり抱きつくなど、少なくともベッドからは出ようとするはずだ。
しかし、シオンくんは何故か両腕をバタバタさせるだけだった。もしかして....................................
「呂布奉先様。この度はご多忙のところ、私どものワガママを聞き届けてくださり............................誠に恐れ多い限りでございます」
「フルフル、気にしないでください........................それよりも....................この子の足は............................」
「っ............................はい。この子の宿した神器の影響で........................動かなくなってしまったんですっ........................!」
俺が尋ねると奥さんは声を押し殺しながら答えてくれた。
やっぱりか。遊び盛りの子供が満足に身体も動かせないなんて、どんな気持ちなんだろうな........................ダメだ、俺なんかじゃとても想像出来ない。
それでもこの子はこうして笑っていられる.........................それだけでこの子の『強さ』が垣間見えるな。
「足だけではないんです。このままだとこの子は神器の影響で次第に腕が、やがて上半身すら動かすことが出来なくなり....................最後にはっ........................!」
奥さんに続くようにリュディガーさんが教えてくれるが、よっぽど言葉に出すのも辛いのだろう。徐々に声が震えていった。
そんな両親を見て思うところがあったのか、大喜びしていたシオンくんが両親に笑いかける。
「だいじょーぶだよ、お父さん、お母さん! リョフさんは『せかいさいきょー』なんだよ。そのリョフさんが応援してくれるんだもん。『せかいさいきょー』の応援があれば、きっと良くなるよ♪」
「「っっっっっっっっっ!!!!」」
シオンくんの眩しい笑顔、そして力強い言葉にご両親は口元を手で覆いながら顔を背ける。
自分の状態は自分が一番分かってるだろうに........................それでもご両親を安心させるために笑顔で言えるこの子は素直に凄いと思う。
あまりにもひたむきなシオンくんを見て、ウチの秘書であるレイヴェルも後ろを向いて涙を拭っている。
「そうか....................シオンは................身体が良くなったら........................何がしたい?」
この子の状態を知っていながら、こんなことを聞くのは酷だろう。
だが、それでも知りたかった。こんな小さな子が自分の境遇を知りながら、前を向いていられる理由が........................未来を信じて生きられる希望とは何なのか。
俺が尋ねるとシオンくんは嬉しそうに答えてくれた。
「うんとね、学校に行きたい!」
「学校に?」
「うん♪ ソーナ選手が言ってたんだ、ボクみたいな子どもでも通える『レーティングゲームの学校を作る』って! その学校に行けば、リョフさんみたいに強くなれるんでしょ?」
確かにソーナの作る学校では俺が教えたことを学べるからね。まぁもちろん、俺の全てを教えたわけじゃないけど、それでも普通に修行するよりはマシだと思うよ。
それにこの子は既に、精神的な面で俺なんかよりもずっと『強い』と思う。
「そうだな........................シオンが誰よりも努力すれば........................俺よりも強くなれるかもな」
「うん! ボク、いっぱい勉強して強くなって......................お父さんとレーティングゲームで試合したい!!」
この一言が決定打となり、リュディガーさんはとうとう我慢が出来なくなってしまったのか....................レイヴェルのように少し離れて泣き出してしまった。
何だろう、何か俺が泣かしたような雰囲気になっててスゴく気まずい。
「そうか....................なら、まずは....................身体を治さないとな」
確かリュディガーさんは『元人間』で、シオンくんはその血を引いているんだったよな。
つまり、『ほとんど人間』みたいなものって考えて良いよね。そして『蒼天の紅旗』では神器によって苦しむ人間を助けることは推奨されている............................まぁ、反対されてもやるんだけどさ。
「リュディガーさん」
「ズズッ、はい、申し訳ありません、呂布殿。何でしょうか?」
「俺なら........................この子を助けられると....................思います」
「「「!!!!!!!!!!!!!」」」
俺が尋ねるとリュディガーさんと奥さん、そしてレイヴェルが目をまん丸にして驚く。
正確には『俺』というよりも『蒼天の紅旗』の技術を使うんだけどね。
要はこの子を蝕んでいる神器を取り出せばいいんでしょ? 普通に取り出すとこの子が死んでしまうけど、『蒼天の紅旗』の技術なら問題なし。
こういう時のために神器を取り出す術式を覚えておいて良かった~~~~。
「本当に................本当に、息子を....................?」
「コクン、俺なら神器を........................安全に取り出せます」
「で、ですが呂布様。大変申し上げにくいのですが............................よろしいのでしょうか、この子は人間の血を引いているとはいえ『悪魔』です。
呂布様自ら救うというのは、あまりよろしくはないかと思われます」
震えながら尋ねてくるリュディガーさんに俺が答えると、レイヴェルが申し訳なさそうに止めようとする。
本心では助けたいと思っていても、『蒼天の紅旗』としては止めなくてはならない。本当に良い子だなぁ~~~。
「レイヴェル」
「............................はい」
「目の前の救える子どもの命を........................救おうともしない大人は........................それだけで『悪』だ」
「ッッッッッ!!! っ~~~~~! 失礼いたしました! このレイヴェル、御身の気高き精神を汚すところでございましたわ。お許しくださいまし」
『子どもの頑張っている姿を応援できないのは、大人として失格だよ』と言うとレイヴェルも納得してくれた。リュディガーさんは奥さんと抱き合いながら一緒に嗚咽している。
確かにレイヴェルの言う通り、本当なら曹操に相談するべきなんだろうけど今回は緊急事態だからね。
モタモタしてるとこの子が手遅れになってしまう。だから報告は事後としよう............................報告頼んだよ、レイヴェル。
ご両親の許可も下りたということで、俺はさっそく『蒼天の紅旗』の術式を使ってシオンくんの神器を取り出すことにする。
もちろん万が一の場合に備えて、『エイトセンシズ』と『仙術チャクラ』の準備も忘れない。
ちなみにリュディガーさんにお話しして、取り出した神器は俺が貰うことになっている。これで曹操も納得してくれるだろう。
シオンくんを横たわらせて、術式を展開すると........................胸の部分が光り、原因となっている神器が出てきた!
ふ~~~ん、初めて見る神器だな。五寸釘みたいなデッカイ針にガラスのように透明な糸が付いてる。
どんな能力かは後でウチの研究班に任せるとして、とりあえず回収してしまおう。
神器を回収し、念のため『エイトセンシズ』を使ってシオンくんの容態を確認。
............................うん、問題無し。転生悪魔の子供にもこの術式は使えるってことをレイヴェルから報告してもらおう。
「終わったぞ、シオン....................お父さんのところまで....................歩いてみろ」
「う、うん................................」
俺がシオンくんの手を引いて立たせると、それだけで離れていた両親が泣きそうになる。
シオンくんはフラフラしながらも、リュディガーさんのところまで歩いていく。
周りの皆はいつ倒れるかハラハラしながら、シオンくんを見守っている。
そして............................................
「お父さん!!!」
「「シオンッッッッッ!!!!!」」
シオンくんがリュディガーさんのところまで見事歩ききると、我慢の限界と言わんばかりに両親が抱きしめる。
その感動的な光景にレイヴェルも思わず貰い泣き、ホントに優しい子だな~~~。とてもあのライザーと同じ血が流れているとは思えない。
さぁて、家族の感動的場面を他人である俺たちが邪魔するわけにもいかないし........................そろそろお暇しましょうかね。
「リュディガーさん....................俺たちは............................これで失礼します。
お約束通り........................神器はもらっていきます........................構いませんね?」
「ズズッ、も、もちろんです! り、呂布殿、息子を救っていただき、ありがとうございました!!!」
「呂布様、此度の御恩は、決して忘れません............................!」
神器について最後に一応確認すると、二人は涙と鼻水で顔がグチャグチャになりながらも御礼を言ってくる。
こっちとしては神器さえ貰えれば特に問題無いからね、気にしなくていいよ。
「あの........................リョフさん、その、あ、ありがとうございました!」
「気にするな........................それよりも強くなって....................今度は自分の足で....................会いに来い」
「ッッッッッ!!! っ~~~~~~~、はい! ボク、絶対に強くなって....................もう一度リョフさんに会いに行きます!!!」
俺が『頑張ってね』って応援すると、シオンくんは一瞬驚いたような顔をするが、すぐに満面の笑みで返事をした。
『エイトセンシズ』と『セブンセンシズ』で見たところ、身体自体には特に問題は無し。
ただずっと寝たきり状態だったから、足の筋肉が衰えてしまっているんだろう。
だがそれについては病院でリハビリをすれば改善するはず。あとはお医者さんにお任せしよう。
手を挙げて軽く返事をし、俺はレイヴェルと一緒に病室から出ていった....................................。
余談だが、このシオンはソーナが設立する学校に第一期生として入学し、ダントツの成績で卒業することとなる。
さらにはソーナの学校の卒業生の中で、上級悪魔入りの第一号を果たすのだが................................それはまた別のお話。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
若手悪魔同士による新人戦も終わり、俺たちの主だったイベントは一段落。
俺の『凍結封印』の話も無くなったことで、何の憂いもなく新年を迎えられた。
今年のお正月は俺たち家族に加えて、オカルト研究部にシトリー。更にはライザーさんたちに加えてサイラオーグさんたちまで加わるという大所帯になった。
サイラオーグさんは何でも呂布さんから『セブンセンシズ』っていう凄い力の扱い方を教えてもらうために、シトリーの皆と一緒に呂布さんから修行をつけてもらうことになったらしい。
この人、まだ強くなるのか............................俺もウカウカしてられねえな!
それにしても去年は慌しい一年だった........................悪魔に転生して、ライザーさんとレーティングゲーム。コカビエルの襲来に冥界への里帰り。
さらには北欧の悪神と魔王の息子が現れて、俺の寿命を治すために両親の寿命が半分になった。
その後は『凍結封印』を避けるために修行三昧、修学旅行では新生悪魔が襲い掛かってきた。そんでもって最後は若手悪魔同士の新人戦。
ざっと思い返してみても、イベントがこれでもかと言うくらいに盛り込まれすぎだろ...........................。
ハァ~~~~~、これだけ頑張ったんだ。今年一年は平穏な一年であって欲しいもんだ。
俺は心の底から切実にそう思った。
しかし....................................
「冥界でクーデター!? しかもサーゼクス様たち魔王様が幽閉された!?」
どうやら俺の人生の平穏はまだまだ程遠かった........................................。
今章も終わり、いよいよ物語が終わりに向けて進みます。
ただ今まで真面目なバトルパートとかしか書いてなかった反動で、日常パートやギャグパートに飢えてます。
また次章からは日常パートやギャグパートは一切入れられません。
なので【幕間II】で、そのあたりの欲求をとことん消化したいと思います。
すみませんが作者の気が済むまで、次章はお待ち下さい。たぶん、そんなに掛からないと思いますので。
それでは皆さん、【幕間II】で♪
感想・高評価もいただけると作者が喜び、励みになります!