【幕間II】の第一段は呂布とロスヴァイセについてです。ここを逃すと二度と二人の出会いについて書くことはないかと思いましたので。
時期としてはレイヴェルが秘書になって間もなくです。
第百六十話
場所は兵藤家の一室。迎賓館にでもあるような造りの部屋で年頃の女子が四人、お茶を楽しみながら盛り上がっていた。
それだけ聞くと部屋の造り以外はどこにでも見られるような光景だったのだが、参加しているメンバーはどこにでもいるような女子ではない。
堕天使と人間のハーフにして転生悪魔、純粋な悪魔、妖怪、そして人間。RPG顔負けのパーティーメンバーがよくもこれだけ集まったものだと感心してしまうほどだ。
「素晴らしいですわ、何て感動的なお話なんでしょう! 自分の行く道を見失いかけたところに颯爽と現れる呂布様!!
そして呂布様により命ばかりか人生まで救われ、こうして伴侶として人生を伴にする!!! アーシア様のお話を聴いて私、大変感動いたしましたわ♪」
「そ、そんな、レイヴェルさんったら♪ 大袈裟過ぎますよ~~~~//////////」
アーシアさんと奉先様との馴れ初めを聞いて目をキラキラさせるレイヴェルさん。
そしてレイヴェルさんに褒められて嬉しそうに身体をクネクネさせながら、ハートをまき散らしているアーシアさん。
でも、気持ちは分かりますわ。私だって奉先様との出会いを思い出すだけで顔が火照り、胸が熱くなってきますもの♪
何故、私たちがこうして集まっているのか。それは奉先様の秘書になられたレイヴェルさんから、私たちと奉先様との出会いについて聞きたいとお願いされたからだ。
私、アーシアさん、ロスヴァイセさん、タマモさんの四人は既にお互いの想いを確かめ合い、奉先様との出会いについても聞いている。
ただ、妻にはなれなくても奉先様のことを慕っているレイヴェルさんだけが知らないという状況だったので、私たちは快く承諾した。
そしてここまでで私、タマモさん、アーシアさんの順番で奉先様との出会いや馴れ初めをレイヴェルさんに話し終わったところだ。
「それにしても遅いですわね、ロスヴァイセさん」
「ええ、あとはロスヴァイセさんだけなんですけど」
「仕方ありませんわ、今日は職員会議で遅くなると仰ってましたし」
私たちの話が終わり、あとはロスヴァイセさんだけというところで当のロスヴァイセさんはこの場にはいない。
何でも冬休み前ということで緊急の職員会議が入ってしまったとのこと、教師というのも大変ですわね。
とりあえず私たちはロスヴァイセさんが帰ってくるまで、お茶を飲みながら適当に時間を潰すことにした。
女四人、しかも同じ殿方をお慕いしているとのことであれば話す話題には困らない。
皆で他愛ない雑談をしてしばらくすると、ロスヴァイセさんが帰ってきた。
「ハァ、ハァ、皆さん、遅れてごめんなさい! 職員会議が思ったより長引いてしまって........................!」
急いで帰ってきてくれたのか、ロスヴァイセさんはスーツ姿のまま息を切らせて部屋に入ってきた。
「おかえりなさい、ロスヴァイセさん♪」
「会議、お疲れ様ですわ」
「お仕事ご苦労様です、ロスヴァイセさん」
「お仕事ですもの、仕方ありませんわ。お気になさらないでください」
「ハァ、ハァ、あ、ありがとうございます........................」
「着たきりスズメというのも何ですし、とりあえず着替えてはいかがですか?」
「そ、そうですね。それじゃあ、一旦失礼します//////////////」
私たちは気にしていないと伝え、ひとまず着替えに行ってもらっている間にロスヴァイセさんの分のお茶とお茶菓子を用意することにした。
「ズズゥ........................はぁ、お茶が美味しいです♪」
部屋着、というかジャージ姿に着替えたロスヴァイセさんは私の淹れたお茶を啜りながらまったりとしている。
この姿、せっかく整った容姿なのにどこか残念な感じがしてなりませんわ................................。
「随分と遅かったのですね。やはり冬休みが近いからですか?」
「ズズゥ、ええ。それに冬休み用のプリントを休み明けにクラスへ配らないといけませんので。
だから明日の祝日は出勤する先生もいらっしゃるそうです。ただ私は明日、用事がありますので今日中に片付けたかったんですよね」
「用事って....................ああ、例のスパリゾートの」
「はい♪ ようやく私の番まで回ってきたのです! あぁ、この日をどれだけ待ち望んでいたことか....................♪」
ロスヴァイセさんは目をキラキラさせながら、両手を合わせて天を仰ぐ。『スパリゾート』というのはリアスからもらった『駒王クラブ』のプレオープンチケットのことだ。
既に私・アーシアさん・タマモさんの三人が奉先様と二人きりで出掛けたのだが、ロスヴァイセさんだけは仕事の関係で一番最後になってしまったのだ。
まぁ、気持ちは分かりますけどね。私が逆の立場でも同じことをしていたでしょう。
そうして私が共感していると、一息ついたロスヴァイセさんが尋ねてくる。
「それで私たちと呂布様についてお話しするということでしたが、皆さんはもう話されたのですか?」
「はい♪ あとはロスヴァイセさんだけですわよ?」
「そうでしたか........................ハァ、わかりました」
自分が最後ということで、少し肩を落としてしまうロスヴァイセさん。事情を知っている私たちは、顔を見合わせて乾いた笑みを浮かべる。
ただ、唯一事情を知らないレイヴェルさんだけはロスヴァイセさんの様子に疑問を抱く。
「あ、あの~~~、どうかされましたか? もしかして、話しにくいことでしたでしょうか?」
「いえ、話しにくいということではないんですが........................その~~~、他の皆さんは凄く素敵なエピソードなのに、私だけが毛色が違っておりまして。
だから一番最後に話すのが少し恥ずかしいんですよね/////////////////」
「? そうなんですの?」
確かにロスヴァイセさんの気持ちも分からないではない。私は命を救われ、アーシアさんは人生を救われた。
タマモさんにいたっては、『初代九尾の妖狐』の力をコントロールするのに身体を張って協力してくれたという。
しかしロスヴァイセさんに関しては............................一応、人生を救われたと言えなくもないのですが、どうにも周りの皆と違って素直に感動できないものがある。
「あら、ワタクシは好きですわよ? ロスヴァイセさんのエピソード♪ さすがは世界最強の御方なのだと納得してしまいますもの♪」
「それって『喜劇』としてですよね! 絶対に感動してるわけじゃないですよね!?」
落ち込むロスヴァイセさんにタマモさんがフォロー?を入れるも効果なし。まぁ、『感動』の要素はあまりありませんわよねぇ............................。
「まぁまぁ、呂布さんもロスヴァイセさんのためを思ってしてくれたことですし。そんなに恥ずかしがっちゃうと呂布さんが可哀想ですよ」
「それはそうなんですけど............................でも私としては、他の方々のようにカッコよく助けてもらいたかったんです!!!」
アーシアさんもフォローに参加するがどうしても納得できない部分というか、複雑な乙女心があるらしい。
「では、ロスヴァイセさんから見て呂布殿はカッコ良くなかったということでしょうか?」
「そんなこと言ってないじゃないですか! 呂布様は素敵な方です!! ただソレとコレとは話が別なんですっ!!!」
どうやらロスヴァイセさんなりに憧れているシチュエーションのようなものがあるらしく、『それ』に照らし合わせるとロスヴァイセさんのエピソードは及第点ではなかったみたいだ。
乙女心も拗らせとこうなってしまうのか。何と言うか............................若干、面倒くさい。他のヴァルキリーの方々もこんな感じなのでしょうか?
このままだとロスヴァイセさんの愚痴を聞くだけになってしまいそうになると思ったのか、レイヴェルさんが本題に入ろうとする。
「と、とりあえずロスヴァイセさんのエピソードを聞かせていただけませんか? このままではさすがに判断がつきませんし........................」
「ハァ............................そうですね。元々そういった話でしたし、仕方ありません」
あれは私が訓練校を卒業して、正式なヴァルキリーになってしばらく経った頃のことです....................................
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「はぁ........................どうしてこうなったのでしょう」
ヴァルハラにある神殿の廊下をトボトボと歩いては、今日何度目か分からない溜息を吐いた。
でも仕方がない、世の中というのはこうまでままならないものだとは思わなかったのだから。
理由は実家の両親から送られてきた手紙。私の遠い親戚から迎え入れた養子が、無事に家系の『紋章』を引き継ぐことが出来たという連絡だった。
私の家系は『精霊との交信』や『降霊術』を得意としていて、家の跡目となる者は代々一族の証である『紋章』を引き継ぐことになっている。
けれど、私には『精霊との交信』や『降霊術』といった家が得意とする『精霊との意志疎通』の類いの才能が無かった。
魔法の才能はあったけれど、私はアースガルズの『攻撃魔法』や『攻撃魔術』の方に才能が傾いていた。
だから、一族の証である『紋章』を引き継ぐことが出来ない私に代わり、親が遠い親戚を養子として迎え入れることになったのだ。
そしてつい先日、その養子が無事『紋章』を引き継ぐことに成功したらしい。
そのため『家督はその子が継ぐから、家のことは心配しなくていい』という連絡を両親からもらった。
無事に一族の後継が決まったことは嬉しいけれど............................どうしても心のモヤが晴れない気持ちとなってしまう。
『紋章』を引き継ぐことが出来なかったからと言って、別に家族から冷遇されたわけじゃない。
むしろ私が攻撃魔術に才能があると知った時は『こういうこともある』と理解を示してくれた。
今だって、私に気を遣って手紙で連絡をよこしてくれるぐらいだ。
だから私は両親のことを嫌ってなどいないし、養子の子を恨んでもいない。しかし、それでも................................やはり、どこか納得しきれていない自分がいる。
「ハァ........................こんなとき、周りの皆なら気晴らしする方法の一つや二つ持っているんでしょうね」
訓練校時代からずっと勉強に明け暮れていた。成績も優秀だったし、教師からの評価も良かった。
でも学校生活を真面目に過ごしてきたせいか、友達と呼べるものが私にはいなかった。
同期のヴァルキリー候補生がヴァルハラの戦士と化しているカッコイイ英霊たちの話で盛り上がったりしている中、優秀なヴァルキリーになるべく一人で私は勉強に励んでいた。
クラスメイトが異性にうつつを抜かしている間だって、脇目も振らずに一歩でも前進するべく努力をしていた。
その甲斐あって、見事ヴァルキリーになることは出来たのだが............................今にして思うと、我ながら何とも色気のない人生を送っていたものである。
私だって『女』なんだから、異性にだって興味はあるし『恋』の一つもしてみたいとも思っている。
ただそういうことは、まず訓練校を卒業し正式なヴァルキリーになってからと思っていたのだが............................
「まったく出会いが無いんですよね~~~~~」
自分の理想と現実の落差に思わず愚痴を溢してしまう。でも仕方がない、『ヴァルキリー』というのは本当に全くと言っていいほど同年代の異性と関わることが無いのだ。
『ヴァルキリー』は英雄の魂を導く者。そのため生前のうちに英雄に従者として付き従うことで、死後の魂を導きやすくする。
その過程で英雄とヴァルキリーが結ばれることも多いのだが............................それも今や昔の話。
ここ数百年の間で『英雄』と呼ばれる人間は現れておらず、ましてや今の人間社会で『英雄』など生まれるはずもない。
今ではヴァルキリーは神々の付き人という名の雑用係に成り下がっている。
英雄との間に子供を授かり、子育てのために寿退社するなど夢のまた夢。まさに夢物語、御伽噺の類だ。
そんな御伽噺に憧れて未だに男の影も見えないヴァルキリーがいったい何人いることやら............................って、私もその一人なのでした。
これが私が青春を棒に振るってまでなりたかったヴァルキリーかと思うと泣けてくる。
一族の魔法も引き継げず、男性とのお付き合いも出来ない。挙句の果てには苦労してなったヴァルキリーの現状がこの有り様。
「私、何やってるんだろう............................いや、『何がしたいんだろう』?」
私はとうとう自分自身が分からなくなってしまい、途方に暮れてしまう。気づけば自分の中には『何もなかった』ことが分かってしまったのだ。
誰よりも真面目に、誰よりも勤勉に、誰よりも頑張ってきたつもりだった........................けれど実際は一族の魔法を受け継ぐことも出来ず、ヴァルキリーとしての本懐も果たすことも出来ない。
自分の人生を輝かせるものが何一つとしてない。自分はなんて空虚な存在だったのか........................そう思うと途端に悲しくなってきて涙が溢れてきた。
その時........................................
パァンッッッッッ!!!!
「!!!!!!!!!」
私がいる廊下に突然、何かが弾けるような音が響いた!
神々がいらっしゃるこの神殿で、どうしてこんな音が!?
音は一度だけじゃなく、何度も聞こえてくる。疑問に思った私は音に導かれるまま歩き出した。
歩いている間も何度も響き渡る音。よほど雑音が混じっていないのか、不思議な音は廊下に心地よく響いていた。
そうして音を聞きながら歩くこと数分、私は神殿中央にある中庭に出た。ここはたまに神々やヴァルキリーが談笑する際に使われる場所でもある。
こんなところで何故こんな音が?
私は疑問と好奇心に駆られながらひっそりと中庭の様子を伺う。そこには........................深紅の髪を靡かせた一人の人間がいた!
パァンッッッッッ!!!!
ビビィィィィィィンッッッッッッ...................!!!!
その人間は構えを取り、一瞬姿が消えると拳を繰り出していた。そして........................一拍遅れて音が響き渡る!
拳打だけじゃない! 蹴りを繰り出す時も同様に音が一拍遅れて響き渡る!!
もしかして....................『音の壁』、【音速】を超えているというの!? あの音は文字通り『音の壁』と呼ばれる圧縮された空気を突き破った際に出ている音!!!
あの人が拳や蹴りを繰り出すたびに生まれる衝撃波は『音速』を超えたことで発生したもの!!!
こんなことが出来る人間がいるなんて....................彼はいったい........................っっっっっっ!!!
私はあの人間が誰なのか疑問に思いつつも、心当たりがあった。深紅の髪、私と同じぐらいの年齢。そして神々をも超える武力........................これらの項目に合致する人物は唯1人っ!!!
あの御方が........................呂布奉先様!?
その方の噂は私だけではなく、ヴァルハラ中のあまねく者の耳に入っていた。
曰く『人間でありながら神々を超えた存在がいる』
曰く『トールをはじめとする武闘派の神を素手で打ち倒した』
曰く『騙し討ちしてきたロキを半殺しにした』
聞くだけで本当に人間なのか疑わしく思うものばかり、でもこれらは紛れもない事実。私が訓練生の時に卒業したヴァルキリーの先輩が語ってくれたことは今でも覚えている。
その圧倒的な強さ故、ヴァルハラの神々はこぞって迎え入れようとしているという話を聞いた。
また、誰があの御方のお付きとなり、ヴァルハラに導くか........................全ヴァルキリー達の間で熾烈極まる争奪戦が水面下で行われているんだとか。
無理もありません。神々すらも超えた人間、間違いなく神代の英雄をも超える存在。そんな御方をヴァルハラはおろか、全神話群の主神が放っておくわけがない!
神々やヴァルキリーたちから求められ、噂でしか知らなかった呂布奉先様!!! そんな御方にお会いできるなんて........................♪♪♪
私は滅多に無い機会に興奮し、さっきまでのどんよりと沈んでいた気持ちがどこかへ行ってしまった。
残念ながら鍛練中のため声を掛けることは出来ませんが、せっかくの幸運を無駄にしてはいけないと思い影でこっそり眺めることにした。
しかし............................................
「................................何か用か?」
「ッッッッッッッッ!?」
急に鍛練に励んでいた呂布様が私の方を向いて呼びかけてきた!!! 一応、物陰に隠れていたつもりだったのですが................................。
「す、すみません! 鍛練のお邪魔をしてしまい........................///////////////////」
「気にするな....................ただの暇潰しだ。それより....................俺に何か用か?」
「い、いいいいいい、いえ、ただ聞き覚えの無い音が響いていたので見に来ただけです////////////////」
「そうか........................響いていたのか」
気づかれているなら隠れても無駄だと思い、素直に姿を見せる私。ただ、いざ呂布様を目の前にしてしまうと緊張してしまい、たどたどしい口調となってしまう。
「............................キミは....................」
「っ、も、もももももも申し遅れました! わ、私はロスヴァイセと申します!! こ、高名なる呂布奉先様に、おおおおおおおお、お会い出来て、光栄ですっ/////////////////////」
「っ............................呂布奉先だ....................よろしくな、ロスヴァイセ」
「ッッッッッッッッ!!! っ~~~~、は、はいっ!
よよよよよ、よろしくお願いいたしますっ///////////////////// 」
キャーキャーーキャーーーー!!! な、名前を呼ばれちゃいました!!! あ、あああああ、あの、呂布奉先様にっ!!!!
あのヴァルハラ中の神々を下し、ヴァルキリーたちの憧れの存在である呂布様からっ!!!
キャーーーーーーーーーーーーー/////////////////////
私はかつてない幸せに興奮し過ぎて顔が真っ赤になっているのを感じる。もう私の頭の中は呂布様のことで頭がいっぱいになっていた。
色鮮やかな深い紅の髪。女性寄りな線の細さだけど、引き締まった体つきはしっかりと男性の逞しさを感じさせる。
子どものような純粋な瞳。だけど、他者を寄せ付けないほどの武力から来る存在感は神にも勝る。
もはや呂布様から私は目を離せなくなってしまっていた............................しかし、呂布様の一言で逆上せあがっていた私は我へと返った。
「............................泣いていたのか?」
「ッッッッ!? ど、どうしてっ!?」
「........................泣いた跡が見える」
「っ~~~~~、し、失礼いたしました! とんだお恥ずかしいところをお見せしてしまい、申し訳ありません/////////////////////」
よ、よりにもよって呂布様にこんなみっともない姿をお見せしてしまうなんて!!! うぅ~~~~、恥ずかしい/////////////////////。
「........................話ぐらいなら................聴いてやれる」
「ッッッッ!? い、いいいいいいえ、り、呂布様にそのようなお手を患わせるなど恐れ多いっ!!!!」
とても呂布様にお話しできる内容じゃないと思い、私は呂布様のお気遣いを断ってしまう。
しかし呂布様は私の顔を両手で包みながら、真剣な表情でジッと私の目を見てくる。
「っっっっっっっっっ!!! り、呂布様!?」
「俺にとっては........................大したことじゃないかもしれない。でも、ロスヴァイセにとっては........................そうじゃないから........................泣いてたんじゃないのか?」
「!!!!!!!!!」
「話してみろ............................力になれるか分からないが........................話すことで........................気が楽になることもある」
「................................は、はいぃぃぃ/////////」
大きな紅色の双眸、私なんかのために真剣に話を聴いてくれる優しさ、魂の底にまで染み渡る声。その不思議な魅力に抗う術など無く、私は自分の悩みを打ち明けてしまった。
一族の刻印を受け継ぐことが出来なかったこと。
それでも必死に自分の長所と呼べるものを伸ばしてきたこと。
つい最近になって遠い親戚が刻印を継承したこと。
自分のやってきたことが何だったのか分からなくなってしまったこと。
自分の理想と現実の違いに打ちひしがれてしまったこと。
今まで明確な目標があって頑張ってきたわけではないこと。
そしてそのせいで、『自分』という存在が如何に空っぽなのかということに気づいてしまったこと。
一度話し出すと止まることなど出来ず、段々と愚痴のようになってしまっていた。けれど呂布様は、それでも私の話を静かに聞いていてくれる。
そうして話が一段落すると、確かに先ほどまでよりも幾分か気が楽になった。そして私が落ち着くのを確認すると呂布様が口を開く。
「............................それで泣いていたのか?」
「はい............................すみません、お恥ずかしいところをお見せしてしまって///////////」
「気にするな....................泣きたい時に泣いとかないと........................笑えなくなるぞ」
「っ、あ、ありがとうございます///////////」
私と呂布様は中庭にあるベンチに座りながら話し込み、せっかく落ち着いてきた私の顔は呂布様の優しさと気遣いでまた真っ赤になっていた。
うぅ~~~、ダメだ、呂布様のお顔を真っすぐ見れない。こんなところ他の神々に見られたら............................って、今のこの状況、もしかしなくても呂布様と逢瀬をしているように見えるのでは!?
だとしたらマズイ! 神々はともかくとして、もしヴァルキリーの皆に知られたら間違いなくタダでは済まない!! 特にブリュンヒルデ姉さまに知られた日には............................!!!
ブリュンヒルデ姉さまは『乙女のキスと純血は、いつか必ず現れる白馬に乗った王子様に捧げるべきもの!!!』と力説するほどの夢見る乙女だ。
確か呂布様は『神馬 グラニ』を神器とした『北辰の駿馬』を持っていると聞く。
そてブリュンヒルデ姉さまはグラニに乗った呂布様を見て、狂信的なまでのファンになってしまったらしい。
そんな白馬じゃないけど、神すらも認めた英雄である呂布様と二人っきりで会っていたなんてことがブリュンヒルデ姉さまの耳に入ったら............................冗談抜きで命が無いっ!!!!
しかも現在ヴァルキリーの中では、誰が呂布様のお付きになるかで互いに牽制し合っている真っ最中!!!
この状況はまさにヴァルキリーの全員を敵に回すようなものだわ!!!!
「ロスヴァイセは............................何か夢中になれることはあるか?」
「え? む、夢中になれること、ですか?」
「ん........................気づいたら....................時間が経つのを忘れていたことでもいい....................何かないか?」
私はすぐにこの場を離れようとするが、呂布様から尋ねられたため離れるわけにはいかなくなってしまった。
せっかく親身になって相談に乗ってくれているのに、自分から話を切り上げるわけないはいきませんからね。
でもどうか、誰にも見られませんように!!!
「えっと............................魔法や魔術の勉強ですかね。既存の術式を改良したり、新しい術式を考えたりしていると時間が経つのを忘れてしまいます」
我ながら何とも色気のない答えである。これも勉強しかやってこなかった弊害なのでしょうか。
もっと気の利いたことが言えたら良かったんですけどね............................。
けれど私の真面目過ぎる答えを聞いても、呂布様は呆れたりなどせず、逆に何かを納得されたご様子だった。
「そうか................................ロスヴァイセ」
「は、はい!」
「この後、予定はあるか?」
「? い、いえ、特にございませんが....................?」
いきなり呂布様にこの後の予定について聞かれた私は、予定が無いことをお伝えすると呂布様がベンチから腰を上げる。
「なら少し俺に............................付き合ってくれ」
「え? え? え? つ、付き合うって、その、りょ、呂布様!?」
いきなりの呂布様の発言に私は取り乱すが、そんなことはお構いなしに呂布様は私の手を握って歩き出す!
こ、こんなところをヴァルキリーの誰かに見られたら............................でも、憧れの呂布様と手を繋いじゃった///////////
このままではいけないと分かっていながらも、こんな機会は二度と無いと思った私はそのまま呂布様に手を引かれるのだった。
真面目なパートばかり書いてたせいか、反動で日常パートの筆が止まりません。
そのためロスヴァイセの回想については、二話に跨がることになりましたwww
それでは皆さん、次回で♪
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