深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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新章突入です。ただ物語の進行上、呂布視点はしばらく出てきません。

そのため、グレモリー・シトリーなどの原作組視点がメインになります。




【冥界動乱編】
第百七十二話


 

 

 

 

それは突然の出来事だった................................。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ、どうしたものか............................」

「まさか、ここまでとはね~~~~」

「ああ、我々はよほど各神話群から恨みを買っていたらしい」

 

サーゼクス・アジュカ・ファルビウムの三人は、会議室にて眉間にシワを作りながら頭を悩ませていた。

 

 

「各神話群から届いた請求書類、内容は日本神話群からのものと大して変わらないところを見ると............................」

 

「間違いなく、示し合わせたものだろうね~~~」

 

「つまり駒王学園での和平会談の時から、各神話群の神々はこの絵を描いていたというわけだ」

 

 

三人の手元にあるのは各神話群から聖書陣営宛に送られてきた賠償請求の書類。その内容はかつて駒王学園にて日本神話群から渡されたものに内容と金額が酷似していた。

 

若手悪魔同士の新人戦が終わったことを見計るかのようなタイミングで、順次送られてきた賠償請求。

いくら何でもタイミングが良すぎる上に文面がほぼ同じとあれば、日本神話群からの請求の件に絡めて示し合わせたことは火を見るよりも明らかである。

 

「これだけの金額だ、全ての支払いに応じていたら聖書陣営................いや、我々『悪魔』は破綻してしまう」

 

「かと言って断るだけの材料が無い................というよりも『封じられてしまった』と言った方が正しいかな~~~~」

 

「ああ、聖書陣営は既に日本神話群への支払いに応じてしまっている。なのに、他の神話群への支払いは出来ないなどと言えるわけがない。無理に支払いを拒否すれば、戦争の引き金になるだろう」

 

駒王学園での会談時に聖書陣営が行ったツケに対して、聖書陣営は日本神話群からの賠償請求に応じた。

止むを得ない事態だったとはいえ一度応じた以上、他の神話群が同様の請求を行ってきたのに断っては不自然極まりない。

 

「支払いに応じれば破綻、断れば戦争。まさに八方塞がりだな....................................」

 

「とりあえず各神話群と交渉して請求の撤廃............は無理だろうから、せめて減額と支払いの引き延ばしをしてもらうしかないね~~~~」

 

「果たして交渉の席に着いてくれるだろうか?」

 

「我々だけでは不可能だろう。だが、ソーナ・シトリーもいれば話ぐらいは聞いてくれるのではないか?」

 

新人戦を全勝しただけではなく、呂布からの修行に耐え抜き成長したソーナたちのことを神々は高く評価していた。

 

これまで問題を起こしてきた政府上層部だけでは交渉の余地など無いだろうが、現状の悪魔の中で唯一神々から認められているソーナであれば可能性はある。

 

「若いソーナを我々の政治に巻き込むのか........................心苦しいな」

 

「それは何度も話し合ったことでしょ~~~~~」

 

「ああ。それに『いざとなったら力を借りたい』と既に話をしていて、彼女も納得済みだ。割り切れ、サーゼクス」

 

自分たちのツケを若者に尻拭いさせるというのは、何とも情けない話ではある。だが他の者には任せられない役目である以上、仕方が無い。

 

サーゼクスもそれが分かっているため、異論を唱えることが出来なかった。

 

「っ、そうだな............................では高天ヶ原に行っているセラフォルーが戻り次第、すぐに話を煮詰めよう」

 

いくら神々に認められているとは言え、若いソーナ一人で交渉をまとめられるわけがない。他勢力との交渉であれば、外交担当のセラフォルーの管轄である。

 

事情を話せば、恐らくセラフォルーが付くことになるだろう。だが肝心のセラフォルーは現在、日本神話群から『賠償請求について話したいことがある』と言われたので高天ヶ原に行っている。

 

セラフォルーがいなければこれ以上話を進められないため、ひとまず別の議題について話し合う.......................そう思った時だった!

 

 

 

ドタンッ!!!!

 

 

「大変です! 冥界の各地で転生悪魔および一般悪魔たちが暴動を起こしています!!」

 

「「「!!!!!!!!!!!」」」

 

 

ノックも無しにいきなり会議室の扉が開く、サーゼクスたちは突如もたらされた報告に驚きを隠せなかった。

 

しかし歴戦の強者でもある魔王たちは慌てるようなことはせず、冷静に状況の把握に努める。

 

「規模は!? 誰が先導している!? 原因は何だ!?」

 

「原因は『現政権への不満・不信』とのこと! 規模については詳細は不明ですが、貴族が管理するほとんどの領地で同時に発生しております!!

そして首謀者は............................ディハウザー・ベリアルですっ!!!」

 

「なっ!?」

「レーティングゲームの王者、『皇帝ベリアル』が!?」

「確かに彼は民衆からの人気は高い、だが何故暴徒を先導し現政権を脅かす必要がある!? 理由は何だ!?」

 

 

下層階級の悪魔たちから絶大な人気を誇り、魔王以上の実力者と噂されるディハウザー・ベリアルであれば、反乱軍の旗頭になるのは納得が出来る。

 

しかし、ディハウザーが現政権を脅かす理由が分からなかった。ディハウザーはレーティングゲームの王者であるとともに、ベリアル家の当主として魔王たちにも友好的に接してきた。

 

今までの付き合いを鑑みても、自分たちと敵対することなど考えられない........................魔王たちは『信じられない』というよりも、『信じたくない』という気持ちの方が大きかった。

 

 

しかし、悪い知らせというのは連続するものである。すぐに別の側近が部屋に入ってきて、更なる急報をもたらす。

 

「ご報告いたします! 大王派の貴族たちが一斉に蜂起!! 中立派の貴族たちも味方し、この建物を包囲しております!!!」

 

「ッ、バカな、大王バアルが動いたと言うのか!? しかもこのタイミングで............................!?」

 

クーデターと暴動、これらが同時に起こることなど普通はありえない。通常クーデターをする側からすれば、民衆には大人しくしておいて欲しいはずだからだ。

 

そのため急を要する事態............................それこそ余程『自分たちにとって都合の悪い重大な事実』が明るみにならなければ、そんなことにはならない。

 

中立派が大王派についたのなら、既に貴族の3分の2が大王派についたということだ。

一人二人ではない、全ての中立派が大王派に味方するぐらいの理由とはいったい何なのか。

 

事態の把握と原因の究明を急ぎたいところだが、この建物は大王派に包囲されかかっている。

気になることは山のようにあるも、非常事態のため魔王たちは建物から退避しようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやおやおや~~~~? 皆さん、どこに行こうとしているのかね~~~♪」

 

「「「ッッッッッッッッッッッッ!?」」」

 

 

転移阻害の結界が張られているため、会議室から出て非常用の通路を走るサーゼクスたちの前に現れたのは................................リゼヴィムであった!!!

 

「何故、貴殿がここに................................!?」

 

「およよ? そんなの決まってんじゃん。ボクちん先代魔王の息子だよ? この建物の構造はキミたちよりも詳しいんだよね~~~♪」

 

この建物は先代魔王たちが建てたもの。前ルシファーの息子であるリゼヴィムならば、この建物についてサーゼクスたちよりも詳しいのは不思議ではない。

 

だが、サーゼクスたちが聞きたいのはそんなことではなかった。

 

「そんなことを聞いているのはない! 何故、テロリストである貴殿がここまで侵入できたのかと「私がお招きしました」っ、き、貴公はっ............................!」

 

リゼヴィムの後ろから妙齢な男性が出てきたことにより、サーゼクスたちは更に驚く。その者は大王派に属する貴族たちのまとめ役の1人であった。

 

その者を見た瞬間にサーゼクスたちは今回のクーデターについて理解、あまりにも信じがたい事実に枯れそうな声をどうにか絞り出す。

 

 

「っ、手を組んだと言うのか、『禍の団』と................................!!!」

 

「政権を奪うためとは言え、よりにもよってテロリストと組むなんてね~~~~」

 

「まったく大した裏切りだ。よもやここまで堕ちるとはな」

 

サーゼクスたちは怒りと侮蔑の目を向けるが、男はどこ吹く風と全く気にも留めない。

 

「これは異なことを。我々は真に悪魔の未来を憂いたまでのこと、そのために協力し今の悪魔社会を変えようとしているのです................................アナタ方がやったようにね♪」

 

「「「........................................」」」

 

 

確かにサーゼクスたちも悪魔の未来を思うが故に、前政権を武力によって制圧し政権を奪取した。そして今、自分たちも同じことをされているのだ。奇しくも歴史は繰り返されるものである。

 

政権を奪うためにクーデターを起こす、それについては理解できた。だが何故このタイミングで、しかも『禍の団』と手を組んでまで行う必要があったのか。サーゼクスたちにはその理由が分からなかった。

 

 

「なるほど................................だが悪魔の未来を憂うのであれば、尚更クーデターなど起こすべきではない。キミたちも知っているだろうが、我々は現在多くの問題に直面している。ここは矛を納めて、互いに協力するべきではないのかね?」

 

「ええ、存じていますとも。各神話群から多額の賠償金を請求されていることも、下層階級の連中が各地で暴動を起こしていることも。

そして................................アナタが神々の警告を無視して、『深紅の武人』と繋がりを持とうとしていることもねっ!!!」

 

「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」

 

 

サーゼクスはあまりの言いように驚愕してしまう、前二つはともかく最後の一つについては全くもって事実無根だからだ。流石のサーゼクスもこればかりは否定せざるを得ない。

 

「なっ、何を言っているのだ!? 私はそんなことなど考えていない!! 単なる言いがかりだ!!!」

 

「果たしてそうでしょうか? 我々がまさか何も知らないとでも思っているのですか?」

 

「っ................................どういう意味かね?」

 

「フフフ、調べはついているのですよ。アナタが秘密裏に『深紅の武人』の力を借りて、アナタの息子にグレモリーの血統能力を覚醒させたことを!」

 

「っっっっっっっっ!!!!」

 

男の言葉にサーゼクスは言葉を失ってしまった。些か湾曲されてはいるものの、呂布にミリキャスのグレモリーの血統能力の覚醒を促してもらったことは事実である。

 

しかし、何故そのことを大王派が知っているのか。このことについては、ミリキャスが成人する際に公表するつもりだった。

 

冥界でそのことを知っているのは自分の両親とグレイフィアのみ。能力の覚醒についてはアザゼルやリアス達に『決して口外しないように』と口止めもしている。

 

 

「何故....................そのことを............................」

 

 

『能力の覚醒』についてはアジュカたち他の魔王ですら知らないことなのだ。誰にも教えていないことを何故大王派の貴族が知っているのか、そのことについて疑問を感じているとリゼヴィムが答える。

 

「それについてはボクちんが教えてあげたんだよ。正確にはロキちんがどこからか仕入れてきた情報を、ボクちんが彼らに流して裏を取ったってわけだね♪」

 

「っ............................................」

 

リゼヴィムの軽口に憤怒の表情を見せるサーゼクス。このような事態を避けるために、公表時期は慎重を喫していたというのに全て水の泡となってしまったのだから。

 

 

「驚きましたよ、アナタの息子が『グレモリー』の力に目覚めたことを知った時はね。

しかも、それが『深紅の武人』の手によるものだとは思いもしませんでした。てっきり、自力で目覚めたものだとばかり思いこんでいましたからね」

 

「................................................」

 

「言うまでもないことですが、これは重大な裏切り行為です。『深紅の武人』に干渉してはならないというのは、我々の共通認識だったはず。

それなのに自分の身内だけ血統能力を覚醒してもらうなど................................大方、『血統能力の覚醒』を手札に悪魔社会を牛耳ろうと考えていたのではありませんか?」

 

「っ、ち、違う! 私は断じてそのようなことは....................................」

 

「今回の神々からの賠償請求にしても、『深紅の武人』を利用したことへの報復行為ではありませんか?

賠償の内容................傷を作ったのは我々にも責任はありますが、傷を広げたのは間違いなくアナタ方現魔王だ」

 

サーゼクスには返す言葉が無かった............................もし今回の各神話群からの急な賠償請求が、呂布を利用したことを神々に知られた結果だとすれば筋が通る。

 

セラフォルーの件については、どうにか許してもらえた。だが、二度目が許されるはずもない。

『呂布からの申し出のため断ることが出来なかった』という建前も、ここまで事態が深刻化してしまえば言い訳にもならない。

 

 

「っ........................すまなかった。確かに貴殿の言う通り、私は魔王として失格だろう。この上は魔王を辞するつもりだ............................しかし、アジュカたちは関係ない! 彼らは何も知らなかったのだ。

だからここは『禍の団』とは手を切り、事態を収拾するために協力してはくれないだろうか? 全てが終わった後、キミたちが望むなら私の首も差し出そう。だからどうか................................このとおりだ」

 

 

ここで魔王派と大王派が敵対してしまえば、悪魔社会はますます混乱してしまう。悪魔たちを守るため、サーゼクスは全ての罪を被るつもりで頭を下げる。

 

「もう手遅れですよ。下層階級の連中が何故暴動を起こしたのかご存知ないのですか?」

 

男はサーゼクスの頼みを断ると懐から何かを取り出した。それは................................『チェスの駒』だった。

 

「っ、そ、それはっ!!!」

 

「どうやら『コレ』の情報が愚民どもに漏れたようです。それだけではなく、『コレ』を使用した者たちの名前まで。

だから、我々とアナタ方が手を組んだところで意味はありません。むしろ民衆の怒りが増すだけですよ」

 

「そ、そんな........................................」

 

「いずれにしても、神々の警告を二度も無視した上に悪魔社会を支配しようと企むアナタ方を悪魔のトップに据えておくわけにはいきません。我々に同行していただきましょうか」

 

自分だけではなく、アジュカたちまでグルだと思われてしまったことに申し訳なさを感じるサーゼクス。こうなっては仕方が無いため、サーゼクスは大王派に身を委ねることにも承諾はする。

 

 

『だが、リゼヴィムだけはこの場で何としても倒さなくてはならない! この者は悪魔の未来など考えてはいない、あるのは屈折した愉悦主義だけだ!!』

 

 

差し違える覚悟でリゼヴィムを始末しようとするサーゼクスだが、『悪意』の塊でしかないリゼヴィムには見抜かれていた。

 

 

「おーーーーっと、妙な考えは持たない方がいいぜ、サーゼクスきゅん。こっちは手下や新造悪魔共を各領地へ既に配置している。少しでも妙なことを企めば、君たちの大事な民たち............................皆殺しにしちゃうよ♪」

 

「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」

 

「知っての通り、ボクちんには『純粋悪魔』を量産する術がある。混じり物だらけの民衆なんて、皆殺しにしても痛くも痒くもないってワケ♪

でも、キミたちにはまだやってもらうことがあるから生かしておく。そしてキミたちが大人しくしていてくれるなら、大事な大事な民たちには手は出さないと約束してあげる。どう? 良い取引だと思わない?」

 

「「「....................................................」」」

 

 

純粋悪魔を生み出せるなら、今いる下層階級の一般悪魔や転生悪魔たちなど不要。恐らくその技術についても大王派が『禍の団』と手を組んだ理由なのだろう。

 

 

呂布のことは別にしても、民衆を守るためにはリゼヴィムの提案を呑むしかないサーゼクスたちは、大王派にその身柄を預けるのであった................................。

 

 

 

 

 

 

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「................................というわけだ」

「.......................................................」

 

 

 

『冥界の一般悪魔や転生悪魔たちが反乱軍を結成し、各領地で暴動を起こしたこと』『大王派と「禍の団」が手を組んだこと』『お兄様たち魔王様が大王派に幽閉されたこと』。

 

驚天動地のような事態の情報をセラフォルー様とライザーから立て続けに聞かされた私は、一気に血の気が引いていった。

 

あまりの衝撃に足元が覚束ず、フラフラと倒れそうなところを朱乃と白音に支えてもらっている状態だ。

 

 

「お兄様やグレイフィアは....................私の家族は、無事なの................................?」

 

 

気になることは多々あるけれど、とりあえず私は家族のことについて尋ねる。するとライザーとセラフォルー様は若干沈んだ表情となるが、平常通りの様子に努めて教えてくれた。

 

 

「うん............................サーゼクスちゃんたちとその眷属たちは幽閉されているけど、今のところは無事だよ」

 

「それに各領地で暴動が起こったと言っても、全ての領地で起こったわけじゃあない。フェニックスやグレモリー、それにシトリーも暴動は起こっていない。

領民たちとの仲も良好で統治が上手くいっている所は自衛能力もしっかりしているしな。だから、お前やソーナの家族も無事だ。

もっとも、大王派や『禍の団』が遠巻きに監視を付けている状況ではあるがな................................」

 

「そう........................アナタの家族は、大丈夫なの?」

 

「ああ。サーゼクス様が隙を見て、たまたま外に出ていたグレイフィア様に連絡を取ったらしい。

状況を知ったグレイフィア様が、『レイヴェルの家族であるアナタ方は絶対に捕まってはいけない』と言ってな。俺たちを人間界へ、領民たちをグレモリー領へ逃がしてくれたんだ。

あと少しでも判断が遅かったら、俺たちも身柄を確保されていただろう」

 

「私も、お仕事で高天ヶ原に行っていたところにグレイフィアちゃんから連絡があったんだ。『私だけでも逃れてくれていれば、まだ希望はある』って............................」

 

「その通りだ。今、最も避けるべきことは他勢力からの武力介入だ。レイヴェルの家族が捕えられたなんて、間違っても呂布の耳には入れられない。

それに魔王であり外交担当でもあるセラフォルーが捕まっていなければ、他勢力の抑えや天使・堕天使との協力体制も取りやすい。流石はグレイフィア、見事な判断だ」

 

 

アザゼルの言う通り、呂布様はレイヴェルのことをとても大事にしている。そのレイヴェルの家族がテロリストに捕まったと知ったら、間違いなく助けに行こうとするはずだ。

 

でも、この混迷を極めている状況で呂布様が冥界に行けば、それだけで大規模な戦闘になることは間違いない。そうなれば、クーデターや暴動に参加していない無関係な者たちにまで被害が及んでしまう。

 

そのような他勢力の介入を恐れたからこそ、お兄様はセラフォルー様やフェニックス家の方々を逃がし、自分たちは大王派に身を委ねたのだろう。

 

今、呂布様や他勢力に動かれるのはマズイ。核弾頭に核弾頭をぶつけるようなものだわ、どれだけの被害が出るか想像もつかない。

 

 

「それにしても、クーデターはまだ分かる。各神話群からの多額の賠償請求を理由に大王派が魔王たちの不信任を決議、現政権を奪取しようとしたってところだろう。だが........................................」

 

「『何故、各領地の領民が反乱を起こしたのか』ですね」

 

アザゼルやソーナの言うように、暴動が起こっている最中にクーデターが起こることはありえない。

普通クーデターを起こすなら、暴動を鎮めてからのはず。でないと、クーデターと暴動の抑止という二正面作戦を展開することとなり、クーデターの成功率が下がってしまう。

 

それなのに暴動に合わせてクーデターを起こすなんて............................あの大王派がここまで性急に動いた理由とはいったい何なの?

 

皆がここまで事態が混乱してしまっている理由について考えていると、セラフォルー様は顔を伏せてしまいライザーが行き場の無い怒りを滲ませながら口を開いた。

 

 

「その原因は............................『コレ』だ」

 

 

そう言うとライザーは懐から何かを取り出した。コレは............................『チェスの駒』? しかもコレって................................

 

「コレは、『王』の駒ですね。ライザー殿、この駒がどうかしたのですか?」

 

「コレはサーゼクス様からグレイフィア様経由で渡された物でな。お前たちの言う通り、コイツは『王』の駒だ................................『悪魔の駒』のな」

 

 

「「「「「!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

ライザーから聞かされた事実に私たちは一斉に驚愕してしまう! 『悪魔の駒』の、『王』の駒!? まさか、実在していただなんて................................!

 

『悪魔の駒』の『王』はシステムを管理している『石碑』に登録するようになっている。だから、『王』の駒は存在しないとばかり思っていた。

 

 

「コレが、『王』の駒........................本当にあったのですね。けれど、どうしてコレが暴動の原因なのですか?」

 

ソーナは『王の駒』を空想上の生き物でも見るような目を向けるが、それでもコレがどう暴動に関わっているか尋ねる。

 

そうしてライザーから聞かされた真実は、レーティングゲームの『闇』とも言えるものであり............................私たちの価値観を根底から覆すものだった!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コイツには............................使った者の能力を10倍にも100倍にも向上させる機能があるらしい。それこそ魔王様以上の力すらもな」

 

「「「「ッッッッッッッッッッッッ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10倍!? 100倍!? 何なのよ、その上昇幅は! まるで『赤龍帝の籠手』みたいじゃない!! いや、量産が出来るとしたら『赤龍帝の籠手』よりも破格だわ!!!

 

 

「そ、そんな............................本当にそんなことが出来るんですか!?」

 

「本当のことだよ、ソーナちゃん。コレはアジュカちゃんが『悪魔の駒』を作る過程で生まれたものでね。

その強力さから使用を禁止。今では政府の上層部のごく一部の者しか、その存在を知らないんだ」

 

ソーナが『信じられない』といった様相で尋ねるとセラフォルー様が悲しげな顔で答える。

 

今まで血の滲むような『努力』で強くなってきたソーナたちから見れば、この『王の駒』は自分たちの努力を嘲笑うかのような代物に違いない。

 

セラフォルー様もそれが分かっているからこそ、こんなに悲しそうな................申し訳ない気持ちが出てしまっているのだろう。

 

 

「確かに、とんでもないドーピングアイテムだ。アジュカのヤツめ、なんてものを作りやがったんだ............................!」

 

「うん。アジュカちゃんもそのことについて後悔していて、作って直ぐに機能を停止させたらしいの。でも政治の都合上、いくつかの駒はゲームの運営を行う上層部..............大王派に持ってかれてしまったみたい」

 

「いくつかの駒? その駒は今どうなってんだ?」

 

「................................その駒は大王派が自分達の派閥の者に使ってしまって、なかなか回収できていないって言ってた。ちなみに、コレが使用者のリスト」

 

圧倒的な強さを持つ魔王様方でも、政治では大王派の貴族たちと一進一退を余儀なくされていると聞いている。たぶん、やむに止まれぬ事情があったのだろう。

 

アザゼルもそれが分かっているからか、アジュカ様が『王の駒』を手放したことについては何も言わなかった。

 

しかしセラフォルー様から渡されたリストを見ると、みるみる驚きと怒りが織り交ざった表情となっていく。

 

 

「っ................................ちっ、そういうことかよ。こんなのが公表されたら、民衆が暴動を起こすのも無理はねえ................................!」

 

「アザゼル、いったい何が書かれていたの?」

 

私が尋ねるとアザゼルはそのまま私とソーナへリストを見せてきた。私たちはそのリストを見た瞬間........................アザゼルのように驚きと怒りが混ざった感情に支配された!!!

 

 

 

「っ、こ、これは!!! こんなことがっ............................!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、全部、レーティングゲームのトップランカーじゃない!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「っっっっっっっっ!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私とソーナの言葉に眷属たちも驚愕してしまう。このリストに書かれている名前は10名ほど。だが全員、レーティングゲームのランキングで30位以内に入っている者たちだ!!!

 

レーティングゲームのランキングは20位からは別次元とされ、トップ10ともなれば『英雄』と謳われている。

そのため長きに渡り順位が変動することは無く、それが私たちの『常識』だった。

 

けれどこのリストを見て、今までの『常識』が覆ってしまった........................しかもトップ10に至ってはほとんどの名前がリストに載っている。

入っていないのは、それこそ『皇帝 ディハウザー・ベリアル』と『リュディガー・ローゼンクロイツ』などのごく僅か。その他は全員リストに名前が載っている............................!!!

 

 

「つまりレーティングゲームのトップランカーたちは、全員『王の駒』による不正を行っていたということですね................................!!!!!」

 

「ああ。しかも別の資料によれば、『王の駒』を使用していない者を除き、『不動』と言われていた上位陣の試合は全て賄賂や八百長などが行われ、試合結果も操作されていたらしい................................!」

 

トップランカーたちによる不正、八百長などによる試合結果の操作。謂わば、私たちが信じていた何もかもが偽りの『茶番』でしかなかったということだ。

 

信じられないような真実に普段は冷静沈着なソーナですら怒りを露わにしている。周りの皆も怒り心頭だ、かく言う私だって怒りのあまり反吐が出そうになる!!!

 

 

普段から『才能』だの『一族としての血統』だのと言って『努力』を否定し、転生悪魔や一般悪魔たちをバカにしていた貴族たち。

 

だが蓋を開ければ、自分たちがやってきたことはコレだ! 『王の駒』によるドーピングで『努力』はおろか、持って生まれた『才能』すら否定する有り様................................ふざけるんじゃないわよ! 貴族としての誇りすら捨て去った不正、こんなのを知れば民衆の怒りが頂点に達するのは当然じゃない!!!

 

 

「くそったれがっ!!!」

「ふざけんなよっ! あのジジイ共............................絶対許さねえ!!!」

 

「はぁ!? あの老害ども、人のことを散々バカにしていたくせに自分たちは堂々と不正? ふざけんな!!!」

「私たちが、どんな想いでここまで............................!!!」

「許さない! 絶対にブッ飛ばしてやる!!!」

 

 

大王派の貴族、政府上層部の不正行為にイッセーたちは激しい怒りを抱いている。特にシトリーの皆は怒りと同じくらいに悔しさを感じていた。

 

自分たちの夢、『誰でも通うことが出来るレーティングゲームの学校の設立』。

 

そのレーティングゲームにおいて不正や八百長が行われたことにより、自分たちの夢を汚されたんだ。皆の怒りは尤もだろう。

 

 

「どうして....................どうして、こんなことが................................!!!!」

 

「レーティングゲームは一大興行。試合が行われる度に宣伝や広告、グッズ販売など巨額の金が動く。トップランカー同士の戦いなら尚更だ。その利権を独占しようとしたんだろうよ....................................」

 

「っ、だからって........................っ~~~~~~!!!!!」

 

「ソーナちゃん............................」

 

 

確かにレーティングゲームは巨額の金が動くビッグイベント。そのトップランカー同士の試合を操作し、独占することが出来れば、計り知れないほどの利益を我が物とすることが出来る。

 

ライザーから告げられた現実に、ソーナは声を出せないほどの怒りと悲しみ................................そして失望から涙を流していた。

 

自分の夢を叶えるためにあれだけ努力して、結果まで出してきた。それなのに政府上層部の汚い我欲によって踏みにじられてしまったのだ。

 

セラフォルー様もソーナに対して申し訳なさそうな表情を浮かべている。自分の力が足りないばかりに政府上層部の不正を許し、愛する妹の夢を汚してしまった。

セラフォルー様や魔王様方が悪いとは誰も思っていないけれど、それでも責任を感じてしまっているのだろう。

 

 

 

「なるほどな............................大王派が『禍の団』と組んでまで、政権を強奪しようとした本当の理由はコレか。

サーゼクスたちを幽閉したのは、自分たちがやってきたことの罪を全て擦り付けるため。

サーゼクスたちを暴徒たちの前で処刑することで、暴動を鎮めるつもりなんだろう」

 

「っ、そんな....................何で魔王様たちが上層部の罪を被らないといけないんですか!!!」

 

「連中、どこまで汚えんだ!!!!」

 

お兄様たちが大王派連中のためにの身代わりにされようとしている。その事実にイッセーたちの怒りは増すばかり、私だって今にも怒りが爆発しそうだ!

 

お兄様は悪魔社会を少しでも良くしようと懸命に働いていた。大王派にだって、何とか和解の意思を示そうとしていた............................けれど、そんなお兄様の気持ちは大王派には全く理解されなかった。

 

いや、そればかりかこうして自分たちの罪を擦り付けるためのスケープゴートにされようとしている! そう考えると怒りで頭がどうにかなりそうだった!!

 

 

「でも魔王様たちは何で抵抗しないんだろう? あんなに強いなら大王派の貴族たちだって難なく倒せますよね?」

 

「だからこそ、大王派は『禍の団』と組んだんだろう。純粋悪魔を新造できる『禍の団』からすれば、今の転生悪魔や一般悪魔は皆殺しにしても全く問題ないからな。大方、『民衆を殺されたくなければ言うことを聞け』とでも言われてるんだろう」

 

「クッソッ! どこまでも卑劣な連中だ!!!」

 

魔王様方が抗わず幽閉されたことについて、アザゼルが自分なりの見識を述べるが恐らくその通りだろう。

 

民衆を人質にするために『禍の団』と手を組み、自分たちの罪を誤魔化すためにお兄様たちを殺す。考えれば考えるほど、その悪辣さには吐き気がする思いだわ!!!

 

 

「暴動を率いているのは、ディハウザー・ベリアル様ですよね。リストに名前が載っていないってことは、あの人は『王の駒』を使わなかったってことですか?」

 

「うん。ディハウザーくんは正真正銘、自分の力でレーティングゲームの王者になったんだよ」

 

「そうですか........................それなら暴動の首謀者になってもおかしくないですね」

 

確かに。自分は努力でレーティングゲームのチャンピオンになったのに、周りが全員不正を働いている状況であれば、怒りと失望を抱くのは当然だ。

 

そしてソレを許した現政権に怒りの矛先を向けるのも理解出来てしまう。

 

 

 

「っ~~~~~、こうなったら、俺たちが冥界に行ってサーゼクス様たちを助け出しましょう!

そして、『禍の団』もろとも不正を働いた連中を全員ブッ潰してやる!!!」

 

「よく言った匙! 俺たちも協力するぜ!! ねぇ、部長!!!」

 

ソーナの泣いている姿を見て我慢が出来なくなった匙くんは冥界に行こうと提案する。シトリーの皆も賛同し、イッセーもやる気を出しながら私に尋ねてくる。

 

「................................................」

 

「ぶ、部長............................?」

 

私が無言でいるとイッセーも不安気になってしまった....................心情的には私もイッセーたちと同じだ、本音を言えば今すぐにでもお兄様たちを助けに行きたい!

 

でも................................悔し涙を流しているソーナを見て、私は却って冷静になれた。

このような状況だからこそ、心を鎮めて自分がやるべきことや出来ることを見極めなくてはならない。

 

私が今するべきことは、果たして『禍の団』を倒すことなのだろうか................................私にはどうしても、そうは思えなかった。

 

 

 

「............................成長したな、リアス。昔のお前ならイッセーたちのように、その場の感情に任せてこのまま冥界に向かっていたところだった」

 

「アザゼル............................」

 

「ふん、あのお転婆でワガママなリアスが冷静に事態を見極めようとしているとはな............................良い女になったじゃないか」

 

「ライザー............................」

 

自分がやるべきことを考えているとアザゼルとライザーに褒められた............................褒められた理由については素直にお礼を言えないけれど、それでも『私自身』を評価してくれたことは嬉しく思う。

 

私がそんな複雑な感情を抱いていると、ライザーが前に出てくる。その顔は以前見た女たらしなライザーとは全く別人だった。

 

 

「リアス。グレイフィア様............いや、正確にはグレイフィア様に言伝を預けたサーゼクス様からの命令だ」

 

「っ、お兄様から!?」

 

「ああ、そのまま伝えるぞ。『魔王サーゼクス・ルシファーの名において命ずる』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『リアス・グレモリー並びにその眷属たちは、決して冥界に戻って来てはならない』」

 

「「「「!!!!!!!!!!!」」」」

 

 

 

 

お兄様の思いがけない命令に、先ほどまで怒りに沸いていた私たちは一気に水を浴びせられたかのように静まり返った............................................。

 

 

 

 






今章は『神々の警告』を無視して、割りと好き勝手やってきた悪魔陣営へツケを払わせるような展開となります。

そのため、所々でエグい描写も入るかもしれませんが、ご容赦願います。

それでは皆さん、次回で♪
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