深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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今章を書いていると『エグいところは物凄くエグく書きたい!』って思いと、『読んでいて後味が悪くなるから止めておこう』という二律背反な気持ちが鬩ぎ合っております。

世の中の小説家さんもこんな思いをしているんでしょうか? そう考えると太宰治の『人間失格』はまさに「俺は人間を止めるぞ、ジョジョーーーーー!!!」って感じですよね。

私はどうにも非情になりきれないんですよね~~~。




第百七十三話

 

 

 

 

「そ、そんな........................どうして俺たちが冥界に行っちゃダメなんですかっ!?」

 

 

ライザーさんから聞かされたサーゼクス様の命令に、俺はつい声を荒げてしまう。

 

俺たちはかなり強くなった。それこそ、『禍の団』やロキとだって戦えるぐらいに! それにもし、リゼヴィムの野郎が出てきたとしても『今の俺』なら十分対抗できる!!

 

サーゼクス様たちを助けられるのは俺たちだけなんだ、それなのに何で............................!

 

俺がライザーさんに尋ねると、サーゼクス様の命令の意図を読み取ろうと考え込んでいた部長が静かに口を開いた。

 

 

「理由は............................朱乃ね」

 

「え、朱乃さん? 朱乃さんがどうかしたんですか?」

 

「そうだ、リアス。だから、お前たちは絶対に動いてはならないんだ」

 

いきなり朱乃さんの名前が出たことを不思議に思い部長に尋ねると、ライザーさんも分かっているみたいに頷く。

 

どうして朱乃さんが俺たちが動いたらダメな理由になるんだ? 俺が疑問に思っているとアザゼル先生が皆に分かるように説明してくれる。

 

 

「お前たちも知っての通り、朱乃は呂布の妻だ。そしてお前たちは朱乃の仲間であり、リアスは朱乃の主。

お前たちに何かあれば、朱乃は当然悲しむ................................それを知った呂布が黙っていると思うか?」

 

「「「!!!!!!!!」」」

 

「....................................................」

 

「呂布は身近な者の悲しみや痛みを自分のものとして考えられるヤツだ。朱乃が悲しむような事態を放っておくはずがない。つまり、お前たちは既に呂布の庇護対象に入っちまってるのさ」

 

アザゼル先生の言う通り、朱乃さんが悲しむようなことをあの呂布さんが見過ごすことは無いだろう。

 

俺たちが冥界に行って、もしピンチにでもなれば間違いなく呂布さんが駆けつけてくるはず........................あの人はそういう人だ。

朱乃さんが無言で顔を伏せてしまったのは、自分でもそのことが分かっているからだろう。

 

呂布さんが味方になってくれるなら、これほど心強いことはない。だが、アザゼル先生はそんな単純な事態ではないことを説明してくれる。

 

 

「今の悪魔陣営は『反乱軍』『大王派&禍の団』『魔王派』の三勢力が互いに睨みを聞かせている緊張状態............................言ってみれば、火薬がギチギチに詰まった爆弾みたいなもんだ」

 

「............................ちょっとの衝撃で大爆発が起こるということですか?」

 

「いいえ。逆ですわ、木場祐斗さん」

 

木場が険しい表情でアザゼル先生に尋ねると、ライザーさんの『女王』であるユーベルーナさんが木場の考えを否定する。

 

 

「爆破のエキスパートとして言わせてもらいますが、『爆弾』というのは強力になればなるほど起爆させるのが難しくなるのです。

それこそ、ちょっとやそっとの衝撃程度では起爆はしません。そのためグレモリーの皆さんが冥界に行くだけなら、大事にはならないでしょう。しかし................................」

 

「お前たちの危機を知れば呂布が動く。呂布が動けば緊張状態という名の爆弾は一気に大爆発し、その影響は悪魔陣営だけではなく、他勢力の支配領域まで及ぶかもしれない。そうなれば、冥界全土を巻き込んだ大戦争になっちまう」

 

「それに、もし朱乃ちゃんが大王派に捕まりでもすれば、敵は呂布くんをある程度コントロール出来てしまう。そんなことになれば、勢力間のパワーバランスは崩壊。

その影響は冥界だけに留まらず、各神話群の支配領域全域へと広がり....................................最終的には人間界にまで影響が及ぶことになっちゃうわ」

 

「そうなれば、文字通り............................『世界の破滅』だ」

 

 

アザゼル先生、セラフォルー様、ライザーさんが俺たちが冥界に行ったら........................いや、正確には『呂布さんが動いた場合の影響力』について教えてくれた。

 

 

『世界の破滅』。世界が滅ぶだなんて、正直まったく想像もつかない。だけど、テロリストたちによって呂布さんの力が悪用されれば、聖書陣営だけではなく各神話群まで滅びかねないってのは分かる。

 

もちろん、呂布さんは自らそんなことはしないだろう。でも、朱乃さんが人質に取られた状態ならどうなるか分からない。

もしかしたら、一勢力ぐらいはこの世から消えるんじゃないだろうか?

 

でもそうなったら、三人の言う通り人間界も含め世界中を巻き込んでの戦争となり、世界はメチャクチャになっちまう。

 

 

「っ、その最悪の事態を避けるために、お兄様は自ら身柄を拘束され...............................私たちに人間界へ留まるよう命令された」

 

「そういうことだ。京都の一件以降、日本神話群の警戒が厳しくなっている。さすがの大王派や『禍の団』も、この状況下で朱乃を捉えるために日本へ来ることは出来ないはずだ」

 

俺たちや朱乃さんが日本にいる間は、ひとまず安心だってことか。でも、そのためにサーゼクス様たちを見捨てなきゃいけないって............................そんなのねえだろっ!!!!

 

 

「俺は『神の子を見張る者』に戻る。ミカエルたち熾天使連中にも連絡を取って、サーゼクスたちを助け出す手段を講じねえとな。このままだと同盟自体が危うくなる」

 

「私は日本の神々を通して、各神話群にはこの事態を静観してもらうよう交渉して来るよ。この状況が続くと『冥界の治安維持』という名目で武力介入されかねないからね」

 

アザゼル先生は『禍の団』から魔王様たちを助け出すために『神の子を見張る者』へ。セラフォルー様は他勢力の介入を阻止するために高天ヶ原へと向かっていった。

 

 

 

部屋に残される俺たちグレモリーとシトリー、そしてフェニックスの三グループ。しかし様々な勢力の思惑が混濁するこの状況で、今の俺たちが出来ることなど何一つとして無かった..................................。

 

 

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

アザゼルとセラフォルー様が出ていった後、今は出来ることが無いということで解散。下手に動くことが出来ない私たちは待機を余儀なくされた。

 

自室へと戻った私はベッドで横になり、一人天井を見上げていた。

 

『どうしてこんなことになってしまったのか』『私が目指していた夢とは何だったのか』『家族は無事なのか』、そんな色んな考えが頭の中をグルグルと駆け回っている。

 

 

 

また私は............................何も出来ないでいる。

 

 

 

己の未熟さと無力さを思い知った私は必死で強くなろうとした。眷属の皆と一緒に今まで厳しい修行をこなしてきた。

 

呂布様の助けもあり、私たちグレモリーは以前とは比べ物にならないほど強くなった。でも................................結局、大事な人を助けることも出来ず、これまでのように動けないでいる。

 

 

いや、動くことが『許されない』んだ。私たちが下手に動くと、呂布様まで動いてしまう。

 

いつだって私たちを助けてくださった呂布様。もし私たちが冥界に行って、ピンチに陥ったり朱乃が敵の手に落ちたりすれば逆に呂布様に迷惑が掛かってしまう。

 

それだけは出来ない! 今まで散々助けられておきながら、この期に及んで呂布様に迷惑を掛けるなど....................ましてや、『ソレ』がきっかけで世界が滅んでしまうなど断じて出来ないっ!! そこまで愚かな真似をするぐらいなら、潔く死んだ方がマシだわ!!!

 

けど........................そのために家族の危機を見捨てなきゃいけないだなんて................................。

 

 

 

 

コンコン

 

 

『家族』と『世界』。秤にかけられないモノをかけざるを得ない状況に悩んでいると、突然部屋のドアがノックされた。

 

 

 

「ソーナ、朱乃!?」

 

「休んでいたところごめんなさい。話があるの」

 

「そこでバッタリ会いまして........................すみません、リアス。今、少しよろしいですか?」

 

ドアを開けると、そこに立っていたのはソーナと朱乃だった。周りには誰もいない、どうやら二人だけで来たようだ。

 

ソーナと朱乃を部屋に入れた私は、二人を椅子に座らせてお茶を煎れることにする。お茶は朱乃が煎れようとしてくれたけど、何かやっていた方が気が紛れるので私がやらせてもらった。

 

 

「はい、ローズヒップティー。少しは気分が落ち着くと思うわ」

 

「ありがとう、リアス」

「............................ありがとうございます、リアス。いただきます」

 

三人でお茶を飲み、部屋はシーーーンと静まり返る。私もショックだったけど、ソーナはたぶん私以上に動揺しているはず。自分が信じていたものが偽りでしかなかったばかりか、自分の夢を汚されたのだから。

 

 

私の夢はレーティングゲームでタイトルを取ること。けど、レーティングゲームの王者であるディハウザー・ベリアルは不正を行っていなかったということであれば、まだ夢に向かって邁進できる。

 

しかし、ソーナは違う。ソーナは下層階級の悪魔たちの可能性を広げるために『レーティングゲーム』という社会システムそのものに希望を見出していた。

 

レーティングゲームで結果を出せば、『血統主義』である悪魔社会でも活躍することが出来る。そう信じていたからこそ、ソーナや眷属の皆は呂布様からの厳しい修行にも耐え抜き、見事に結果を出した。

 

でもそのレーティングゲームによる栄光は全て偽りでしかなかった............................自分の夢を最悪の形で踏みにじられたソーナの心情を慮ると、何て声を掛けてあげればいいのか分からない。

 

ソーナの目の周りが赤くなっているところを見ると、あの後部屋で泣いていたみたいね........................情けない話だわ。自分の大事な幼馴染が苦しんでいるのに、何もできないどころか声すら掛けることが出来ないなんて....................................。

 

私が自分の無力さを痛感していると........................ソーナが静かに口を開いた。

 

 

 

「リアス、私は............................冥界に行こうと思います」

 

「「ッッッッッッッッッッッッ!?」」

 

 

ソーナからの突然の告白に驚く私と朱乃! あの慎重で冷静なソーナからの提案とはとても思えなかった。

 

「ち、ちょっとソーナ、何を考えてるの!? 今の冥界の情勢についてはアナタだって分かっているでしょう!? いったいどうしてそんな............................!」

 

「ええ、だからこそ私が行かなければならないのです。もちろん大王派や『禍の団』に対して何か出来るとは思いません。

ですが、反乱軍を鎮めることなら私にも出来るはず............................いいえ、『私にしか』出来ないことなのです」

 

「確かに、転生悪魔や一般悪魔にとってソーナ会長はディハウザー・ベリアル様と並ぶくらいの支持を集めています。そのソーナ会長の言葉であれば、反乱軍も話を聞いてくれる可能性がありますわ」

 

っ、朱乃の言う通り、新人戦に全勝したソーナは下層階級の悪魔たちにとって希望の象徴。ある意味ではディハウザー・ベリアルよりもカリスマ的存在と言える。そのソーナの声であれば、反乱軍を鎮められるかもしれない。

 

 

「反乱軍を鎮めることが出来れば、大王派もすぐには魔王様方を殺す必要が無くなります。そこで私が大王派に交渉を持ち掛ければ、魔王様方を助け出すチャンスが生まれます」

 

「っ、確かにそうかもしれないけど............................でも、アナタはどうするの!? 民衆からの支持を集め、暴動まで鎮めたアナタのことを大王派が放っておくわけがないわ! 必ずアナタのことを取り込もうとするはずよ!!!」

 

「ええ。もしかしたら大王派が私を祭り上げて、自分たちの都合の良い『操り人形』にするかもしれません........................ですが、こうするより他に方法が無いのです!! でないと多くの悪魔が殺され、冥界が血に染まってしまいます!!!」

 

「っっっっっっっ!!!!」

 

 

っ............................ソーナの言う通り、このままでは悪魔の領地だけではなく冥界中を巻き込んでの戦争となってしまう。今はまだ『悪魔』の中だけで話が収まっているけれど、それも時間の問題。

 

アザゼルが魔王様方の解放のために動いてくれているけれど、それだってどれだけの時間が掛かるか分からない。

セラフォルー様が各神話群からの介入を抑えていてくれたとしても、それほど長くは保たないだろう。

 

事態というのは非常時に限って、刻一刻と変わっていくもの。今はまだ緊張状態にあるけど、それもいつ爆発するか見当もつかない。

 

ソーナが『自身の価値』を理解し、自ら動いて暴動だけでも止めようとするのは何も間違ってなどいない。

 

呂布様からは『軽々しく命を捨てるようなことはするな』と言われているけれど............................誰にも頼ることが出来ないこの状況では、ソーナは自分の命を懸けるしかないのだ!

 

 

 

でも、そんな状況だからこそ............................せめて私だけでもソーナの力になりたい! この味方が誰もいない状況の中でも、私だけはソーナの味方でありたい!!

 

だって、この騒動でお兄様やグレイフィアにミリキャス。お父様やお母様にもしものことがあれば............................私にとって心を許せる人物はソーナだけになってしまう!!!

 

そのソーナまで失ってしまえば、私はもう............................けど、私は動くわけにはいかない。いったい、どうすれば...................................。

 

 

 

私は自分がどうするべきなのか分からなくなってしまった。

 

お兄様の命令通りに人間界へ留まったとしても、何もせずジッとしていて、私の家族や親友にもしものことがあれば................................私はきっと、何もしなかったことを激しく後悔する。

 

でも私がソーナと一緒に行くことで、冥界全土を巻き込む戦争に発展してしまったら............................そう考えると恐くて何も言えないし、何も出来ない。

 

そうして涙を流しながらも覚悟を決めたソーナを前に、私がどうすればいいのか分からず苦しんでいると............................朱乃が優しく私の手に自分の手を添える。

 

 

 

「リアス............................アナタは自分がやりたいことをやりなさい」

 

「え....................................?」

 

 

 

不意に言われた朱乃の言葉に私は頭が真っ白になってしまう。そんな私に朱乃は優しく微笑みかけてくれた。

 

「ソーナ会長と一緒に行きたいのでしょう? 私のことは心配しないで。私にも考えがあるから............................だから、アナタは自分のやりたいことをしていいのよ」

 

「でも! そうやって私は失敗してきて........................だから、これ以上は................................!」

 

そう、コカビエルの時もロキの襲来の時も........................私は考えなしに自分のやりたいようにやって、失敗してきた。その結果、自分では責任が取れず周りの人たちに助けてもらってきた。

 

だから今、私が自分のやりたいようにやってしまえば、また同じことを繰り返してしまう。しかも今度の失敗は世界中を巻き込む事態になりかねない。

 

私はこれまでの失敗を思い返す........................しかし朱乃は、私の心情を見抜いたかのように私の手を握ってくれる。

 

 

「そうね........................でもアナタがこれまで失敗してきたのは、自分の力を『過信』して全てを自分でやろうとしたからでしょう?

今のアナタはかつてのアナタとは違うわ。その証拠に、こうして事態の重さを認識し、『私』と『公』の間で悩み苦しんでいる」

 

「ッッッッッッッッッッッッ!!!」

 

「だから同じような失敗はしないはず............................『自信』を持って、リアス。アナタはもう『半人前のお嬢様』なんかじゃない、私たちにとって立派な『王』よ」

 

「っ~~~~~~~~~!!!!」

 

 

朱乃の言葉に私は感極まって涙を流す........................ずっと、ずっと後悔していた。自分がやってきた失敗で周りに迷惑を掛けてしまったことが....................あともう少しで取り返しのつかない事態に発展させてしまったことを。

 

『また同じ失敗をしてしまったら』、そう考えるといつも恐くて堪らなかった。でも、主としてそんな弱気なところは見せてはならないと思い、誰にも言えなかった。

 

けど、朱乃はそんな私の心情を見抜いた上で『大丈夫だ』と言ってくれたのだ。今の『私』はかつて失敗ばかりしていた『私』とは違うのだと。

 

今の『リアス』なら大丈夫だと............................朱乃の言葉で私は迷いを吹っ切った!!!

 

 

 

「................................ありがとう、朱乃。アナタを私の『女王』に迎え入れたのは、間違いなんかじゃなかったわ」

 

「ふふふ、それは私の方ですわ。私がこうして奉先様の妻になれたのも、アナタが私を眷属にしてくれたから。だから、今度は私がアナタの助けになる番よ」

 

私と朱乃はこれまでの自分たちの決断が正しかったのだと思い、お互いに笑い合った。そして私はソーナに自分の意思と覚悟を伝える。

 

「ソーナ、私もアナタと一緒に冥界に行くわ。冥界では何が起こるか分からない、なら少しでも戦力は必要なはずよ」

 

「............................よろしいのですか? サーゼクス様の命令を無視することになるのですよ」

 

「逆にこの状況で何もしなければ、私はこの先ずっと後悔して生きることになるわ。そんな人生ゴメンよ、私はそんなにお利口じゃないんだから」

 

「ハァ、まったく........................成長しても、一度言い出したら聞かないところは変わらないのですね。

でも............................それが『リアス』なのでしょう。実にアナタらしいです。フフ♪」

 

『私らしい』、か...............................そうね、これが私。私は『情愛の悪魔 リアス・グレモリー』。家族を見捨て、友を見捨てて呑気に明日を生きられるような薄情者ではないわ!!!

 

そうと決まれば、すぐにでも出発しないと........................けど、その前に朱乃に確認することがあるわ。

 

 

 

「朱乃、アナタさっき『考えがある』って言ってたわよね。その考えを聞いても良いかしら?」

 

「もちろんよ。それにこうなった以上、ソーナ会長にも聞いて欲しいわ。たぶん、反乱軍..............いえ、ディハウザー・ベリアル様からも聞かれるでしょうから」

 

「ディハウザー様から、ですか?」

 

「ええ。私はリアス達とは一緒に行かず................................セラフォルー様を追って、高天ヶ原に行きます」

 

「「!!!!!!!!!!!!!」」

 

 

朱乃の話を聞いて驚く私とソーナ! 高天ヶ原って、日本神話群の本拠地じゃない!! 高天ヶ原に行ってどうするつもり!?

 

「っ、リアスと別行動を取るのは賛成です。だけど、どうして高天ヶ原に行くのですか?」

 

「理由は三つ。一つはセラフォルー様のお手伝いをするため。流石にセラフォルー様お一人で神々を抑え込むのは難しいでしょう........................でも、奉先様の妻である私が行けば、少しはお役に立てると思うんです」

 

確かに、各神話群の神々は私たち聖書陣営のことを嫌っている。もしかしたら、この事態をこれ幸いと思い攻め込んでくるかもしれない。

けど、既に呂布様に妻として認められている朱乃の頼みであれば、無下に扱うことは出来ないはず。

 

 

「二つ目は私自身を守るためですわ。リアスたちまで冥界に行ってしまうと、ここの守りが手薄になってしまいます。敵がもし私を狙ってきても、高天ヶ原にいれば奪いに来ることは出来ないはず」

 

「そうですね。アザゼル先生に『神の子を見張る者』で守ってもらう方法もありますが........................大王派が政権を奪った後で、『同盟の破棄』を盾に朱乃の身柄を要求されるかもしれません」

 

ソーナの言う通り、堕天使の血を引いているとはいえ朱乃は『悪魔』。『同盟の破棄』を理由に悪魔政府から正式に引き渡しを要求された場合のことを考えると、『神の子を見張る者』に保護してもらうのは一時しのぎにしかならないわね。

 

それなら日本神話群に保護してもらった方が、大王派も一層手が出せなくなる。呂布様の妻の危機とあれば、日本神話群とて見捨てるようなことはしないはずだしね。

 

 

「そして三つ目、正直これはかなり賭けになるのですけど............................何とか奉先様に連絡を取ってみますわ」

 

「「ッッッッッッッッッッッッッ!?」」

 

「正確には、日本神話群から『蒼天の紅旗』を通して奉先様に連絡を取る形ですね。日本神話群なら『蒼天の紅旗』への連絡手段ぐらい持っているでしょうから」

 

確かに日本神話群からなら『蒼天の紅旗』へ、そして呂布様に連絡を取ることは可能だろう........................でも、呂布様にこの事態を知らせてどうするの!? まさか、助けを求めるつもり!?

 

「あ、朱乃、呂布様にこの騒動のことを伝えるつもり!? ダメよ、もし呂布様が動くようなことがあれば、冥界はどうなるか分かっているの!!!

それに............................いくらアナタが呂布様の妻だからと言っても、呂布様に『悪魔』を助けてもらうだなんて、神々が許すはずがないわ!!!!」

 

「ええ、そうね....................でも実際、今の状況を私たちだけで打開するのは不可能よ。『反乱軍』についてはソーナ会長が何とか出来るかもしれない。

でも『大王派』と『禍の団』を何とかしない限り、サーゼクス様たちを助け出すことは出来ないわ。けれど各神話群から無秩序に武力介入をされては、更に状況が悪くなってしまう。

でも介入するのが、『蒼天の紅旗』だけなら最小限の混乱で済ませることが出来るわ」

 

「それは、そうかもしれないけど........................でも、呂布様が冥界に来たら............................」

 

「大丈夫よ、リアス。もし私が敵に捕まっていれば、確かにアナタの危惧している通りになるかもしれない。

でも私が高天ヶ原で無事であるなら、その心配はいらない。奉先様は必ず私たちの力になってくださるはずだわ」

 

 

っ........................朱乃の言う通り、私が恐れているのは『朱乃が敵に捕らわれた場合の呂布様』。

 

『深紅の武人』という強大な力を手にした大王派や『禍の団』によって、各神話群を巻き込んだ戦争になることが何よりも気掛かりだった。

 

けど朱乃が無事で、かつ朱乃から頼めば呂布様は私たちの味方になってくれるはず。そうなれば、これほど心強いことは無い。

 

問題は各神話群がどう判断するかだけど、それは『呂布様の妻』である朱乃と『外交担当』のセラフォルー様に任せるしかない。

 

 

今の私がやるべきことは、『ソーナの力になる』こと!!! 呂布様............『蒼天の紅旗』が大王派や『禍の団』を倒すことが出来たとしても、反乱軍まで鎮めようとすればどうしても『武力行使』になってしまう。

 

そうなれば必要以上の血が流れてしまい、騒動が終わった後にも禍根を残してしまう。だから、反乱軍については私たちで鎮めなくてはならない。

 

そしてそれが出来るのは、ソーナだけ!! なら、私はソーナを全力でサポートする!!!

 

今こそ、かつての己の失敗を償う時! 魔王様方やアザゼルにミカエル様、そして............................呂布様に救われたのは今日この時のため!!

『悪魔』を危険に晒した私だからこそ、今度は私が命を懸けて『悪魔』を守らないと!!!

 

 

私は意を決して自分がやるべきことを見据える。いつぞやの修学旅行の時と同じだ、『自分一人で全てがこなせない以上、見えないところは周りを頼らなくてはならない』!!!

 

この騒動は私一人では到底どうにか出来るようなものじゃない。私には私の、ソーナにはソーナの、朱乃には朱乃の...............それぞれにしか出来ないことを精一杯やる。そして他のことについては、周りの者に任せるしかない!!!

 

 

「............................わかったわ、朱乃。呂布様や『蒼天の紅旗』についてはお願いね」

 

「ええ、リアスも気をつけてね。ソーナ会長もお気をつけて」

 

「はい、朱乃もどうかご無事で........................また、みんな揃って会いましょう」

 

 

私たちは三人でもう一度会おうと誓い合うと、すぐに行動に移した。

 

朱乃は母親を連れて高天ヶ原へと向かう。出奔したとは言え、陰陽師の五大宗家である『姫島家』の直系である母親も連れていった方が良いと判断したらしい。

 

私とソーナは各々の眷属に事情を説明、皆はこんな状況でも誰一人反対することなく私たちの考えに同意し付いて来てくれると言ってくれた。

 

私もソーナも、最高の眷属に出会えたことを誇りに思い、互いに喜び合った。

 

 

 

こうして朱乃を除く私たちグレモリーとシトリーの面々は混沌渦巻く冥界へと向かうことにした................................。

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギィヤァァァァァァァァァァァァァッッッッ!!!!」

 

「や、やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「イ、イヤだ................イヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだイヤだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっぅっ!!!!!」

 

 

ベチャッ、グチャッ、ベチャッ、ビチャッ....................................!

 

 

冥界にある悪魔領の首都リリスの地下にて文字通り、身の毛も弥立つような【悪魔の実験】が行われていた....................................。

 

 

「ユ、ユーグリット殿、これはどういうことですか!? 大王派やアナタたち『禍の団』に協力すれば、我々に『最上の栄光と名誉』を与えると約束してくださったではありませんかっ!!!」

 

「そうなのですか? すみませんが、私は中立派であるアナタたちを『釜に焚べるように』とリゼヴィム様に言われたたけですので」

 

「そ、そんな........................いぎゃぁぁぁぉぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ビチャッ、ベチャッ、ビチャッ、グチャッ!!!

 

 

初老の男性は必死に抵抗するも、ユーグリットが放り投げると男性は悲鳴を上げながら【真っ黒な泥】に呑み込まれていく。

 

やがて悲鳴が聞こえなくなると奥にある真っ黒な『繭』がドクンドクンと鳴動し、まるで何かが生まれそうな印象を与える。

 

 

「おーーーーう、調子はどうよ? ユーグリットちゃぁん♪」

 

「これはリゼヴィム様。今しがた最後の中立派貴族を焚べたところです。やはり一から悪魔を新造するよりも、こうして純粋な悪魔を『栄養源』とした方が進みが良いですね。転生悪魔などの混じり物では『こう』は行きません」

 

「やっぱりね~~~♪ じゃあ次は役に立たない古い悪魔の爺婆どもをぶちこんで、最後は大王派の連中も全部『栄養源』としちゃおう♪」

 

「分かりました........................ところでリゼヴィム様、中立派に約束された『最上の栄光と名誉』というのは何なのですか?」

 

「ん~~~? あ~~~それね。別にウソは言ってないよ。彼らは『全く新しい悪魔』として、これから俺たちの手足となって働いてくれるんだからさ♪

そ~~れ~~に~~【新しい悪魔の歴史】の礎になれるんだからぁ、大変な栄光と名誉じゃない♪」

 

 

『悪意の塊』でしかないこの男にとっては、中立派の悪魔など手駒でなければ捨て駒ですらない。ただの都合の良い『何か』なのだろう。

 

故に『焚べられた』貴族悪魔たちに思うことなど一つもない。ただ自分の指示に従ってくれれば、生きてても死んでても何も思うことは無いのだ。

 

「どうせ勝ち馬に乗って美味い汁を啜ることしか出来ない連中なんだからさ。それならこうして有効活用した方がマシってもんでしょう。

役に立たないからって殺したりすれば、ただゴミを出すだけだからね。時代はエコだよ、エコ♪ ボクちんってば優しいね~~~♪」

 

エコの欠片も無いほどのエゴ、まともな感性の者が聞いたら吐き気を催すに違いない。だが、この場にまともな感性を持っている者など皆無だった。

 

 

「さぁ~~て、まだまだやることは沢山あるからね。ボクちんはこれで失礼するよ。ユーグリットちゃんには悪いけど、次は古臭い爺婆連中を焚べるのお願いね♪」

 

「承知いたしました。それでリゼヴィム様、全てが終わった暁には報酬の件、忘れないでくださいね」

 

「おぉ~~う、任せといて。お仕事を頑張ってくれる部下には、ちゃ~んとボーナスを出すからさ♪」

 

「ありがとうございます、それが聞ければ十分です」

 

「しっかし、キミも大概だよね~~~。『実の姉』を自分の女にするなんてさ。まっ、己の欲望に忠実に生きるのが『悪魔』だからね。

『近親相姦』大いに結構♪ サーゼクスきゅんも奥さんを寝取られて涙目だぁ、ひゃーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ♪」

 

「恐縮でございます」

 

 

リゼヴィムはゲラゲラと下品に笑いながら出ていき、ユーグリットは意気揚々と次の仕事に取り掛かった。

 

 

 

 

やはりこの場にまともな感性を持っているものなど皆無である。それどころか............................【悪意の祭典】の開催が近づいていた。

 

 

 






朱乃が一時的にリアスたちから離脱しました。そんなわけで次話からは冥界組と高天ヶ原組で視点を分けたいと思います。

それでは皆さん、次回で♪
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