話を作る時は『始め』『真ん中』『終わり』を決めて、そこから細かい部分を肉付けしたりセリフを考えているのですが....................最近、『肉付け』の部分が上手くいかず難産気味になっています。
己の想像力と文章力の無さが憎い!
サイラオーグから魔王眷属たちを解放したという報告を聞いた私たちは、作戦通りにバアル『僧侶』ミスティータの協力でバアル城へと転移した。
転移したのはサイラオーグたちが待機していた部屋。お兄様たちは反対側の建物の最上階に幽閉されているため距離がある。
黒歌と白音の仙術、それにシトリー女子たちの覇気によって周囲の気配を探りながら目的の場所まで向かう最中、城全体を揺るがす地響きと爆音。そして鳴りやまない警報音で城内は大騒ぎ。
思った通りね。イッセーたちの侵入で警報が一度鳴ってしまえば、後から私たちが侵入しても警報が改めて鳴ることはない。
この警報はイッセーたちの侵入によるもののため、私たちの潜入はバレていないはず。これならお兄様たちのところまで、戦闘をせずに向かうことが出来る!!!
そうして黒歌たちの先導により、敵との接触を避けながら目的の建物へとやってきた。私たちの前には四つの塔がそびえ立っており、魔王様たちはこの塔のいずれかの最上階にいるはず............................しかし、問題はここからだった。
「っ............................マズイにゃん。四つの塔のあちこちに敵の気配がするにゃん」
「しかも、全員かなりの手練れのようです............................」
黒歌と白音が仙術で敵の存在を感知して、立ち止まった。確かサイラオーグからの情報では、魔王様たちの見張りについているのはランキング3位の『ビュティゼ・アバドン』とその眷属たちだったわね。
どうやらイッセーたちの陽動に引っかからず、自分たちの持ち場から離れなかったようだ。出来ればイッセーたちに上手く誘い出されてくれたらありがたかったんだけど................................流石にそう甘くはいかないか。
「ど、どうするんですか、部長さん............................」
ギャスパーが不安気に尋ねてくるが、この状況は想定内。敵が誘い出されなかった場合に備えた作戦も用意している。
「大丈夫よ、敵がお兄様たちの周りに残っている可能性も考えていたわ。黒歌、白音、お兄様たちの居場所は分かる?」
「この四つの塔のうち、三つの最上階にひときわ強い気配が一つずつするにゃ。たぶんこれが魔王だと思うにゃん」
「はい。数も三人ですし、間違いないと思います」
「OK、サイラオーグからの情報通りね........................ルフェイ、お願い」
「わかりました~~~♪」
私たちは一旦建物の外に出て、ルフェイに頼んでいたことを実行してもらう。ルフェイが召喚の魔方陣を展開すると中から現れたのは....................................山のように大きな巨人だった!
この巨人は『ゴグマゴグ』。古の神々が作った破壊兵器だったけど、今では全て機能を停止して『次元の狭間』に廃棄された古代の遺物。
ヴァーリたちが『次元の狭間』を探索している時に偶然発見して、修理したらしい............................まったく、探求心が旺盛なところはアザゼルに似たんじゃないのかしら?
「ゴッくん! 塔の最上階部分だけもぎ取って、地面に置いて!!」
『ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア................................!!!!!』
ルフェイが命令すると、ゴグマゴグは魔王様がいるであろう塔の最上階部分のみ取り外そうとする。これだけ騒がしくしていても、敵が外に出てくる様子は無い。
恐らく『持ち場を離れるな』という命令を守っているのだろう。だからこそ、イッセーたちがあれだけの騒ぎを起こしても敵に動きは無かった。
だけどそれは裏を返せば、周囲でどれだけ騒ぎが起こっていても持ち場から動かないということ。
塔の内部に潜入して人質を奪うことが出来ないのなら、塔そのものを奪ってしまえばいい。なにも敵が守りを固めているところへ、バカ正直に正面から向かってあげる必要は無いもの。
ゴグマゴグが魔王様たちがいる三つの塔の最上階部分をもぎ取って地面に置いたのを確認すると、私たちは壁を壊してお兄様たちを脱出させる!
「お兄様っ!!!」
「ッ、リアス!? どうしてここに........................冥界に来てはならないと命令したはずだ!!!」
「お叱りは後で受けます! どのような罰も甘んじて受けます!! ですが、今はここから脱出しましょう!!!」
いくら何でも塔の最上階部分がいきなり無くなったりすれば、敵だって気づくはず。問答をしている余裕は無い!!!
「............................それは出来ない。我々が逃げてしまえば、反乱軍や各領地にいる領民たちが『禍の団』によって殺されてしまう」
「反乱軍はソーナが安全な場所へと避難させています! 反乱に参加していない領民たちは、領主たちが厳重に守っているため『禍の団』も手が出せない状況です!!」
「!!!!!!!!!!」
やはりお兄様たちは反乱軍や領民たちを守るために、敢えて囚われていたのね............................だけど、状況は既に変わっている。今はお兄様たちが囚われている状況の方がマズイ!!!
「そうか............................ソーナも来ているのか」
「はい、反乱軍の主導者であるディハウザー・ベリアルも魔王様方と対話がしたいと言っております。どうかすぐに脱出を!!!」
「........................................................」
「部長! 敵がこっちに向かってきます!! 早く転移しないと!!!」
お兄様は目を閉じて逡巡していると、白音が敵の接近を感知して警告をしてくる! 時間が無い、急いでこの場から逃げないと!!!
「みんな、少しの間時間を稼いでちょうだい!!!」
「「はい、部長!!!」」
「「「「はい、リアス先輩!!!」」」」」
「ちぃ、仕方ないにゃ!!!」
「はぁ~~~い♪」
私が指示を出すとグレモリー・シトリー両眷属が敵の迎撃に向かう! いくら皆が強くなったと言っても、相手はランキング3位のチーム。長くは保たない!!!
私はお兄様を怒鳴りつけるつもりで、説得しようとする................................しかし、目を閉じて考え込んでいたお兄様がゆっくりと目を開く。その目は何か強い決意を秘めた瞳だった。
「............................わかった。しかし、逃げるのはアジュカとファルビウムだけだ............................私は残る」
「「「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」
お兄様は逃げることには同意してくれたけど、自身は残ると仰る! アジュカ様もファルビウム様もお兄様の決断に驚愕していた。
「お兄様、どうして....................................」
「すまない、だが私は逃げるわけにはいかないのだ................................グレイフィアを助け出さなくては!」
「ッ、グレイフィアを!?」
グレイフィアは初代バアルに首都リリスへ連れていかれたと聞いた。愛する妻が敵の手に落ちているというのであれば心配にもなるだろう....................................だけど!!!
「お兄様、グレイフィアのことは脱出してから考えましょう! 今は『魔王』として成すべきことを成さってください!!!」
「....................................そうだね。このような事態を招いたのは、『魔王』である我々の責任だ。『魔王』としては、すぐに脱出し反乱軍と交渉の場を設けるべきなのだろう............................だが、それでも! 私はグレイフィアを.............................愛する妻を助けに行きたいのだ!!!」
「お兄様............................................」
「このような決断をしてしまった私に、もはや『魔王』を名乗る資格は無いだろう............................故に私は、『魔王』を辞するつもりだ。そして『一悪魔』として、妻を助けに行く!!!!」
いつもの飄々としているお兄様とは思えないほどの気迫を感じ取っていた。揺るがぬ意思を秘めた瞳はまさに、『歴戦の強者』を思わせる。
これが『本来のお兄様』の御姿。この『意思』と『強さ』があったからこそ、旧魔王派との大戦の最中でも敵側であったグレイフィアと『愛』を貫くことが出来たのだ。
それほどまでに固い意志を持ったお兄様を説得できるような言葉を私は持ち合わせてはいない。今のお兄様は『魔王』ではなく、紛れもない『情愛の悪魔 グレモリー』として己の愛に殉じるつもりなのだから。
「................................行ってこい、サーゼクス。反乱軍との交渉は俺とファルビウムで行う」
「こうなったサーゼクスは止められないからね~~~。かつての大戦でもそうだったし」
「ッ、アジュカ様!? ファルビウム様まで............................!」
私はどうすればいいのか分からなくなっていると、アジュカ様とファルビウム様がお兄様を送り出す! お二人は私よりもお兄様との付き合いが長い、お兄様の説得は不可能だと判断したのだろう。
「っ................................すまない、二人とも。私の名は好きに使ってくれて構わない。また、全ての責任は私に押し付けてくれ。『魔王』として、最後にそのくらいはしないとな」
「当然だ、何もかもお前のせいにして反乱軍を説得してやる。だから必ず帰ってこい................................グレイフィアと一緒にな」
「そうそう。責任を追及する槍玉がいないと、ボクたちも困るからね~~~~」
「................................ああ、そうだな。そうでなければ、責任を取ることなど出来ない。リアス、二人を転移させてくれ!」
「っ............................わかりました」
もはやお兄様の意思は揺るぎようの無いほどに固いと分かった私は、アジュカ様とファルビウム様を反乱軍のアジトまで転移させる。
転移が始まるとお兄様もアジュカ様もファルビウム様も一言も話さず、互いの目を交差するだけだった。けれど、長いお付き合いの三人は言葉を交わさなくても通じるものがあるのだろう。
「........................................さて、行くとしようか。私も久々に『一悪魔』として、力を振るうことが出来そうだ」
ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッッッ........................................!!!!!!
アジュカ様とファルビウム様を見送ったお兄様は、気持ちを切り替え『魔王』から『戦士』としての顔つきとなる!!
敵を見据えた瞬間に放たれる威圧感は、まさに伝説として語り継がれるに相応しいと呼べるほどの気迫があった!!!
そこからは一方的な展開........................いいえ、もはや『蹂躙劇』と言っても過言ではなかった。一介の戦士として『本気』になったお兄様は、ランキング3位の悪魔チームを『滅びの力』で次々と消滅させていった。
初めて見るお兄様の全力戦闘、流石は圧倒的な強さで『魔王』の座まで上り詰めただけのことはある。
『王の駒』によって、魔王クラスの強さを得ているはずのアバドンでさえ全く相手にはなっていなかった。
もしかしたら、『魔王クラス』というのは『本気』になったお兄様たち現魔王様の戦いを見たことが無い者が噂立てているだけなのかもしれない。現魔王様方は大戦以降、その力を人前で見せることは無くなっていたもの。
お兄様がアバドンとその眷属たちを消滅させ、私たちはイッセーたちと合流するべく男性チームの下へと向かう。
私たちが着いた頃には、魔王眷属たちが加勢してくれたということもあって敵をほぼ壊滅させていた。流石は魔王様の眷属と言いたいところだけど................................バアルの城まで半壊しているあたり、私怨も入っているんじゃないかしら?
目的を果たした私たちは今後のことについて相談をする。
まずアジュカ様とファルビウム様の眷属については、このままお二人の後を追って反乱軍の拠点に転移させる。
セラフォルー様の眷属についても、ソーナの護衛ということで反乱軍の下へ行ってもらう。
後はお兄様の眷属たちだけど........................................。
「水臭えぜ、旦那。姐さんを助けに行くんなら、俺たちだって付いて行くぜ」
「スルト........................いや、しかし............................」
「『しかし』ではありません。我々は貴方様の眷属なのです。主が死地へと向かうのであれば、我らもお供します」
「そうですよ、マスターサーゼクス。たとえ『魔王』ではなくなったとしても、貴方は我々の主なのですから」
「そうそう。むしろここで主を一人で行かせたりしたら、俺たちが姐さんに折檻されちまいます」
一人でグレイフィアを助けに行こうとしているお兄様を眷属の皆が止め、一緒に付いて行こうとする。いくらお兄様と言えども、敵の本拠地に単身で乗り込むなど不可能だもの。
「................................すまない、感謝する」
眷属たちの意思が固いと知ったお兄様は眷属の同行を認めた。次に私たちは、サイラオーグにバアル領の領民を反乱軍の下まで送ってもらうようお願いする。
事ここに至ってはサイラオーグと大王派の決別は決定的。このままサイラオーグが残っていては、間違いなく処刑されてしまう。
それに魔王様方が脱走したということを知れば、『禍の団』が見せしめにバアル領の領民を殺す可能性がある。だからサイラオーグにはバアル領を周り、領民たちを反乱軍の下に送ってもらわなければならない。
なお、バアル領の領民を送ることについては、作戦決行前にソーナを通して反乱軍と曹操に許可を貰っているので問題は無い。
あとは....................................私たちについてね。
「ヴァーリ、アナタたちはこれからどうするの?」
「そうだな、一旦アザゼルの下へ戻ることにするよ。俺が請けたのは『魔王の救出』までだ、それ以外のことについては知らん」
まぁ、ヴァーリの性格ならそう言うでしょうね。でも実際、ここが所謂『分水嶺』というところだろう。
反乱軍の下へ行くにしても、お兄様に付いて行くにしても、これ以上関わると私たち悪魔の問題に巻き込まれて抜け出せなくなってしまう。
「そう、ならアナタたちとはここまでね。お兄様たちの救出に力を貸してくれたことについては礼を言うわ」
「ああ、キミたちのおかげで助かったよ。アザゼルにもお礼を言っておいてくれるかい?」
「ふっ、気にするな。たまたま利害が一致しただけさ。それからルシファー殿、生憎俺は伝言板ではないのでね。礼については................................生きて帰って、ご自分で伝えてください」
私とお兄様がお礼を言うと、ヴァーリは不敵な笑みを浮かべながら皮肉を返してくる。今のはヴァーリなりに気を遣ったんでしょう................................たぶん。
「匙くんたちはこのままソーナの下に戻って。アナタたちはシトリー眷属なのだから」
「わかりました。でも、リアス先輩たちはどうするんですか?」
「私は................................お兄様たちと一緒に行くわ」
「「「「!!!!!!!!!!!!!」」」」
私の発言にヴァーリたちを除く全員が驚く。無理も無いわ、お兄様たちが行くのは紛れもなく『危険地域』。もしかしたら、大王派や『禍の団』との全面戦争になるかもしれない。
いくら強くなったとは言え、お兄様たちのように大きな戦争を経験しているわけではない私では足手まといになりかねない。
けど................................それでも、私は行きたいのだ! だって私は『情愛の悪魔 グレモリー』、たとえ家督相続権を失っていたとしても、『グレモリー』として身内を見捨てることなど出来はしない!!!
グレイフィアには厳しいことを沢山言われたけど、それ以上に沢山助けられた。そんな彼女をここで見捨てようものなら、私は『グレモリー』ですら無くなる。
それにヴァーリの話によるとリリスでは、『純粋悪魔』を素体に『怪物』が生み出されているという。もしグレイフィアが、そんな化け物にされるかもしれないと思ったら尚更見捨てることなど出来はしない!!!
私の意思を示すとお兄様は、今まで見せたことが無いほどに厳しい顔つきで私を止めようとする。
「リアス、気持ちは分かるがそれは認めることは出来ない。キミは姫島朱乃くんの主なんだぞ、もしキミが敵の手に落ちたりすれば....................................」
「承知しております。朱乃の主である私が危険と知れば、呂布様が動く可能性があります。ですが、御心配には及びません」
「? どういうことだい、リアス」
「恐らく朱乃が日本神話群を通して、既に呂布様へ連絡を取っているはず。呂布様のことですから、朱乃から事情を聞けば必ず力を貸してくれます」
「なっ、り、呂布殿がっ!? そ、それは、本当なのかい!?」
「はい。ですので私たちは『呂布様が動かないようにすること』ではなく、『既に呂布様が動いている』という前提で今後の行動を考えるべきなのです」
朱乃なら必ず呂布様に連絡を取ってくれるはず。
呂布様なら必ずこの事態を治めるために動いてくれているはず。
反乱軍はソーナたちが安全な場所に避難させているはず。
各地の領民は領主たちが守ってくれるはず。
もう自分一人で何もかも出来るとは思っていない。今は皆が自分に出来ること、やるべきことに全力を注いでいる状況................................ならば私も皆を信じて、自分が出来ることを全力でやらなくては!!!
『悪魔』として、『グレモリー』として、『朱乃の主』として、『ソーナの親友』として! 全てを他人任せにして、安全な場所からこの事態をのんびりと傍観なんか出来ない!!
「申し訳ありませんが、お兄様が反対しても私はリリスに向かいます。お言葉ですが、既に『魔王』の座を辞されたお兄様に私を止める権利はありません」
「リアス...........................................」
私はお兄様に自分の思いの丈を全力でぶつけた。グレイフィアを助けたいという気持ちは私だって同じだ。それに............................今の大王派や『禍の団』の情報を集めることも大事なことだ。
遅かれ早かれ、敵の情報収集は行わなければならないのだから。詳しい敵の情報が無ければ、反撃に出ることも出来ない。
ならば、グレイフィアを助けると同時に敵の情報を少しでも集めないと!! それがソーナのためにもなるはず!!!
話を聞き終えたお兄様は私の目をジッと見つめ、しばらく逡巡された後...............................根負けしてしまった。
「............................フゥ、わかったよ、リアス。ただし、『決して勝手な行動は取らないこと』『私たちの指示には必ず従うこと』。この二つは絶対に守ってくれ」
「っ、っ~~~~~~!! はい、ありがとうございますお兄様っ!!!!」
お兄様が私の同行を認めたことを嬉しく思い、つい勢いよく返事をしてしまった。そして私が行くということで、イッセーたちも『自分も行く!!!』と口を揃える。
イッセーたちの言葉を聞いて再び困った表情を浮かべるお兄様だったが、ダメだと言っても黙って付いて行きかねない私たちの雰囲気を感じ取り渋々お認めになった。
こうして、魔王様方を救出した私たちはそれぞれ成すべきことを成すために別々で行動を開始した。
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
「....................................サーゼクス....................」
大王ゼクロム・バアルによって、リリスへと連れてこられた私は悪魔政府にある貴賓室の一角に閉じ込められていた。
何故、私だけがサーゼクスや他の眷属たちと話されたのか。サーゼクスたちは無事なのだろうか................................ここ数日、同じようなことを考えながら窓の外を眺めている。
窓から街を見ると、クーデターが起こったにも関わらず普段は喧騒溢れる街も今は静まり返っていた。
それもそのはず。街にいた純粋悪魔は『禍の団』によってどこかへと連れていかれ、転生悪魔には戒厳令が出されている。そのため大都市であるリリスは、さながらゴーストタウンと化していた。
コンコン............................
「ッッッッッッ!?」
静かになってしまったリリスを眺めていると、不意に部屋のドアがノックされる! 慌てて振り返ると、思いもよらない人物が入ってきた!!
「お久しぶりです、姉上」
「っ、ユーグリット!? い、生きていたのですか............................!?」
部屋に入ってきたのは、私の実の弟である『ユーグリット・ルキフグス』。かつては私と一緒に旧魔王派として、サーゼクスたちと戦ったこともある。
大戦終了後は行方不明となり生死も分からなかったユーグリットが、まさか生きていただなんて............................!!!!!
「ええ、大戦で瀕死の重傷を負ったところをリゼヴィム様に助けてもらいましてね。今ではホラ、この通り♪」
「ッ、リゼヴィム............................では、アナタは『禍の団』なのですね?」
「はい。一応、悪魔としてはリゼヴィム様に次ぐ地位になっています」
リゼヴィムに次ぐ地位、つまりは組織のNo.2ということですか。昔から時々、何を考えているか分からないところはあったが、よもやテロリストに身を落とすなんて........................................!!!!!
「そうですか............................それで、私にいったい何の用なのですか?」
「つれないですねぇ、せっかく感動の再会を果たしたのですよ? もう少し嬉しそうにされてはどうなのですか?」
「『感動の再会』............................そうですね。アナタがテロリストなどになっていなければ、私も涙の一つも流していたかもしれませんね」
私だって肉親への情ぐらいは持ち合わせている。けれどテロリストになっているばかりか、こうして大王派と手を組んでサーゼクスを............夫を陥れようとしている輩にどうして情を向けられようか。
むしろ弟なだけに、なおさら怒りが込み上げてくる!!! 叶うことなら、今この場で断罪したいくらいだっ!!!!
サーゼクスたちや領民たちのために己を抑えている私を他所に、ユーグリットが気持ちの悪い笑みを浮かべながら近づいてくる。
「そう恐い顔をしないでください。わざわざ大王にお願いして、ここまで連れてきてもらったのですから................................『仲良く』しましょう」
ユーグリットは私の目を見ながら、私の頬に手を添えようとする............................................。
パシィィィンッッッッ!!!!!
「ッッッッッッ!?」
私は虫唾が走る思いがして、ユーグリットの顔に思いっきり平手打ちをした! ユーグリットも叩かれると思っていなかったのか、目を開いて驚いている。
「馬鹿なことを言うのは止めなさい! ユーグリット、今ならまだ間に合います。こんなことは今すぐ「馬鹿は貴女の方です、姉上!!!」ッッッッッ!?」
「我々は『ルキフグス』なのですよ!? 代々『魔王 ルシファー』の側近としてお仕えしてきた誉れある一族なのです!!
だというのに貴女は『あんな偽物』に与するばかりか、あろうことか恋仲になって子を成すなど............................いい加減、目を覚ましてください!!!」
「ッ、ユーグリット........................................」
「『ルキフグス』はもう私と貴女しかいないのです! ならば、一族の復興のためには身内同士で交わるより他はないでしょう!!!」
「ッ............................................」
ユーグリットは目を血走らせながら、私に迫り求めてくる!!! その目は、その表情は、明らかに常軌を逸していた!!!!
その瞬間、私は全てを理解してしまった................................ユーグリットはもう、『壊れている』のだと。
『魔王 ルシファー』の側近である『ルキフグス』としての夾侍、断絶した一族、唯一残った姉の裏切り、『旧魔王派』という時代の敗北者としての烙印................................様々な要素が絡み合った結果、それらが『重圧』という名の毒となって彼を蝕んでいったのだ。
そして彼をこのようにしてしまったのは、私たち....................いいえ、『私』だ。この世でたった一人の弟が行方不明だというのに探そうともしなかった。悪魔政府を立て直すことばかりに意識が向いて、弟を放ったらかしにしてしまった!
何がなんでも探しだすべきだったんだ! 死体が発見されるまで、諦めるべきではなかったんだ!! ユーグリットはきっと、私に見捨てられたと思ったのだろう....................................私がちゃんと、見つけられていれば................................。
「っ........................はい。ええ................分かりました、すぐに行きます」
私が自分の非情さに呆れていると、どこかからか通信が入ったらしくユーグリットが返事をする。話を終えると、ユーグリットは不機嫌さを露にしながら踵を返した。
「っ、残念ですが、今日のところはここまでにします。続きはまた後日........................ですが、私の考えは変わりません! 必ず姉上と共に、一族を復興してみせます!! 『混ざり物』などではない、『真のルキフグス』の子を成して!!!」
もはやこの部屋に来た時のような余裕は全く無くなり、大股でズカズカと部屋から出ていった。
「........................うっ、ううっ、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっっ...................!!!!!」
私の頭の中はもう、様々な淀みが混ざり合って何も考えなくなる。気づくと嗚咽を溢しながら涙を流していた。
「サーゼクス........................助けて............................!」
負の感情が爆発して、言い様の無い気持ち悪さに支配されながら私は....................................愛する夫の名を何度も呼んだ。
戦闘は後半に集中させるつもりですので、ここまではスピード重視で本格的な戦闘描写は避けています。
ただ、大規模戦闘の予定なので派手に書けるかどうかが不安なんですよね~~~。
それでは皆さん、次回で♪
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