深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします♪

いよいよ最終章開始ですが、戦闘はまだ行われません。今話では残った伏線の回収をしていきます。

この話が終われば、残った伏線は『呂布の禁手』だけ...................のはず。




【黙示録の獣】編
第百九十一話


 

 

 

 

「ではこれより、冥界の悪魔領に出現した『アレ』................【トライヘキサ】の討伐会議を始める」

 

 

重苦しい空気が支配する会議場で、日本の最高神である天照の一声により【トライヘキサ】を倒すための本格的な作戦会議が始まる。

ちなみにここはセミラミスの神器『虚栄の空中庭園 (ハンギングガーデンズオブバビロン) 』の中にある建物の一室。

 

悪魔の領地はどこも都市機能が麻痺するほどの壊滅的被害が出たからな。ハッキリ言って、被害の復旧には年単位の時間が必要だろう。

もっとも、下層階級の悪魔にはほとんど被害は出ていないため、人的被害は比較的軽微だったと言える。

 

まぁそれでも貴族の大半は消滅し、悪魔の領地は半分以上が使い物にならなくなったんだけどな。

 

 

 

「まず初めに【トライヘキサ】の「ちょっと待てや」.............何じゃ、アザゼル」

 

 

今回の会議の司会進行役である天照を差し置き、堕天使総督であるアザゼルが横やりを入れる。

その顔はある種の憎悪を感じさせるほどの怒りによって険しくなっていた。

 

アザゼルだけではない。ベルゼブブやアスモデウス、一応ルシファー。そして高天ヶ原から戻ってきたレヴィアタンに天界代表の熾天使たち.................聖書陣営のトップ全員が剣吞とした雰囲気を醸し出していた。

 

 

「会議を始める前に、お前たちには確認しなきゃならないことがある。まずはそれに答えてもらおうか」

 

「「「「「..........................」」」」」

 

 

「.................はぁ、手短にせいよ」

 

 

『拒否は許さない!』と言わんばかりに睨みつける聖書陣営のトップ。その鬼気迫る迫力にさすがの天照も渋々聞き入れることにしたようだ。

 

やれやれ、予想はしていたがここまで怒りを向けられるとは.................正直、この空気の中にいつまでも居たくはない。

さっさと会議を終わらせて、聖書陣営からの質疑応答は後で別に時間を設けるべきではないかと思うんだがな。

 

ただ連中の様子から察するに、今すぐにでも確認しないと暴れ出しかねない..............ハァ、こんなことならゲオルクでも連れてくれば良かった。俺一人で会議に参加したのは間違いだったか?

 

 

 

「まずはあの【トライヘキサ】についてだ。お前らはいつからアレの存在を知っていた」

 

「トライヘキサが冥界に現れた瞬間、強力な結界によってヤツは封じ込められた。その術式は北欧や日本など様々な神話体系からなる術式によって、何重にも組まれていた」

 

「これって、アナタ方は随分前からトライヘキサの存在を知っていて~~~かつ封印が破られても、即座に封じ込められるよう準備をしていたってことだよね~~~~」

 

アザゼルの質問を皮切りにベルゼブブやアスモデウスも続けて質問を投げかけてくる。

 

 

呂布がリリスを倒した瞬間、リリスの生命エネルギーを吸収したトライヘキサは聖書の神の封印を内側から破った。

正直、これについては俺たちも予想外だった。まさかそんな方法でトライヘキサに封印を破らせるとは思わなかったからな。

 

だが、『予想外』ではあっても『想定外』ではない。元々リゼヴィムが何らかの干渉をしてくれば、封印の解除が早まる可能性は考慮していた。

 

そのため各神話群の主神たちが協力して、封印が破られると同時に発動する術式を組み、さらには冥界へ出現するようにしておいたのだ...................間違っても人間界には跳ばせないからな。

 

その苦労の甲斐あって、トライヘキサは現在身動きが出来ない状態で冥界に封じ込められている。

そういった俺たちの苦労を知らずにこちらを責め立てる聖書陣営には辟易してしまう。

 

見ると天照も同じことを思ったのか、溜息混じりに口を開いた。

 

 

「フゥ、おぬしたちの知るように、アレの存在については遥か昔から示唆はされていた。ただ本格的にアレについての調査を始めたのは、駒王学園で行われた聖書陣営の和平会談の後じゃ」

 

「駒王学園での会議? 何でそんなタイミングで......................」

 

「きっかけは.....................呂布じゃよ」

 

「? 呂布? どういうことだ?」

 

「会議の最中に『禍の団』の一員であるカテレア・レヴィアタンが襲撃してきたであろう。その時にそやつが溢したそうじゃな」

 

 

 

 

『...........なるほど............どうやら噂以上の人物のようですね。貴方の相手は『かの存在』に任せるつもりでしたが..............予定変更です! ハアッ!!』

 

 

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」

 

 

「呂布はあの一言から、『「禍の団」が自分を脅かす何らかの手段を持っている』と気づいたのじゃ。そして呂布を脅かせる存在など限られている。それこそグレートレッドぐらいなもんじゃろう」

 

「ですが、グレートレッドは呂布の友。またオーフィスについても同様。であれば、グレートレッドと並び称されるもう一つの黙示録の存在だろうと呂布は思い至ったのです」

 

「っ、たった、あれだけのことで..................?」

 

「そこが呂布の恐ろしいところじゃよ。あれほどの強さを有しておきながら、油断も隙も見せず己の危険に対して一切警戒を緩めんのじゃからな」

 

 

神々の話を聞いてアザゼルたちは言葉を失っていた。『世界最強』たる強さを誇りながら、同時に慎重で用心深いと来れば手の打ちようが無い。

 

実際、和平会談が終わり高天ヶ原へ報告に行く道中で呂布から聞かされた時は、俺たちも半信半疑だったからな。

だが呂布が言うのであれば可能性は捨てきれないということで、秘密裏に調べていたんだ。

 

 

 

「そして確信に至ったのは、リゼヴィムが日本に襲来した際のことじゃ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『呂布と同等の強さ.................まさかとは思うが、グレート・レッドだなんて言うつもりじゃねえだろうな?』

 

『ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ、残~~念、グレート・レッドじゃないのよ☆ そもそもグレート・レッドと呂布ちんがお友達って話なんだから、無理に決まってるじゃん♪ ヒャヒャヒャヒャヒャヒャ』

 

『..........................チッ』

 

『まあまあ、そんなに睨まないでよ、アザゼルおじちゃん。グレート・レッドっていうのは、『ある意味』いい線行ってたんだからさ♪』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「リゼヴィムの発言から、呂布の警戒は間違っていなかったと確信した。そして『蒼天の紅旗』が見つけたのじゃ、次元の狭間の奥底..................『忘れ去られた世界の果て』とも呼ぶべき場所でな」

 

「そして私たちがそのことを知ったのは、その後の審議の時です」

 

「っ.....................あの時、曹操が持ってきた資料が、【トライヘキサ】に関する資料だったってわけか」

 

アザゼルもあの時の情景を思い出して、ようやく思い至ったようだった。

 

 

そう、赤龍帝を凍結封印するか否かの審議にて、俺が持ってきたのが【トライヘキサ】について書かれた調査結果だ。

 

見るとアザゼルだけではなく、あの場にいた魔王やミカエルもようやく納得したようだった。だがそのことに気づいたアザゼルは、苦虫を嚙み潰したような顔で分かり切っている質問をしてくる。

 

「っ、なるほど.....................呂布経由で【トライヘキサ】の存在を知ったってことは理解した。

なら、何で「『自分たちに教えなかったのか』などと言うてくれるなよ、それが分からぬほど愚かではあるまい」っ...................!」

 

先ほど横やりを入れられた意趣返しなのか、今度は天照がアザゼルの話を遮った。

 

聖書陣営に教えなかった理由は単純明快..............俺たちが【トライヘキサ】に気づいており、秘密裏に対策を取っていることを『禍の団』に知られたくなかったからだ。

 

組織のどこに獅子身中の虫がいるかも知れない連中へ、こんな大事なことを迂闊に教えられるわけがない。

何のためにあの時、聖書陣営を閉め出して話し合いをしたと思っているんだ。実際、魔王の側近すらも『禍の団』や大王派と通じていたみたいだったからな。

 

 

だがそれはこちらも同じこと。今回の騒動を利用して、各神話群の中で『禍の団』と通じているヤツらを根こそぎ始末することが出来た。

 

『呂布が悪魔の血統能力を覚醒させられること』

『ルシファーが呂布を利用して息子をグレモリーの力に覚醒させたこと』

 

この二つの情報を各神話群の領内に流し、そこから『禍の団』に繋がっている連中を特定する。結果として各神話群の不穏分子も一掃できたというわけだ。

 

 

「納得したか? 全てはおぬしたちの自業自得よ。蚊帳の外にされていて憤慨するのは分かるが、それでも妾たちを恨むのは筋違いじゃ」

 

「「「「「...............................」」」」」

 

 

天照の言葉に返す言葉も無い聖書陣営は、そのまま沈黙するしかなかった。そしてようやく天照が今回の会議の話を進めようとする。

 

「やれやれ、これで本題に入れるわい。では改めて、トライヘキサの討伐作戦について話し合うぞ。

まずは主戦場じゃ、これは現在ヤツを封じ込めている冥界の悪魔領で「ち、ちょっと待ってください!!!」.................何じゃ、さっきから口を挟みおって。話が進まんじゃろうが」

 

天照が戦場を冥界の悪魔領にすると言おうとしたところで、レヴィアタンが割って入る。二度も話を遮られて、天照も不機嫌な態度を隠すこともしていない。

 

 

「何故私たちの領内で行うのですか!? 悪魔領は現在壊滅的な被害を受けており、復旧の目途すら立っておりません。

どこか別の場所に「だからじゃよ」.....................え?」

 

「確かにおぬしたちの領内は、今回の騒動で復旧の目途が立たないほどの壊滅的な被害を受けた。

じゃが逆に言えば、その分トライヘキサとの戦いでの被害が一番少なくて済むとも言える」

 

 

「だいいち別の場所と言っても、他にどこがあると言うのです? 人間界は論外ですし、今から各神話群の管理領域に移している暇などありません。

そんなことをすれば、無駄に被害が拡大するだけです」

 

「ただでさえ転生悪魔や一般悪魔などをワシらの管理領域で受け入れているんだぞ? そんな場所に余裕などあると思うのか?

それとも 受け入れている連中を巻き添えにするつもりか?」

 

「っ.......................................」

 

 

悪魔領での戦闘にレヴィアタンが異議を唱えるも、各神話群の神々に悉く却下されてしまう。

 

バラバラとはいえ、自分たちの民を受け入れてくれているのだ。それなのに更に主戦場まで受け持ってくれなどとは言えるはずもない。

 

実際問題、天照の言っていることは正しい。大規模な戦闘が避けられないのであれば、既にボロボロになっているところで戦った方が被害は少なくて済むのは道理。

荒れた土地が更に荒れたところで、誰も文句は言わないだろう。

 

 

 

もっとも......................そうなるように俺や神々が仕組んだわけなんだがな。

 

 

 

『血統能力の覚醒』の情報を裏切り者を通じて『禍の団』に流し、大王派を動かす。加えて呂布が持って来た『王の駒』に関する情報をディハウザー・ベリアルとリュディガー・ローゼンクロイツを通して下層階級の悪魔に流す。

 

結果として邪魔な貴族たちと下層階級の悪魔をひとまとめにすることが出来た。後は貴族たちを刈り取り、下層階級の連中はディハウザー・ベリアルを通して俺たちが受け入れれば大掃除の完了だ。

 

事実、悪魔連中の足元は踏む場所が無いくらいに地雷が埋まった地雷原と化していた。そして地雷原を安全に歩く一番手っ取り早い方法は..................先に爆発させてしまうこと。

 

言ってみれば、俺たちは地雷原のあちこちに埋まっている地雷を掘り返して一か所に集めたというわけだ。

後は貴族と言う名の地雷は全部まとめて吹き飛んでもらい、下層階級という名の地雷はディハウザー・ベリアルに安全な場所まで運んでもらえばいい。

 

それでも悪魔領には僅かながらに悪魔たちが残っているが、そいつらは最悪滅んでくれても全く問題ない。既に新政権を樹立させるだけの必要数は確保している。

 

この戦いが終わったら、人口が激減した悪魔たちに貴族制を維持するだけの力は無いだろう。

そこにディハウザー・ベリアルを筆頭にソーナ・シトリーやサイラオーグ・バアルたちによる新政権を樹立、政治の民主化を行えば俺の目的は達成される。

 

ずいぶんと回り道をしてしまったが、これで俺の計画の第二段階である【人間社会への進出】へと移行できるだろう。

 

そのためにも..................【トライヘキサ】には消えてもらわなくてはな。

 

 

 

「っ、ですが、各地の領内にはまだ大勢の領民が残されております。このままトライヘキサと戦ってしまえば、彼らも巻き添えとなってしまいます」

 

「大勢と言っても、生き残った総数から考えればごく僅かじゃろう。その程度の数なら避難もすぐに完了するはずじゃ」

 

「避難場所については現在ワシらが受け入れている場所に移せばよい。それぐらいの融通はしてやる」

 

「っ................承知、しました」

 

俺が今後の悪魔社会について考えていると、レヴィアタンやルシファーが肩を落としながら神々の意見に了承していた。どうやら主戦場については話がついたみたいだな。

 

まぁ、ここまでは予定通りだ。聖書陣営の連中がゴネるのも含めてな................だが聖書陣営のそういった反論を封じるために、わざわざ各神話群の管理領域に『蒼天の紅旗』の支部を急いで作ったんだ。上手くいってくれなければ俺たちの今までの苦労が報われない。

 

 

「うむ。では、主戦場は冥界の悪魔領に決定じゃ。魔王共は会議が終わり次第、避難に取り掛かり開戦までに完了させろ。

次に主力部隊の構成じゃが...............手元にある資料を見てくれ」

 

天照に言われ、俺たちは事前に配っていたトライヘキサに関する資料に目を向ける。ちなみにこの資料に書かれている情報は『蒼天の紅旗』と各神話群の総力を結集して調査を行った結果だ。

 

 

「見ての通り、トライヘキサには七つの頭があってそれぞれが『対魔術障壁』『対物理障壁』『外殻』『本体』『コア』によって構成されておる。

ヤツを完全に滅ぼすには、七つのコアを全て破壊しなくてはならん」

 

「そして7つあるコアのうち、1つが『メインコア』。残り6つが『サブコア』となっており、『サブコア』は互いが補完し合っている状態です」

 

「これにより『サブコア』が一つでも残っていれば、すぐに破壊された他の『サブコア』を修復してしまうというわけじゃ」

 

「さらに『サブコア』を破壊しても『メインコア』が残っていれば、すぐに『メインコア』が『サブコア』を修復しちまう。

その上、『サブコア』を全て破壊しない限り『メインコア』はキズ一つ付けられないと来ていやがる」

 

 

「つまりトライヘキサを倒すには、まず6つの『サブコア』を同時に破壊しなくてはならない」

 

「そうして残った『メインコア』が他の『サブコア』を修復する僅かな間に、『メインコア』を破壊しなくちゃならないってわけか」

 

「っ..................聞けば聞くほど、途轍もない存在ですね」

 

「しかも『防壁』も『外殻』も『本体』も並みの攻撃じゃあ、ビクともしないほどの強度と再生力を持っているみたいだね~~~~」

 

「これがグレートレッドと双璧を成す、黙示録の獣..................!」

 

 

主神たちの説明に聖書陣営もトライヘキサの恐ろしさを資料の中だけで実感しているようだ。無理もない、俺たちだって調査結果に目を疑ったぐらいだからな。

 

流石に呂布があれだけ警戒したのも頷ける強さだ..................しかもトライヘキサには、『厄介極まりない特性』がある。その特性を鑑みれば、グレートレッド以上と言えるだろう。

 

 

「そこでまず、妾たち神々の力を持ってトライヘキサの『サブコア』と『メインコア』を分離させる。

その後、各神話群から集めた精鋭部隊をもってトライヘキサの『サブコア』の『防壁』と『外殻』を剥がす。

残った『本体』と『サブコア』については................聖書陣営と『蒼天の紅旗』に任せたい」

 

「なお、『蒼天の紅旗』は1つ。聖書陣営には残り5つをお願いします」

 

 

「「「「「!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

「承知しました」

 

 

つまり、トライヘキサを神々の力で『6つの分身体』と『本体』に分ける。そして分身体の撃破については聖書陣営が5つ、俺たちが1つを受け持つということだ。

 

俺たちの割り当てについては事前に決めていたことなので異論は無い。ただ、聖書陣営は納得がいかずに再び抗議をする。

 

 

「ちょっ、ちょっと待てっ!!!!!」

 

「何じゃ、何か不服でもあるのか?」

 

「当たり前だ! 『蒼天の紅旗』が1つで俺たちが5つ? どう考えても俺たちの負担の方が大きすぎるだろ!!」

 

 

「そうです! それに、現在の我々には動かせる戦力がほとんどありません!! それなのに5つも受け持つなど不可能です!!!」

 

「いくらボクらのことを嫌っているからって、こんな時に嫌がらせをしてる場合じゃないでしょ~~~~」

 

「うん。私たちだけで5つも『本体』と『サブコア』を破壊するのは無理があるよ」

 

「ましてや相手は、あのグレートレッドに匹敵する魔獣なのだ。我々だけでは到底倒しきれん」

 

 

アザゼルやルシファーだけではなく、他の者たちまで不満の声を上げる。確かに傍から見れば、この機会に聖書陣営にトドメを刺そうとしているようにしか見えないだろう。

 

だが、これは仕方のないことなのだ。聖書陣営の立場に関わらず、単純な『力』だけではトライヘキサは倒すことが出来ないのだから。

 

 

 

「静かにせい、これには理由があるのじゃ」

 

 

喚く聖書陣営の連中に対し、司会進行役の天照が溜息を溢しながら聖書陣営を黙らせる。適役とは言え、司会進行役を任された天照はとんだ貧乏くじを引かされたものだ。

 

「何もおぬしらのことが気に入らないからという理由で、このような采配となったわけではない。妾たちを見損なうな」

 

「っ、じゃあ、どうしてこんなバランスの悪い布陣になったんだよっ!!!」

 

「ハァ.................手元にある資料の次のページを見てみよ」

 

天照の言葉に従い聖書陣営は手元にある資料をめくる。その瞬間、聖書陣営の連中の顔は驚愕により引きつる。

 

 

「っ..............こ、これはっ.................!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこに書かれている通り、トライヘキサを倒すには.................『神器』の力が必要なのじゃ。それも『神滅具』が『禁手』になっているほどの力がな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

そう、それこそがトライヘキサの最も厄介な特性。『サブコア』も『メインコア』も神滅具クラスの神器が『禁手』にならなければ破壊できないのだ。

 

これは俺たちの調査によって判明した事実、俺たち『蒼天の紅旗』にも『神滅具』はいくつかあるがどれも攻撃性能に乏しい。

 

攻撃能力の高い『神滅具』は軒並み聖書陣営が管理している。だからこそ、聖書陣営に『サブコア』を5つも割り当てられているというわけだ。

 

 

「分かったじゃろう。別におぬしらのことが気に入らないから負担が大きいのではない。あくまで作戦上、こうせざるを得なかったのじゃ。

恨むなら戦闘特化の『神滅具』を大量に抱え込んでおった自分たちを恨め」

 

「っ、それは、そうかもしれないが...............だがっ!!!」

 

「神々よ、それはつまり.......................」

 

「この戦いに若手のみんなを駆り出せってこと、ですよね..................!」

 

 

アザゼルたちが絞り出すかのように枯れた声で確認をしてくる。彼らとしては、これ以上若手に危険なマネはさせたくないのだろう。ただでさえ、母数を減らしているわけだからな。

 

しかし今は世界の危機、悪いが大義名分はこちらにある。この反論についても予想はされていたので、予め用意していた建前で彼らの反論を潰す。

 

 

「いくら抗議したところで、この決定は覆らん。この戦いには正真正銘、世界の命運が懸かっておるんじゃ。

我らとてこれまでの諍いを一旦忘れて協力体制を取っておる。それなのにおぬしらの事情だけ優先するわけにはいかないじゃろう」

 

「っ、そりゃあ、そうだが...................」

 

「せめて彼らにも考える時間を「そんな悠長なことをやっている時間など無いわ!」っ.................」

 

『世界のため』という大義を前に一勢力のワガママなど通るはずもなく、聖書陣営は俺たちが用意した建前に口を閉ざすしかなかった。

 

しかしそれでも、若手だけは守りたいという思いからアザゼルが食い下がってくる。

 

 

「お前たちの言い分は尤もだ。だがいくらなんでも、これじゃあこっちの負担が大きすぎる。せめてもう少し『蒼天の紅旗』が受け持ってくれねえか?」

 

「................確かに我々も神器を多数所持しております。ですが攻撃系の『神滅具』というのは、ほとんど持ち合わせていないのですよ。

それこそ俺が持つ『聖槍』ぐらいですね。なので、聖書陣営の方々に回せるほどの人員はありません」

 

「っ.....................呂布くんは?」

 

「呂布は分離させた『メインコア』と次元の狭間にて戦ってもらいます。アナタ方まで助けるのは不可能です」

 

「「「「「.........................」」」」」

 

 

何を言いだすかと思えば.......................呂布に助けを求めるだと? よくもそんなことが言えたものだ。

そもそもこれは呂布の勝率を少しでも高めるための作戦なんだぞ?

 

呂布一人でトライヘキサを倒せる可能性は五分、その五分の勝率をさらに高めて『勝ち』の目を確実に引き当てるのが俺たちの役目。

そのためにここまで入念な準備をし、『禍の団』を利用してまで悪魔陣営や各神話群の膿を取り除いたんだ。

それなのに呂布の負担を増やしてしまえば、本末転倒ではないか。

 

呂布に助けを求めようとする聖書陣営の態度に、いよいよ神々も怒りのボルテージが上がっていく...................そして天照が『切り札』を出した。

 

 

「これ以上の問答は時間の無駄じゃ。それに何度も話を遮られるのも、いい加減腹立たしい。よって妾たちも断固たる決断を取らせてもらう」

 

「っ、断固たる決断?」

 

「そうじゃ。おぬしらも覚えているであろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「妾たちに『借り』があることを」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「っっっっっっっっっっっっっっ!!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天照の一言で聖書陣営の顔が凍りつく..................恐らくこの場面で、その話を蒸し返されるとは思わなかったのだろう。

 

だがこれも計画の内。あの時、『赤龍帝の暴走』と『リゼヴィムとロキを取り逃した』件について何も賠償請求を行わなかったのは、全てこの時のためである。

 

もちろん、あの時はトライヘキサが神器で無ければ倒せないということは分からなかった。しかし戦場が冥界の悪魔領となれば、悪魔たちが騒ぎ出すのは目に見えていた。

 

だからこそ、あの場では何も要求はせずに『貸し』としたのだ。全ては今この時、聖書陣営の抗議も反論も封じるために。

天照が司会進行役になったのも、あの時の当事者なため他の神よりも説得力があるという判断からだ。

 

 

「この場で、あの時の『貸し』を返してもらう。聖書陣営は妾たちの決定を全て受け入れ、トライヘキサ打倒の為に全力で協力せよ」

 

「っ.............これほどの大事とあれば、すぐに結論は出せません。一旦、聖書陣営内で協議をして「ならん!」っ.................!」

 

「結論を持ち越し? ふざけるなよ! 言ったはずじゃ、これは『全神話群からの要求』じゃと!!

断ったり先延ばしをするのであれば、トライヘキサの前に貴様らから滅ぼしてくれる!!!」

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」」」」」

 

 

「言っておくがまともな戦になると思うなよ? 数を減らしたおぬしらなぞ、その日のうちに滅ぼせるだろうからな」

 

「「「「「.................................」」」」」

 

 

天照の言う通り、今回の騒動で壊滅状態になった聖書陣営など開戦と同時に滅ぼせる....................もっとも、それがあの時の『腹案』だったんだがな。

 

ただ、それでも悪魔についてはもっと数が減るものかと思っていた。当初の腹案通りであれば、『悪魔』の人口は1/5ほどまでに減るはずだった。

だが実際は1/3ほども残ってしまった。これは呂布が『王の駒』を持ってきたことでディハウザー・ベリアルがこちら側につき、ほとんどの領民を避難させたからだ。

 

本当はもっと数を減らしたかったのだが........................まぁ、非戦闘員である一般悪魔が残ったところで何の問題も無い。一番の足手まといである貴族共は消すことが出来たのだからな。

 

それにディハウザー・ベリアルやリュディガー・ローゼンクロイツなど、力のある悪魔は俺たちについている。

『悪魔』の新政権の樹立だけではなく、新政府までも俺たちで動かせるのだから、むしろ上々の結果だろう。

 

ふふ、やはり呂布の『天運』は凄まじいな。俺の考えた計略が、呂布の『天運』によって最上の結果を出したのだから!!

 

 

 

 

「....................確認させてくれ。本当にトライヘキサは『神器』、もとい『神滅具』でなければ倒せないのか?」

 

もはや抗う術など無いと判断したアザゼルは、重箱の隅を楊枝でほじくるがごとく悪あがきをしてくる。

生憎だが、こちらはこの戦いのためにずっと準備をしてきたんだ。口先だけの抗弁ではどうにもならない。

 

 

「事実じゃ。妾たちの調査の結果、アレの本質は人類を滅ぼすことを存在意義とした『人類悪』だと分かった」

 

「『人類悪』?」

 

「さよう。より詳しく言えば、人類が持つ『より良いものを残したい』という想念........................謂わば【選別】という概念が形となった存在じゃ。グレートレッドが『夢幻』という概念から生まれたようにな」

 

「? 『より良いものを残したい』という思いが『悪』なのですか?」

 

「【選別】という言葉の意味をもっと深く考えてみよ。『より良いものを残す』ということは.....................『そうでないものは切り捨てる』ということじゃろうが」

 

「そりゃあまぁ、そうだわな」

 

 

天照の説明に聖書陣営も分かっているようで分かっていない雰囲気を醸し出す。確かに、ただ【選別】という単語を聞いただけではピンとは来ないだろう。

 

一見すると『より良いものを選別する』というのは、聞こえが良いように思えるが........................しかし【選別】というのはそんなに単純な言葉ではない。

 

 

「『より良いものを選別し残す』。これだけ聞けば、確かに良いイメージが浮かぶでしょう。ですがその反面、『不要なもの・粗悪なものを切り捨てる』という行為でもあります」

 

「『選ばれた側』からすれば良いことじゃろう。だが、『切り捨てられた側』からしたら溜まったものではない。どんな経緯や思いがあったことだとしてもな」

 

「結果の良し悪しに関わらず、行為の善悪に関わらず、【選別】という行為には必ず『正負』の側面がある。

それは誰がやろうと変わらん........................たとえ『神』であってもな」

 

 

『生きる』ということは【選別】の繰り返しだ。そして誰しもが『良いもの』を残したいと考え、『悪いもの』は切り捨てる。

そういった、生きる上で通らなければならない『正負』の行為......................即ち【原罪】。必要な行為でありながら、『正』と『負』の矛盾を内包する生物としての業。

 

 

「つまりトライヘキサは、『より良い人類を残したい』から『不出来で粗悪な人類を切り捨て滅ぼす』って言いたいのか? バカバカしい、そんなことあるはずが無えだろう!」

 

「何を言うておる。その人類規模での【選別】を行った記録が、おぬしら自慢の『聖書』に記されているではないか」

 

 

「「「 ...............................」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ、【ノアの大洪水】かっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!!!!!!!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

未だに【選別】という行為が生み出す闇を理解できない聖書陣営。だが天照の言葉でアザゼルが答えに至り、聖書陣営はようやく【選別】の本質が見えてきたようだった。

 

 

 

【ノアの大洪水】。旧約聖書に記されし、史上最大の天災。

 

地上の堕落した人間に愛想を尽かした神は、洪水によって人類を滅ぼし新しい人類を作ることを決めた。

だが神に認められた人間、『ノア』だけは生き残ることを許された。そしてノアは神の信託を受け箱舟を造り、一部の人間と動物を乗せて生き延びたという。

 

神にとっては『愛』ゆえの必要な行為、聖職者から見れば神の怒りを買った愚か者への天罰........................だが滅ぼされる人間からすれば、『大量虐殺の災厄』としか言いようがない。

 

先ほど誰かが言ったように、これは『聖書の神』ですらも【選別】の原罪から逃れることは出来ないということを示している。

 

 

だが、より良い人類を残すために【選別】を繰り返していけばどうなるか....................最終的に人類は滅んでしまう。

 

 

生物学上、『種の存続のためには100体以上の雌雄が必要』とされている。そのため【選別】によって、人類の母数が100未満になった時点で人類は滅ぶ。

 

聖書にてノアが箱舟に乗せたのは『家族と動物』とされているが、生物学上の観点から見れば実際は家族以外にもそれなりの人間を乗せていたということだ..................もっとも、これを聞けば狂信的な信者は激怒するだろうがな。

 

 

 

「分かったであろう。人類を愛するが故に人類を滅ぼすことは、決してありえないことではない」

 

「そしてトライヘキサが【選別】の『負』の面をもって人類や世界を滅ぼすのなら、対抗できるのは【選別】の『正』の面のみ」

 

「すなわち、神のシステムによって選ばれた存在」

 

 

「それが...............『神器』ってことか...................!」

 

トライヘキサの正体を知り、アザゼルはじめ聖書陣営もようやく納得がいったようだ。トライヘキサを倒すには神器、つまりは若手連中を最前線に出さなくてはいけないということを。

 

 

トライヘキサの正体......................それは『良き人類を残したい』という『人類愛』ゆえに、『粗悪な人類は滅ぼす』という『人類悪』。

 

故に『黙示録の獣』とは偽りの名。それは自らの存在そのものを持って人類に試練を課し、自らを滅ぼした人類のみを是とする【選別】が原罪。

 

 

 

 

その名も.................【選別の獣 トライヘキサ】。

 

 

 






『666の獣』であるトライヘキサを【FGO】っぽく仕上げてみました。

作者の考えでは、まだ判明していない『人類悪 ビースト』の枠に『666の獣』が入っていると考えています。

そしてもし『人類悪』として顕現するとしたら、【選別】になるのではないかと考えましたので、このような形となりました。

もちろんこれはあくまで作者の推測ですので、実際は違う可能性が大いにあります。というのも『666の獣』の場合、聖書が絡んでくるから考察が難しいんですよね.....................。

なので、間違っていたとしても笑って流してください www

それでは皆さん、次回で♪
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