深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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最終章ですけど、何とか日常パート&ギャグパートを捩じ込むことが出来ました。

やっぱり真面目な場面ばかり書いてると息苦しくなってしまいますよねwww




第百九十三話

 

 

 

「押さないでくださーーーーーい! 慌てる必要はありません、皆さんが安全に避難できる時間は充分にありまーーーーす!!」

 

 

 

私の目の前では領民たちが避難のために大移動する光景が広がっていた。それはこのシトリー領だけじゃない。

どこの領地も、今は自領の領民の避難に追われているだろう。

 

トライヘキサとの決戦が五日後となり、主戦場が悪魔の領域内で行われると決まった。聖書陣営も各神話群もそれぞれ決戦の準備に取り掛かっている。

 

しかしトライヘキサとの戦いは、悪魔領にどれだけの被害を及ぼすか見当もつかない。もしかしたら、悪魔領全てが跡形も無く消し飛ぶ可能性もある。

 

そのため、『リリスの泥』から無事であった領地の領民も全員『蒼天の紅旗』の支部へと避難させなくてはならない。

幸いにも一般悪魔の大半は反乱軍に参加していたため、決戦の準備を行いつつ残った領民を避難させるだけの時間はある。

 

それでも何万人という規模の避難となるので、効率よく避難を進めないとトラブルなどが起こり間に合わない可能性がある。

 

だから私たちシトリーも、朝から避難誘導を手伝っていた。

 

 

「あ、あの..............ソーナ様。私たちは、冥界はどうなってしまうのでしょうか?」

 

「あの恐ろしい化け物に、私たちは滅ぼされてしまうんじゃあ.................」

 

「ソーナさまぁ、あの恐いのにみんな食べられちゃうのぉ?」

 

私が眷属の皆と一緒に誘導をしていると、不安がっている避難民たちが寄ってきた。こういうのは伝染するものなのか、一人集まるとまた一人と次々に寄ってくる。

 

このままでは避難に支障が出てしまう..................でも彼らの不安は尤もだ。あんな強大な魔獣を見れば、恐怖や絶望を感じてもおかしくはない。

 

なので私は努めて冷静に、そして優しく彼らに答える。

 

 

「安心してください、あのトライヘキサは私たちが必ず倒します」

 

「で、でも.............あの化け物は、かのグレートレッドよりも強いのでしょう!? そんな相手に、本当に勝てるのでしょうか.................?」

 

どうやらトライヘキサがグレートレッドに匹敵するという情報が領民たちへ流れてしまっているようだ。

『人の口に戸は立てられない』とは言いますが、どこからそんな話が流れたのでしょう?

 

「ええ。確かにあの魔獣は、かの赤龍神帝よりも強大のようです」

 

「っ、な、なら「ですが、心配には及びません」..................え?」

 

グレートレッドを超える魔獣と聞いて、さらに不安になってしまう領民たち。ですが私は敢えてありのままの事実を伝える....................掛け値なしの事実を。

 

 

「皆さんの危惧しているように、各神話群が協力してくれたとしても、私たちだけではあの魔獣を倒すことは難しいでしょう。

しかし、必ず勝てます。だって私たちには..................そのグレートレッドすらも超える『世界最強』が味方してくれているのですから!!!」

 

 

「「「「「ッッッッッッッッッ!!!!!」」」」」

 

 

そうだ、この危機的状況であっても......................私たちには希望がある。『呂布奉先』という名の希望がっ!!!

 

「呂布殿は仰られました、『自分一人で戦った場合、トライヘキサとは相討ちになる可能性が高い』と。

つまり、あの魔獣は必ず倒すことができるんです。この結果が覆ることはありません」

 

「ほ、本当ですかっ!?」

 

「はい。ですが、それでは呂布殿一人が犠牲となってしまいます。そうならないためにも、私たちは全力で呂布殿にお力添えしなくてはいけません」

 

「..........................................」

 

「ですから皆さん。どうか絶望することなく、私たちを信じて避難に協力していただけませんか? 避難が完了しなければ、私たちも全力で戦うことができなくなってしまいます。

どうか皆さんの...........................お力を貸してください。お願いします」

 

「ち、力を貸すって....................俺たちにも戦えってことですか!?」

 

「そうです。ですが、直接トライヘキサと相対することだけが『戦う』ということではありません。恐怖に負けず、絶望に染まらないよう平常通りに努めるのも立派な『戦い』です。

皆さんが取り乱してしまえば、それだけ避難に時間が掛かり決戦に間に合わなくなってしまいます」

 

「っ......................................」

 

「トライヘキサに『勝つ』ために、私たちや呂布殿が全力で戦える舞台づくりに協力してほしいのです。そのためには皆さんの『心の強さ』が必要なのです」

 

こんな状況だからこそ分かる。呂布殿から教わった『燃』、すなわち心の修行。あの修行があったからこそ、私たちはこんな時でも自分のやるべきこと・必要なことを見極めて尽力することができるのだ。

 

 

「皆さんはあの魔獣の恐ろしさに恐怖していることでしょう。目の前の事態に理解が追いつけず不安にもなっているでしょう。

立て続けに起こる脅威に心が憔悴していると思います。ですが........................それも五日後に終わります」

 

勝とうが負けようが全ては五日後に終わるのだ。私たちはその五日後のため、出来ることに全力を尽くす! 皆でそう決めたのだ!!

 

 

「希望は確かにあるのです。私たちはその希望を実現するため..................トライヘキサに『勝つ戦い』をします。

ですから皆さんには、トライヘキサがもたらす恐怖や脅威に『負けない戦い』をしてほしいのです」

 

 

私たちはトライヘキサに『勝つ』ための戦いを。それが出来ない者はトライヘキサに『負けない』ための戦いを。

あの魔獣との『戦い』には、この世界にある全ての『力』を結集させなくてはならない。武力だけじゃない、『心の力』も含めて!!!

 

 

「どうか私たちに協力してください、一緒に戦ってください..........................お願いしますっ!!!」

 

 

「「「「...............................」」」」

 

 

私は自分の思いをありのまま伝えた。一切の脚色が無い、心に思ったことをそのまま口にした。全てを決める戦いなのだ、ならば今さら取り繕う必要も無い。

 

私が頭を下げると、眷属の子たちも一緒に頭を下げてくれる。先ほどまで騒いでいた領民も私の話を聞いて、静まり返ってしまった。

 

私と眷属の皆の姿を見て、領民たちも戸惑っている。いきなり私たちのような若者から一斉に頭を下げられてしまえば困惑もするでしょう。

 

けど.......................あの呂布殿ですら、私たちに協力してもらうために頭を下げたのだ!! それなのに私たちが下げられない理由は無い!!!

 

 

 

そうして私たちが顔を上げずにいると、領民たちの一人から声を掛けられた。

 

「頭を御上げください、ソーナ様。眷属の皆さんも.....................若い子にいつまでも頭を下げさせるわけにはいきません」

 

優しさを感じさせる声に反応して頭を上げると、妙齢な女性が微笑んでいた。その方だけではない、周りにいる人たちも私たちに笑いかけてくれていた。

 

 

「貴方様の言う通り、私たちには『世界最強』である『深紅の武人』様が付いてくださっているのです。ならば何も不安に思うことはありません」

 

「それなのに俺たちが慌てたりしてたら、却ってソーナ様や呂布様の足を引っ張ってしまいます」

 

「五日後にはあのデカブツは倒されるんですよね。ならたった五日間の辛抱なんだ、それぐらいなら我慢できますよ!」

 

「だからソーナ様は、俺たちのことなんか気にせず思いっきり戦ってきてください!」

 

「そうです! 私たちは大丈夫ですから!! 私たちの分まで、『深紅の武人』様の力になって差し上げてください!!!」

 

気づくとこの場を支配していた恐怖や焦燥感は無くなっており、誰一人慌しくしている者はいなかった。それどころか、皆の顔にやる気が漲って活気づく。

 

 

「っ~~~~~~、ありがとう..............ございますっ................!」

 

 

領民たちが一丸となって私たちへ協力してくれることに感極まり、思わず涙を流してしまう。後ろからも眷属の子たちのすすり泣く声が聞こえてきた。

 

 

「あらあら、大変♪ せっかくの皆さんの綺麗なお顔が台無しですよ?」

「そうだ! おい、坊主。せっかくの大舞台だってのに、男がそんなしみったれた顔じゃあいけねえ!!」

 

「朝からずっと立ちっぱなしでしたよね。誘導くらいなら私たちでも出来ますから、皆さんは休んできてください」

「そうだな! よし、俺たちも協力するぞ!! 若いヤツは年寄りや怪我人に手を貸してやれ!!!」

「避難は女子供を優先させろ! その次はお年寄りだ!! 何としても今日中に避難を完了させるんだ!!!」

 

 

「では某は小さな女の子を優先的に運ぶでござる。デュフフフフフ♪ 肌に不純物の無い子どもは冥界の宝ですからな!」

 

「おい、アイツ!? 鼻息荒くしながら子どもに猛スピードで向かっていったぞ、誰か止めろ!!!」

 

 

ご婦人方が手ぬぐいや飲み物を持ってきてくれて、私たちに休憩するよう促してくる。避難誘導は男性が中心となって行い、一人で移動するのが大変そうな方には手を貸したり荷車に乗せたりして避難を手伝っていた。

 

私はこんなに素晴らしい領民に囲まれていたことを誇りに思いながら、『絶対に勝つ』という決意を眷属の皆と一緒に固める!

 

 

 

「何だ、あのデブ!? 子どもを十人ぐらい荷車に乗せて、何であんな速さで走れるんだ!?」

 

「いけない、子どもたちも面白がって近づいていってる!! おーーーーーい、子供たち! ソイツに近づいちゃダメだーーーーーーーー!!!」

 

ただ.................あの方は何者なのでしょうか? 本来なら馬で引くような大きさの荷車を電車のように連結させ、子供をどんどん乗せていっている。

それなのに『騎士』並みのスピードで走るなんて.................もしかしてどなたかの『女王』とか?

 

 

 

 

「うふふ♪ さすがはソーナちゃん、不安になってる領民の皆をまとめあげちゃうなんて☆」

 

「っ、お、お姉様!? どうしてこちらに!?」

 

私たちが休憩を取ろうとすると、後ろからお姉様に話しかけられた! ご婦人の方々も魔王であるお姉様の姿を見て、畏まっている。

 

しかしお姉様は皆に笑顔を向けて、そのまま楽にするように促す。

 

「こっちの準備も一段落したから様子を見に来たんだ☆ でも、この様子なら心配いらなそうだね♪」

 

「....................はい。本当に、ありがたい限りです」

 

私は領民たちの心遣いに感謝し、お姉様は互いに声を掛け合って協力している領民たちの光景に満足そうにしている。

お姉様が来たことで、ご婦人方も私をお姉様に任せ避難誘導に参加する。

 

ご婦人方が離れ、領民たちも協力してくれているため私たちのいる場所は静かとなってしまった..............................でも不思議と嫌な静寂ではない。

領民たちが手を取り合っている姿は私たちに休憩以上の力を与えてくれているのだから。

 

 

そうして領民たちを見守りながら身体を休めていると、お姉様が先ほどとは一転し真面目そうな顔を見せる。

 

 

「ソーナちゃん。私ね、この戦いが終わったら.................魔王を辞めることにしたの」

 

「「「「ッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」」」」

 

 

お姉様からもたらされた突然の告白! 私だけではなく眷属の子たちも驚いてしまった!! でもお姉様は満足そうに微笑みながら、話を続けてくれる。

 

「私だけじゃないよ、サーゼクスちゃんもアジュカちゃんもファルビーも................この戦いが終わったら全員、魔王を辞めるって決めたんだ」

 

「っ、アジュカ様たちまで...............!?」

 

サーゼクス様が魔王を辞職されることは聞いていた。魔王としてではなく、一悪魔としての感情を優先しグレイフィア様を助けに行った自分は魔王として失格だと.................でも、どうしてアジュカ様たちまで魔王を辞めなくてはならないというの!?

 

 

「ディハウザーくんや他のプロランカーの皆とも話し合ってね、大王派の不正を止められなかったことを謝罪したの。

そしたら『貴族制や魔王を廃止して政治を民主化してくれるなら、反乱軍は解体して新政府の樹立にも全面的に協力する』って言ってくれたんだ」

 

「っ、それを...................魔王様方は受け入れたということですか?」

 

「うん、元々そういう話だったしね。それにソーナちゃんとも約束してたでしょ?」

 

 

確かにそういう話をしたことはあった。呂布殿の修行を受けるため、曹操殿から夢を叶える覚悟を問われた時.................時期が来たら私は貴族であること、お姉様は魔王であることを捨てると話し合った。

 

 

「丁度良いタイミングだったしね.................だからこれで良かったんだよ。もちろん、新政府の樹立のためにやらなくちゃいけないことは沢山あるんだけどね」

 

貴族制や魔王を廃止したからといって、すぐに民主政治を始められるわけではない。日本式にやるのであれば、選挙や選挙を管理する委員会の設立。

今まで貴族や魔王様方が行っていた仕事を引き継ぐ機関も作らないといけない。

 

お姉様をはじめ、他の魔王様方もそういった新政府を機能させるための『受け皿』を作るべく、しばらくは奔走する毎日になるでしょう。

 

普段は軽いノリのお姉様が、こんなに真面目な顔をしているということは『本気』なのだろう。

そして他の魔王様方も....................なら、私が言えることは何もない。

 

魔王様方がそのように決断したのなら、相応の覚悟あってのお考えなのだから。

 

 

「そう、ですか...................では、これから大変になりますね」

 

「うん☆ それでね、ソーナちゃんにお姉ちゃんから提案があるんだけど~~~~」

 

私がお姉様の決断を受け入れていると、また普段の軽い雰囲気に戻ってしまう。この変わり身の早さ、いつも思いますがひょっとして二重人格なのではないでしょうか?

 

「....................何ですか?」

 

昔からお姉様の提案と言うのはロクなものではなかった。そのせいで思わずお姉様を半睨みしてしまう。

しかし姉は私の視線など全く気にすることも無く、話を続ける。

 

 

「うん! ソーナちゃん.....................」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「新政府のリーダーになってみる気はない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お姉様の提案は私の予想だにしていなかったものだった.......................。

 

 

 

 

 

 

 

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「よっと! ふぅ................これでここも最後だな」

 

 

俺たちグレモリーは、決戦の準備と領民の避難を手伝うべく一旦グレモリー領へと戻っていた。グレモリー領には自領だけじゃなく、フェニックス領の領民も受け入れていたため数が他の領地よりも多い。

 

そのためやることが多く、グレモリーだけではなくフェニックス家の人たちも総出で駆り出されている。

部長やライザーさん、それに両家の人たちもずっと避難誘導なとに掛かりきりだ。

 

 

そして眷属の俺たちは手分けして避難誘導を手伝ったり、両家の重要書類や貴重品を持ち出したりしている。

トライヘキサとの戦いで消失しようものなら、今後の領地経営にも影響が出てしまうということで最低限だけでも持って行かないといけないんだそうだ。

 

ただ『最低限』だけと言っても、グレモリー領は日本の本州ぐらいの広さがある。そのため『最低限』でも、その数はかなりのものだ。

朝から作業しているってのに、まだ1/3ぐらいしか終わっていない。

 

けどグレモリー家にとって必要だってんならやるしかない。それに何かやっていた方が気が紛れるしな!

 

 

 

「やあ、イッセーくん。調子はどうだい? あまり無理をしてはダメだよ、決戦は五日後なんだから」

 

「ッ、サ、サーゼクス様ッ!?」

 

俺が気を取り直して次の作業に取り掛かろうとすると、後ろからサーゼクス様に声を掛けられた!

いきなり声を掛けられたため、俺はついつい直立不動となってしまう。

 

「ハハハ、楽にしてくれて構わないよ。ここには私とキミしかいないのだからね」

 

「っ、は、はあ.............では、お言葉に甘えて。ですが、どうしてここに? 決戦前と言うことでお忙しいんじゃないでしょうか」

 

見るといつもは一緒にいるだろうグレイフィアさんもおらず、本当にサーゼクス様だけだった。決戦は五日後だということで魔王様方も忙しいハズ。

 

それなのにわざわざ俺のところに来た理由は何だ?

 

 

「いや、なに。キミには今回の一件で大変助けられたのに、ちゃんとしたお礼を言っていなかったからね。

キチンと言っておきたかったのさ................ありがとう、イッセーくん。キミがリアスの眷属になってくれて良かったよ」

 

「っ、そ、そんな! 俺の方こそ、今までたくさんお世話になって迷惑まで掛けてきたんです!

それを考えたらまだまだ足りないぐらいです!! ましてや、魔王様にお礼を言われるなんて、恐れ多いです!」

 

『覇龍』の暴走の件で、魔王様やアザゼル先生には迷惑を掛けまくったんだ。それなのにこんな風にお礼を言われたらこっちが逆に申し訳なく思っちまう。

 

 

「そうか.................でも私は本当に感謝してるんだよ。だから『魔王』として受け取れないなら、私『個人』として受け取ってくれないか?」

 

「は、はあ.................え? 『個人』って、どういう意味です?」

 

「ああ。実はね...............私は魔王を辞することになったんだ。私だけじゃない、セラフォルーたち他の魔王もこの戦いが終わったら全員魔王を辞職するつもりだよ」

 

 

「え? えええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!」

 

 

サ、サーゼクス様が魔王を辞める!? 確かにそんな話をされたことはあったけど、でも他の魔王様まで辞めるなんて...................!?

 

俺は目玉が飛び出るくらい驚いていると、サーゼクス様は普段と変わらない様子で事情を説明してくれた。

 

 

何でも反乱軍のリーダー格であるディハウザーさんたちと魔王様たちで、そのように話し合ったらしい。

『悪魔』の貴族制と魔王を廃止する代わりにこれまでのことを水に流し、民主政治を作ることに協力すると約束を取り交わしたそうだ。

 

ディハウザーさんたちも諸悪の根源である現政権が無くなるならということで、反乱軍も解体したらしい。

既に反乱軍は解体され、参加していた領民にもOKをもらっているんだとか。

 

確かに貴族はもうほとんど残っていないし、一般悪魔たちを下に見ていた政府上層部も無い。それなら新しく政府を作り直した方が良いかもしれないけど......................。

 

 

「でも、それならサーゼクス様たちはどうするんですか? それにグレモリー家はどうなるんです?」

 

「そうだね。魔王でなくなり、自由の身となったら..............音楽家でもやろうかな♪ これでも幼い頃は作曲家になりたいと思っていたんだよ。

息子や妻と一緒に世界中を旅して、音楽活動をするのも悪くないかもね」

 

魔王様から一転して音楽家....................何という破天荒な人生を歩むんだろう。相変わらずこの人の考えは分からないな。

でも自由奔放に生きているのはサーゼクス様にぴったりかもしれない..................グレイフィアさんは大変になりそうだけど。

 

 

「ああ、それから..................呂布殿と『友人』になりたいね。一度彼とはじっくりと話をしたいと思っていたんだ。

今までは『魔王』としての立場があって控えていたが、彼とは良き友人になれると思うんだ。父上も似たようなことを言っていたよ」

 

どうやらサーゼクス様とジオティクス様は呂布さんのことを気に入ったらしい。

神様たちからの警告はあるけど、『魔王』や『政府』に関係なく個人的交友なら問題ない..................のかな?

 

 

「グレモリー家についても心配しなくていいよ。貴族としての地位は無くなるけど、所有の財産はそのままにするから。

だから土地の権利とか資産はそのままに、政府の機関が上に立つ感じだね」

 

なるほど、つまり日本で言えば地主の上に知事とかの地方自治体が作られるって感じなのか.....................貴族としての立場がどのようなものかは詳しく分からないけど、グレモリー家の人たちが今まで通りに暮らせるなら良かった。

 

 

「レーティングゲームにしても一新して再開するつもりだ。その他にも残すべきものは残して、無くすべきものは無くしていくよ」

 

全てを新しくするのではなく、良い部分は残すってことらしい。俺としてはレーティングゲームをいずれ再開してくれるのは万々歳だ。

 

部長の夢もあるし、俺の目標でもあるからな!!!

 

「ただそれでも、いきなり民主政治は始められないからね。色々な制度や機関を作らないといけないから、当分はアジュカたちと一緒に仕事に忙殺されると思うよ。ハハハハハ♪」

 

そりゃあ『悪魔』という種族全体がいきなり『右向け右』と言われて、急に方向転換なんか出来ないだろう。

しかも今までとは真逆の政治を始めるんだ、それなりの準備と時間が必要になるはずだ。

 

けど、サーゼクス様は愉快そうに笑っていた。今までは大王派だのなんだのと要らんことに神経を使っていたのか、俺の目には肩の荷が下りたように見える。

 

 

 

 

「ところでイッセーくん....................一つ聞いていいかい?」

 

「っ...................はい、何でしょう」

 

そうしてひとしきり笑うと、サーゼクス様は今度は凄く真剣な目で俺を見てきた。あまりにも別人のような様変わりだったので、俺もつい背筋が伸びてしまう。

 

だが次に発せられた言葉は俺の予想を遥かに上回るほどの衝撃だった!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キミは......................リアスのことが好きなのかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「........................................え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりにも突拍子も無い質問に、俺の時は止まってしまった....................いきなり何を言い出すんだ、このシスコン魔王様は? あ、でも、もうすぐ魔王じゃなくなるのか。

 

俺の思考は完全にフリーズしてしまうが、それでもサーゼクス様の気配は変わることなく再度尋ねてくる。

 

 

「いや、だから『主ではなくリアスのことを【一人の女性】として愛しているのかい?』と聞いているんだよ」

 

「あ、いえ、質問の意味は分かるんですけど..................何でそんなことを聞いてくるんです?」

 

「だってキミ、よくリアスのことを目で追っているじゃないか。もっと言うと、リアスの胸に目が釘付けだし」

 

 

気づかれてたああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!

 

 

伝説の魔王様の妹に色目使ってることがモロにバレてたよ! ってことは、もしかして部長のご両親も気づいてるってこと!?

眷属悪魔が自分の娘をそんな目で見ていて、よく今まで何も言われなかったな俺!!!!

 

 

「聞くところによると、毎晩リアスと一緒に風呂に入ったり一緒のベッドで寝ているそうじゃないか.......................私だってここ数年はそんなことしていないのに!!!」

 

何か別のところで怒りを感じてらっしゃる!? そりゃあ高校生にもなって、家族と一緒に風呂に入ったり寝たりはしないでしょう。

 

そういうのはせいぜい小学生ぐらいまでじゃないだろうか?

 

 

「それで? 嫁入り前の妹とそこまで親密な関係になっておきながら、まさか責任を取ることもせず何も思うことは無いと言うつもりではないだろうね」

 

「え、あ、いや、その~~~~~~~~~~」

 

「どうなんだい、イッセーくん! リアスのことを、リーアたんのことを!! どう思っているんだ!!!

返答次第ではトライヘキサとの決戦前に、キミの命が潰えると思いたまえ!!!!」

 

殺すの!? 返答次第で俺の人生がシスコン魔王様によって終了しちゃうの!? トライヘキサはどうするのさ、アレは神滅具じゃないと倒せないって話でしょ!?

 

目の前のシスコン魔王は世界の危機よりも溺愛する妹のことの方が重要なようだ! 鬼気迫る顔を『ズズイッ!』と近づけてきて有無を言わせない!!!

 

これは俺も正直に言わないと、本当に命が無い!!!!

 

 

 

 

 

「..................................きです」

 

「聞こえないね、もっとハッキリと!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ~~~~~~、好きですっ!!! 俺は眷属としてではなく、一人の『男』として....................リアス・グレモリーのことが大好きです!!!!」

 

 

 

 

サーゼクス様に強要され、俺は思いっきり自分の想いを叫んだ!!!

 

 

主であり、オカ研の部長であり、憧れの先輩である『リアス・グレモリー』。こんな俺を最後まで見捨てず信じてくれた大切な女性。

 

最初はレイナーレに殺された俺を生き返らせてくれたことに恩を感じていた。グラマーで俺の好みにドストライクな女性が自分の主ということで興奮もした。

 

俺はいつだって部長のことを下心丸出しで見ていた........................でも俺が『覇龍』で暴走した時、命懸けで俺を止めようとしケガまで負ったということを聞かされた。

恥ずかしいのを我慢して『龍闘気』のコントロールのために身体を張って協力してくれた。

 

そこまで俺に対して一生懸命になってくれる女性を好きにならないわけがない! 初めは下心が先行していたけど、今は心から部長のことが好きなんだ!!

 

部長は眷属の皆に愛情を注いでくれている。もし俺じゃなくても、同じ事情なら部長は同じことをしてくれるだろう。

けど........................それでも俺はあの人のことが好きなんだ! この気持ちだけは他の誰にも負けない!!

 

 

俺が目を瞑って答えると、サーゼクス様は真剣な眼差しから今度は優し気な目を向けてくれる。その目はどこかスッキリしたような表情だった。

 

 

「そうか...................それで? キミはリアスに告白するつもりなのかい?」

 

「っ、いえ...................今の俺は部長には相応しくありません、立場も違います。だから、告白しても部長を困らせるだけかと.....................」

 

部長は上級悪魔で俺は下級悪魔、部長は主で俺は下僕。それなのに自分の気持ちだけ押し付けるわけにはいかない。

 

断られるのはいい、元々部長と俺は月とスッポンだからな..................でも、そのせいで今の関係が崩れるのが恐い。そんなことになるなら、いっそのこと黙っておいた方が良い。

 

 

「ふむ..................立場が違うというのは『主』と『下僕』のことを指しているのかね? だとしたら気にすることはない、私とグレイフィアも『夫婦』であり『主』と『下僕』だからね」

 

っ、そういえばそうだった。サーゼクス様もグレイフィアさんも元々『貴族悪魔』だけど、グレイフィアさんはサーゼクス様の『女王』であり従者でもある。

 

けどそれは外向きの話、プライベートでは二人は『夫婦』でグレイフィアさんはサーゼクス様を尻に敷いている。

 

 

「そして『貴族』と『庶民』という地位を気にしているなら、それも問題ない。先ほども言ったが貴族制は廃止される予定だ。

そうなればリアスも庶民になる、キミと地位は同じになるよ」

 

「っ、じゃあ........................!」

 

「『立場』や『地位』を理由にキミが諦めることは無いということだ。あとは本人の気持ち次第だね」

 

な、なるほど................ってことは後は俺が告白できるか、そして部長が俺の気持ちに答えてくれるかの問題ってことか。

 

 

「そうですか.....................でも、俺はまだ部長に相応しくありません。だから部長に相応しい『男』になるまで、告白はしないつもりです」

 

「相応しい?」

 

「はい、俺は部長に約束したんです。『冥界最高の兵士』になるって、『歴代最高の赤龍帝』になるって。

その約束を果たすまでは...................俺は部長の『眷属』として、部長を支えるつもりです」

 

これは...................俺の意地だ。部長はこんな俺を信じてくれた、弱っちい俺の目標すらも『必ず叶えてくれる』と思っている。

だからその信頼に応えない限り、俺は部長に相応しい『男』とは言えない。

 

 

「もしリアスが他の人を好きになったらどうするんだい? キミはそれを笑って祝福できるのかい?

『こんなことなら告白しておけば』って後悔しても遅いんだよ」

 

「っ.....................だとしても、俺は『約束』したんです。たとえ部長に好きな人が出来たとしても、俺はこの約束を果たすまでは部長に告白はしません」

 

もし約束を果たす前に部長に相応しい人が現れて、結婚でもすれば....................泣くだろうし後悔もするだろう、自分の不甲斐なさに嫌気が差すと思う。

 

けど、好きな人が信じてくれた『約束』を破るようなクズ野郎にだけはなりたくない!!! だから...............これで良いんだ。

 

何があろうと好きな人と交わした約束を守ると伝えると、サーゼクス様はフッと笑って俺の頭に手を乗せた。

 

 

「そうか....................なら気の済むまでやってみたまえ。私はキミの考えを支持する。頑張るんだよ、イッセーくん」

 

「っ、あ、ありがとうございますっっっ!!!!!」

 

サーゼクス様は満足そうに笑い、俺のことを応援してくれる。良かった、部長のお兄さんであるサーゼクス様が俺を「ただし」..................え?

 

 

 

「キミが約束を守り、リーアたんがキミの気持ちに応えたとしても..................私がそれを認めるかは別問題だ!」

 

「え? でも今、『本人の気持ち次第だ』って.................」

 

「それとこれとは話が別だ! 私のリーアたんに相応しい男かどうかは私が見極める!! 異論は認めん!!!」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ..................」

 

さっきまでの良い雰囲気をブチ壊すかのようなシスコンっぷり。『魔王』としての威厳は皆無だが、それを超える迫力はまさしく『歴戦の強者』と言えた..............俺の感動を返して欲しい。

 

 

「ちなみに私の審査を通過したとしても、父上の審査もあるからね! 覚悟したまえ!!」

 

 

ラスボスであるシスコン魔王を倒しても、その上に裏ボスである親バカもいるのか...................とりあえず部長が別の男性を連れてきても心配は要らなさそうだな。

 

「ましてや! 私ですら叶わないリーアたんとのお風呂や添い寝を堪能しているキミには、特に厳しく査定させてもらう!!」

 

私怨じゃん! そこはせめて公平な目で見てよ! そんな身内贔屓みたいなことやってるから、クーデターなんて起こされたんじゃないんですか!?

 

 

「そんなにお風呂や添い寝が恋しいなら、グレイフィアさんにお願いしたらどうですか? 夫婦なんですし」

 

「それはそれ、これはこれだ!」

 

またそれですか! そう言っておけば何でも押し通せると思ったら大間違いですからね!? そこは『妹』よりも『妻』を求めるべきでしょ!!!

 

 

「それにグレイフィアも、寄る年波のせいか.................魔力を使っても肌のハリがね「大きなお世話です」ッッッッッッ!!!!」

 

不意に聞こえた断罪者の声、サーゼクス様がギギギギと錆びついた音を出しながら後ろを振り向く。

 

そこには.......................絶対零度の目を向けた、世にも恐ろしいグレイフィアさんの姿があった。

 

 

「グ、グレイフィア...................どうしてここに......................」

 

「いつまで経っても戻ってこないので、様子を見に来たのです。まさか無駄話どころか、私の肌について指摘する余裕まであるとは思いませんでした」

 

「い、いや、これはだね、その....................」

 

「そんなに余裕があるのなら、一日中働いても問題ありませんね。さ、行きましょう。やることは山積みなのですから」

 

 

グレイフィアさんはサーゼクス様の耳を摘まみ引きずっていく。『最恐』の『女王』様の前では魔王と言えども太刀打ちは出来ず、成す術なく引きずられるしかなかった。

 

 

 

「.......................俺も作業続けよっと」

 

 

 

邪魔者、もといサーゼクス様もいなくなったことなので作業を再開する俺..................しかし俺はこの場から立ち去るもう一つの存在に気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.....................待ってるからね、イッセー////////////////////」

 

 

 

 

 






これで何とか一誠とリアスの関係も原作に近づいたかと思います。

何度原作を読んでも、『貴族』であるリアスと『庶民』である一誠があの世界で誰にも反対されることなく結ばれてることに違和感があったんですよね。

それでは皆さん、次回で♪
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