深紅の武人が住くD×D   作:あさやん&あさやん

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本作の【ノーマルエンド】の最終話です。二年ほど続いた本作も今話で一区切りとなります。
これもひとえに応援してくださった読者の皆さんのおかげだと思っております。

【あとがき】も投稿してますので、今話を読んでから【あとがき】を読んでくださると幸いです。

次話からは【トゥルーエンド】ルートとなります。




第二百一話

 

 

 

 

トライヘキサを倒した奉先様の身体がどんどんと薄くなっていくのを見て、すぐさま転移で跳んできた私たち。

 

 

愛する人が目の前から消えていく.......................そんな現実を認めることが出来ない私は、ただ立ち尽くすしかなかった。

 

どうして嫌な予感というものは、こうまで当たるものなのだろうか!!!

 

私は世界の理不尽さを嘆くも、時間は無情にも過ぎていく。奉先様は残された時間の中で、イッセーくんや『蒼天の紅旗』に出来る限りのことを伝えていた。

 

そして私と奉先様の目が合った瞬間................私は居ても立っても居られず駆け出した!!!

 

 

「奉先様!!!」

「呂布さん!!!」

「呂布様!!!」

「呂布殿!!!」

 

 

私が走り出すと同時にアーシアさん・ロスヴァイセさん・タマモさんも奉先様へと向かっていく。やっぱり皆さんも集まって来たのですね。

 

このまま奉先様がいなくなるなんて....................せっかく婚約者となり、晴れて結婚も出来る立場になったのに!!!

 

言葉を交わさずとも想いが一致している私たちは、消えゆく奉先様を何とか引き留めるべく抱きつこうとする!!! 

 

 

しかし!!!!

 

 

スゥ....................ドタンッッッ!!!!

 

 

「「「「「!!!!!!!!!!!!」」」」」

 

 

「朱乃!?」

「アーシアさん!!!」

 

 

私たちは奉先様に触れることが出来ず、すり抜けてしまう!? まるで今の奉先様が立体映像か幻かのように触ることが出来なかった!!!!

 

 

「そ、そんな........................!」

 

「う、う、うぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ..................!!!!」

 

「ぅ、ぐすっ、りょふ、さまぁ..................」

 

「こんな...............こんなの、ありませんわ.....................」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「うああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!

あああああああああああああああああああああああああああああああ......................!!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう奉先様は、触れることすら出来ない存在へとなってしまった。

 

その事実に私たちはうずくまって泣きじゃくる。せっかく妻として、奉先様と一緒に生きていけるようになったというのに..........................また奉先様は、手の届かないところへと行かれてしまわれた。

 

私たちは非情な現実に打ちひしがれ、ただ泣くことしか出来ないでいた。周りからもすすり泣く声が聞こえてくる。

 

 

そこに奉先様が近づいてきて、優しく抱きしめようとする...................だけど、私たちはもう互いに触れ合うことが出来ない。こんなに近くにいるのに、なんて遠いの!!!!

 

もはや奉先様からも触れることが出来ないため、私たちに腕を添えるだけの悲しい抱擁。あれほど心地よかった奉先様の体温を感じることも出来ず、なおさら悲しくなり涙が止まらない!!!

 

 

「朱乃」

「っ、ほ、ほうせん、さまぁ.....................」

 

「アーシア」

「ぐす、りょふさぁん........................」

 

「ロセ」

「ぅぅ、りょふ、さま......................」

 

「タマモ」

「っ、りょふどのぉ.........................」

 

 

泣きじゃくる私たちに奉先様が優しく呼びかけてくる。こんな顔は見せてはいけないと分かっていながらも、流れる涙を止めることが出来ない!

 

私たちが泣いているところ見せれば、奉先様を困らせるだけだと頭では分かっていても....................無理なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな..........................愛している」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「ッッッッッッッッッッッッ////////////////////」」」」

 

 

 

 

一向に泣き止むことが無い私たちへ、奉先様が『愛している』と言ってくれる。奉先からの告白に顔が真っ赤になるが、まだ涙が止まらない。

続けて奉先様は、私たち一人一人に自身の想いを伝えてくださる。

 

 

「朱乃、愛している。帰ってきたら、結婚式を挙げよう」

「ほうせんさまぁ...................//////////////」

 

「アーシア、愛している。帰ってきたら、いつもの素敵な笑顔で、迎えてくれ」

「りょふさぁん...................//////////////」

 

「ロセ、愛している。帰ってきたら、ロセの家族に、挨拶に行こう」

「りょふさまぁ...................///////////////」

 

「タマモ、愛している。帰ってきたら、一緒に妖怪の里を回ろう」

「りょふどのぉ..................//////////////」

 

 

泣いている私たちに奉先様は自分がやりたいことを伝え、『必ず帰ってくる』と約束してくださる。

それを聞いて私たちは、少しだけ前を向こうと思えた。『奉先様は必ず帰ってくる』、そんな希望を奉先様は与えてくれたのだ。

 

いつになるかは分からない...................けど、奉先様は絶対に帰ってくる。だってこの方は『世界最強』で、私たちの『旦那様』なんですもの。

 

ならば必ず私たちのもとへ帰ってきてくださるはず!!!

 

 

『これ以上、奉先様に心配をかけるわけにはいかない!』

『妻として夫を笑顔で送り出してあげないと!』

 

 

そう思った私たちは、涙を拭い無言で頷き合う。言葉は交わさずとも、想いは一つだった。

 

何故なら私たちは.....................『深紅の武人の妻』なのですから!!!

 

 

「奉先様」

「呂布さん」

「呂布様」

「呂布殿」

 

 

「「「「いってらっしゃい♪」」」」

 

 

「ん......................いってきます」

 

 

私たちは出来る限りの笑顔で送り出すと、奉先様も満足そうに答えてくださる。ようやく互いに笑顔が戻ったことを実感した私たちは、そっと抱きしめ合った。

 

触れることすら叶わないけれど、それでも互いに存在を感じあえる.......................言葉は要らなかった、ただお互いに『そこ』に確かにいるというだけで十分だった。

 

 

 

 

そうして残された僅かな時をお互いに愛おしく感じながら........................奉先様は消えていった。

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

朱乃たちと別れた俺は、一人で歩いていた.......................。

 

 

どこへ向かっているのかも分からない、ただ俺の前に伸びる『宝石のように光る』一本道を歩いている。

俺が歩を進めると後ろから道は消えていくため、戻ることは出来ない。だから、ただ前へと進んでいくしかない。

 

ここがどこなのか、何が起こるかも分からないから『禁手』は解除していない。

 

そうして歩いていくと........................蜘蛛の巣のように張り巡らされた場所へとやってきた。

無数の道が四方八方へと伸びており、その中心にある広い足場でダンディーな男性が机に座って分厚い本を読んでいる。

 

 

「.....................来たか。ここに人が訪れるのは初めてだな」

 

 

こちらを振り向くこともなく男性が口を開く。黒いマントを羽織っており、貴族を思わせるような白い服を見事に着こなしている。

灰色の短髪にライオンのような髭を携え、サイラオーグとまでは行かなくてもかなりガタイのいい体格をしていた。

 

ぶっきらぼうな初老の男性、もちろん初対面だが..................前世の知識から俺はこの人物を知っていた。

 

 

「..................ゼルレッチ」

 

「ほう、その名を知っている者がいるとはな。久しぶりに自分の名前を呼ばれたよ」

 

 

キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。ソロモン王の弟子の一人にして宝石魔術の祖。そして、第二魔法『並行世界の運営』の使い手。

 

ソロモン王の死後は神代の終わりを見届けて表舞台から姿を消し、以降は『世界の外側』とも呼べる場所で『並行世界』の行く末を見守っている人物だ。

 

ぶっちゃけ何歳なんだよ、精神的には植物の領域なんじゃね?

 

 

「俺を呼んだのは....................アナタか?」

 

「ふむ。そうとも言えるし、違うとも言える。何とも難しい質問だ」

 

「......................禅問答か?」

 

魔術師と言うのはどうしてこう、頭でっかちというか気難しい連中が多いのかね。ゲオルクも変に理屈っぽいところがあるし。

 

まったく、ルフェイの爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいよ....................いいや、やめとこう。

 

あんなに可愛らしいルフェイの爪の垢をこんなジジイに飲ませるなんて贅沢だ。それにアーサーに知られたら、無言でコールブランド片手に切りかかって来るに違いない。

 

『世の中の妹を持つ兄は総じてシスコンなんじゃないだろうか?』という世界の真理について考えていると、ゼルレッチは本を読みながら話を続ける。

 

どうでもいいけど、そろそろ目ぐらい合わせてくれてもいいんじゃない?

 

................いや、精神的に植物化しているジジイなんかと顔合わせるのもナンだし、俺もコミュ障だからこのままの方がいいか。

 

 

「人の身体には『自浄作用』というものがある、身体に不具合が生じると自動的に治そうとする免疫反応の一種だ。『世界』にも似たような機能が備わっている」

 

ふむ、所謂『バタフライエフェクト』というヤツかな? 何らかの方法によって過去を変えたとしても、その後で別の要因により同じ結末を辿るという現象。

 

じゃあ俺があの世界からいなくなったのも、『元々いなかった存在』だったから『世界そのもの』が帳尻を合わせたってこと?

 

「小さな不具合程度であれば、『世界そのもの』が修正して終わりだ。だが大きな不具合であれば、『世界』はその原因たる存在を排除しようとする。キミの場合は後者に当たるね」

 

やっぱりそうか~~~。まぁ、それについては最初から分かっていたことだし、別に驚くようなことじゃあない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何せ【型月世界における六大魔法を全て使える】なんて、『世界』にとっては迷惑極まりないからな〜〜〜。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしてキミは『世界の敵』と認識されるほどまでに『根源』へと至れる素質を得た結果、『世界』から排除された。無論、そのままではキミという存在は消滅していただろう。

『根源』へと至った者は例外なく、『どの世界』からもいなくなってしまうからね..................だからキミが排除されたタイミングで、そうなる前に私がここへ導いたというわけだ」

 

「そうか..........................ありがとう」

 

「礼には及ばない。手段はどうであれ、キミは紛れもなく世界を救った『英雄』だ。これぐらいのことをしても罰は当たらないだろう」

 

いやいや、さすがに食べ物も何も無い世界や世紀末モヒカン野郎共が『ヒャッハー!』している世界に飛ばされるのは嫌だからね。そこはちゃんと感謝させてもらうよ。

 

 

「................元の世界へは..................帰れないのか?」

 

「ふむ、また難しい質問だな。答えは『YES』でもあり『NO』でもある」

 

だから禅問答やめい、持って回ったような言い方ばかりしよって。もっと分かりやすく言いなさい、さっきの感謝を返してもらうよ?

 

「キミがいた世界は、キミを排出したために現在は『世界の境界』と呼べるものが非常に強固になっている。キミの力をもってしても、暫くは戻れないだろう」

 

ふ~~~ん、つまり傷が治る際にカサブタが出来て暫く皮膚が固くなるようなものかぁ...................『暫く』ってどれくらい?

 

 

「どれくらい........................待てばいい」

 

「さて、私とて世界の仕組みの全てを知り尽くしているわけではない。だがまぁ、最低でも5年は無理だろう。あとはキミ次第と言ったところか」

 

うげっ!!! そんなに掛かるのか~~~~~、まぁ仕方ないか。それまで気長に待って「ああ、そうそう。ここで待つというのは止めてくれよ。キミみたいな規格外な人間がいると、この場所まで消滅してしまうからね」..................ちきせう、『規格外な人間』という点はお互い様だろうに。

 

 

「じゃあ........................どこにいればいい」

 

「好きな場所に行けばいい。ここは様々な並行世界の境界線、決して交わらぬ世界の境目が唯一重なる場所。どの道、どの世界を選ぶかはキミ次第だ」

 

「そうか...............どの道がどういう世界なのか................教えてもらうことは「そこまでは私が関与することではない」......................」

 

ケチんぼ、ケチんぼ!! 選んだ世界が美味しいものや温泉が一切無い世界だったりしたらどうすんのさ!?

 

そんな世界で何年も生きていくなんて....................この人でなし!!! って、このジジイも大概『人』をやめてるんだった。

 

 

ハァ〜〜〜〜〜、しゃーない。本当に教えてくれる気は無いみたいだし、どんな世界なのか分からないならテキトーに選ぶしかないか。

どうせなら【トリコ】みたいな世界がいいなぁ、間違っても世紀末モヒカンな世界は勘弁してほしい。

 

.....................頼むぞ~~~、俺のラック!! 出来れば割と美味しいモノがたくさんあって、割と効能の良い温泉がいっぱいあって、割と争いの無い平和な世界を頼む!!!

 

 

 

 

俺は自分の運を信じ、幾重にも枝分かれした道の中から一つを選んで歩き出した.....................。

 

 

 

 

 

 

□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

 

 

 

 

 

 

奉先様が消えてから5年......................私たちの状況は大きく変わった。

 

 

 

まずは『悪魔社会の民主化』。トライヘキサとの戦いが終わった後、サーゼクス様たち四大魔王様は貴族制を撤廃し民主政治を始めることを宣言。

 

転生悪魔も一般悪魔も、全ての悪魔に選挙権が与えられて政治に参加できるようになった。

 

ただそれでも当面の指導者は必要となるため、若手悪魔を中心に新政府の指導者が選出された。

 

新しい指導者にはディハウザー様をはじめとするレーティングゲームのトップ、さらにはソーナ会長やサイラオーグ様など転生悪魔たちから支持を集めている悪魔が選ばれて各々が要職に就いた。

 

また実力社会としての風習は残すため、『最上級』『上級』『中級』『下級』という実力による等級は残すものの、貴族制の撤廃により社会的身分の差は無くなったと言える。

 

 

その一環として手始めに『教育制度の改革』が行われた。これはソーナ............いいえ、今は『ソーナ大臣』と言った方がいいかしら?

ともかく彼女の主導によるもので、冥界の悪魔領には次々と『誰でも通える学校』が作られていっている。

 

小学校から大学。さらにはレーティングゲームの専門学校まで、日本の教育制度を参考により多くの悪魔が通える学校が政府認可の下に設立されている。

 

ソーナ大臣の念願であった『誰でも通える学校の設立』。夢が叶ったことは喜ばしいですけど、きっかけがきっかけなだけにソーナ大臣は素直には喜べていなかった。

 

何より...................学校の教育内容の基本となった奉先様がいない。そのため学校を設立しても、ソーナ大臣だけではなくシトリー眷属の皆はどこか浮かない顔だった。

 

その寂しさを紛らわすためなのか、作られた学校には必ず奉先様の像が建てられている。ソーナ大臣なりの感謝の現れなのでしょうが、奉先様が見たらどんな顔をされるのでしょう?

 

 

 

次に『蒼天の紅旗の人間社会進出』。悪魔政府の立て直しには途轍もない労力を要した。

しかも政府上層部のほとんどがいなくなってしまったせいで、人材・物資・資金など何もかもが不足している状況。

 

そのため、他勢力の援助が無ければまともに政府は機能しなかった.................しかし、そこへ真っ先に援助してくれたのが『蒼天の紅旗』だ。

彼らは荒廃した悪魔領の被害復旧や治安維持、さらには他勢力との講和など『悪魔』のために尽力してくれたのだ。

 

無論『善意』から来るものではなく、見返りとして『悪魔が持っている人間界の顧客情報の開示』と『顧客への紹介』を要求してきた。

 

金銭や権利的なものを要求されたわけではない新政府は、これを承諾。そうして得られた顧客情報を使い、人間社会の有力者へと接触した彼らは『NGO医療団体』として人間社会へと進出。

 

今では国連の承認まで得ているとのこと。当然ながら表向きは『蒼天の紅旗』ではなく、【フィニス・カルデアス(人命人権保障機構)】と言う名前になっている。

 

リーダーにはもちろん曹操、そして幹部の名前には奉先様の名前も入っている。どうやら曹操はじめ『蒼天の紅旗』も誰一人、奉先様の帰還を疑っていないようだ。

 

 

『蒼天の紅旗』と言えば、アーシアさんは元気にしていらっしゃるかしら? 『奉先様の妻専用のホットライン』でたまに連絡は取っていますけど、彼女も世界中を周っているため中々会うことが難しい。

 

ロスヴァイセさんもヴァルキリーの筆頭である【ブリュンヒルデ】を襲名し、忙しそうにしている。

何でも通常のお仕事に加え、『奉先様の妻』として『蒼天の紅旗』との交渉役を任されているんだとか。

 

さらには『蒼天の紅旗』の男性陣にヴァルキリーたちを紹介、付き人の選出から合コンのセッティングまで大忙しとのこと。

 

 

タマモさんは『天照様の眷属』として妖怪たちとの中継役ということに加え、日本の神社仏閣をはじめとする神道系の統率を行っている。

今では日本神話群の顔役とも言える立場だ、本人は『呂布殿は交渉事が苦手ですので、妻として当然ですわ♪』と言っていた。

 

確かに、私も『奉先様の妻』として『蒼天の紅旗』とは何かと関わることが多い。特に奉先様の秘書であるレイヴェルさんは、各勢力にいる『奉先様の妻』と頻繁に連絡を取っているみたいですし。

 

そう、聖書陣営が各勢力や『蒼天の紅旗』と連絡を取る時は大概『奉先様の妻』同士やレイヴェルさんが窓口になる。

そこをきっかけに外交担当や交渉役へと話がシフトしていくのだ。

 

だから私もよく外交関係で駆り出されることが多い.................まぁ、これも奉先様が帰ってくるまでの辛抱ですわよね。

 

 

 

 

「朱乃、やっぱり『ここ』にいたのね」

 

「っ....................リアス」

 

これまでのことを振り返っていると、後ろから高級そうなスーツを着こなしたリアスに話しかけられた。貴族制度が撤廃されたことで、彼女の実家であるグレモリーも貴族ではなくなった。

 

ただ財産や土地の権利までは没収されたわけではないので、彼女の実家は『地主』として変わらず残っている。

また、貴族としての仕事が無くなったので、今は悪魔・人間社会で建設業を中心に活動している。

 

リアスもリゾートホテルをはじめとした不動産をいくつも持っている立派な経営者だ。けれど、元々の夢であった『レーティングゲームの王者』になることを諦めたわけではない。

 

仕事の合間を見ては眷属たちと一緒に修行をしたり、プロの選手として試合にも出場している。

 

 

「暇を見ては『ここ』に来ているわよね.................一応、トライヘキサとの戦いの記念碑は首都の方にもあるのよ?」

 

「アレは『慰霊碑』でしょう? 奉先様は死んでなんかいないわ、ただ少し遠くへ出かけているだけよ」

 

そう、『ここ』は奉先様が消えた場所。私は時間があれば『ここ』に来て、奉先様の帰りを待っている。

首都には終戦記念の石碑がある、ただアレは戦没者のための慰霊碑。奉先様は死んでいないのにそんなところに行く必要は無い。

 

 

「...................そうね。でも、そろそろ開会式の時間よ。イッセーたちだって待っているんだから、早く会場へ行きましょう」

 

「ええ、そうだったわね。ごめんなさい、行きましょう」

 

今日はレーティングゲームの国際大会、その名も『ブジン杯』。これはもちろん奉先の畏名である『深紅の武人』から取ったものだ。

 

この大会には悪魔だけではなく、天使や堕天使と言った聖書陣営。他にも人間や妖怪、さらには神々まで参加するという大規模なレーティングゲームの大会であり、人間社会でのオリンピックのように各勢力の友好を目的としたもの。

 

 

かつての戦争のキズもほぼ癒え、悪魔政府も軌道に乗って来たということでアザゼル先生が発案。

悪魔政府としても、このあたりで大規模なイベントを行い盛り上がりたいと思ったらしい。

 

参加者には私たちグレモリーの他にソーナ大臣のシトリー、サイラオーグ様のバアルやディハウザー様などのプロプレイヤーといった数多くの悪魔が出場する。

 

また他にも聖書陣営としては、お父様をはじめとする堕天使チーム。聖職者や転生天使を中心とした天界チーム。

他にも様々な種族や勢力が参加しており、まさに誰が優勝するか分からない状態だ。

 

なお、優勝チームにはチームメンバーの願い事を各勢力が協力して可能な限り叶えるという。

 

 

各勢力が協力するということであれば、通常一勢力では不可能な願いも聞き届けられるということ。

特にヴァーリなんかは『これに優勝すれば、呂布と戦う資格を得る!』とかなり燃えていた。

 

確かにこの大会に優勝すれば、事実上この世界の『No.1』となる(奉先様を除く)。ヴァーリの性格から考えれば、気合いも入るというものですわよね。

 

ただ、そう簡単にはいかないでしょう。何せ『No.1』を決めるとなれば『蒼天の紅旗』が黙っているはずがない。

奉先様がいなくなったことで自分たちの不甲斐なさを痛感した彼らは、より強くなるためこれまで以上に邁進した。

 

ほぼ全てのメンバーが『セブンセンシズ』を使いこなし、その実力は1人1人が神と互角に渡り合えるとのこと。

今大会では複数のチームを出場させているらしく、いずれも優勝候補と呼ばれている。

 

レーティングゲームの国際大会『ブジン杯』。初の大会ですし、何よりレーティングゲームの大元である以上『悪魔』から優勝チームを出したいところですが......................厳しい戦いになりますわね。

 

 

 

「それにしても、私の眷属の子達が一同に集まるなんて久しぶりね。早く皆の顔が見たいわ♪」

 

私はリアスの下へ行き、転移の準備をしようとするとリアスが待ちきれないという感じで嬉しそうに微笑む。

 

 

リアスの言う通り、大戦以降も私たちは何かと慌ただしくしていた。まずは駒王学園を卒業し大学へと進学。

 

大学生活を送りながらも、グレモリーやリアスの事業の手伝い。合間を見ては修行にレーティングゲームの試合へ出場と、気づけば5年も経ってしまっていた。

 

中等部にいた後輩たちを中心に新しい眷属を迎え入れ、他の皆もそれぞれ仕事に奔走している.......................特にイッセーくんとは大学を卒業してから、会う機会がめっきり減ってしまった。

 

会うとしたら、リアスの試合がある時ぐらいかしら? どうやら奉先様がいなくなる『きっかけ』となったことを悔やみ、クロウ・クルワッハに付いて修行に明け暮れているらしい。

 

私としてはもうそこまで怒っていないのだけれど、彼なりに譲れないものがあるようだ。その償いからか、以前は奉先様が行っていた各神話群の武闘派の神々へのガス抜き役を率先して行っているとのこと。

 

神々も事の原因となったイッセーくんに直接手を下せるということで、どうにか溜飲を下げたみたいだけど........................そのせいでイッセーくんは毎度死にかけているとリアスから聞いている。

 

イッセーくん自身が自分を許せていないせいか、まるで自らを痛めつけているようにも見えてしまう。

 

 

ただそのおかげか、イッセーくんはあの頃とは比べものにならないほどに強くなっている。リアスから聞いた話では、つい最近『滅びの化身』状態のサーゼクス様と互角に戦ったんだとか。

 

リアスとしても、たまにしか会えない『未来のお婿さん(予定)』に会うのが楽しみなんでしょうね.........................少し羨ましいわ。

 

 

 

っ~~~~、もう! 奉先様ったら、新妻を置いていつになったら帰って来るのでしょうか?

 

まったく、まだ初夜も済ませていないと言うのに.................このままじゃあ私、お婆ちゃんになってしまいますわよ?

 

 

だから.....................................

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く帰って来てくださいね、奉先様♪」

 

 

 

 

 

 






ゼルレッチが出てきましたが、いきなりポッと出したわけではありません。第百四十四話でディハウザーが【次元屈折現象】について呂布に尋ねていました。

つまりこの世界には【第二魔法】という概念があるというわけです。一応、伏線っぽくしておいたのですが、それでも一部の読者には感想で気付かれていたみたいですwww

『呂布の禁手』などについては【あとがき】で語りたいと思います。

それでは皆さん、【トゥルーエンド】で♪
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