後の話のために今回はいつもより長めです。
最初聞いたときは耳を疑った........自分の口から説明しても頭では理解出来ていなかった........神々が愉快そうに笑っているのも見ても、頭がおかしくなったのかと思った............
彼は何と言った? 赤龍神帝に挑む? この世界で最強の存在に? 『夢幻』を司るあの黙示録の龍に?
自分の中で改めて整理してみても未だに理解が追いついていない、いっそこれが夢の中の出来事だと思った方がまだ理解出来ただろう。
呂布....................キミは俺たちを置いて、どれほどの高みを目指しているんだ................................。
いや、そうじゃない............呂布は何も悪くない、彼は何も変わってなどいない。彼は俺が出会った時から何も変わっていない。
昔のまま、ただひたすらに己の道を歩み、極めようとしているだけだ! そう、変わってしまったのは................................俺たちの方だ。
....................いつからだ? いつから俺たちはこんなに『腐って』しまったんだ? 『蒼天の紅旗』を立ち上げた当初は俺も含め皆、希望や野心........夢などに燃えていた。
人間の可能性を追及し、己の存在を世界に示すために奮闘していた。家族を失い、生きる場所を奪われた俺たちは『他には何も無い』からこそ、ただひたすらに一日一日を生きてきた。もう二度と奪われまいと必死で強くなろうとした。
........................それが今ではどうだ?『呂布がいるから』と安心しきって自分を追い込むことをしない。周りを意識せず、ただ自分のペースでしか修行を行わない........................それでどれだけの成果が得られる!
自分のペース?そんなことは呂布ほどの強さになってから言うべきことだ!! ただの『人間』でしかない俺たちは誰よりも『人間』の弱さを知っているはずだ!!
であればもっと周りを意識し、ライバルとして凌ぎを削り、競争という名の切磋琢磨を絶やさないようにしなければならなかったんだ!!
家族?仲間?そんなものは互いに練磨や研鑽を重ね、認め合った先にあるものだろうが!!
俺たちは誓ったはずだ!夜空に輝く星のように、短い間だとしても一瞬一瞬を全力で生き抜くと!!
それなのに................半端に力をつけ、少し異形を倒せるようになっただけで満足をして、いつしか自分たちの目標を下方修正していた。
呂布が先に行ってしまったんじゃない! 俺たちが進むのを止めてしまっていただけだ................................。
今になってようやく俺たちに決定的に、根本的に欠けていたものが分かった。それは....................『危機感』だ。
その場に留まっていては『死んでしまう』という『危機感』。たとえどんなにボロボロであっても生きるためには前へ進まなければならないという『危機感』が俺たちには無かった............................いや、違う。忘れていただけだ。生きる場所を失った俺たちは、かつてそうやって生きてきたはずだ。
それが安住の地を得て、心許せる仲間と出会ったことで、いつしか生きていくために必要な『危機感』まで失っていってしまったんだ............................。
「............グラニ........オーフィス........行くぞ」
呂布、オーフィスそして神々が次元の狭間へと向かっていく....................どうする、俺たちも行くか? いや、今の俺たちが行っても足手まといにしか............................。
そんな情けない負け犬のような考えをしていると................................
『................以後お見知りおきを、マスターの初めての友よ』
『................友? この俺が?』
『...........コクン....』
『! そうか、友達か............フフ、まさか俺にそんなものが出来るとはな』
それは俺が呂布と出会った時の記憶だった。そうだ............そうだった....................呂布は俺の................
「待ってくれ!!」
気付けば俺は呂布たちを呼び止めていた!!!!
「............................俺も連れていってくれ」
俺は呂布たちにこれ以上無いくらいの真剣な顔で、そう口にしていた。『足手まとい』にしかならない?それがどうした! 俺はあの時決めたじゃないか、『呂布と共に行く』と!!
それに呂布は俺の........................初めての『友達』だ!!!
その友が、命を懸けて『世界最強』に挑もうとしている............................ならば足手まといだろうが何だろうが、一緒に行くだけだ!!ここで動けないなら『友達』を名乗る資格は無い!!
「....................曹操よぉ、言ってる意味が分かってるんか? こっから先はお前ごときが首を突っ込んで良いレベルじゃねえんだぞ?」
「うむ、興味本位で来ても死ぬだけじゃ。ワシらとて自分の身を守るので精一杯、とてもお前さんまで守っとる余裕は無いじゃろう」
「まったくもって、そのとおりじゃ。ハッキリ言って『足手まとい』以外の何者でもないぞ、曹の坊や?」
帝釈天にオーディン、それに天照大神まで俺の同行を拒否する。当然だ、ここから先は紛れもなく『英雄』の領域。『英雄の子孫』でしかない俺では役不足も甚だしい。
だが、それでも....................................!!!!!
「・・・重々理解しております。・・・・呂布、俺のことは気にしなくて良い。戦いの邪魔になるようなら見捨ててくれて構わない」
「................そんなつもりは........ない........」
ああ、そうだろうな........キミならそう言うと思ってたよ............だからこそ、ここから先は.....『俺』の覚悟は『俺自身』で示さなくてはならないんだ............!!
「........だろうな、キミはそういうヤツだ。故に神々よ、お願いがございます。これより先の戦いで、もし俺が呂布の『足手まとい』になるようなら・・・・・・その場で俺を殺してください........」
「「「!!!!!」」」
俺の言葉に神々と部下達が驚く。
「曹操、何を言っているんだ!?」
「そうですよ、リーダー!!」
「考え直してください、リーダー!」
ゲオルクと周りの部下達が色々と言ってくるが、俺は気にも留めず、神々を見据える。
「・・・・・二言は無えだろうな、曹操」
「神に虚言を吐くほど落ちぶれてはいないつもりです」
帝釈天が普段の様相からは似ても似つかないほどの気迫で俺に問い掛ける。
そうだ、ここで呂布の........................に命を懸ける友の邪魔しかできないようなら死んだ方がマシだ、そんな『俺』に生きている価値は無い............
そして呂布、もしキミがこの戦いで命を落としたのなら........................俺も後を追うことにするよ。
俺は『人間の可能性』を追及したい、キミがここで死ぬようならそれが『人間の可能性』の限界なのだろうからな................................。
「............................良いだろう、ついてきな」
「良いのか、帝釈天?」
「仕方ねえだろ、ここまで覚悟を決めてんだ。あとは自己責任だ」
どうやら帝釈天は認めてくれたようだ........................不思議だな、あれほど苦手にしていた帝釈天に今では敬意を持つなんてな............。
「俺も行こう」
ヴァーリが前へ出てきて、自分もついて行こうとする
「無論、俺も曹操と同じで構わない。呂布の戦いの邪魔になるようなら消してくれ」
今度はヴァーリが俺と似たようなことを言い出す。ヴァーリチームの面々が慌ててヴァーリを止める
「ちょっと待てよヴァーリ、正気か!?」
「そうですよ、ヴァーリ!貴方の目的は『世界最強』になることだったはずです!!」
「考え直すにゃ、ヴァーリ!」
「そうですよ、ヴァーリさん!今ならまだ間に合います!!」
そう言えば、ヴァーリがそんなことを言っていたな。それにしても、アイツもなんだかんだで皆から慕われていたんだな。
「美候、俺は正気だ。アーサー、だからこそさ。『世界最強』を決める最高の戦いだ、見逃す手は無い。そしてそれを邪魔するくらいなら死んだ方がマシだ」
なるほど、ヴァーリも俺と似たような考えだったということか。
「........................良いのか、ヴァーリ?」
「ああ........それにお互い様だろう、曹操」
........................それもそうだな。さてと................................
「ゲオルク。後のことは........................頼んだぞ」
「本気なんだな、曹操」
「ああ、もう決めたことだ」
「....................そうか....................分かった」
すまないな、ゲオルク。面倒ばかり掛ける........................しかし、俺とヴァーリが呂布達と行こうとすると、部下達も前に出てくる。
「なら俺達も一緒に行きます!!」
「そうです、リーダーが行くのなら私達だって!!」
「私達も連れていってください、リーダー!!」
部下たちが俺や神々に詰め寄ってくる。皆口々に『自分も』と言ってくる。それを聞いて俺が口を開こうとすると....................................。
≪静まれ!!!≫
帝釈天の怒号が響き渡る........この威圧感、呂布の『覇王色の覇気』に似ている。さっきまで騒いでいた部下達も帝釈天の出す威圧感に気圧され、腰を抜かしている者までいる。
「『自分達も連れていってくれ』だぁ?よくもそんな戯れ言が吐けたもんだなぁ、おい?」
「ハア、まったくじゃ。己を知らぬ愚か者は本当にタチが悪いわい」
「無理もないわい、自分達がいかに『足手まとい』なのかすら理解していない連中なんじゃからのう」
そう言われると気圧されていた部下たちが神々の言葉に反応する。
「なっ!俺達が足手まといだって!?」
「私達だって十分戦えます!!」
「そうよ! いくら神様だからって、言って良いことと悪いことがっ........................」
部下達は神が言ったことに納得していないのか、皆反論している........................そうか、俺もさっきまであんな感じだったのか。
部下達を見て自分のことを省みていると、またしても帝釈天の威圧感が膨れ上がる
≪黙れ≫
今度は先程よりも数段強い気迫で部下達を威圧する........さすがの部下達も今度は全員腰を抜かしたり、両膝をついたりして顔を青褪めさせている........
「ったく、『足手まとい』に加えて『身の程知らず』かよ............つくづく救いようが無えな」
「やれやれ、仕方ないのお。この老いぼれが分かりやすく教えてやるわい」
部下達が腰を抜かし、神々が呆れ返っている中オーディンが前へ出る
「よく聞け、お前さんらは呂布と同じ戦場には立てん。何故なら、単純に『弱い』からじゃ............自分の身も守れんほどにな」
「なっ!私達だってそれなりに「だからじゃよ」....................え?」
「『それなり』の強さ程度じゃ不足していると言っているんじゃ。これより先の戦いは儂ら神々をも超えた者たちの戦い、正直儂らですら自分の身を身を守るので精一杯じゃ............いや、もしかしたら命を落とすかもしれん。お前さんらなど攻撃の余波だけで間違い無く『死ぬ』じゃろう」
「「・・・・・・・・」」
「そして目の前でお前さんらが死ぬ、もしくは死にそうな目に遭えば呂布はお前さんらを守らなくてはならない、さらにはお前さんらに被害が出ないように力を抑えて戦わなければならない。」
「っっっっっ!」
「お前さんらには分からんと思うが、かの黙示録の龍は力を抑えて勝てるような相手ではない。いや、もしかしたら全力の呂布でも勝てない相手やもしれん。
そんな相手に力を抑えて戦えば、それこそ呂布は『死ぬ』じゃろう。そんな状況に追いやるお前さんらを...........『足手まとい』と言わずに何と言う、そんなことも分からずについてこようとする輩を『身の程知らず』と言わずに何と言う。
じゃからお前さんらのリーダーは、そうなる前に『自分を殺してくれ』と頼んだのじゃ」
「................................」
部下達もようやく自分達が何をしようとしていたのか分かったみたいだ............もっとも俺にとっても耳が痛い話なんだがな。
そして他の神々もオーディンに続くように前へと出てくる。
「妾たちも多くの『英雄』『勇者』と呼ばれる者達を見てきた。そしてそのほとんどは天寿を全うできずに死んでいった.......................じゃが決してより強い者との戦いで命を落としたわけではない」
「そう、いつの時代も『英雄』を殺すのは....................『欲にまみれた権力者』と『他人任せな民衆』です。そしてあなた達は後者に当たります」
「なっ....................そんなことは「無いと言い切れますか?『呂布さえいれば何とかしてくれる』と思ったことは」っ........................」
「何かあれば自分達でどうにかしようとはせず、呂布に頼る。そのうえ自分達はただ見ているだけ........................そんなあなた方は間違い無く『他人任せな民衆』ですよ」
「ワシらが呂布を囲おうとしたのは、何も欲に駆られてのことではない。このままでは呂布がお前達に殺されてしまうと思ったからじゃ................................呂布にくっついてるだけで並び立とうとしないお前達にな。呂布ほどの男がそんな死に方ではあまりにも不憫じゃろう」
「最後にもう一度聞いてやる....................この中に呂布の全力の一撃に耐えられる、『呂布と同じ戦場に立つことが出来る強さ』を持ったヤツはいるか?」
「............................................」
「ふん、どうやら『身の程知らず』は治ったみたいだな」
神々の言葉で皆自分達が今までやってきたことがいかに空虚なものなのか、いかに呂布に頼りきっていたのかを理解したようだ。だが・・・・彼らを責めることは俺には出来ない。リーダーである俺自身そうだったんだからな。
「神々よ、感謝します。そして申し訳ありません、本来ならリーダーである俺が伝えなければならなかったというのに............」
俺は神々に頭を下げ、抱拳礼をする。
「ああ?別に大したことじゃ無えから気にすんな」
「さよう、年を取ると説教臭くなるものじゃ。フォッフォッフォッ」
「まあ、大事の前の小事というヤツじゃ。フフフ」
「さあ皆さん、そろそろ行きましょう。ほら、呂布が待ちくたびれていますよ」
「そうですよ、主役をいつまでも放ったらかしにしてはいけません。行きましょう」
神々とヴァーリは呂布の元へ向かう........そして俺はゲオルクに打ちひしがれている皆のことを頼む。
「ゲオルク、皆のことを頼むぞ」
「ああ、俺達の代わりに見届けてきてくれ。そして・・・・必ず帰ってこい。『俺達』はこれからなんだからな........」
「ああ、そうだな。こんなところでは死ねないな、まだまだやりたいことがたくさんある.........」
死ぬ覚悟はあるが、死にたいわけではない。死物狂いで呂布の邪魔にならないようにしなければ・・・・・そして俺はゲオルクにもう1つ頼む。
「ゲオルク、俺が見聞きしていることを皆に伝わるようにすることは可能か?」
「............感覚を共有する魔術を使えば可能だ、だが良いのか?視覚だけではなく聴覚まで・・・・それもこの人数だ。基点となるお前への負担は相当なものになるぞ?」
「構わないさ、皆を指導できなかった不甲斐ないリーダーだが・・・・せめてこのくらいはな。それに皆にも見てもらいたい・・・・俺すら見たことの無い『呂布奉先』の全力の戦いを........」
「............分かった」
俺はゲオルクに右目と右耳の感覚を部下とヴァーリチームの皆に繋げてもらう。頭が重く、ズキズキするが堪えられないほどではない........
「ありがとうゲオルク、では行ってくる」
「ああ、気を付けてな........」
俺は呂布達の元へ向かう、やれやれ随分呂布を待たせてしまったな............
「待たせてすまなかった。行こう、呂布」
「................コクン」
まず最初に呂布とグラニとオーフィスが、ついで神々とヴァーリが黒い渦の中に入っていく。
いよいよだ............俺はとうとう『人間の可能性』、その行く末を・・・・答えを知ることが出来るんだ。
俺はずっと求めていたものを得られるかもしれない、ということに胸を高揚させながら渦の中に入っていった・・・・・・
フラグが乱立しまくっていますが、気にしないでください。