もう一度言いますが、作者はダンスに関しては素人です。
そのくせ、ダンスを文字で表現しようという無茶をやりました............暖かい目で見てやってください................。
俺と朱乃はゆっくり歩きながら、ダンスフロアの端の方にやって来た。
周りを見てみると貴族であろう男女ペアの悪魔たちが、曲に合わせて踊っている。俺は『く』の字に曲げていた腕を下げ、朱乃と向かい合う形を取る。
え~っと、まず左腕を上げ手のひらを相手に向けて、相手が握ってくれるのを待つ。
右腕は相手を迎え入れるように少し曲げてスペースを作る。この時、自分から相手を迎えに行ってはいけない。あくまで待つだけ。
そういえばこの手のダンスはヴァルハラに行った時に、しこたまやらされたなぁ~~。
アレはキツかった。フレイヤ主導の下、ヴァルキリーたちと延々ダンスをさせられたからね。
一曲終わったら次のヴァルキリーとまた踊る、の繰り返し、しかもヴァルキリー連中なんか100mぐらいの列を成して待機してたからね! どんだけやらせるんだよ!?
しかも一度踊ったら、また列の最後尾に並び直すって極真空手もビックリだわ!!
フレイヤやブリュンヒルデからは『英雄たる者、ダンスの一つも出来なくては格好がつきません!!』と力説されたけど、いくら何でもアレはやりすぎではないだろうか?
まあ、そのおかげで今は助かっているんだけどさ。
ニギ
お、朱乃が握ってくれた。そしたらこっちもしっかり握り返す。
次に俺が作っていた右腕のスペースに相手が体を寄せてくるから、お互いに半身ずつズレて、右手を相手の脇下から左肩の肩甲骨に当てる。
この時、手を相手に押し付けたり掴んだりしないようにし、かつ腕は下げてはならない。
つまり『腕は置くだけ』! 語呂が悪いのはご愛嬌。
朱乃の左手が俺の右肩に置かれる。これでダンスの準備は整った.......ここからが本番だ!!
まずは曲を聞いてリズムを取る........この曲は『ワルツ』か。
『ワルツ』は【スタンダード】の代表格とも言える曲だ。社交ダンスは主に【スタンダード】と【ラテン】の二つに分類される。
【スタンダード】は男女が互いをしっかり支え合って踊る優雅なダンス、一般的に社交ダンスと聞くとこっちをイメージするだろう。
【ラテン】は逆に男女が離れたり、くっついたりするアグレッシブなダンスだ。別名【ラテンアメリカ】とも呼ばれている。
今流れている『ワルツ』は【スタンダード】の一つで、日本語で『円舞曲』と言われるように、回りながら踊るのが特徴だ。
『ワルツ』は三拍子の曲だから........1、2、3........よし、このリズムだ。
俺が曲に合わせて足を動かすと朱乃もそれに続く。ダンスで一番重要なのは足運び(ステップ)だ。
というのもダンスのステップは何百種類。【スタンダード】だけでも何十種類とあり、その組み合わせは何百通りにも及ぶ。
これだけで、いかに重要なのかが伺える。
でもね.......覚えられるか!!っちゅう話だよ。なので俺のやり方は極めてシンプル。
名付けて『基本だけ覚えて、あとは成り行き』作戦!!
【スタンダード】でも基本であり、最も使われるのは四つ。
『ナチュラルスピンターン』
『リバースターン』
『ホイスク』
『シャッセフロムPP』
この四つのステップだけ覚えて、あとは流れに合わせて足を動かし、相手の足さえ踏まなければOKの精神だ。
【スタンダード】はぶっちゃけ上半身をいかに美しく見せるかが重要で、下半身......足は正直、スムーズに動かせていれば問題無い。無論、基本となる足運びは大事だけどね。
社交ダンスをスポーツ化させた【競技ダンス】でも、ステップは採点項目に入ってないしね。逆に【ラテン】の場合は下半身を駆使した動きが多い。
三拍子のリズムで足を動かして進み、クォーターターン(90度回転)を入れて方向転換。
これを繰り返してジグザグに進みながら移動していく。頭のてっぺんから体の中心を通る、まっすぐな一本の棒があるようにイメージをして『体の軸』はブレさせない!
おっと、そろそろ、他のペアの近くを通らなくてはならないな。
ここで重要になってくるのが『周囲の状況を見ながら、女性を誘導すること』だ。
別名【リード&フォロー】と呼ばれているものであり、男性がダンスの最中にどこにどう動くかを伝えるのが【リード】。
そして女性が男性の【リード】を感じ取り、男性の望むように動くのが【フォロー】だ。
言葉にすると簡単だが、ダンスにおいてこの【リード&フォロー】が最も難しいと言える。
何せ口で伝えることは出来ないから、手や腕や体といった接触部位。あとはアイコンタクトで伝えるしかない。
しかしダンスは『男女共同』で行う物だ。
世の中には『男女混合』の特殊ルールを用いたスポーツは数あれど『男女一組』が基本のスポーツは他に無い。
他人....ましてや相手が異性であれば、考えにズレが生じるのは当然だ。
しかしダンスではその思考のズレは致命的であり、それはダンスに違和感や動きのズレとしてストレートに現れてしまう。もちろん端から見ていれば一発で分かる。
故に【リード&フォロー】は一つのペアが長い時間を掛けて仕上げるものであり、熟練のペアでも本番で完璧に行うのは難しいとされている。ましてや初めて踊る相手なら尚更だ。
だが、俺もあのヴァルキリー達との地獄の特訓をこなしてきた身だ。更には神様チートのこの身体! いかに初めて踊る相手とはいえ、完璧にこなすことが出来る!!
わけないだろう!!!
そんなに簡単に出来たら苦労はせんわ!! いくら習得力がチートでも、それは俺単体の話であって今回みたいに相手と何か共同で行う場合は別なんだよ!!
しかもこちとら生粋のコミュ障だぞ!?そんな便利なことが出来たら人生変わっとるわ!!
ということで、こっからは我流でやるとしよう。
まず『円』で周囲の状況を把握する、これで他のペアと接触することは無くなった。
次に朱乃の目の動きや手から伝わる重心の位置、更には『見聞色の覇気』を使い朱乃の『動きやすい動き』を先読みする。
後は先読みした方向に足を動かせば.........変則的だが【リード&フォロー】の形にはなる。
俺は基本のステップを所々入れて、朱乃の目をじっと見ながら、流れに合わせて足を動かしていくが........何かいつの間にか周りのペアがいなくなってた。
俺たちに気を使ってくれたのかな? まぁ、後からペアが入ってくるかも知れないから『円』は継続しておこう。
俺と朱乃は曲が終わるまで、ダンスフロアを貸切状態で踊り続けるのだった。
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あぁ、何て幸せな時間なんでしょう。あの奉先様が私を、私だけを見てくれている♪
最初は仕方なく悪魔になったけれど、今は悪魔になって良かったと思っている。
幼少の頃にお会いし、それからは消息すら掴めなかった。貴方に会えない間、私はずっと『自分』を.......『女』を磨いてきました。
ようやく貴方のことを知ることが出来たと思えば、貴方は手の届かないところへ行ってしまった。
でも、今は違う。こうして手を繋ぎ、貴方の腕に抱かれて踊っている。
ダンスについては習い事として習わされていたけど、ここまで身も心も一つになった感覚で踊ったことは無い。
まるで私の考えていることが全て見透かされているような、けれど少しも嫌な感じがしない。
むしろもっと自分のことを見てほしい! このまま自分をどこかに連れていってほしい!!
そう思えてしまうような完璧な『リード』。
こんなに幸せなことがあったなんて、こんなに心が満たされる時間があったなんて、自分がお慕いする殿方にこうしてリードされる心地よさはある種の麻薬だ。
完全に依存してしまう、きっと今の私の顔はどうしようもないほど緩んでしまっているのだろう。
あぁ、一曲と言わずにこのままずっと踊っていたい! この二人きりの時間を終わらせたくない!!
私はもう奉先様以外のことを考えられなくなり、気付けばダンスフロアで踊っているのが私達だけになっていた。
周りの悪魔やリアスたちが私達を見て何やら話しているけど、しそんなことはどうでもいい。
今はただこの幸せな時間に浸っていたい、この甘美な快感を味わっていたい!!
奉先様、愛しております//////////
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俺は呂布と姫島朱乃のダンスを遠くから眺めていた。
俺はダンスに関する知識はさっぱりだが、武術をやっているからか二人の動きには言い様の無い一体感があることだけは分かる。
『二人で一つ』とでも言うべきか、とにかく他のペアとは一線を画すほどの一体感だ。
その証拠にダンスフロアで踊っていた連中や周りにいる悪魔たちも皆二人のダンスを感嘆しながら見ている。
「何だ、やっぱりまんざらでも無いじゃないか。フフッ」
「ちょっとリーダー、そんなこと言ってる場合? いくら何でもアレはやりすぎじゃない? マズイんじゃないの、悪魔にとっても私たちにとっても」
「そうだな、だが大丈夫だろう。そのあたりの面倒事を避けるために、呂布は自ら彼女を誘ったのだから」
「それはそうだけど「そのとおりじゃ」 っ、天照様! それにオーディン様たちまで!?」
賈駆の言葉を遮り、天照を初めとした神々が俺たちに近付いてきた。
「安心せい、賈駆。妾たちは目の前のアレについて、悪魔も『蒼天の紅旗』も責めるつもりは無い」
「うむ、アレはあくまで呂布自らが望んだこと。ならば儂らがとやかく言うことではない」
「それに、あんなに楽しんでいる呂布の邪魔をするような無粋な真似はしませんよ」
「楽しんでいる、ですか?」
「さよう。呂布を見てみよ、あれほど夢中になっているんじゃ。楽しんでいる証拠じゃろ? まあ、表情からはそうは見えんがの」
楽しんでいる、か。確かに何事も楽しまなければ集中は出来ないし、ましてや夢中にはなれない。俺も武術以外に楽しめる何かを見つけてみるか。
「まあ、その前の......呂布に頭を下げさせたことについてはブチギレそうになったがな」
「ガーハッハッハッハッハッ!! 確かにあそこまで呂布相手に強気でいられたヤツは初めてじゃな!!」
「よく言うわ、ゼウス! お主が一番睨み付けておっただろうに!!」
「恐れ入ります、神々よ。御身らの深い慈悲に『蒼天の紅旗』を代表して御礼申し上げます」
俺は神々に御礼を言いながら、頭を下げる。賈駆も俺に合わせて頭を下げる。
もっとも俺も賈駆もまだ許してはいないからな、リアス・グレモリー!!
「気にしないでください。それよりも、せっかく呂布が踊っているのですから見ないと損ですよ。呂布のダンスなんて滅多に見ることは出来ませんからね」
「確かに。しかし呂布のヤツ、いつの間にダンスなんて覚えたのじゃ? しかもあれほどの腕前とはのう」
「まあ、呂布は武術を極めているからな。体捌きや足捌きはそれの応用だとは思うが、それにしちゃあ踊れすぎだな」
「あれは恐らく......ウチのフレイヤのせいじゃな」
「? どういうことですか、オーディン?」
「以前呂布がヴァルハラに来た時に、フレイヤがヴァルキリーたちを相手に呂布へダンスを教えておったことがあっての〜〜〜。あれはひどかった。
その日の非番を除いたヴァルキリーが全員並んだんじゃないかのう。ちなみに次の日、踊れなかったヴァルキリーたちが悔しさと悲しみと怒りで暴れまくってたわい.........」
「ほう、そんなことがあったのか。それで、どうなったんじゃ?」
「フレイヤがいくら言っても収まりがつかなくてのう。何とか呂布を説得して、その日踊れなかったヴァルキリーたちともう一度踊ってもらったわい。
それ以降、呂布にヴァルキリーを関わらせないようにフレイヤへ厳重に注意したがのう」
「そうか........う~む、惜しいのう。呂布があれほど踊れるのなら、ワシの所に来たときにいくらでも相手を用意してやったのに」
「ゼウス、そういったやり方は我々の協定に触れますよ?」
神々の協定、見たことは無いが大体の予想はつく。確かに神々の協定は大事だ。
しかしそれ以上に重要なのは『呂布自身の意思』だ。このままでは呂布は誰とも結婚出来ない......無論、子を成すことも出来ない。
呂布ほどの英雄が子孫を残せないなんて、それこそ人類にとっての損失だ。
だが....かと言って闇雲に子どもを作ってしまえば、各勢力とのパワーバランスが崩れる。
何故なら、子どもを作るということは呂布がその勢力に肩入れするということだからな。
正直、呂布を味方につけた勢力は世界の覇権を握ると言ってもいい。何せ、呂布を引き入れることが出来ればオーフィスやグレート・レッドまで付いてくるのだからな。
だからこそ呂布の伴侶は信頼できる人物でなくてはならない。無論、呂布との相性も考慮してだ。
神々の協定はおそらく得体の知れない者.....特に女性から呂布を守るための物だろう。
古来より異性によって身を持ち崩し、破滅した英雄や権力者は例を挙げればキリが無いからな。
だが、このままでは呂布は『人』としての幸せを世界のために捧げることになる。そんな生き方はもはや『人』ではない...........!!
何とかしたいが、呂布の意思を確認しないことにはな。
俺は二人のダンスを眺めながら、呂布の婚姻問題について考えるのだった。
主人公の恋愛については、かなり力技で解決させます............というのも、ここまで来ると鈍感オブ鈍感の主人公は、まともなやり方では恋人を作れません。