聖なる剣を携えて   作:チキンうまうま

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祓魔師②

 

 悪魔の駒、というものがある。

 

 チェスの駒の形を模したそれは悪魔でない者を悪魔に変え、そして駒の特性に応じて能力を上昇させるという代物。教会勢力からすれば無制限に教会の怨敵である悪魔の数を増やすことのできる呪物と言って差し支えない代物である。

 

 そしてリアス・グレモリーの眷属として木場に与えられたのは【騎士(ナイト)】の駒。ただでさえ人間に比べて身体能力(スペック)の勝る悪魔に、更なる速さを与える特性を有した駒である。そして事実、木場はグレモリー眷属一味の中で最速の座についており、それこそ普通の魔法や飛び道具なんかでは捉えられないほどの圧倒的な速さを誇る。

 

 

「─────え?」

 

 はずだった。

 

 音もなく、ただ光の軌跡のみを残して白瀬の手から放たれた数十もの銃剣(バヨネット)が気が付けば木場の体に突き刺さっていた。銃剣が突き刺さっている、という事実を知って初めて痛みが襲い掛かってくる程の速さを伴った絶技。それを目の前の祓魔師(エクソシスト)は唯人の身で平然と行使している。

 

「祐斗!?」

「木場あああ!!!」

 

 飛び散る鮮血と鉄の匂いに、オカルト研究会の部室に悲鳴が上がる。その悲鳴になんの興味も示さず白瀬はコツコツと足音をたてて木場のほうへと歩み寄った。

 

 

「─────あああああああっっっ!!!???」

「随分とうるさいねこの三下(クソガキ)。」

 

 全身に突き刺さった聖法儀済みの銃剣。ただでさえ致命傷一歩手前といえる負傷に、そこに悪魔に対して特効となる聖なる力が注ぎ込み木場の全身を灼き、灰へと変えていく。その惨状に悲鳴を上げて倒れこんだ木場を見下ろして、白瀬はその後頭部にゴトリと拳銃を突き付けた。

 

「言っておくけど俺はほんとに君らと戦うつもりはなかったんだよ。なのにお前から手を出して来てこのザマだ。笑っちゃうよね。」

 

 地に伏し、うめき声をあげる木場の後頭部を拳銃で小突きながら告げた。

 

「俺は不信心だからさ。別にすべての悪魔を誅すべき、なんて考えはしてないし同情すべき境遇を背負ったはぐれ悪魔なんかはできるだけ殺したくないとも思ってる。だけどそれにも条件ってもんがあるわけでさ。だから、そうだな。」

 

 周りの者は皆動けない。全員が、白瀬の放つ異様な威圧感に気圧されていた。

 

「『人間(おれたち)に危害を加える悪魔』、なんてのは殺さないといけない。そう思わない?」

 

 白瀬は手に持った拳銃の引き金に指をかけながらうっすらと笑みを浮かべてそう宣告した。それは正しく死の宣告。人界を守護(まも)り、人外を屠る者の殺意の表れ。

 そしてまさに引き金を引こうとしたその時、彼は膨れ上がった魔力から身を守るために後ろへと飛び退った。それと入れ違いになるように滅びの魔力が、雷光が先ほどまで白瀬のいた場所を焦がす。

 

「祐斗からはなれなさいっ!」

「これ以上はさせまんわ!」

 

 滅びを司るバアルと歴戦の堕天使であるバラキエル。神話クラスの系譜を汲んだ二つの雷はもし当たっていれば白瀬の脆い人の身など容易く消し飛ばしていただろう。

 

 

「この野郎っ!」

「祐斗先輩はこれ以上やらせません…!」

 

 飛び退った白瀬に、【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】を発動させたイッセーと小猫の拳が襲い掛かる。自らに迫りくる神滅具(ロンギヌス)と膂力を強化された【戦車(ルーク)】の攻撃。別に対処できなくはないが手間を取らされたことに白瀬は舌打ちをしながら仕込んでいた銃剣を追加で取り出し─

 

 

「イッセーくん、やめといたほうがいいよ。」

「キヨシ、お前もだ。早くその武装を下ろせ。」

 

 ─小猫の拳はゼノヴィアの、一誠の拳はイリナの聖剣(エクスカリバー)によってそれぞれ止められていた。拳と聖剣、それぞれの得物がぶつかり、そして聖剣の放つ聖なるオーラがすぐに二人の悪魔を押し返す。

 

「っくそ、なんだよ、力が…!」

 

 聖剣にはじき返され、たたらを踏んだ一誠が膝をつく。今のせり合いで一誠は傷を負っていない。なのに全身に力が入らない。それどころか傷がないはずなのに痛みまで覚えている始末だった。

 

「聖剣の力よ。聖剣は触れただけで神の力と相反する悪魔や堕天使の力と存在を消し去ることができるの。今のはオーラだけだったからこの程度で済んでるけど…傷がついていれば致命傷になっていたかもね。」

 

 刀の状態から紐の状態へと擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を戻しながらイリナが答えた。ゼノヴィアもまた、役目を終えた破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を布に巻きなおしていた。そしてその隙にアーシアは木場の傷を神器で癒す。巻き戻しでもするかのように癒えていく傷に、グレモリー眷属たちはほっと胸をなでおろした。

 

「…別に俺一人でどうにかなったんだけど。」

「知っているさ。だが私たちの目的を忘れるな。別に戦いに来たわけじゃないだろう?」

 

 むくれた白瀬をたしなめるようにゼノヴィアはそう言って白瀬の頭をはたいた。あいて、という間抜けな声が白瀬から漏れて全身から威圧感が抜ける。

 

「…ごめん。迷惑かけたね。」

「別にいいさ。このあと食事をおごってもらうがな。」

「私の分もお願いね。」

「え、ああ、はい…。」

 

 奢りだ奢りだと喜ぶ二人を尻目に白瀬は頭を振ってため息をついた。そして視界の隅に俯き、体を震わせる木場を見つけた。彼は傷こそ治っているが、手も足も出ずに敗北したのが相当応えたのかぶつぶつと何かを呟いている。

 

 白瀬はそんな木場の前に歩いていくと、屈んで木場の顔を覗き込んだ。覗き込んで、にっこり笑って言った。

 

「良かったね、みんなに守ってもらえて。」

「………っ!!!」

 

 ギリ、と音が出るほど木場が歯を食いしばるのが見えた。そんな彼の肩に手を置いて、白瀬は更に続けた。

 

神器(セイクリッド・ギア)も聖剣も使ってない俺に負けるくらいには君弱いんだからさ、頼りになるみんなに守られて大人しくしてなよ。そうやって目立たず生きてたら教会に目をつけられずに平穏に生きるくらいはできるだろうからさ。」

「てめぇ!」

 

 白瀬のその言い草にまずキレたのは一誠だった。白瀬を木場から引き剥がして、その胸ぐらを掴み上げる。

 

「木場に謝れこの野郎!」

「…なんで?」

 

 白瀬は薄ら寒い笑みを崩さない。それが挑発だとわかっていても一誠は目の前のこの男をぶん殴りたくて仕方なかった。

 

「勘違いするなよ悪魔(ミディアン)風情が。」

 

 そして突然にその顔がすん、と無表情になる。それは一誠が思わずゾッとしてしまうほどの変わりようだった。

 

「先に襲いかかってきたのはこいつだ。俺はそれを返り討ちにしただけ。お前のつまらない仲間意識なんてどうでもいいけど、それに俺を巻き込むな。」

「た、確かにそうかもしれないけど…けど、そこまで言う必要はなかっただろ!」

「あるね。俺が満足する。」

「なっ…。」

 

 その言葉に一誠が絶句した。動きを止めたその隙に白瀬は胸ぐらを掴まれていた手を解くと扉の方へと歩いていく。ゼノヴィアとイリナもそれに続いていった。そして扉をくぐる際に足を止めて言った。

 

「それではごきげんよう。二度と会わないことを神様に祈っておきますよ。」

 

 AMEN、とね。ニヤリと笑って言ったその一言に全員が頭痛を覚えるのを見て、3人は姿を消した。それを見届けたリアスは、プルプルと震える手を押さえ込んで口を開いた。

 

「朱乃。」

「どうしましたの?リアス。」

「塩持ってきてちょうだい。できるだけ大量に。あいつらが二度とこないように玄関に撒くわよ。」

 

 それやったら自分たちにもダメージくるんじゃないですか?そう突っ込めるほど正常なメンバーはグレモリー眷属一味には誰もいなかった。

 

 




 
このあとクソ荒れる木場くんをよそに教会組はみんなでサイゼ行った。

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