聖なる剣を携えて   作:チキンうまうま

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周りがラノベ顔の美男美女で溢れるなかヒラコー節全開のいい笑顔をキメる二人。

…コラかな?




聖剣 ①

 

「あの、部長。」

 

 コカビエルの待ち構える駒王学園の目の前にある公園で、一誠は所在なさげに声を上げた。彼は自身と同じ眷属である木場の敵討ちをするべくここにいるのだが、どうも居心地が悪い。

 

「その、あいつらどうするんですか?」

 

 ちらりと一誠が視線を向けた先にいるのは教会3人組、と言うより白瀬。殺気を隠そうともしていない白瀬は、学園を囲む結界が編み上がるのを今か今かと待ち侘びていた。

 

「無視よ、無視。あそこまで言われて共闘なんてできないもの。」

 

『…俺に、悪魔と手を組めというのか?』

『ええ。私だって教会と手を組むことの異常さはわかってるわ。でも、今はそれどころじゃないでしょう?』

『ぬかせ化け物(フリークス)。貴様とお手々繋いでワンツーステップなぞ誰ができるか。こんどつまらん冗句を言ってみろ、その舌を引きちぎるぞ。』

 

 白瀬の罵倒混じりの即答にリアスはキレていた。確かに互いの関係性を考えると非常識な申し出である自覚はあったが、それ以上の非常事態である。多少の逡巡くらいはあってもよいだろうに。

 

『だが相棒よ。実際奴と足並みを揃えるのは不可能だぞ。』

「ドライグ?」

 

 そんな中で一誠の左腕から声が響く。

 

『最初から既視感はあったのだが…先程の炎を見てようやく確信した。あれはただの聖剣ではない。正真正銘世界最古の神秘を宿した聖火の剣だ。下手な共闘などしてあれが掠りでもしてみろ。相棒など塵も残さず消滅するぞ。』

「…マジで?」

『完全な禁手化(バランス・ブレイク)に至れば龍の力で耐えられるかもしれんが、今の相棒だと間違いなくそうなるな。』

 

 ちなみに本来の二天龍(おれたち)なら別に食らってもそこまでの傷にはならん。その言葉に冷や汗をダラダラと流しながら一誠は恐る恐る白瀬の方を見た。彼はただじっと完成しつつある結界の方を見つめている。うん、決めた。絶対にあいつには近寄らねえし部長たちも近寄らせねえ。

 

『それにしても懐かしいな、あの剣は。あの焔は。』

 

 そんな主人の心情なぞつゆ知らず、世界を揺るがしたウェールズの赤き龍は昔を懐かしんでか楽しそうにそう言った。

 

 そうこうして数分が経ち、結界が完成する。一仕事を終えたソーナ達が今度はその結界の維持のために走り始める中、白瀬は結界の方へと歩き出した。

 

「目標は。」

「全てだ。堕天使コカビエル、その従僕、及び我らヴァチカンと人界の敵になるもの、その全てを殺せ。」

「作戦は?」

「ない。そんなものは最初(はじめ)からありはしない。俺たちにできることはただの一つ。見敵必殺(サーチアンドデストロイ)見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ!」

 

 その様子を見てリアスは狂ってる、と呟くと眷属たちは全員首を縦に振り、ただ一人アーシアだけが苦笑いで済ませた。

 

「そうか、そうか!ならばそれでいいさ!そうあれかし(エイメン)!」

「「そうあれかし(エイメン)!!」」

 

 胸に秘めるは信仰と意志。ただそれだけを持って、強大にして怨敵なる堕天使を殺すために聖剣使いたちは死地へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「役者が揃ったか。」

 

 結界内へと踏み入った面々を、コカビエルは月光を浴びながら出迎えた。その表情からは随分な余裕と歓喜の念が窺える。

 

「待ちかねたぞ悪魔ども。本当に待ちかねたぞ祓魔師(エクソシスト)。こんなちゃちな結界が出来上がるのを、お前達が来るのを俺は本当に待っていたのだ。」

「そうか、だがもう待たなくていいぞ。貴様はここで死ね。」

「おお怖い怖い。そんなに俺を楽しませるな、俺は怖くて震えてしまいそうだぞ人間(ヒューマン)。」

 

 白瀬の聖剣から焔があがる。その焔を見てコカビエルは実に楽しそうな目をすると、リアスの方へと目を向けた。

 

「小娘。サーゼクスは来るのか?それともセラフォルーか?俺を倒しうる悪魔の一匹でも来るんだろうな?」

「来ないわ。その代わりに私たちが貴方を倒す。」

 

 リアスは真実を隠して伝えた。実際には魔王(あに)の部下が1時間ほどで来る。だが、それを馬鹿正直に伝えるような真似はしなかった。

 

「…そうか。」

 

 コカビエルは目を閉じて小さくため息をついた。そしてゆっくりと目を開けると、その顔にギラついた笑みを浮かべた。

 

「そこまで言うのならば少しは俺を楽しませてみせろ。」

 

 コカビエルが指を鳴らせばいくつもの魔法陣が起動し、淡い光を放つ。そこから現れるのは無数の三ツ首の魔犬(ケルベロス)骸骨(スケルトン)。数えるのもバカらしくなるほどの量の闇の眷属(ミディアン)が聖剣使いたちとリアス眷属を取り囲んだ。

 

「さあ、」

 

 これはコカビエルにとって小手調べに過ぎない。この魔獣の群れを踏破することは、この者たちが自身がこの手で殺すべき強敵なのか、それともただ言葉を話す獣に過ぎないのかを見極めるための試練に過ぎない。

 

勝負(コール)だ。」

 

 主人のその声を皮切りに、魔獣たちが唸り声を上げて獲物へと飛びかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「真名解放」

 

 四方八方。見渡す限りの視界の全てから襲いかかる魔獣を前にして白瀬は妙に落ち着いていた。ひとつ小さな息を吐き、聖剣を握る手に力を込める。

 

「─この剣は太陽の映し身

 

 剣から聖火が放たれる。それは余波にして、聖剣の炉心に火が灯された証。これから顕れる聖剣の、漏れ出した力の一部に過ぎない。それでも、その炎は一瞬にして寄っていた魔獣を灰すら残さず焼き尽くした。

 

天地の狭間。そこに遍くすべての不浄を浄めし炎の陽炎

 

 聖剣から放たれる炎が爆発的に増える。聖なる力が、聖なる焔が辺りを照らし、真昼の如く明るく染め上げる。ゼノヴィアもイリナも、そして悪魔たちも初めて見るその聖剣の姿に思わず目を奪われていた。

 

「これが、これが真の聖剣…!」

 

 その様子を遠くで眺めていた老人が目を輝かせる。本物だ。自分の求めていたものとは対極の、それでいて同じ頂に位置する究極の一が存在する。

 

顕現せよ

 

 白瀬の神器(セイクリッド・ギア)が声なき雄叫びをあげる。真夜中に、己の時間(とき)が来たと叫び出す。太陽はここに在りと叫び出す!

 

「随分と久しぶりに見たな、その剣は…!」

 

 コカビエルもまた、その聖剣にある種の感動を覚えていた。1500年だ。1500年ぶりに本物の聖剣が目の前に現れたのだ!俺を殺すために!この俺と戦争をするために!

 

 業火の全てが白瀬の手元へと、白瀬の握った聖剣へと集まっていく。爆発的な業火が、眠っていた聖剣を真の姿へと打ち直していく。そして炎の全てが刀身に収められ、初めてその聖剣の真の姿が顕れた。

 

 それは世界最高の神秘である星の意思を宿した聖剣。太陽の加護を、太陽そのものを宿した聖剣。太陽に認められた者しか使えない、祝福の剣。

 

日輪抱きし勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)!!」

 

 白瀬の手に握られるのは一振りの剣。だが、今までの姿よりも一回り大きく、天空の如き蒼と日輪の如き白銀を纏う美しい剣であった。

 

 

 

 

 

 

 

「何をしている。早くあの祓魔師(エクソシスト)を殺せ。」

 

 太陽の聖剣。すべての闇の眷属(ミディアン)を焼くその光に怯え、ただ後ずさる自身の従僕にコカビエルは命じた。だが、それは聖剣を恐れたからではない。

 

「殺せ、殺せ!さあ殺せ!そのためにお前達は死ね!あの聖剣の炎で焼かれて塵になって死んでこい!そうでなければ貴様らは俺が殺す。死んだほうがマシだと思える方法で嬲り殺してやる。」

 

 楽しいのだ。知りたいのだ。あの剣が、本当に目の前の男を選んだのか!それともただ聖剣に使い潰されるだけの手駒に過ぎないのか!ただそれを知るためだけに堕天使は従僕を殺す。己の快楽のために。

 

「さあ、殺せ!」

 

 堕天使の哄笑とともに魔獣たちが恐怖を隠して飛びかかる。結界の全てを埋め尽くす怪物が、雄叫びを上げて大地を震わせ、ただ一人の男を殺すためだけに牙を剥く。

 

 白瀬はそれを正面から迎え撃った。だが、特別なことは何一つしていない。彼の攻撃はただの一撃。

 

 聖剣の、横薙ぎ。

 

「「「「「「───────────ッッッ!!!!」」」」」

 

 その一撃で決着はついた。剣の横薙ぎと同時に放たれた焔。それが魔獣を一瞬で焼き尽くす。断末魔の叫びすら聞こえないほどに、圧倒的な火力をもって。ただの一撃で、結界内の全て埋め尽くすほどの魔獣はただの一匹も残らず消え失せた。

 その一撃を放った白瀬は平然としていた。目に絶対の殺意を込め、コカビエルを屠らんと笑っている。

 

「…はははっ。ああ、強い。お前は、その聖剣はべらぼうに強いな。」

 

 コカビエルは笑う。認めよう。目の前の人間はガラティーンに選ばれた。星の意思はこの男に太陽を託したのだ。

 

 だから殺す。絶対に殺す。コカビエルは目の前の聖剣使い(パラディン)を敵と認めた。自身が手を下すに値する敵だと認めた。この男を殺して、その髑髏を盃にして酒を飲んでやると決めた。その身を膾にして、骨まで喰らってやると決めた。

 

「ああ強いだろう。強いだろうこの太陽は。貴様のような光の下で生きられなかった者には、この光はあまりにも眩しく恐ろしいだろうコカビエル。」

「ああ全くだ。俺のような者にはこの光は怖くて怖くて仕方がない。だから─」

 

 コカビエルはゆっくりと手をかざした。その手に魔力が集まっていき、それと同調するように大地に巨大な魔法陣が現れる。

 

「なんだこれは…?」

「出番だぞ、バルパー。」

 

 魔法陣が輝き、その力が発揮される。その直後、─大地が、揺れた。立っていられないほどの局地的な揺れに、その場にいた全員が地面に膝をつく。

 

「っっっっ今のは!?」

「地震?嘘でしょ!?なんて魔法よ…!」

「違いますわ、今のはただの魔法ではなくて…」

 

 ただ一人、朱乃だけが今の地震のカラクリに気がついた。そしてそのあまりにも恐れ知らずな蛮行に、顔を引き攣らせた。

 

「そうだ。今のはただの魔法ではない。莫大な力を持って龍脈そのものを刺激した、その結果にすぎん。」

 

 ただ一人中空に立つコカビエルは全員を見下ろして、出来の悪い生徒を諭すように語りかけた。

 

「俺の下にはバルパーというエクスカリバー狂いがいてな。そいつの研究成果のおかげでここまで辿り着けた。人を人とも思わぬ奴がいたからこそ辿り着けた。─エクスカリバーからそのエネルギーのみを抽出すると言う技術にな。」

 

 エクスカリバーの、エネルギー。白瀬の口の中で声にならない声が生まれる。

 

「大戦で7つに折れたエクスカリバー。もしそれを使うのならば俺の元にある2本では足りなかっただろう。だが、今ここにはもう一つエクスカリバーがある。真の姿を保ったままのエクスカリバーが!星の意思を宿した真なる聖剣が!」

「まさか!まさかそう言うことか糞野郎!貴様、俺の─!」

「そうだ!俺が今使ったのは()()()()()()()()()()()だ!太陽の聖剣、その無尽蔵の力だ!」

 

 コカビエルは笑う。自身の企みがうまく行ったことに。もう戦争は避けられないことに!

 

「あと10分!たったの10分で関東の龍脈は破壊され、全てが吹き飛ぶ!人間も悪魔も天使も、日本の妖怪共も全てを見境なくだ!ほんの10分で誰にも止められない戦争が始まるのだ!感謝するぞ聖剣使い!お前のおかげで俺の戦争が始まる!お前が!お前が戦争の引き金を引いたのだ!」

 

 コカビエルの高らかな笑い声が、駒王学園の校庭に響き渡った。

 

 

 





日輪抱きし勝利の剣(エクスカリバー・ガラティーン)
 太陽の加護を受けた星の聖剣。もう一つのエクスカリバー。全てを太陽という聖火で焼き尽くし浄化する聖剣。

白瀬がガラティーン使うことは2話の時点で決めてました。(「お前の聖剣も一応エクスカリバーだろう」ってゼノヴィアが言ってる。)

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