「さてまずは準備からだな……装備は経費で落ちるか?」
「まぁ依頼してるの僕たちですし問題ないですよ?」
「そうか、じゃあモンド?エスコートの練習がてらショッピングと洒落込もうではないか?」
「は?」
「……本当にモテないぞお前?ほら行くぞ?」
「おい引っ張るなよ!?いてててっ!?」
私はモンドを強引に引っ張り闇市へ向かった。
ここでは銃のパーツから残飯まで売っているマジェスティの裏側だ。
「おい店主?いるか?」
「ガキは帰った帰った……って軍人さんか!」
お店の奥からはいかつい体格をした強面の男性が出てきた。
この前のアレが効いてる効いてる……!
「あんたのおかげで結構助かってるよ!お安くしとくぜ?」
そう言ってニヤッと笑う店主と握手を交わした。
「それでは……マジェスティ製ハンドガン2挺と9mm弾を5発ずつ頼む」
「あいよ……お上にはよく言ってくれよ?」
「期待しておいてくれ、それじゃあ私たちは失礼する」
「またきてくれよ〜?」
よし買い物一つ終了と……
「なぁフリーデ?お前何やったんだ?」
「私の顔写真の軍人手帳を見せただけだが?」
「フリーデ、お前軍人だったのか!?」
こいつは感が鈍いな……諜報員としてどうなんだ?
「私たちはなんだ?諜報員だろう?身分の偽証は当たり前だろうが?」
「あ、そうだな……あと買い物は?いつものか?」
「そうだな、道具は隠し持たなきゃだろう?」
「嫌だなぁ……」
まぁ彼が嫌がるのは私も同感だな。
ガンショップから徒歩で数分歩くと怪しげな薬屋に着いた。
そこの閉じた窓口を3回叩き声をかける。
「……おばば?いつもの頼めるか?」
すると窓が開き大きな袋が放り出されてくる。
彼女には本当に感謝をしなくちゃなぁ……?
「よし、あとは……おいそこの子供っ!!」
「な、なんだよっ!!」
私は路上に住まう少年に声をかける。
「この通りをまっすぐ進めば孤児院があるんだが来るか?そこなら飯も出るぞ?」
「め、飯が!?そ、そんな場所があるのか!?」
「私が作ったんだが……どうだ?」
「た、頼むっ!!弟もいいか!!」
「勿論だ!おいモンド、彼の弟をおぶってやれ」
「あいあい……」
「なんで僕たちを引き取ろうとするの……?生活だけでも大変だろうに……」
「母なら見捨てないからな……私は母の遺志を受け継ぐだけさ」
この子達は私たちが闇市へ入った時からずっと後をつけていた子だ。
一瞬私が見逃したほど彼には才能があった……ならスカウトするしかないだろう?
「なんてかっこいいこと言ってるけど……邪悪な笑みが出てるぞ?」
「さて……今回の準備は軟膏なしかな?無理やり押し込んでやるか」
「やめろ!?マジで痛いんだからなアレ!?」
* * *
「……さて今日からここが君達の家だ、好きにくつろいでくれ!」
「ここは……教会?」
「元々な。倒壊が比較的マシだったから孤児院として再利用しているんだ。おいモンド!」
「うちのボスは人使いが荒いな……とりあえず水浴びをしに後ろの井戸まで行くか」
「体も洗えるのか!?最高だなっ!」
「うん、お兄ちゃんっ!」
「モンドはそれが終わったら案内をミーシャに任せて懺悔室に来い」
「嫌だなぁ……」
「お兄さん大丈夫?尻に敷かれているの?」
「彼女じゃないぞ?強いて言うなら……なんだ?」
「パートナーだな?ふっ、彼は普段こんなだが夜は激しくてな?」
「おいフリーデ!?小さい子に何吹き込んでるんだ!?」
「はよ水浴びをしてこい。潜入に遅れるだろうが」
「……じゃあ先準備しててくれ」
少年は赤面してたが元気そうだな?
あと意外と教養があるな……年は10くらいか?
彼が復讐を望むなら機会を与えようか……
「さてと……みんな!ただいま帰ったぞ!」
「「「お帰りなさいっ!!」」」
私が声をかけると物陰から一斉に子供達が飛び出してきた。
知らない子が来たからか物陰に隠れていたが、私が笑顔を見せたから安心したのか……
この子達はみんな10も行かないうちに孤児となってしまった子供達だ。
母親の愛を強く望む歳だろうに……と思った私が母親役をやっている。
「みんな?私は今から準備があるから懺悔室には近づかないように!お化けが出て食べられちゃうからな?」
「だいじょうぶだよっ!おばけがでたら僕がボスをまもるもんっ!!」
「ふふっ、それは心強いな?可愛いやつめっ!」
「おいフリーデ?この服はどうするんだ?」
子供達と戯れているとモンドが新しい子の服を持ってきた。
比較的小柄な私ならなんとか着れそうな服。
そう、これを潜入の時使うのだ。
「……それは潜入の時使うから取っておいてくれ。洗うなよ?」
「わ、わかった……じゃあ準備するか?」
* * *
「気持ち悪い……やっぱこれじゃなきゃダメか?」
「そこがダメなら後胃しかないが……どうする?」
「吐くの嫌だから遠慮する……」
「私も痛いんだから我慢しろ……私たちは諜報員だ、使えるものはなんでも使え。それが自分の体でもな」
現在私たちは前線を遠回りし目的の基地の横についた。
敵は……報告どうりの中隊規模だった。
役250人。これを全滅させなきゃぁ……唆るなぁ?
「手筈はわかってるな?まずはあいつらに捕まるぞ」
「あぁ……」
「まずは鏡で……よし発見された!このまま伏せて待機……!」
伏せてから数分後、ドール式小銃を携えた兵士が3人私たちを拘束した。
<お前らは何者だ!?どうしてここにいる!?>
お、これドール語か?なら……
<私、少し、ドール語、わかる>
本当は流暢に喋れるが……これくらいの方が自然だろう。
頭のいいマジェスティ人のガキがドール語を学んでるってだけだ……自然じゃないか?
<!?>
<私、彼、近く、集落、孤児、逃げる、途中>
<どうする……?でもこのメスガキ大きくなったらいい女になりそうじゃねぇか?>
<一応捕虜にするか……!>
作戦成功だっ!!
今の私はさっきまで少年が来ていたボロボロの布切れを身に纏って秘所を隠している程度。
女に飢えている兵士なら釣れる……!
<男も可愛い顔してるし……一応なぁ?>
お、思ったより下衆だなこいつら……まぁこの場で犯されるよりはいいだろう。
<今、説明、する>
<早くしろよ?>
「聞いたな?この後我々は連行される。多分同じ牢屋だろうからそこで話すか」
「了解」
<彼、説明、納得した>
<わかったよ……ほら行くぞ?>
そうして私たちは同じ牢屋まで連行された。
牢屋としては豪華で布団用の布切れが一枚と便所用の壺が一つあった。
「同じ牢屋でよかったよ……とりあえずどうする?」
「とりあえず物資を隠すか……壺の中に物資を入れることとする。ミッションは書類を少佐の使いに渡した後、明後日の攻勢に合わせて脱出し拠点を確保すること……いいな?」
「イエスマム……兵士が酔い始めたら行動開始か?」
「そうだな?事前情報によるともう直ぐ……騒ぎ始めたな?」
外が騒がしくなってきた。
事前情報によるとこの時間帯にお酒を飲み始めるらしい。
まぁこんな最前線酔ってないとやってらんないよな……
「急いで物資を出すか……」
物資はどこかって?
男は穴が一つ、女は二つあるだろ?
まぁ一つは流石に使わないが……どことは言わないけどな?
しっかり綺麗にしてからやってるから衛生面は大丈夫だ。
……まぁ精神的に負担がでかいと言うデメリットがあるが。
「しまう前に確認するか……と言うかあいつら体確認しなかったな?それって兵士としてどうなんだ?」
おかげで胸のパッドの中に隠したハンドガンを丸々2丁も持ち込めてしまった。
ここのお粗末な教育のおかげで助かったよ……
「まぁ助かったからいいんじゃないか?」
「だがこれ五発しかないからな?武器確保用だぞ?」
「ちなみにあとなんかあるか?」
「投げナイフ4本と……私の胃の中にある袋の中に弾丸二発と針だな」
「気持ち悪いなお前……?」
「帰ったら戦闘訓練2時間……」
「実戦と比べたら楽だろ?」
「相手は私な」
「死ぬだろうが!?」
<うるさいぞ!!ったくなんで他の奴らは酒盛りしてるってのに俺はだけ見張りなんだよクソォ……!>
牢屋に向かって叫ぶドール兵……使えるな?
<あなた、大丈夫?お酒、ない?>
<あぁそうだよっ!!お前らのせいでなっ!!>
<おじさん、だけ、仲間、外れ?>
<なんだよテメェバカにしてんのか!?>
そうして牢屋に近づき火かき棒で牢屋を叩く。
うるさいな……まぁ戦場で銃を撃ってれば耳も悪くなるか。
<それって、仲間、なの?>
やっぱり組織には必ず不満を持つ者がいる。
まぁうちの孤児院にはいないと思うが。
ならそこを突っついて壊すのもいい策だろう?
特にこう言う手抜き工事は簡単に行くから面白い……!
<な、何がいいてぇんだよ?>
<仲間、は、おじさん、の事、仲間、思ってる?>
<うるせぇっ!!弾丸の雨の中で一緒に戦った戦友だぞ!?あいつらがそんなこと……>
お、揺らいでる揺らいでる……!
あともうひと押しだなぁ……!
実際は仲間なのに少しの不満から不信感がどんどんでかくなって……!
最終的に壊れる……最っ高の復讐だろう!
私の母を殺したのはこいつじゃないが孤児院の子供達の親を殺したかもしれない相手だ。
子供達が綺麗な手を汚す前にすでに汚れきった私がやってやるんだ……それが母親役の仕事だろう?
<そっか、おじさん可哀想、さっき、あの二人、おじさんの悪口、言ってた>
<は?>
あの二人というのはこの男に見張りを押し付けて酒を飲みに行った二人である。
実際は少しだけ変わってくれ、後で戻るからとしか言ってない。
だから完璧な誘導である。
<あの、ノロマ、に、押し付ける、すればいい、言ってた>
<嘘だろ……?なぁ嘘だと言ってくれよ!?なぁ!?>
<ごめん、嘘は、ダメ、母、言ってた>
<まじかよぉ……俺が何したんだよぉ……!>
あぁこの表情っ!!怨敵が内部から崩壊していく愉悦感っ……!
たまらないっ……!これだから諜報員はやめられないっ!