私は塹壕めがけて一直線に走り出した。
後ろから男とモンドの声が聞こえるが無視……だ、だってもう我慢できんっ!!
私は殺しに特化した鍛え方をしていた。
今でこそ落ち着いてるが最初期のスラムなんて女は犯され男は金を巻き上げられたのちに殺される世界……だから私はわざとスラムで生活した。
私を犯そうと近づく男はごまんといたから鍛えるのにちょうどよかった。
まぁこんなつるぺたボディのどこがいいかわからないのだが……
「きひひっ……きゃははははははっ!!」
つい耐えられず笑ってしまった。
仕方なくないかぁ?お預けされてたものがようやく手に入るんだぞ!?
ま、普通なら小遣いを欲しがる年齢だろうが……欲しいのは敵の血肉だ。
<かかってこいやクソドールどもぉおおおおっ!!きゃはははっ!!>
そこで私は勢いよく塹壕に飛び込み一人の兵士の頭を潰す。
私は軽いがコツを掴めば意外といける……機密情報だが。
塹壕の中は兵士がぎゅうぎゅう詰めで入っており私は目立つ場所に降りてしまった……が。
誰もが口を大きく開け唖然として私を見ていたため誰も私を撃たなかった。
まぁ奥に味方がいるから塹壕内で銃をぶっ放すバカはいないと思うが。
<だ、誰だお前は!?>
<私か?私は……お前らに家族を殺された戦争孤児ってところか?>
<て、敵が単騎で乗り込んできたぞぉおおお!!殺せぇええっ!!>
<はっ!殺れるもんならなぁ!!>
見える範囲だと距離が離れて前に3人で、すぐ後ろに4人か……じゃあ後ろからやろうか。
まず振り返りマチェーテを振り……一人殺害。
え、避けれないのか?スラムの大人はもっと強かったんだが……
<よ、よくもぉおおおおっ!!>
男がナイフを取り出し私の腹を狙って突き、顔に向かって切り上げてきた。
いい動きをするな……おかげで自慢の顔に傷がついた。
でもやっぱり銃を相手するよりナイフの方が面倒臭いな……
まぁ遊んでないでとっとと殺っちゃうか。
じゃないと後ろも距離を詰めてきてるし危ないな。
<でりゃぁああああっ!!>
<いい動きだけど遅いっ!!死ねぁああっ!!きゃはははっ!>
私の振ったマチェーテは見事に胴を切り、臓物がこぼれ落ちた……が、確実に殺すため首を切り落としもう一人に投げつけよろけた所を袈裟斬りにした。
<な、なんだよありゃ悪魔か!?>
<い、いでぇよぉ……だずげでぐれぇ……>
<じゃあ私が楽にしてやろうか?>
そこで私はマチェーテを逆手に持ち替え刺す……素振りを見せた。
このまま放置しても彼は失血して死ぬだろう。
ならできるだけ苦しんで死んでもらおうかぁ……!
<な“、な“んで……?>
<楽にするわけでないだろ?クソドール……!>
私の頭の中には鏡に映る私の髪を梳かすミーシャの笑顔があった。
無垢な少女をこいつらは辱めて殺したんだ、文句はないよなぁ……?
と言うかそろそろ後ろの奴らが合流する頃か……じゃあ残り一人は司令部で奪取したナイフでサクッと……よしっ!
そのまま後ろを振り返るとこちらにドール兵がいないことを確認したのか銃を構えていた。
フルオートで連射力の高い銃がドールの歩兵銃なのだが……
私今それ突きつけられてるのか?
あぁ……これは、胸が高鳴るなぁっ!!
これは努力した末に手に入れた特技なのだが私は意図的にゾーンに入ることができる。
思考が冴えるのか周りがスローモーションに動き、その場を生き残ることができる答えを導き出せる。
だから……
<悪しきマジェスティを撃ち殺せぇええええええっ!!>
<うぉおおおおおおっ!!>
<死ねやぁああああああっ!!>
3人同時に撃たれても……全て切り伏せることができる。
<……何やってるんだ?これだと鉄資源の無駄だろ?>
<ひ、ひぃっ!?なんだこいつっ!?銃弾全部切りやがった!?>
<勝てるわけねぇっ……!に、逃げろっ!!>
<逃すわけないだろぉっ!!死ねぇっ!!>
それから私は塹壕内を駆け回った。
私が通ると断末魔が響き渡り、私を見たものは顔が青ざめたのちに赤い血で染まった。
何人殺したかなんて覚えていないし、どれだけ撃たれたかもわからない。
所々に痛みはあるが……まぁ生きてるし問題はないか。
* * *
「おいそこの……裸の女の子!?おーいっ!!」
私がドール兵ににまたがり刺していると後ろからマジェスティ語が聞こえてきた。
マジェスティ語ってことは友軍か……ん?てことはもう終わりか!?
せっかく楽しくなってきたと言うのに……!
まぁ、たくさん殺せたし中にはミーシャの仇もいただろうから……いや良くないっ!
まだ殺し足りないんだが……とりあえず所属を聞こうか。
「所属はどこだ?名乗れ」
「は、はぁ……マジェスティ軍トート小隊隊長のトート少尉だが……」
「私はエドワーズのボス、フリーデだ。少佐から聞いていると思うが今から諸君ら小隊含めた中隊は私の指揮下に移ったことを忘れるな。今から各小隊で警備に着け、そして夜間になったら小隊長は警備を離れ司令部に集まってくれ」
「りょ、了解であります……このことは各小隊に?」
「あぁ、連絡をつけてくれるか?」
「わ、わかりました!」
いつもは部下を持つことがないから落ち着かないな……あ、モンドは大丈夫だろうか!?
先ほど別れた地点まで走るか……
そうして私はモンドの元へ走った。
流れ弾でくたばってないといいが……
* * *
「おいモンドー!生きてるかー!」
「……ん?フリーデか!?おいなんで銃も持たず突撃した!?」
「戦い方の癖の関係で銃は邪魔なんだよ……あと体は無事とは言えんがまぁ生きてはいる。それに幸い弾は全て貫通しきってくれてるからな」
「重症だろ!?今すぐに衛生兵んとこ行くぞっ!!」
「何言ってるんだ?ここは最前線だぞ?衛生本部なんてあるわけないだろうが!あっはっは!」
「笑ってる場合か!?ほら友軍のとこ行くぞ!」
「あぁ、行くのはわかったがその前にやることがあるだろ?」
「……まぁそうだな」
そうして唖然としている男に向かい口を開く。
<お前はマジェスティ大侵攻に参加したか?>
私が母を亡くしたあの大虐殺。
モンドが家族を亡くした大虐殺。
そして……孤児院のみんなが苦しむ原因となった大虐殺……!
彼はその場にいたのか……ひどく気になった。
<あ、あぁ……参加したけどそれがどうかしたか?>
クロ……か。
<……じゃあ防空壕内に手榴弾を投げ込んだ事件を知ってるか?>
<防空壕?投げた奴とは同じ隊だったな……だからなんなんだよ?>
<私はあの防空壕の中にいたんだ……幸いご老人が私に覆い被さり助かったが>
<は……?>
<この腹の傷が見えるか?ん?>
そう言って私は肌に張った傷を隠すシールを剥ぐ。
そこには縦に裂けたような傷痕が一つに抉れたような傷跡が無数にある。
<ひどい傷……もしかして!?>
<手榴弾の破片が腹を抉ってなぁ……この時は本当に痛くて痛くて……しかも救助が来るまで結構かってなぁ?最初は缶詰で凌いでたんだが無くなってしまった時は助けてくれたご老人や周りの人間を食ってなんとかしてなぁ?>
<もうやめてくれぇっ……!頼むよっ……!>
戦争では自分の殺しを正当化しないと心がもたない。
祖国のためにでも愛する家族のためにでも何でもいいが、自分が悪くないと思い込まなきゃ心がもたないのだ。
……だから現実を見せてやった。
<やめる?なんでだ?お前やドールの行動の結果を教えてやってるんだぞ?>
<お、俺は……でも上官の命令で仕方なくっ……!>
<これはただの意見なんだが……当時齢13の少女に一生消えない傷を残した挙句人を食わせるってどうなんだろうなぁ?>
<お、俺……でも、上官命令だし俺達は悪くないっ……!>
この他責思考がとてもむかつくっ……!
もうはっきり言うか。
壊れるだろうけどなぁ……!
<でも腹の傷は確実にお前等のせいだし、防空壕内の虐殺もお前達ドールのせいだろ?>
<で、でも俺っ……!祖国に嫁と子供がいるんだっ……!だから死ねねぇんだよっ……!>
<希望に満ちた目……ドールがそんな目をするなぁあああっ!!>
堪忍袋の尾が切れてしまった私は、気づけば男を全力で蹴り抜いていた。
男の鼻や口からは血が溢れる……ざまぁない。
<い“っ……な、なんだよ!?>
<私達から家族を奪ったのに自分は幸せになりたい!?なんだそのワガママは!?>
怒りが爆発してしまった。
感情の制御ができないのは戦女として失格だな……ま、軍人ではないからセーフだが。
<まだ教えてやるっ!救助が終わって母の遺体を見に行くと犯された形跡があったっ!!
母の遺体だけじゃないっ!女性の遺体はすべて陵辱された後だったんだっ!!あそこでは四肢がある遺体の方が少なかったんだぞ!?>
<え、でも祖国はそんなこと一切……>
<軍なんだから情報統制されてて当たり前だろ!?それにっ……!>
「フリーデ……落ち着けよ……な?」
流石に熱くなりすぎたようでモンドに止められてしまった。
……確かに冷静じゃないか。
モンドからハンドガンを受け取り薬室に弾を込め、頭に標準を合わせる。
<よかったな……ようやく仲間と酒が飲めるぞ>
<仲間?……お前もしかしてっ>
そうして震える右手でトリガーを引き切った。
男は自分が仲間を裏切った裏切り者という真実を知って絶望しながら逝った。
……最高だっ…!
あ、真横にいたモンドの青白くなった顔に赤い血がかかってしまった……少し凹んでいるように見えるが大丈夫か?
「……今の気分はどうだ?」
「あまりいい気分じゃないな……あいつとは少し話もしたからな、まぁ生かす気はないが」
「そうか、私は最っ高の気分だっ!!ドールを殺すことがもう快感になっているんだっ!!」
「まぁそう思わないとやっていけないよな……」
「何を言ってるんだ?相手はドールだぞ?」
「やっぱりお前は狂気そのものだよ……」
不敬なことを言われた気がするが……ドールを殺したばっかりだし許してやろう。
「ま、とりあえず早くミーシャの遺体を回収して綺麗にするか?」
「そうだな……確かこっちだろ?」
「……あぁ」
そうして遺体を隠してある草むらへ向かった。
やはり悲痛な表情で亡くなっている……ドールめ、いつか滅ぼしてやるからな……!
急いで体を綺麗にして軍服だが服を着せてあげた。
これで寒くはないだろう……
するとモンドがミーシャの遺体を運ぼうと手をかけたところを私は制止した。
「モンド、いい。私が運ぶ。これが母としてできる最後のことだからな」
「埋葬はどうなんだよ……」
「流石に戦場式じゃあダメだろう?プロに任せるさ」
「そりゃあそうだな……今なら泣いてもいいぞ?」
「今か?中隊もいるし遠慮しておく……ただ、あとで胸を貸してくれないか?」
「了解……あーやっぱ辛いな」
「お前が先に泣いてるじゃないか……先に胸を貸すか?」
そう言って私は彼に冗談を飛ばす。
初心なこいつは断るはず……それに笑ってないとミーシャに怒られてしまう。
「なんてな、冗談だ。さ、早くいくぞ」
「すまない……」
「……へ?」
気づけば彼の頭は私の胸に……まぁ仕方ないか。
確かに恥ずかしいっちゃ恥ずかしいが今だけ許してやるとしよう。
「子供みたいだな?ほら、私が慰めてやろう」
「……うるせぇ」
「反抗期の子供みたいだな……よしよし、お前はいつもよく頑張ってるよ」
そう言って頭を撫でてやる。
なんと言うか、本当に子供みたいで可愛いな。
まぁ同い年の男の子なんだが……これは心の内側にしまっておこう。