俺の名はアラン・エル・ブラー、テンプル騎士団最後の総長であったジャック・ド・モレーと共に騎士として在った者である。
最後こそ、苦痛に満ち満ちた地獄の如き終わりであったが、モレーは俺の唯一無二の親友であり、生き抜いた時間は掛け替えのないものであった。
さて、そんな俺はテンプル騎士団最後の総長の友として歴史に名を残し、英霊の座へと召し上げられた。
そして、人理を救う旅へと、つまりはカルデアへ召喚された。
そこまではよかった。しかし……
「おっ、久しぶりー。私のこと覚えてる?」
「………………モレー、か?」
「ぴんぽーん、大正解!また会えて嬉しいな」
そう言って俺の腕に自らの腕を絡めてくる女は、自身をモレーであると言った。
正確には、先にそうなのかと聞いたのは俺だが、思わずそう言ってしまうほどに、俺の感覚の全てが彼女はモレーだと、我が無二の友だと告げていた。
しかし、あまりにも距離感が近い、生前の感覚のままなのだろうかとも考えたが、生前のモレーと腕を組んだことはないし、生前のモレーが俺の手に指を絡めようとしてきた記憶もない。
「……モレー、少し近いぞ。騎士として──」
「貞潔、なんて言うつもり?私たちはもう騎士じゃないんだよ。もう全部、終わったんだよ?」
「だとしても俺は、騎士で在るつもりだ。俺だけでも、お前と歩いたあの道が正しきものであったのだと、証明しなければならない」
「……っ、あはは、ブラーくんっぽいね。昔から頑固でいじっぱりだったもんね。でもさ、もういいと思うよ、無実は証明されて……、残ったのは、私の怨念くらいだもん。あなたが縛られる理由なんてどこにもない」
気弱だったモレーらしくもなく、やたらと食い下がる姿勢が不自然だった。
なぜ彼女は、そこまで俺が騎士の肩書を捨てることに固執するのだろうか?
それがどうしても解せない
「……モレー、お前に何があった?俺に何を求めている?」
「別に、ただ…、ここでは騎士でも何でもなく、ただ二人の男女でいたいなって、それだけ」
「なんだ、そんなことか」
「……!」
「俺たちは元から、騎士であるかなど関係なく、唯一無二の親友だろう?」
「…………ちょっと用事思い出した、またねー」
しばらくの沈黙の後、彼女は走り去ってしまった。
性別が変わっていることといい、彼女に何が起こったのかをマスターに問いただす必要がありそうだ。
しかし、彼女の感触がこびりついたように脳裏から離れない。
俺はしばらく、動くこともできずに立ち尽くしていた。
────────────
思わず離れちゃった。
唯一無二の親友?私はそんなものじゃ満足できない。
確かに男だった時の、騎士だった時の私にはそれでよかった。
最後まで私を庇おうとしてたって聞いた時も、素晴らしい友を持ったって、それだけだった。
でも、今は違う。
アイツがカルデアに来たって聞いた時の、そしてアイツの顔を見た時のどうしようもない疼きが私に全てを理解させた。
無辜の怪物として混ざり合った私の全てがアイツの全てを求めてる。
指先から頭まで、騎士としてアイツが守り続けた貞潔も、低い声を奏でる唇も、味方ですら竦み上がるような鋭い瞳も、全部が欲しい。
アイツに騎士のままで居させるわけにはいかない、全部全部私のものに……
きっとそのために、私は……
待っていてね、必ずあなたに甘美な解放をプレゼントしてあげるから。
まだ今は……
「私の、親友」