フランスの極小特異点、とある古城にて
「──ラン、起きてアラン」
「…………、俺は……?」
「今まで何をしてたかなんて気にしないで良いよ。するんでしょ?二人で、復讐を」
霊基を改変された影響で意識の混濁を起こしているアランに、モレーは言葉を流し込む。
だが
「……それは、それだけは、駄目だ」
「どうして?」
「…………俺が憎悪に堕ちては、お前の足を引っ張ってしまう……もう二度と、俺を根拠にお前の名誉を貶めるようなことは……」
アランは混濁した意識のまま、普段は方にしない心の内までをモレーへと語ってしまった。
アランは未だに色濃く悔いているのだ。
モレーはここへ彼を連れ去った時と同じようにアランの頭を胸元へ抱き寄せた。
「……悔いなくていいんだよ。君は、最後まで誇りを失わなかった。たとえそれが私を追い込んでいたとしても、私は……君の親友として死んだことを誇らしく思ってたよ」
「……ああ」
嘆くように、もしくは懺悔を切り出そうとするように息を吐いたアランに、モレーはさらに深く
「だからね、もっと自分の願いに正直になって良いんだよ。私たちの願いは、パリの中心で呪いを叫ぶこと、全部ブッ壊す事……そうでしょう?」
「……やめろ」
「やめないよ、だって君の願いを聞いてないから。君の願いは復讐、でしょ?そうじゃなきゃアヴェンジャーの適性なんてあるはずないんだよ。……憎いでしょ、君の行い全てを悪魔の所業にしたフランスが。それを私を追い込むための口実にした奴らが」
アランの鎧が炎を帯びる。
しかし、モレーは臆すことなく彼の兜越しの耳に口を寄せて囁く。
「大丈夫……、今度は私も最期まで一緒だから。─────自由になろう?」
「……アア、──アアア!」
鎧が赤熱するほどの温度の炎が吹き出し、鎧は黒く変色しその一部は溶けて、鎧のままでありながら形を変えてゆく。
兜はその形を変えて、表面に髑髏のような、または焼死体のような形を浮かび上がらせる。
籠手の指先は尖り、その手を獣の爪のように変える。
テンプル騎士団副総長としての彼のシンボルが輝いていた盾は、それが焼け落ちて黒い無地の盾へと変わる。
溶けて彼の身体に張り付くような形へと変化した胸部はその表面に肋骨のような形が浮かび上がり、兜と同じく焼死体を連想させる。
「……モレー、俺は──どうなって……?」
「安心して、カッコいいよ。
「…………お前の口車に乗ってみるのも悪くはないか」
霊基が安定し、姿が変われども冷静さを取り戻したアラン。
しかし、彼はモレーと共に反旗を翻す道を選んだ。
それは確かに、復讐者としての彼の霊基の性質もあるだろう。
だが、何よりも彼の心の中にあったのは、自らの過ちを許した友と共に在るべきだという友情であった。