アランが完全なアヴェンジャーとなる少し前、立花たちは街の宿へと帰ってきていた。
それと同時に、カルデアから通信が入る。
『立花ちゃん、聞こえる?どうやら今、ジャック・ド・モレーはアランくんをアヴェンジャーに変えることに執心しているみたい。今のうちに、そちらにサーヴァントを送るよ。一人は知名度補正も考えての最適解、もう一人は本人からの志願だ』
そこから少しの準備の後、カルデアから召喚されたのはジャンヌ・ダルクとそのオルタだった。
二人が召喚された直後、宿の外から悲鳴が聞こえてくる。
遅れて、何かが焼ける音と悪魔のような笑い声が響いた。
やはりと言うべきか、炎の中心にいるのはアラン。
彼はアヴェンジャーとしての悪魔のような禍々しい姿で、聖杯で召喚されたであろう燃える騎士たちを従え、破壊と殺戮の中心で笑っていた。
「……そこまでよ!」
槍を向けたジャンヌオルタへ、アランは一言も返すことなく通り過ぎ、背後の藤丸立花へその剣を振り上げた。
立花の首を落とそうとした一撃を、ジャンヌオルタの旗が受け止める。
「……本当に悪魔みたいね、貴方。散々口にしていた騎士の誇りはどうしたんです?」
「……誇り?あぁ、口にしたな。確かに言ったとも、それが、それだけが俺に残った物だった。……だが、それすらも否定された今の俺に残るのは、怒りだ」
アランの鎧からジャンヌとそのオルタを焼き尽くさんと放たれた炎に、二人は揃って飛び退く。
「怒り?そう言うには少し…いえ、大分ぬるいんじゃなくて?」
「抜かせ、贋物風情が」
灼熱の炎がジャンヌ・オルタへと殺到する。
オルタがそれを凌いだ隙をついてジャンヌが旗を振るう。
アランは片腕でそれを受け止めて弾き飛ばすと、もう一度藤丸立花へと肉薄し、しかしその途中で動きを止めた。
それと同時に町中から叫び声が木霊する。
「……は、ははハハハハハハ!!!良い、これは良い、亡き胸が空くようだ!─────あぁ、これだけの血が流れてようやく、お前たちの罪が濯がれるというもの。だが、まだだ、まだ足りない」
「……アンタ、完全に堕ちたわね」
「あぁ、そうだとも。あの無念、あの怒り、我らに与えられた全てを返す為ならば、私は地獄にも堕ちるさ」
町中に放たれた炎が、家々をかの聖堂の如く燃え上がらせる。
彼の怒りに呼応して、彼の魔力から作り出された炎の騎士たちが市民に剣を振り下ろす。
「あぁ、王に呪いあれ!我らを貶めた全てに呪いあれ!地獄の淵で命乞いをするがいい──!」
『この魔力反応……!?宝具だ!備えて!』
「『
蔓延した炎が彼の号令に合わせて凝縮される。
「『
聖なる旗が炎を防ぐ。
しかし、炎の殺到はいつまでも止まらない。
勝負はジャンヌとアラン、どちらの魔力が先に尽きるかの消耗戦に持ち込まれたように思われた。
しかし、唐突に炎が止んだ。
「……悲鳴が止んだ。俺が成すべきはここまでだ」
アランは先ほどまでの狂気的な様が嘘かのように踵を返して馬に跨ると、炭と死体だけが残された街を去っていった。