シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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約束

 

「それで、結局何を約束したんだ」

 

私は話を戻す

すると、マリーが話しだした

 

「は、はい…その、私が…私がお願いしたんです、ハナコさんを助ける為に、サクラコ様を説得する…その代わりに約束として、ハナコさんに退学を撤回してもらう、と……」

 

「マリー…」

 

…そうか、やはりハナコとマリーは友人関係だったのだろう

マリーはハナコが嫌うトリニティの闇とは真逆の存在だからな……

 

「私では、ハナコさんを止めることができなくって…ハナコさんの心の奥底を、分かってあげることができなくて…こんな形になってしまって、ごめんなさい…でも私は、ハナコさんに学園に残って欲しくて…」

 

涙目でそう言うマリー

 

「…そうか、他人の心を理解する…というのは本当に難しい事だ。ハナコは特段、そういう事を隠すのが得意だろうしな」

 

そう言いつつチラリと後ろを見ると若干気まずそうに苦笑しつつ目を逸らすハナコ

 

「マリーはハナコを無理矢理学園に残す事に罪悪感を感じているのだろうが…それは大丈夫だ。…ハナコ、自分の言葉で伝えると良い。この様子じゃまだ話していないんだろう」

 

恐らく、一度は話したのだろうが…まだ伝えられていない事がある筈だ

そう言うと、ハナコは頷き、マリーに近付く

 

「…はい、伝えるのが遅くなってしまい…ごめんなさい、マリーちゃん。私はもう、退学しようとは考えていません。ですから、安心してください」

 

「本当…ですか…?」

 

マリーの涙をハンカチで拭き取り、ハナコは言う

 

「はい、補習授業部で学びましたからね。もう少し…足掻いてみようかと。ねえ、先生?」

 

「あぁ、そうだな」

 

少々口角を上げつつそう返す

アズサにとっての光はヒフミなのだろうが、ハナコにとっての光はアズサなのだろう

アズサの生き方は奥底で凍りつき、閉ざされていた彼女の心を溶かしきった

 

「…ありがとう、ございます…ハナコさん、サラ先生…」

 

マリーがそう言うと、そこまで黙って見守っていたサクラコが口を開いた

 

「ですが、それだけでは足りませんね」

 

サクラコに目線を向ける

真顔のサクラコは、見る人によっては威圧感や恐怖すら覚えるだろう

だが、その表情はすぐに崩れた

若干の困り顔でサクラコは言う

 

「と、言いたかったのですが…結局、正義実現委員会の委員長も介入しましたし、彼女は見返りを求めなかったと聞きます。ここで私達があまり見返りを求め過ぎるというのも、些か良くはありません。ですから…」

 

「はい、一度だけ、【お願い】された時に力を貸す…という約束をしたんです」

 

サクラコもハナコの言葉に頷いていた

 

「…ハナコ、それは……」

 

大丈夫なのか、と聞こうとするが、それより早くハナコは返事をする

 

「大丈夫です。その時協力するかどうかは私が決められますし……」

 

「……ハナコさんが嫌がる事を無理矢理、という訳ではありませんから。それは、私の望む所でもないのです」

 

「……そうか。分かった」

 

ハナコもサクラコも納得しているし、そういう条件なのであれば大丈夫なのだろう

 

「本当なら、シスターフッドに入って欲しい…というのが本音ではありますが、それはあなたを追い詰めて虐めるだけになりますから」

 

サクラコも、ハナコの事情は分かってくれていたようだ

 

「これからは、私達シスターフッドの無干渉主義も変わっていくでしょう。恐らく、政治的な事も色々と…そんな時にハナコさんの力を貸して貰えるかもしれない、というのは大事なキーになり得る可能性もありますからね」

 

きっと、それは大変な道のりになるだろう

未だに若干困り顔のサクラコに話し掛ける

 

「…そうか。サクラコも、困った事があったら私にも頼ってくれて構わないからな。あ、勿論マリーもだぞ?気軽に頼ってくれ」

 

「……はい、必要な時は力をお貸し頂きますね」

 

「は、はい、ありがとうございます」

 

サクラコもマリーも笑みを浮かべて頷いた

 

「…あ、そうだ。アズサの事は…どうなった?」 

 

アズサの書類は偽造されたものだから、ミカが捕まり、色んな物の捜索が始まると、バレて追放…なんて事にもなりかねない

サクラコに少し前から話していたのだが…

 

「…白洲アズサさん、ですね。彼女は犯人ではないと保証され、ナギサさんを救った補習授業部の一員…特別学力試験にも合格していますし、文句の付けようもありません。アズサさんの書類は私が正式な物にしておきます。シスターフッドが保証しましょう。誰にも異議申し立てはさせません」

 

そう断言するサクラコ

ハナコは嬉しそうに礼を言う

これで、アズサは正式にトリニティの生徒…か

 

「…ありがとうございます、サクラコさん!」

 

「そうか…本当にありがとう、サクラコ。この恩はいつか必ず返そう」

 

私がそう言うとサクラコは首を横に振る

 

「いえ、このぐらいは……」

 

うーん…何か、渡せるもの…?まだあまりサクラコの好物などは知らないからな…

等と迷いつつ、割と色んな問題が解決できそうだった答えを口に出す

 

「…ふむ、そうだな……私も一度サクラコの【お願い】をなんでも聞く、というのはどうだ?」

 

「なんでも……あぁ、先生は力でも勝てず、命令で逆らうわけにもいかず、サクラコさんにあんな事やこんな事をされて……♡」

 

「ちょっとハナコは少し静かにしていてくれ」

 

軽くハナコの口を塞ぐ

まだもごもご言ってるが妙な妄想を促すんじゃない

サクラコも若干気まずそうだ、すまん

 

「…こほん、そんな簡単に約束して良いのですか?…ナギサさんに騙されたばかりでしょう?」

 

「む、中々痛い所を突かれてしまった……だが、私は生徒を信じているからな。サクラコは私を利用して何か悪い事をするのか?」

 

「い、いえ…特段そういう事は……ですが、先生は、私も…信用しているのですか?」

 

若干、不安そうなその声

シスターフッド、その長。サクラコは恐らく信用される…という事は少なかったのだろう

シスター達ですら、サクラコは怖い人…だと思っているらしいからな

見た目も、一見キリッとしているのが苛烈な想像に拍車をかけていたのだろう

正直、話してみるまでは確かに雰囲気も近寄りがたい…というか高嶺の花…?というか、そんな感じの威圧感すら感じていたが…もう今は違う

 

「あぁ、信用している。話していて分かった、サクラコは噂よりもずっと思慮深い。真面目だし良い子、信頼できる生徒だ。噂はどうにかしたいものだな、皆に誤解されたままというのも…凛とした佇まいと振る舞いが少し近寄りがたい雰囲気に見えてしてしまっているのだろうか。顔も…綺麗なのだがな」

 

サクラコの顔をじっと見つめる

うん、確実に綺麗だし、可愛いと言えるだろう

雰囲気で若干バイアスがかかっているのだろうか…

 

「…せ、先生…その…」

 

気まずそうに顔を逸らすサクラコ

 

「…あっ、す、すまない…失礼だったな、申し訳無い。まぁ、取り敢えず、サクラコは信用できる…という事だ。話も合いそうだし、今度、空いた時間があればお茶でもどうだろうか?」

 

自然に誘えただろうか?是非、こんな話ではなく、気楽な事を話してみたいと思うのだが…

顔は逸らしたままで表情が見えないサクラコ

その後なんだか急いだ様子で立ち上がった

 

「…そう、ですか。……はい、いつか…この特権は…使わせてもらいますね。お茶も、楽しみにしています………その、私はまだ用事があるのでこれで。マリー、行きますよ」

 

「は、はい!失礼します……先生、ハナコさん、落ち着いたらまたお話を…!さ、サクラコ様も…」

 

「マリー、急ぎますよ」

 

「は、はい…」

 

サクラコとマリーはそんな感じで慌ただしく去っていった

 

「そんなに時間が押していたか…引き止めてしまっていたか?申し訳無いな。…それとも、嫌われたか?…それは困った、どう謝るべきか………」

 

時計を見てみるが、確かに1時間は喋っていた

顔を見つめ過ぎたか…?少し距離を詰めるのが早すぎただろうか……うぐ…人間関係というのはやはり難儀なモノだな…

 

「…ぷは…先生……」

 

そういえば口を塞いでいた事を思い出し、手を退けると、呆れ顔で私を呼びつつ見てくるハナコ

 

「うん?」

 

「別に、嫌われた訳では無いと思いますよ」

 

ハナコがそう言うのだ、その可能性は高いだろう

 

「そうか?…なら、良いのだが…」

 

それはそれとして今度会えたら謝ろう、と決意していると、未だにハナコは呆れの目線を私に向けていた

 

「…?どうしたハナコ」

 

「……先生って本当…いえ、なんでもありません……」

 

「若干気になるからやめてくれないかそれ」





顔を逸らして赤面していたサクラコを口を塞がれもごもごしつつガン見していたハナコは思った
(なんでこの人はピンポイントでそういう琴線に触れるような事ばかり言うのでしょうね…しかも気付きませんし………他人の関係性等を察する能力は普通…というかそれ以上にあるんですけど…なんなら喜怒哀楽全てを察する能力も凄いのですけれど…自分の事になると急にポンコツ…というか……)

オリジナル生徒について!!!

  • 全然出していいよ!!!!!!!
  • 出さない方が好きだよ!!!!!
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