シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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想定外

 

私はヒフミの手を借りつつ起き上がる

負傷は……多少の擦り傷程度か。問題はないな

ヒフミ達も無傷か、良かった

 

「…ありがとうヒフミ。遅くなったのは…アリウスとの話と聖徒会による妨害か」

 

「はい。敵は…あの人…アリウスの生徒会長なんですね。アリウスの皆さんともお話しました。コハルちゃんの熱心な説得とハナコちゃんによる後の対応を聞いてもらって、話もまとまっています。サオリさんを助ける為…私達に力を貸してくれると」

 

「そうか……」

 

良かった。これも洗脳が薄いからだろうな…

正直、私達の世界では絶対に起こり得ない事だ

 

『み……んな…?!……ち、違う…!わた…し……私が……守らないと……』

 

そう言いながらフラフラと立ち上がる反転した私

 

「なっ…待て、一人で…!」

 

『…私……が…!今度こそ……!皆を………!』

 

─────────────────────

 

許すな、アレの存在を

アレは、皆を傷付ける

本能が訴えてくる。アレは…私の大敵だ

私が、殺さないといけない

私が……絶対に…………!

背中の羽に力を込め、飛び出そうとする

そんな私を引き止める二本の腕

…アズサと……もう一人。誰だ…?トリニティ…?

 

「待てサオリ!」

 

『離せアズサ……!』

 

「待ってください!」

 

『誰だ…お前は…!邪魔を…!するなら…!!!』

 

「私は、阿慈谷ヒフミと言います!アズサちゃんの友達です!サオリさん、でしたよね!」

 

『……アズサ…の……友…達…』

 

何故、トリニティが私の名前を………

阿慈谷ヒフミは続けて言う

 

「私、サオリさんに伝えたい事があったんです!」

 

『………』

 

伝えたい事………?

いいや、そんな事よりも…

 

『知らん…!私は………アイツを……!』

 

話を聞いている暇などあるものか。アイツが動けているうちは、いつ皆が襲われても………

 

「……はぁ…頑固だな本当に……いや…我ながら…」

 

ため息をつきつつ、そう言うシャーレの先生。後半は小声でよく聞き取れなかった

そうして、新たなナイフと拳銃を手に持ち、私達の前に出る

 

「時間は私が稼ぐ。お前は大人しくヒフミとアズサ…それにスクワッドの皆の言葉を聞いていろ。…心配は要らない。私が全て守り抜く」

 

いつの間にか、羽がロープで縛られていた

シャーレの先生はそう言い切る

全てを……?その、貧弱な肉体で……?

…出来る筈がない。何を言うのだこの人間は

 

『……何をほざくかと思えば…!』

 

「阿呆、冷静になれと言っている。戦場において冷静さを欠く事などあってはいけない。それは…ただ、失敗を更に酷くするだけだ。自分の戦い方を思い出せ。見極め、把握し、理解し、対策を組み立て、順序立てて攻略する。それがお前の戦い方の筈だろう。…頭を冷やすんだな。一つだけ、伝えておこう。お前はお前、【錠前サオリ】でしかない。惑わされるなよ」

 

淡々と、そう告げてシャーレの先生は生徒会長へ向かって駆け出す

お前は……何を………知っているのだろう

何故………お前は……

守れると……そう、言い切れるのだろう

私は……一度だって……

脳裏に浮かぶのは、何回も、何回も何回も何回も見た、皆の亡骸

 

『……一度だって…守れなかったのに…』

 

「いいえ。それは違います、サオリさん」

 

溢した言葉に、トリニティ…阿慈谷ヒフミが反応する

 

『……何を言う。お前は何も………!!!』

 

「アズサちゃんからも、アリウススクワッドの皆さんからも聞いています。不器用で、口下手だけど…誰よりも皆の事を想い、護ろうと奮闘する頑張り屋のお姉さんの事を」

 

『…黙れ……!』

 

違う。私は…私はそんな存在じゃない

 

「私、サオリさんに伝えたい事があるんです」

 

『…やめろ……!』

 

「アズサちゃんを守ってくれてありがとうございます。サオリさんのお陰で、私は大切な、かけがえのない友人を得る事が出来ました」

 

守って………くれて……?

やめろ。やめてくれ

そんな言葉を聞いたら、私は…

生きていたくなる…

皆と…一緒に居たくなってしまう…

自分に言い聞かせる為、私は口を開く

 

『わた…し……私は……!私は守れない、守れなかった!!!私は知っている!この先に続く未来を!誰一人として私は守れない!居るだけで不幸を撒き散らし、死をも振り撒く愚かな死神は、ここでアイツを道連れに消え去るのがせめてもの償いだ!!!私は、存在するべきではなかった!私なんて、生まれてくるべきでは無かったんだ───!』

 

あぁそうだ。そうなのだ。私はそういう存在だ

だが、アズサが口を開き、それを否定する

 

「違う、違うぞサオリ。私は…私達は確かに守られていた。サオリは、あんな環境の中、私達4人を庇護してくれた。覚えているか?私が、殴りつけられていた時。一番に庇ってくれたのはサオリだった。私が、私で居られるのは…あの時のサオリのお陰だ」

 

私を囲んでいたヒヨリも、ミサキも、姫も…口を開く

 

「その通りです…!サオリ姉さんが居たから…私達は今、ここに居られるんです!生まれてくるべきではなかったなんて、そんな…そんな事言わないでください…!」

 

ヒヨリがそう言って抱きついてきた

 

「私の事は引き止めておいて、自分一人はそんな決断?…笑わせないで。そんな事、許さないから。どうして、引き止めるのか…ちょっとずつ、分かってきたの。……絶対に、許さないから…!」

 

私の手を握り締めるミサキの声は震えていた

 

「サッちゃん。私は、サッちゃんと居た事で…後悔なんてした事もないし、これからもする事はないよ。サッちゃんは…きっと…酷いものを視たんだと思う。だけど、私達は絶対にサッちゃんと一緒に居た事に後悔なんてしてないよ」

 

姫は仮面を外し、私にそう語り掛けた

 

『…そんな…そんな事……』

 

わ、私は…………

 

─────────────────────

 

「いい加減…!大人しく死に絶えなさい!」

 

「悪いな、そうはいかない。私にはまだ、助けなければいけない生徒が居る」

 

振り抜かれる刀を回避し、距離を詰めて…

 

「はぁッ!」

 

ゼロ距離で銃弾を叩き込む

 

「ぐっ……!こ、の…!!」

 

苦し紛れに振られた刀を再び回避し、少し距離を離す

 

「ちょこまかと…!」

 

「生憎と、貧弱な肉体をしているものでな」

 

正直…戦い慣れている知らない生徒と戦うことになったらこうはいかないだろう

あれは私が熟知している存在だからこそ…一度の被弾も許されない今の私でも戦える

私の武器、私の戦法の根幹はさっき反転した私に言った通り、理解だ

逆に言えば…知らないもの、理解できないもの…となると対応が少々遅れてしまう

あの虚は混ざり物だが…ベアトリーチェはこういった人型での戦いは不得手なのか、私の肉体に染み付いているであろう戦略しか使わない。予想外の攻撃にも警戒はしているが…

やはり、こちらとしても決め手には欠けるな

まぁ目的は時間稼ぎだ。問題はない

ふと、虚が口を開く

 

「先生。何故、貴女はそこまで彼女達の為にその身を犠牲に出来るのですか。…理解が出来ません。所詮、生徒は生徒でしかない。貴女の血縁者でも、なんでもないのですよ!」

 

似たような事を黒服にも聞かれた気がするな

私の返答は変わらない

 

「知った事か。私は先生として、大人として、己の責務を全うするだけだ。…子供が苦しむような世界など、あってはいけない」

 

「…本当に…くだらない…!!!」

 

突然、今までの比ではない速度で虚の姿が消え、側面からの殺気……いや、違う、ブラフだ。本命は真後ろ……!

咄嗟に飛び退くが…漆黒から出現した虚が刀に手をかけていた

しまった、反応が遅れた

虚の狙いは……私の心臓だ

だが…避けきれないな、これは

だが、腕を犠牲にその刀身を止める事はできる

腕の一本程度ならどうとでも───

そんな事を考えつつ防御の体制に入ったその瞬間

 

「…させ…ません…!!!」

 

私と虚の間に割り込み、短刀で虚の刀を受け止める

ボロボロの着物姿をしたワカモだった

 

「ワカモ!?」

 

「災厄の狐…!大人しく寝ていれば良かったものを!」

 

「…今回は……間に合った…みたい…ですね…」

 

いつも着けている狐の仮面はヒビ割れ、片目が露出していた

至る所が傷だらけで、着物もボロボロだ

……いや、呆けている場合じゃない…!

拳銃を取り出し、鍔迫り合いをしている虚に射撃を行う

 

「くっ…!」

 

「逃が…しませんわ!!!」

 

虚が距離を取ろうと後方へ飛び退くが、その間にワカモは短刀を投擲する

 

「がっ………!」

 

その短刀は虚の右足に深く突き刺さった

 

「はぁ…っ……ぁ…」

 

そして、肩で息をしていたワカモは地面へと倒れ込む

 

「ワカモ!こんなになってまで無茶を…!」

 

慌てて駆け寄り、その体を支える

声を掛けるが、既に意識が無かった

何処か安全な場所に…

 

「ふっ…ふふふ…!助けに来たというのに、結局の所は足手まとい…やはり全てはただ…無意味なだけでしかない!」

 

虚は足から血に濡れた短刀を引き抜きつつ、ユラリと立ち上がる

刀を手に、ワカモを抱える私に一歩ずつ、近寄ってくる

 

「……いいや、無意味なんかじゃない」

 

「……何?」

 

訝しげな声を出した瞬間、銃弾の嵐が虚を襲う

 

「あの時の借り、返させてもらうわ」

 

「空崎ヒナ……!!!」

 

ヒナのマシンガンから再び弾幕が放たれ、虚を穿っていく

 

「チッ…!再生が…追いつかない…!」

 

虚は退避しようとするが…黒い影が真後ろから轟音を上げながら接近していた

 

「なっ……!?」

 

「ギャハハハハハハハ!!!死ねェ!!!」

 

「剣先…ツルギ…!…ぐっ……!」

 

二丁のショットガンから放たれた弾丸は虚に全弾命中し、虚は衝撃で地面に転がりつつ、距離を取る

私の隣にヒナとツルギが駆け寄ってきた

 

「無事ね、先生。狐坂ワカモも…見つかったのね」

 

「キキキ……」

 

「助かった。ありがとうヒナ、ツルギ」

 

二人が来た…という事は聖徒会の掃討が大体終わったという事だろう

 

「…時間をかけすぎましたか…!」

 

「終わりだ虚。大人しく───」

 

「降伏しろ…と?手段を用意していない筈が無いでしょう…!」

 

虚の肌が更に赤く染まっていく

混ざっているベアトリーチェがほぼ表面に出てきているのだろう

 

「やりなさい、マエストロ!」

 

奇妙な足音と共に、姿を現したのは………

マエストロと呼ばれた…恐らく木製の…人形…?

……待て、あいつは…何処かで…

 

「混ざり物の方のお前に、指図などされたくはないのだが……まぁ、良い。目的は変わらない。知性と品格、礼儀と信念、そして培ってきた経験と知恵。先生、そなたならば、私の崇高を理解してくれるに違いない!」

 

マエストロがそう言うと……

眼前の空間が輝き出す

……何かが、来る。何か…凄まじい存在

 

「先生!私達の後ろに!」

 

「これは………!」

 

ヒナとツルギが私を庇う為に前へ出る

そうだ。あの時、意識があやふやだった私でも…この存在感は一度見ている、知っている

馬鹿な……早すぎる、完全に予想外だ

まさか、このタイミングで……

『教義』は、既に完成していたか…!

高らかにマエストロは言う

 

「顕現せよ!ヒエロニムス!!!」

オリジナル生徒について!!!

  • 全然出していいよ!!!!!!!
  • 出さない方が好きだよ!!!!!
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