シャーレの先生だ、よろしく頼む   作:桜花=サン

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私はもう、負ける事は無い

 

「全員、この場から急いで距離を取れ!再びあの広範囲攻撃をされては今度こそ止められるか分からないからな」

 

落下の衝撃も合わせて無理矢理止めたのだ、二度目はほぼ無いと思ったほうが良いだろう

ヒナが心配そうに質問してくる

 

「……大丈夫なのね?」

 

「あぁ、大丈夫だ」

 

私はそう言って頷いた

 

「…言いたい事は沢山あるけど、わかったわ。全員、撤収。先生に任せて下がるよ」

 

踵を返して下がっていくヒナにツルギも続き、それに釣られて皆も下がっていく

最後に残ったのは、アリウススクワッドと補習授業部だった

サオリも上空から地面に降りてきた

先程の攻防でヒエロニムスは私の事を脅威と認識したようで、此方の様子を伺うようにじっと見てきている

いつ動き出すかは分かったものではないが…

なので残っているメンバーに私は声を掛ける

 

「…早く行け、此処は危険だぞ」

 

私の言葉にサオリが言葉を返してきた

 

「待ってくれ先生、私も……!というか…その…姿は……一体何がなんだか…!」

 

「お前の役割はなんだ、錠前サオリ。家族を守ると、そう決めたのだろう。…なら、アツコ達の側に居てやれ。それはきっと、大切な事だ」

 

いつ離れ離れになるかは、分からないからな。とそう伝えた

 

「……先生…?」

 

サオリがどうかしたのか、と聞いてくる

おっと、つい表情に出てしまったか

いけないな、今は仮面がないというのに

すると、アツコが口を開いた

 

「…サッちゃん、先生に任せよう。今私達に出来るのは、出来るだけ離れる事だよ」

 

「……あぁ。先生、また…話をさせてくれ」

 

「分かった、先生として約束は守らねばな」

 

私はそう言ってサオリの言葉に頷いた

アリウススクワッドが去っていく。補習授業部もそれに続くようだ

だが、アズサが一人だけ駆け寄って来る

 

「……先生」

 

「どうかしたか?アズサ、お前も早く……」

 

「伝えたい事があるんだ。……ありがとう、先生。…いや、サオリ。貴女のお陰で、私は…私達は光を見失わなかった。手を伸ばすことが出来た。本当に、ありがとう」

 

それだけ言い、アズサは補習授業部の元に駆けていき、皆を連れて去っていく

 

「───そうか。ふふっ…駄目だな。大人になってから涙腺が緩んだか?」

 

指で目尻に浮かぶ涙を拭い、眼前のヒエロニムスを見据える

あぁ…先生。私は………

私は…少しでもあなたに近付けただろうか

ちゃんと、『先生』を『大人』を、出来ているだろうか

私は、多くの間違いを犯してきた

きっと、これからも間違いを選択してしまう事もあるだろう

だが、それでも…

今回こそは、正解を選べたと信じたいものだな

 

「ありがとうアズサ。私はもう、負ける事は無い」

 

私は口を開き、声を張り上げる

大人の責任を果たすとしようか

 

「さぁ、私の生徒達全員が笑い合えるハッピーエンドを掴み取る為、貴様は私の手で討ち倒す。来るがいい、ヒエロニムス!!!」

 

【────────────!!!!!!!】

 

ヒエロニムスが咆哮と共に杖を振り上げる

私は地面を蹴り、駆け出した

 

─────────────────────

 

「ふっ…!」

 

大鎌の一振りで目の前の聖徒会を両断する

 

「聖徒会も、かなり減っているな…」

 

正直、事態が飲み込みきれずに混乱しているというのが今の心情だ

先生……突然私を振り解いて飛び降りた時は気が狂ったかと思ったが…その瞬間光を放ち、ヒエロニムスを見事止めてみせた

そして……

大鎌に反射する私の顔と先生の顔が一致して見えた

背丈は、違ったが………

脳裏には、先程言われた先生の言葉

 

『…なら、アツコ達の側に居てやれ。それはきっと、大切な事だ』

 

そう言って先生は少し寂しそうに笑っていた

失った絶望ではないが、少し遠くに居て滅多に会えないから寂しい、そんな表情

ここまで分かりやすいのは彼女が私だから…なのか?

思考に耽っていると一番近くにいたアズサが話しかけてくる

 

「サオリ。どうかしたのか?」

 

「…いや、なんでも……っ…!?」

 

その瞬間、ドクンと、心臓が脈打つ

 

「サオリ!?」

 

「ゔっ……ぐ…!」

 

力が抜けていく。全身を疲労感が襲う

思わず地面に膝をついてしまうが、その姿勢すら維持出来ずに地面に倒れ伏す

背中の重みが無くなり、大鎌が霧となって消えた

 

「はぁっ…はっ………これは…」

 

「大丈夫かサオリ!これは…元に、戻っている…?」

 

元に……そうか、なるほど…

体内に巡る感覚でなんとなく状況を理解する

私の力…あれは月が深く関係しているようだ

正気を失っていた時は無理矢理私の空間を作り、夜にしていたが…今はもうそれはない

空は太陽が爛々と輝き、私達を照らしている

蓄えていたエネルギーを全て力の維持に使ったのだろう

どうりで、指一本動かせない訳だ

だが、掴めた物は大きい。恐らく月が出ている夜ならば再びあの姿になる事が出来るだろう

そしてかなり燃費は悪いが、昼の間も頑張ればなんとかあの姿になれる

限界を超えれば………こんな感じに倒れる事になるが

指一本動かせないので私はアズサに助けを求める

 

「すまないアズサ…私はもう動けそうにない。肩を貸してくれないだろうか」

 

「……なんというか、素直になったな、サオリ」

 

アズサはそう言うと肩を貸すどころか私を背負う

 

「さ、流石にこの姿勢は…」

 

「先生と似た様な事を言わないで」

 

「…先生も言ってたのか……」

 

そうして、私達は先行して残っているかもしれない聖徒会を処理していたので少々後ろから来る皆を待つ

遠くで、ヒエロニムスが咆哮を上げている

もうかなり離れたというのに空気が振動していた

 

「……先生」

 

「先生なら大丈夫だ。きっと負けない」

 

「…あぁ、そうだな」

 

追いついた皆と一緒に、私達はその場を離れた

オリジナル生徒について!!!

  • 全然出していいよ!!!!!!!
  • 出さない方が好きだよ!!!!!
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