トリニティ自治区のとある建物の一室で私は椅子に座っている
ノックの後、ティーパーティーの一人、桐藤ナギサとその護衛が部屋に入ってきた
「失礼します、サオリさん」
「あぁ」
私は今現在、この場所で色々と質問される事に答える生活を送っている
エデン条約襲撃から丁度1週間
死者はアリウスも含め0名でエデン条約襲撃は幕を閉じた
ヒエロニムスが消滅した事を確認した数分後、再びあの戦場で原因不明の大爆発が起こった事だけが不可解だ
幸いと言って良いのか…あの爆発に先生は巻き込まれなかったようだ
しかし、傷だらけの重症で気を失っていた
すぐに救護騎士団の元に運ばれ、手厚い治療を受けているが1週間経った今でも目を覚ましていない
かなりの重症で、筋肉、骨、内蔵のほぼ全てが損傷していたようだ。特に左腕と腹部は酷かったらしい
ギリギリ命に別状はないようだが…もし起きたとしても暫くは動くだけで全身に痛みが走るだろう…と診断されている
そして、アリウスの生徒会長、虚の行方は不明だ
先生とヒエロニムスの戦いに巻き込まれたのか、あの大爆発で消し飛んだのか、それとも逃げ延びてまたチャンスを待っているのか…
正直、私は死んだとは思えていない
今すぐにでも捜索に行きたいが、今はトリニティに置いてもらっている身だ。勝手な事はあまり…
そんな風に思案していると、桐藤ナギサが正面の席に座り、話しかけてきた
「では、今日もよろしくお願いしますね」
「あぁ」
私は桐藤ナギサからの質問に正直に答えていく
十数個答えたので休憩に入るらしい
この時、私が質問すると桐藤ナギサは答えてくれる
部屋から退室せずにここで休憩時間を過ごすのも聞かれる事に答える為なのだろう
紅茶を飲んでいる桐藤ナギサに私は質問を投げかける
「アリウスの皆はどうしている?」
「まず捕縛していたアリウスの生徒さんは全員普通の様子に戻っていますね。サオリさんに話していただいたアリウス分校で受けた教育は全て覚えていないようです。アリウススクワッド以外、例外無く全員忘れているようです。怪我人は現在治療中ですね。全員、後遺症も無く完治する筈ですよ」
脳裏にヘイロー破壊爆弾を起爆させる為に時間を稼ぎ、近くで爆発を受けたアリウス生徒の事を思い出す
そうか……良かった。彼女は覚えていないのだろうが、いつか謝罪しにいかなくてはいけない
「その…アツコ達は…」
「アツコさんとヒヨリさんは今もお部屋で待機してもらっています。食事も大変喜んでいただいたようで…」
「トリニティの食事はアリウスに居た頃だと絶対に手の届く事のないご馳走の部類だからな。自分で言っていて心配になってきた。こんな良いものを食べさせてもらって良いのだろうか…?私は別にその辺りの草でも……」
「そんな物食べさせられませんよ……アリウス分校はそこまで……」
桐藤ナギサが眉をひそめたので咄嗟に謝罪する
「き、気分を害してしまったか。すまない…」
「いえ、己を恥じていただけに過ぎません…お気になさらず。あぁ、それで…ミサキさんなのですが…」
「ミサキがどうかしたのか?」
「いえ、その…救護騎士団に首と腕にある傷の治療の為と搬送されていきました。今も恐らく部室で治療を受けているかと…」
「…そうか…まぁ……あぁ…」
まぁ…これで少々懲りてくれると良いのだがな…
皆の事が確認できたので、もう毎日確認している事を聞く
「それで、今日も先生は……」
「…はい、まだ目を覚ましていません。傷は少しずつ治ってきているようですが…」
「…そうか……」
「……なんだか外が騒がしいですね。すみません、様子を見てきて下さりますか?」
頷いた二人の護衛が外に出ていく
ちなみに、先生が単独でヒエロニムスを倒したというのは公にはなっていない
あの場に居た全員とティーパーティーのホストである桐藤ナギサで、隠し通す事を決めたからだ
単独でヒエロニムスを倒せる…それだけの力を使わずとも、持っている…というのは先生の立場が揺らぐ可能性のある情報だ
先生は私達を守る為に戦ってくれた
先生の不利益になるかもしれない事を私達が言う訳にはいけない、という事で意見が一致したのだ
桐藤ナギサだけは例外として、情報を全て伝えてある
「休憩中ですが、私からも一つ良いでしょうか」
「あぁ、何でも聞いてくれ」
「先生とサオリさんはどういう関係なんでしょうか。お顔が酷似しているようですが…」
…正直に答えにくい質問が来てしまった
大体、予想はついているんだが…それをそのまま言っていいものなのか分からない
私の見てきた記憶により、恐らく他の世界がある事は分かっている
私が見せられたのは、間違えた私ばかりだったが…
先生は恐らく、大人になった私だ
…これを正直に言うか……?
いや、流石に………
しかし、全く関係ないと言うのも………
顔が似ていても、無理がない関係………
迷いに迷っていると、焦ったような足音と共に先程送り出した護衛が室内に駆け込んできた
「ナギサ様!襲撃です!!真っ赤で、巨大な棘の生えた蔦のようなものが建物を破壊し、二人の人物を拉致していったと…!」
真っ赤な……蔦……?
「なっ…!トリニティの生徒ですか!?」
「い、いえ、それが、秤アツコさんと槌永ヒヨリさんを──────」
2人の名前を聞いた瞬間、私は窓ガラスを突き破って部屋を飛び出す
三階の部屋から地面へと降り立ち、そのまま駆け出した
「サオリさん!!!」
窓から身を乗り出した桐藤ナギサが私を止めるために呼んでいる
ここまで良くしてくれた桐藤ナギサの事を無視してしまうのは罪悪感しか湧かないが、今は、それどころでは無い…!
生きていた、やはり生きていた
しかし、赤い蔦を見たのは記憶の中の事だ
虚じゃない、ベアトリーチェと名乗っていた大人だ
ヘイローも無い、赤い肌をして目が沢山の大人
アレは、怪物になっていた
植物の様な、奇怪な身体に
あぁもう、何がどうなっているんだ!
そもそも、虚という存在も謎だらけなのだ
あれはベアトリーチェではなかった筈だ
考え事をしている暇は無いと頭を振り、雑念を押しのけて上空を見上げる
そろそろ夕暮れだ、ならば……
ギリギリ顔を出し始めた月を視界に捉える
「私に……力を寄越せ!」
そう強く念じ、私の奥底から力を引き摺り出す
背中から合計6枚の翼が展開され、私の手元に大鎌が出現した
「アツコ…!ヒヨリ……!」
翼を羽ばたかせ、私は空へと飛び立った
休憩する間も無くエデン条約編4章に突入です…
オリジナル生徒について!!!
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全然出していいよ!!!!!!!
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出さない方が好きだよ!!!!!